完璧生徒会長は、放課後の生徒会室で俺にだけ“ご褒美”をねだる

どえろん

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第七話:二人だけの朝が、教えてくれたこと

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 俺が差し出すれんげを、白銀さんは素直に受け入れ続けた。
 一口、また一口と、まるで雛鳥が餌をねだるように。
 そのたびに、彼女の頬がほんのりと上気し、潤んだ瞳が恥ずかしそうに揺れる。

 完璧な生徒会長という鎧を脱いだ彼女は、驚くほど素直で、庇護欲をそそる少女だった。
 俺の作った、ただの卵粥を「おいしい」と言って涙ぐむ。
 俺が「あーん」と差し出すだけで、顔を真っ赤にする。
 その一つ一つの反応が、俺の心を強く揺さぶった。

 土鍋の粥が空になる頃には、彼女の顔色もずいぶんと良くなっていた。
 まだ熱は残っているだろうが、少なくとも、昨夜のような危険な状態ではない。

「……ごちそうさまでした」

 小さな声でそう言うと、彼女は名残惜しそうに空になった土鍋を見つめた。

「薬は、あるのか?」
「……えっと、リビングの……」
「分かった。取ってくる。ついでに、食器も片付けてくるから、大人しく寝てろよ」

 俺が立ち上がろうとすると、彼女は慌てて俺の服の裾を掴んだ。
 その力は、驚くほど弱い。

「……有栖川くん」
「ん?」
「……いなく、ならないでね……?」

 不安げに揺れる瞳。
 また一人になることを、彼女は心の底から恐れていた。

「なるかよ、馬鹿」

 俺は彼女の頭をくしゃりと撫でると、安心させるように微笑んだ。

「お前が眠るまで、ちゃんとここにいる。だから、心配するな」
「……うん」

 俺の言葉に、彼女はこくりと頷き、ようやく俺の裾を離した。
 その顔は、さっきまでの不安が嘘のように、安堵の色に染まっていた。

 キッチンで食器を洗い、リビングの救急箱から風邪薬と体温計を見つけ出す。
 再び彼女の部屋に戻ると、彼女はベッドの上でちょこんと座り、俺の帰りを待っていた。

「ほら、薬。先に熱、計って」

 体温計を渡すと、彼女は素直にそれを受け取り、パジャマの胸元に差し込む。
 その何気ない仕草に、どきりとする。
 昨夜、俺はこの手で、彼女の全てに触れたのだ。

 電子音が鳴り、体温計を引き抜いた彼女は、その数字を見て小さく眉をひそめた。

「……37度8分……」
「まだ高いな。薬飲んで、今日は一日寝てないと駄目だ」
「……学校は……?」
「休むに決まってるだろ。連絡は俺がしておく」
「でも、生徒会の仕事が……」

 なおも食い下がろうとする彼女の唇を、俺は人差し指でそっと塞いだ。

「いいから。今日は、全部忘れて休め。それが、生徒会長の“命令”だ」

 俺がわざと強い口調で言うと、彼女は一瞬きょとんとした顔をし、やがて、ふふ、と小さく笑った。

「……分かったわ。副会長の、有栖川くん」

 その笑顔は、今まで俺が見たどんな彼女の表情よりも、自然で、魅力的だった。

 薬を飲んだ彼女は、再びベッドに横になった。
 俺が隣に座ると、彼女は当たり前のように俺の腕にすり寄り、その温もりを確かめるように目を閉じる。

「……ねぇ、有栖川くん」
「なんだ?」
「……今日が終わったら……私、また、完璧な“白銀夜瑠”に戻っちゃうのかな……?」

 それは、彼女の心の奥底からの、切実な問いだった。
 この、二人だけの甘い朝が、夢のように消えてしまうことへの恐怖。

 俺は、彼女の柔らかな髪を撫でながら、静かに答えた。

「戻らなくていい」
「……え?」
「学校では、完璧な生徒会長でいろよ。お前は、それが似合ってる」
「……」
「でも、俺の前では、ただの白銀夜瑠でいい。泣き虫で、甘えん坊で、俺の“ご褒美”がないと頑張れない、ただの女の子でいろ」

 俺の言葉に、彼女は顔を上げない。
 ただ、俺の胸に顔をうずめ、その肩が小さく、小刻みに震えているのが分かった。
 きっと、泣いているのだろう。

 俺は何も言わず、ただ優しく、彼女が泣き止むまで、その背中をさすり続けた。

 やがて、薬が効いてきたのか、腕の中の彼女から、すぅ、すぅ、と穏やかな寝息が聞こえ始めた。
 その寝顔は、昨夜よりもずっと安らかに見えた。

 俺は、彼女の携帯を借りて学校に欠席の連絡を入れる。
 自分の親には、「友人が熱を出して、看病で泊まった」と正直にメッセージを送った。すぐに「お大事に」と返信が来た。

 全ての手続きを終え、再び彼女の寝顔を見つめる。
 この日常から切り離された、二人だけの時間。
 それは、俺たちの関係を、決定的に変えてしまった。

 もう、ただのクラスメイトで、生徒会の仲間ではいられない。
 俺は、この弱くて愛おしい少女を、これからも守り続けていくのだろう。

 俺は彼女の額に、そっと優しいキスを落とした。
 窓の外では、世界がいつも通りの朝を迎えていた。

【続く】
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