5 / 30
第2章:落ちこぼれの箱舟
2-1:約束の地へ
しおりを挟む
翌日、大地は始発電車に乗っていた。
ガタン、ゴトンと規則正しいリズムを刻む車内は、驚くほど空いていた。向かいの席に座る老人は虚ろな目で窓の外を眺め、斜め向かいのサラリーマンはスマートフォンを握りしめたまま眠りに落ちている。誰もが、終末という名の巨大な鎮静剤を投与されたかのように、静かだった。
窓の外を流れていく景色もまた、生気がない。建設途中で放棄されたマンションが骸骨のように立ち並び、手入れされなくなった田畑は雑草にその身を委ねていた。すべてが緩やかに、確実に、死に向かっている。
(俺は、一体どこへ向かっているんだろう)
リュックの底で、あの銀色のカードが冷たく鎮座している。昨夜の自暴自棄な決意は、朝の光を浴びて少しだけ色褪せていた。馬鹿げたことだとはわかっている。だが、今さら引き返すという選択肢も、彼の中にはなかった。帰る場所なんて、もうないのだから。
つくばエクスプレスの終着駅、つくば駅。かつては日本の科学技術の粋を集めた学術都市の玄関口も、今では閑散としていた。点灯していない電子広告が黒い鏡のように人々を映し、改札を抜ける足音だけがやけに大きく響く。
カードに示された地図を頼りに、大地は歩き始めた。
歩道は、アスファルトの亀裂から突き出した雑草で覆われていた。色褪せた研究施設の案内看板が、傾いたまま放置されている。街全体が、巨大な廃墟への入口のようだった。
歩き始めて三十分ほど経った頃だろうか。視界の先に、巨大な構造物が見えてきた。空に向かって突き出す、巨大なパラボラアンテナ。それはまるで、遠い昔に神との交信を諦めた文明が建てた、巨大な墓標のようにも見えた。
目的地、旧・宇宙科学技術センター。
錆び付いた鉄のゲートは固く閉ざされていたが、脇の通用口がわずかに開いていた。大地は息を呑み、その隙間に、自分の未来を滑り込ませるようにして足を踏み入れた。
ガタン、ゴトンと規則正しいリズムを刻む車内は、驚くほど空いていた。向かいの席に座る老人は虚ろな目で窓の外を眺め、斜め向かいのサラリーマンはスマートフォンを握りしめたまま眠りに落ちている。誰もが、終末という名の巨大な鎮静剤を投与されたかのように、静かだった。
窓の外を流れていく景色もまた、生気がない。建設途中で放棄されたマンションが骸骨のように立ち並び、手入れされなくなった田畑は雑草にその身を委ねていた。すべてが緩やかに、確実に、死に向かっている。
(俺は、一体どこへ向かっているんだろう)
リュックの底で、あの銀色のカードが冷たく鎮座している。昨夜の自暴自棄な決意は、朝の光を浴びて少しだけ色褪せていた。馬鹿げたことだとはわかっている。だが、今さら引き返すという選択肢も、彼の中にはなかった。帰る場所なんて、もうないのだから。
つくばエクスプレスの終着駅、つくば駅。かつては日本の科学技術の粋を集めた学術都市の玄関口も、今では閑散としていた。点灯していない電子広告が黒い鏡のように人々を映し、改札を抜ける足音だけがやけに大きく響く。
カードに示された地図を頼りに、大地は歩き始めた。
歩道は、アスファルトの亀裂から突き出した雑草で覆われていた。色褪せた研究施設の案内看板が、傾いたまま放置されている。街全体が、巨大な廃墟への入口のようだった。
歩き始めて三十分ほど経った頃だろうか。視界の先に、巨大な構造物が見えてきた。空に向かって突き出す、巨大なパラボラアンテナ。それはまるで、遠い昔に神との交信を諦めた文明が建てた、巨大な墓標のようにも見えた。
目的地、旧・宇宙科学技術センター。
錆び付いた鉄のゲートは固く閉ざされていたが、脇の通用口がわずかに開いていた。大地は息を呑み、その隙間に、自分の未来を滑り込ませるようにして足を踏み入れた。
0
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。
蛇崩 通
ファンタジー
ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。
三千円で。
二枚入り。
手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。
ガイドブックには、異世界会話集も収録。
出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。
おもしろそうなので、買ってみた。
使ってみた。
帰れなくなった。日本に。
魔力切れのようだ。
しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。
それなのに……
気がついたら、魔王軍と戦うことに。
はたして、日本に無事戻れるのか?
<第1章の主な内容>
王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。
魔王軍が、王都まで迫ったからだ。
同じクラスは、女生徒ばかり。
毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。
ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。
しかたがない。ぼくが戦うか。
<第2章の主な内容>
救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。
さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。
どう救出する?
<第3章の主な内容>
南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。
そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。
交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……
<第4章の主な内容>
リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる