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第4章:仮想の墓標
4-2:3分間の地獄
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「行くぞ!」
健吾の力んだ声と共に、シミュレーションが開始された。
船は、ゆっくりと小惑星帯へと進入していく。最初は、順調だった。しずくが、驚くほど冷静かつ正確に、小惑星の隙間を縫うように最適なルートを割り出し、健吾がその指示に従って船を操縦する。
『第一エリア、クリア。第二エリアに進入』
合成音声が、淡々と状況を報告する。
だが、小惑星の密度が増すにつれて、状況は一変した。
「右舷、回避が間に合わん!もっと早く進路を寄越せ!」
健吾が、焦りを含んだ声で叫ぶ。
「……これが最短ルート。あなたの操縦が遅いだけでしょ」
しずくが、ディスプレイから目を離さずに冷たく言い返した。
「なんだと!」
二人の間に、早くも険悪な火花が散る。
「おい、船長さんよォ!」
今度は、結実が背後から野次を飛ばした。
「さっきからエンジン出力が不安定なんだよ!そんな急な機動ばっかしてたら、オーバーヒートでぶっ壊れんぞ!」
「うるさい!素人は黙ってろ!」
「あぁ!?誰が素人だ、コラ!」
コクピット内は、怒号と罵声が飛び交う地獄と化した。
大地は、通信士として何かをしなければならないとわかっていながら、何もできなかった。ただ、モニターに次々と表示される警報を、震える声で読み上げるだけだった。
「け、警報!右舷前方、小惑星と接触の可能性!」
「わかってる!」
健吾が叫び、無理やり機体をひねる。ガツン!という鈍い衝撃音と共に、船体が大きく揺れた。
『船体損傷率、15%。右舷スタビライザー、軽微な損傷』
「だから言っただろ!」結実が叫ぶ。
「あなたのせいよ」しずくが呟く。
彼らは、もう小惑星を見ていなかった。互いの欠点を探し、責任をなすりつけ合うことに必死だった。
「あ……あ……」
隣の席で、大山が真っ青な顔で震えている。彼の観測モニターには、この先に待ち受ける、さらに密集した小惑星群のデータが映し出されているはずだった。だが、彼は恐怖で声が出ず、その致命的な情報を誰にも伝えられずにいた。
「警報!警報!前方、高密度エリアに突入します!」
大地が、悲鳴に近い声を上げた。
その時だった。
メインスクリーンが、真っ白な光で覆われた。
これまでとは比較にならない、凄まじい衝撃と轟音が、彼らを襲う。
視界が、真っ赤に染まった。
そして、全ての音が消え、絶対的な静寂が訪れる。
スクリーンには、無機質な赤い文字が、まるで墓標のように表示されていた。
『SIMULATION FAILED』
ミッション開始から、わずか3分28秒後の出来事だった。
コクピットは、気まずい沈黙に支配されていた。誰もが、言葉を失い、自分のモニターに映し出された無慈悲な結果を、ただ呆然と見つめていた。
「……しょせん、俺たちは寄せ集めだ」
誰かが、そう吐き捨てた。
それは、この場にいる全員の心を代弁する、絶望的な呟きだった。
健吾の力んだ声と共に、シミュレーションが開始された。
船は、ゆっくりと小惑星帯へと進入していく。最初は、順調だった。しずくが、驚くほど冷静かつ正確に、小惑星の隙間を縫うように最適なルートを割り出し、健吾がその指示に従って船を操縦する。
『第一エリア、クリア。第二エリアに進入』
合成音声が、淡々と状況を報告する。
だが、小惑星の密度が増すにつれて、状況は一変した。
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二人の間に、早くも険悪な火花が散る。
「おい、船長さんよォ!」
今度は、結実が背後から野次を飛ばした。
「さっきからエンジン出力が不安定なんだよ!そんな急な機動ばっかしてたら、オーバーヒートでぶっ壊れんぞ!」
「うるさい!素人は黙ってろ!」
「あぁ!?誰が素人だ、コラ!」
コクピット内は、怒号と罵声が飛び交う地獄と化した。
大地は、通信士として何かをしなければならないとわかっていながら、何もできなかった。ただ、モニターに次々と表示される警報を、震える声で読み上げるだけだった。
「け、警報!右舷前方、小惑星と接触の可能性!」
「わかってる!」
健吾が叫び、無理やり機体をひねる。ガツン!という鈍い衝撃音と共に、船体が大きく揺れた。
『船体損傷率、15%。右舷スタビライザー、軽微な損傷』
「だから言っただろ!」結実が叫ぶ。
「あなたのせいよ」しずくが呟く。
彼らは、もう小惑星を見ていなかった。互いの欠点を探し、責任をなすりつけ合うことに必死だった。
「あ……あ……」
隣の席で、大山が真っ青な顔で震えている。彼の観測モニターには、この先に待ち受ける、さらに密集した小惑星群のデータが映し出されているはずだった。だが、彼は恐怖で声が出ず、その致命的な情報を誰にも伝えられずにいた。
「警報!警報!前方、高密度エリアに突入します!」
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その時だった。
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これまでとは比較にならない、凄まじい衝撃と轟音が、彼らを襲う。
視界が、真っ赤に染まった。
そして、全ての音が消え、絶対的な静寂が訪れる。
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『SIMULATION FAILED』
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それは、この場にいる全員の心を代弁する、絶望的な呟きだった。
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