プロジェクト・ニッケルクロム ―銀色の方舟―

どえろん

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第4章:仮想の墓標

4-4:最初の減点

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 ハッチから降り立った5人は、まるで罪人のように、三笠博士と他のクルーたちの前に立たされた。誰もが、俯き、床の一点を見つめている。

 三笠は、手にしたタブレットのデータを一瞥すると、静かに顔を上げた。その瞳には、怒りも、失望も浮かんでいない。ただ、昆虫を観察する科学者のような、冷徹な光があるだけだった。

「……惨憺たる結果だな」
 静かな、しかし芯のある声が、ドーム全体に響き渡った。
「だが、勘違いするな。君たちを破壊したのは、小惑星ではない。君たち自身だ」

 三笠は、ゆっくりと彼らの間を歩きながら、一人ひとりの顔を覗き込むようにして言った。
「雨宮健吾。君は船長ではなく、独裁者になろうとした。リーダーシップとは、叫ぶことではない。聞くことだ」
 健吾の肩が、微かに震えた。

「星乃しずく。君の航法技術は素晴らしい。だが、仲間と共有されない才能は、ただの自己満足に過ぎん。君は、船の頭脳ではなく、ただの乗客だった」
 しずくは、唇を固く結んだまま、何も答えなかった。

「佐藤結実。君の警告は正しかった。だが、その伝え方では、ただの反抗にしかならん。正しいことを言うだけでは、人は動かせんのだよ」
 結実は、顔を背け、忌々しげに床を睨んだ。

 そして、三笠は大地と大山の前で足を止めた。
「高森大地、大山五郎。君たちは、最も重い罪を犯した。……何もしなかった、という罪だ。危機的状況における沈黙と恐怖は、無謀な操縦と同じくらい、仲間を死に追いやるということを、その骨身に刻みたまえ」

 大地の全身から、血の気が引いていくのがわかった。大山は、もう嗚咽をこらえきれずにいた。

「よって」
 三笠は、再び全員の前に立つと、決定的な宣告を下した。
「チーム・アルファ、各員に減点10を与える。累積100点で、君たちはこのプロジェクトから脱落する。覚えておくがいい」

 減点。脱落。
 その言葉が、現実の重みをもって、全員にのしかかる。

「……以上だ。下がれ」
 三笠は、彼らに背を向けた。まるで、もう興味を失ったかのように。
「次、チーム・ブラボー。準備しろ」

 非情な宣言と共に、次のチームが呼び出される。
 誰も、打ちひしがれるチーム・アルファのことなど気にも留めない。シミュレーターは、彼らの感傷などお構いなしに、次の「選別」を始めようとしていた。

 大地たちは、ただその場で立ち尽くすしかなかった。
 敗北の烙印を押され、他のクルーたちの冷たい視線に晒されながら。
 このプロジェクトが、ただの訓練ではない、本物のサバイバルなのだという事実を、これ以上ないほど残酷な形で、叩きつけられていた。
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