銀月の聖女は穢れた勇者に唇を捧ぐ ~浄化の儀式は、快感に濡れる始まりの契約~

どえろん

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第3話:繋がった聖女様は、ちょっとの接触でもビクンビクンしちゃう

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 騎士団長アレクシスとの一触即発の事態が、セシリア様の鶴の一声によって収まってから一夜。
 俺は朝一番で、国王陛下への謁見を命じられていた。
 正直、めちゃくちゃ緊張する。日本のしがない高校生だった俺が、ファンタジー世界の王様に会うなんて。一体何を話せばいいんだ?

「――勇者様。こちらへ」

 謁見の間へ続く長い廊下を歩いていると、前から凛とした声が聞こえた。
 セシリア様だった。
 彼女は昨夜とは打って変わって、いつもの聖女然とした完璧な装いで、感情の読めない涼しい顔をしている。……ように見えた。

「おはようございます、セシリア様。昨日は、その……ありがとうございました。庇ってもらって」
「……別に。あなたのためではありません。勇者を失うことは、世界の損失ですから」

 ぷいっ、とそっぽを向くセシリア様。
 あ、これ、照れてるな。分かりやすすぎる。昨夜の出来事で、俺にはもう彼女の氷の仮面の下にある、温かくて柔らかい素顔が透けて見えるようになっていた。

「それでも、嬉しかったです」
「っ……!」

 俺が微笑みかけると、彼女の頬が微かに赤らむ。
 その時、俺は少し足元がふらつき、おっと、とバランスを崩した。慣れない革のブーツが足に馴染まない。

「危ない……!」

 セシリア様が、ほとんど反射的に俺の腕を掴んで支えてくれた。
 その瞬間だった。

「「あっ……!?」」

 俺と彼女の身体を、ピリリ、と心地よい電撃のようなものが駆け抜けた。
 彼女の柔らかな手のひらから、温かいマナが俺の身体に流れ込んでくるのが、はっきりと分かった。昨夜の儀式で繋がった俺たちの回路が、ほんの少しの接触でショートしたみたいに。

「ひゃっ……!?」

 セシリア様は、まるで灼熱の鉄にでも触れたかのように、バッと手を離した。
 その顔は、耳まで真っ赤に染まっている。

「な、ななな、なんですか、今の……!?」
「俺にも分かりません……。でも、セシリア様のマナが……」
「わ、わたくしのせいだと言うのですか!? あなたのマナが、勝手にわたくしのマナに引き寄せられてきたのでしょう!」

 どうやら、昨夜の“浄化”は、ただ呪いを取り除いただけじゃなかったらしい。
 俺と彼女の間に、何か特別な繋がり――絆のようなものを、残していったのだ。
 彼女の動揺が、マナを通じて俺にも流れ込んでくる。その感情の奔流は、なぜか少しだけ、甘酸っぱくて心地よかった。

 謁見の間に入ると、玉座に座る壮年の王と、その傍らに控える騎士団長アレクシスが、俺たちを迎えた。アレクシスの視線が、ナイフみたいに突き刺さってくる。

「うむ。勇者よ、息災なようで何よりだ。そして聖女セシリアよ、大儀であった」
「もったいなきお言葉です、陛下」

 国王陛下は、俺の呪いが完全に消え去ったことを確認すると、満足げに頷いた。
「しかし、安堵するのはまだ早い。勇者の呪いは、魔王軍による本格的な侵攻の狼煙にすぎん。勇者よ、お主には早急に聖剣を手にし、戦うための力を身につけてもらう」

 そして、国王はとんでもないことを言い放った。

「昨夜の儀式で、勇者と聖女の魔力親和性が極めて高いことが証明された。これより、聖女セシリアを、勇者カイト専属の指南役兼監督官に任命する!」
「なっ……! お待ちください、陛下!」

 即座に異を唱えたのは、アレクシスだった。
「セシリア様を、このような素性の知れぬ男と二人きりにするなど……! 危険すぎます!」
「黙れ、アレクシス。これは決定事項だ。二人のマナの共鳴なくして、聖剣の真の力は引き出せん。……分かるな?」

 国王の静かな、しかし有無を言わせぬ迫力に、アレクシスはぐっと唇を噛み締め、引き下がるしかなかった。
 こうして、俺は聖女様と、四六時中一緒にいることが、公式に決まってしまったのだった。

 場所は変わって、城の訓練場。
 俺は、鞘から抜いた聖剣を手に、呆然と立ち尽くしていた。
 ……重い。見た目は美しい片手剣なのに、まるで鉄塊だ。びくともしない。

「……聖剣は、適合者でなければただの鉛です。ですが、わたくしのマナがあれば、その封印を解くことができます」

 セシリア様が、少し気まずそうに俺に近づいてくる。
「戦闘時における最も効率的なマナの供給方法は……その……身体接触です。……手、を」

 彼女は、おずおずと、白い手袋を外した小さな手を差し出してきた。
 その手は、恥ずかしさからか、小刻みに震えている。
 アレクシスが、訓練場の隅から鬼のような形相でこちらを睨んでいるのが見えたが、もう無視だ。

 俺は、彼女の震える手を、優しく包み込むように握った。

 ――その瞬間。

 ゴォォォォッッ!!

 俺が持っていた聖剣から、天を突くほどの凄まじい光の柱が立ち上った。
 握り合った手から、熱いマナが奔流となって俺の身体を駆け巡り、剣へと注がれていく。それは、昨夜の儀式にも似た、抗いがたい全能感と、とろけるような快感だった。

「……すごい……」

 光が収まると、あれほど重かった聖剣が、まるで自分の身体の一部のように軽くなっていた。
 俺は光の余韻に輝く剣と、目の前で呆然とこちらを見上げるセシリア様を、交互に見つめる。
 彼女の顔は真っ赤で、瞳はマナの奔流に当てられて潤んでいる。

「これが……わたくしたちの、力……」

 彼女が、吐息混じりにそう呟いた。
 その時、俺たちの様子を見ていた老魔術師が、ほう、と感心したように言った。

「素晴らしい共鳴率じゃ。手を繋ぐだけでこれほどの力を引き出すとは。……しかし、聖剣の真の奥義を解放するには、いずれ、より深く、より“完全な”マナの同調が、必要になるでしょうな……」

 その言葉の意味を、俺とセシリア様は、嫌というほど理解してしまった。

【続く】
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