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第16話:あなたのぬくもりが、わたしの世界になった
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天を衝く氷の城は崩れ落ち、後に残されたのは、荒れ狂う黒い魔力の嵐と、その中心で咆哮を上げる、異形の魔王となったカインの姿だけだった。
空は暗雲に閉ざされ、世界から色彩が消えていく。カインの絶望が、世界そのものを侵食し始めているのだ。
「――終わりにしてやる! お前たちの馴れ合いごとも、このくだらない世界も、全て、虚無に還れ!」
魔王カインが両手を掲げると、空に巨大な黒紫色の魔法陣が展開された。
世界を終わらせる、終末の呪文。
もはや、一刻の猶予もなかった。
「カイト!」
「ああ!」
俺とセシリアは、互いの目を見つめ、強く頷く。
やることは、一つだけ。
俺たちは、再び唇を重ねた。それはもう、ただのマナの供給や、魂の交歓ではない。
俺とセシリアという、二つの存在を完全に溶かし、この世界に神の奇跡を顕現させるための、究極の儀式。
俺たちの身体が、眩いほどの黄金色の光に包まれた。
俺の勇者としての力、セシリアの聖女としての力、そして、二人が育んできた愛という名の力が、一つになる。
光の中で、俺たちの意識は、どこまでも高く、深く、広がっていった。
世界の成り立ちが見える。生命の息吹が聞こえる。
そして、目の前で世界を破壊しようとしている、哀れな一人の男の、凍てついた心の奥底が見えた。
――孤独だった。
天才すぎた彼は、誰にも理解されなかった。愛する妹さえも、自分とは違う「聖女」という特別な存在で、決して同じ地平には立てないのだと、絶望した。
だから、彼は世界を壊し、妹を自分のいる暗闇に引きずり込むことでしか、その愛を表現できなかったのだ。
光が収まった時、俺たちの姿は、変容していた。
背中には、光で編まれた六対の翼。手には、聖剣と聖杖が融合して生まれた、神々しい光の槍。
神の領域に足を踏み入れた、究極の存在。
「……なんだ……その姿は……」
魔王カインが、初めて恐怖に目を見開いた。
俺たちは、ゆっくりと彼に向かって飛翔する。
「兄様」と、セシリアの声が響いた。
「いいえ、カイン」と、俺の声が重なった。
「――もう、終わりにしましょう」
俺たちは、光の槍を、終末の魔法陣に向かって、振り下ろした。
それは、破壊の力ではなかった。
すべてを包み込み、すべてを赦し、すべてをあるべき場所へと還す、創生の光。
黄金の光が、黒紫色の魔法陣を飲み込んでいく。
世界を覆っていた暗雲は晴れ、空には暖かな太陽の光が戻ってきた。
魔王の姿をしていたカインの身体から、黒い魔力が浄化されていき、元の、一人の青年の姿へと戻っていく。
「……あ……あ……」
力を失い、雪の上に崩れ落ちるカイン。
俺とセシリアは、その前に静かに降り立った。神々しい光の姿は、もうない。元の、勇者と聖女の姿に、しかし、その絆はより深く、確かなものとなって。
「……なぜだ……。なぜ、僕を……殺さなかった……?」
カインは、虚ろな瞳で俺たちを見上げた。
セシリアは、彼の前に跪くと、その冷え切った手を、そっと握りしめた。
「……あなたは、わたくしの、たった一人の、大切な兄様です。たとえ、どんな過ちを犯したとしても、その絆は、消えません」
「……セシリア……」
「一人で、苦しまないでください。これからは、わたくしたちが、そばにいます。あなたの犯した罪は、わたくしたちが、共に背負います」
その、無償の愛。
カインの凍てついていた心に、温かい雫が落ちた。
彼の瞳から、黒い涙ではない、透明な涙が、止めどなく溢れ出した。
それは、彼が失ってしまった、人間としての心を取り戻した、証だった。
空は暗雲に閉ざされ、世界から色彩が消えていく。カインの絶望が、世界そのものを侵食し始めているのだ。
「――終わりにしてやる! お前たちの馴れ合いごとも、このくだらない世界も、全て、虚無に還れ!」
魔王カインが両手を掲げると、空に巨大な黒紫色の魔法陣が展開された。
世界を終わらせる、終末の呪文。
もはや、一刻の猶予もなかった。
「カイト!」
「ああ!」
俺とセシリアは、互いの目を見つめ、強く頷く。
やることは、一つだけ。
俺たちは、再び唇を重ねた。それはもう、ただのマナの供給や、魂の交歓ではない。
俺とセシリアという、二つの存在を完全に溶かし、この世界に神の奇跡を顕現させるための、究極の儀式。
俺たちの身体が、眩いほどの黄金色の光に包まれた。
俺の勇者としての力、セシリアの聖女としての力、そして、二人が育んできた愛という名の力が、一つになる。
光の中で、俺たちの意識は、どこまでも高く、深く、広がっていった。
世界の成り立ちが見える。生命の息吹が聞こえる。
そして、目の前で世界を破壊しようとしている、哀れな一人の男の、凍てついた心の奥底が見えた。
――孤独だった。
天才すぎた彼は、誰にも理解されなかった。愛する妹さえも、自分とは違う「聖女」という特別な存在で、決して同じ地平には立てないのだと、絶望した。
だから、彼は世界を壊し、妹を自分のいる暗闇に引きずり込むことでしか、その愛を表現できなかったのだ。
光が収まった時、俺たちの姿は、変容していた。
背中には、光で編まれた六対の翼。手には、聖剣と聖杖が融合して生まれた、神々しい光の槍。
神の領域に足を踏み入れた、究極の存在。
「……なんだ……その姿は……」
魔王カインが、初めて恐怖に目を見開いた。
俺たちは、ゆっくりと彼に向かって飛翔する。
「兄様」と、セシリアの声が響いた。
「いいえ、カイン」と、俺の声が重なった。
「――もう、終わりにしましょう」
俺たちは、光の槍を、終末の魔法陣に向かって、振り下ろした。
それは、破壊の力ではなかった。
すべてを包み込み、すべてを赦し、すべてをあるべき場所へと還す、創生の光。
黄金の光が、黒紫色の魔法陣を飲み込んでいく。
世界を覆っていた暗雲は晴れ、空には暖かな太陽の光が戻ってきた。
魔王の姿をしていたカインの身体から、黒い魔力が浄化されていき、元の、一人の青年の姿へと戻っていく。
「……あ……あ……」
力を失い、雪の上に崩れ落ちるカイン。
俺とセシリアは、その前に静かに降り立った。神々しい光の姿は、もうない。元の、勇者と聖女の姿に、しかし、その絆はより深く、確かなものとなって。
「……なぜだ……。なぜ、僕を……殺さなかった……?」
カインは、虚ろな瞳で俺たちを見上げた。
セシリアは、彼の前に跪くと、その冷え切った手を、そっと握りしめた。
「……あなたは、わたくしの、たった一人の、大切な兄様です。たとえ、どんな過ちを犯したとしても、その絆は、消えません」
「……セシリア……」
「一人で、苦しまないでください。これからは、わたくしたちが、そばにいます。あなたの犯した罪は、わたくしたちが、共に背負います」
その、無償の愛。
カインの凍てついていた心に、温かい雫が落ちた。
彼の瞳から、黒い涙ではない、透明な涙が、止めどなく溢れ出した。
それは、彼が失ってしまった、人間としての心を取り戻した、証だった。
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