銀月の聖女は穢れた勇者に唇を捧ぐ ~浄化の儀式は、快感に濡れる始まりの契約~

どえろん

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第19話:聖女様の『聖域』は、俺のマナだけで満たされたい

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 カインとの戦いのような、大々的な遠征ではなかった。俺とセシリア、そしてお腹の子の未来がかかった旅は、国王陛下とグランデル、そしてアレクシスだけが知る、極秘のものとなった。

「――お二人だけを行かせるわけには参りません」

 出発の朝、いつもの白銀の鎧ではなく、目立たない旅装束に身を包んだアレクシスが、城の裏門で俺たちを待っていた。
「騎士団長としてではなく、お二人の『友』として。この剣を、未来の御子のために使わせていただきたい」
 その申し出を、断る理由はなかった。こうして俺たち三人と、グランデルが選んだ数名の護衛兼魔術師という、最小限の編成で、俺たちは王都を後にした。

 目指すは南。瘴気が立ち込めるという『忘れられた神殿』。
 旅は、馬車を使える街道筋は順調だった。
 だが、セシリアの体調は、日に日に不安定になっていった。

「……ん……」

 馬車の中で、彼女は苦しそうに息を吐き、自分のお腹をさすった。
 つわり、というにはあまりにも切実な、マナの渇望。お腹の子は、まるで小さなブラックホールのように、母親のマナを、そして周囲のマナを、際限なく求めている。
 俺は、他の護衛たちに気づかれないよう、馬車の中で彼女の手を固く握り、俺自身のマナを送り続けた。

(……ごめんね、カイト。あなたばかりに、負担をかけて……)
(馬鹿言うな。俺は、あんたたちの『食糧庫』みたいなもんだろ? 遠慮されたら、父親失格だ)

 心で軽口を叩くと、彼女は少しだけ安心したように、俺の肩に頭を預けてきた。
 その温かい重みが、俺の覚悟をさらに強くする。

 街道を外れ、古代の森へと続く道なき道に入ってから、数日が過ぎた夜。
 俺たちは、野営の準備を進めていた。
 セシリアは、焚き火から少し離れた場所で、水筒の水を飲もうとしていた。
 その時だった。

「――あっ!」

 彼女が手にしていた水筒が、カッと眩い聖なる光を放った。水筒は一瞬で蒸発し、彼女の手のひらからは、制御を失ったマナの奔流が、周囲の木々に向かって放たれそうになる。
 お腹の子が、母親の意志とは関係なく、力を暴走させたのだ。

「セシリア!」

 俺は、アレクシスたちが気づくより早く、彼女の元へ駆け寄った。
 彼女の身体は、青白い光に包まれ、小刻みに痙攣している。

「だめ……力が……いうことを、聞かない……っ!」
(カイト……! この子が……この子が、苦しがってる……!)

 マナが足りない。飢餓感が、お腹の子を暴走させている。
 俺は、彼女の手首を掴むと、強引に近くのテントへと引きずり込んだ。

「勇者殿!? いかがされた!」
「なんでもない! 聖女様は、少しお疲れだ! 今夜は、誰も近づけるな!」

 アレクシスの声を背中で遮断し、俺はテントの入り口を固く閉じた。
 中は、ランプの灯りもない、完全な闇。だが、セシリアの身体から漏れ出す聖なる光が、彼女の苦悶に歪む、美しい顔を照らしていた。

「カイト……わたくし……怖い……っ!」
「大丈夫だ。俺がいる」

 俺は、震える彼女を、背後から強く抱きしめた。
 彼女の背中に、俺の胸をぴったりと合わせる。一心同体の、あの時のように。

「俺の全部で、お前たちを満たしてやる。……だから、全部、受け取れ」

 俺は、彼女のうなじに顔をうずめ、その白い肌に、そっと唇を寄せた。
 そして、俺の持てるすべてのマナを、愛と共に、彼女の身体へと注ぎ込んでいく。
 ……違う。これじゃない。こんな、触れるだけの供給じゃ、足りない。
 暴走する我が子の飢餓は、もっと根本的な、俺たちの『生命の同調』そのものを求めている!

「セシリア……許せ」

 俺は彼女の身体を反転させ、狭いテントの中で向き合うと、その震える唇を、激しく塞いだ。

「んんっ……!?♡」

 ただのキスじゃない。あの夜、月の祭壇で一つになった時のように、俺の魂そのものを、彼女の聖杯に注ぎ込む。

 俺の舌が、彼女の小さな口の、聖なる泉の奥をこじ開けていく。
 彼女はビクッと身体を震わせたが、すぐに、それが“救い”であることを理解した。
 彼女は、俺の首に必死にしがみつき、貪るように俺の光(マナ)を求めてきた。

 ぬちゅ♡ くちゅ♡ と、濃厚な水音が、静かなテントに響き渡る。
 これでも、まだ足りない。
 俺は、彼女の旅装束の隙間から手を滑り込ませ、その肌に直接触れた。

「ひゃぅ……!♡」

 暴走していた聖なる光は、俺の黄金色のマナに包まれ、まるで嵐が過ぎ去った後の凪のように、穏やかになっていく。
 代わりに、彼女の身体は、別の熱に支配され始めた。
 飢餓感が、甘い快感へと、変貌していく。

(……あ……。カイトの、マナが……身体中に、広がって……)
(……足りないか?)
(ううん……もっと……もっと、欲しい……。この子が……あなたのマナが大好きだって……♡)

 彼女の心が、とろとろに蕩けていくのが伝わる。
 それは、ただのマナ補給ではなかった。
 俺と、彼女と、お腹の子。三人の魂が、再び一つに溶け合う、神聖な儀式。
 俺は、彼女の耳元で囁いた。

「……俺もだ。あんたと、この子が、愛おしすぎて、どうにかなりそうだ」

 どれくらい、そうしていただろうか。
 テントの中は、俺たちのマナが交じり合った、甘く、濃厚な香りで満たされていた。
 セシリアは、俺の腕の中で、蕩けきった表情で、荒い息を繰り返していた。

 その時。
 俺たちの魂が、同時に、強烈な“気配”を感じ取った。
 テントの外に出ると、アレクシスも、険しい顔で南の空を睨んでいた。

 遥か先の森の奥深く。
 瘴気に包まれたその中心から、まるで俺たちを誘うかのように、禍々しくも、どこか神聖な、巨大な魔力の柱が、天に向かって立ち上っていた。

「……間違いない。あれが、『忘れられた神殿』だ」

 お腹の中の小さな光が、その瘴気に呼応するように、ぽん、と強く脈打った。
 まるで、その場所を、知っているかのように。

【続く】
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