銀月の聖女は穢れた勇者に唇を捧ぐ ~浄化の儀式は、快感に濡れる始まりの契約~

どえろん

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第20話:神殿の『鍵』は、パパとママとわたくしです

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 あの夜、俺たちの魂の同調が引き金となったかのように、古代の森の奥深くにそびえ立った巨大な魔力の柱。
 それは、俺たちを誘う道しるべだった。
 翌朝、俺たちは野営地を撤収し、その光の柱だけを目指して、瘴気の森の最深部へと足を踏み入れた。

 不思議なことだが、あれほど濃密だった瘴気は、俺たち……いや、セシリアに近づくと、まるで意思があるかのように、すぅっと避けていく。
 彼女のお腹の中の小さな光が、この森の主であるかのように、瘴気さえも従えていた。

(……カイト。この子……とても、落ち着いています)
 セシリアが、俺の心に優しく語りかけてくる。
(まるで……故郷に帰ってきたみたいに、安心して、眠っているようです)
(ああ……。もう、間違いなさそうだな。こいつの秘密は、全部、あの光の中にある)

 数時間の強行軍の末、俺たちは、ついにその場所にたどり着いた。
 そこは、森が円形に開けた巨大な空間だった。
 そして、その中心に、光の柱の発生源――黒い蔦に覆われた、巨大な石造りの神殿が、数千年の時を経て、その威容を現していた。

「ここが……『忘れられた神殿』……」
 アレクシスが、息を呑む。
 神殿の入り口は、巨大な一枚岩で塞がれているように見えたが、よく見ると、それは物理的な扉ではなかった。
 淡い光を放つ、不可視のエネルギー障壁が、俺たちの侵入を拒んでいた。

「勇者殿、聖女様、お下がりください。道を開けます」
 護衛の魔術師たちが、結界解除の魔術を詠唱する。
 だが、放たれた魔力は、障壁に触れた瞬間、何の抵抗もなく吸収されてしまった。
「ダメです! まるで、底なしの沼のように……!」
「ならば、力ずくで!」
 アレクシスが剣を抜き、障壁に叩きつける。だが、キィン!という甲高い音と共に、凄まじい力で弾き返されてしまった。

「……待ってください」
 セシリアが、何かに引かれるように、ふらふらと障壁の前に進み出た。
「セシリア! 危ない!」
 俺が止めるのも聞かず、彼女は、そっと、その白い手のひらを、光る障壁に触れさせた。
 障壁は、ブゥゥン……と低く唸り、彼女の聖なるマナに反応した。だが、それだけ。扉は開かない。

(……ダメ、みたいです。わたくしの聖なる力だけでは、弾かれてしまいます……)
(……いや、違う)

 俺は、気づいた。
 この神殿が呼んでいるのは、「聖女セシリア」じゃない。
 彼女のお腹に宿る、「俺たちの子供」だ。

 俺はセシリアの後ろに立つと、障壁に触れている彼女の右手に、俺の左手をそっと重ねた。
「ひゃっ……!?」
 驚く彼女を、俺は背後から優しく抱きしめる。
 そして、俺の右手を、彼女のまだ膨らんでいない、華奢な腹部――俺たちの小さな光が眠る、聖域(サンクチュアリ)――に、そっと当てた。

「……あんた一人の力じゃ、足りないんだ。俺だけでも、ダメだ」
 俺は、彼女の耳元で囁く。
「だけど、三人なら、どうだ?」

 俺は、目を閉じ、俺の黄金色のマナを、セシリアの身体へ、そして、彼女のお腹の光へと注ぎ込んだ。
 パパ(俺)のマナと、ママ(セシリア)のマナが、お腹の中の小さな光(わたくし)を介して、再び、完璧に一つに溶け合っていく。

 障壁に当てられた、俺と彼女の重なった手。
 彼女のお腹に当てられた、俺の手。
 その三点を結ぶトライアングルが、まばゆいほどの光を放ち始めた。

 その瞬間。
 システム音声のような、無機質で、しかし神々しい思念が、俺たち全員の脳内に、直接響き渡った。

『……認証キー、照合。パターン一致』
『資格者:聖なる器(ママ)』
『資格者:光の守護者(パパ)』
『そして……新たなる鍵(わたくし)――』

『――ゲート、開放します。お帰りなさい、創造主(クリエイター)たち』

 ゴゴゴゴゴゴ……!
 神殿の入り口を塞いでいた光の障壁が、まるでカーテンが開くように、左右に分かれていく。
 その奥には、地下へと続く、暗く、長い、石造りの階段が、俺たちを待っていた。
 瘴気とは異なる、冷たく、清浄な空気が、奥から流れ出してくる。

 俺は、まだ驚きに目を見開いているセシリアの手を、強く握りしめた。
「行こう。俺たちの子供の、未来のために」

【続く】
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