銀月の聖女は穢れた勇者に唇を捧ぐ ~浄化の儀式は、快感に濡れる始まりの契約~

どえろん

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第21話:聖女様の『記憶』は、太古の神々とリンクする

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 地下へと続く階段は、俺たちの足音だけが響く静寂に包まれていた。
 だが、暗闇ではない。俺たちが足を踏み出すたび、壁に埋め込まれた青白いラインが、まるで血管に血が通うように発光し、行く手を照らしてくれるのだ。

「……これは、魔法の明かりではありませんね」
 背後でアレクシスが警戒心を露わにする。
「魔力で燃える炎でも、発光苔でもない。まるで、石そのものが意思を持って輝いているようだ」

 俺も同感だった。この神殿の作りは、地上のどの遺跡とも違う。
 石造りのように見えて、その表面は異常なほど滑らかで、継ぎ目がない。まるで、巨大な一つの構造物として最初から“印刷”されたかのような。

「……カイト。この場所……懐かしい、匂いがします」
 隣を歩くセシリアが、俺の腕をきゅっと掴んだ。
 彼女の体温が、少し高い。
 この空間に満ちているのは、瘴気ではなく、濃密すぎるほどの純粋なマナだ。それが、妊娠中で敏感になっている彼女の肌を、内側から刺激しているらしい。

「大丈夫か? 辛くないか?」
「はい……平気です。ただ、空気が濃くて……身体の奥が、熱くて……」
 彼女は荒い息を吐きながら、潤んだ瞳で俺を見上げた。
 その艶めかしい表情に、ドキリとする。
 お腹の子が、周囲のマナを喜んで吸収しているせいで、母親である彼女もまた、一種の恍惚状態にあるようだ。

 俺は彼女の腰を抱き寄せ、俺のマナで包み込むようにして支えた。
(……あと少しだ。俺がついてる)
(……はい、あなた……♡)

 やがて、階段が終わり、俺たちは広大なドーム状の空間に出た。
 その瞬間、天井高いっぱいに、無数の光の点が瞬き始めた。それはまるで、地上の星空を模したプラネタリウムのようだった。

『――システム起動。環境維持領域、正常』
『ようこそ、最後の希望(ラスト・ホープ)』

 再び、あの無機質な声が響く。
 そして、部屋の中央にある祭壇のような台座から、一人の女性の姿をした光の幻影――ホログラムが浮かび上がった。
 その姿を見て、俺たちは息を呑んだ。
 銀色の髪。慈愛に満ちた紫の瞳。
 それは、大人びてはいるが、間違いなくセシリアに瓜二つの女性だった。

「……お母、様……?」
 セシリアが震える声で呟く。だが、彼女の母である前王妃様は、もっと穏やかな雰囲気だったはずだ。この幻影は、もっと理知的で、どこか人間離れした雰囲気を漂わせている。

『私は、この施設の管理人格。かつてあなたたちが“始祖の聖女”と呼んだ存在の、記憶の残滓です』

 幻影は、静かに語り始めた。
 語られたのは、この世界の根幹を揺るがす真実だった。

 かつて、この世界は一度、滅びかけたこと。
 生き残った人類(クリエイター)たちが、星を再生させるために、巨大なマナ循環システム――「世界樹システム」を作り上げたこと。
 そして、そのシステムを管理し、エラーである「瘴気(古き混沌)」を浄化するために生み出された生体端末こそが、「聖女」と呼ばれる一族であること。

「……なんてことだ。聖女伝説の正体が、古代のシステム管理者だったなんて」
 アレクシスが呆然と立ち尽くす。
 だが、話はそこで終わらなかった。

『しかし、長い時を経て、システムは劣化し、エラーである瘴気は増大し続けました。私の末裔たち……歴代の聖女の力だけでは、もう抑えきれません』
 幻影の視線が、セシリアのお腹――俺たちの子供に向けられた。

『だからこそ、システムは新たな解を求めました。異なる世界から来た因子(勇者)と、管理者(聖女)の融合。それによって生まれる、規格外の新しい生命……』

『それこそが、あなたのお腹に宿る“神の子”。システムを再構築し、世界を完全に新生させるための、唯一の鍵(マスターキー)なのです』

 その言葉を聞いた瞬間、セシリアの身体がガクンと崩れ落ちそうになった。
 膨大な情報と、神殿からの強制的なアクセスが、彼女の脳と子宮に直接流れ込んできたのだ。

「あぁっ……!んくぅ……っ!♡」

 彼女は俺の腕の中で、快感と苦痛が入り混じった声を上げた。
 お腹が、熱い。
 お腹の中の子供が、自分が何者であるかを理解し、その役割を受け入れようとして、激しく脈動している。

『さあ、鍵を接続してください。この台座に身を捧げれば、お子様は直ちに覚醒し、世界中の瘴気を一瞬で消滅させるでしょう。……ただし』

 幻影は、悲しげに目を伏せた。
『その強大な力に耐えきれず、母体(セシリア)の肉体は、光となって崩壊する可能性があります』

「――ふざけるなッ!!」

 俺の怒声が、神殿に響き渡った。
 俺はセシリアを強く抱きしめ、幻影を睨みつけた。

「世界を救うために、セシリアを犠牲にする? 子供を道具にする? そんなことのために、俺たちはここに来たんじゃない!」
「勇者殿の言う通りだ!」
 アレクシスも剣を抜き、幻影に向けた。
「聖女様と御子の命を守れぬ世界など、救う価値もない! 騎士として、そのような結末は断じて認めん!」

 俺たちの拒絶。
 しかし、セシリアは、荒い息を吐きながらも、俺の胸元をぎゅっと掴んで、顔を上げた。
 その瞳は、熱っぽく潤んでいるが、強い意志の光が宿っていた。

「……カイト。大丈夫です」
「セシリア!?」
「この子が……言っています。『ママは死なせない』って。『パパも、ママも、ボクも、誰もいなくならない未来がいい』って……」

 彼女は、俺の手を取り、自分のお腹に当てた。
 ドクン、ドクン。
 力強い鼓動。それは、システムの管理端末としての冷たい脈動じゃない。温かい、生きた人間の赤ちゃんの心音だ。

「この子は、鍵である前に、わたくしたちの子供です。システムなんかに、運命を決めさせはしません」

 セシリアは、汗ばんだ顔で、不敵に微笑んだ。
「カイト。あなたのマナを、もっと、わたくしの奥まで注いでください。わたくしたち三人の愛の力で……この古いシステムを、書き換えてやりましょう!」

 俺は、ニヤリと笑った。
 ああ、そうだ。俺の嫁は、ただ守られるだけの聖女じゃない。母は強し、だ。

「ああ、望むところだ。俺たちの愛が、神様の計算を超えてるってことを、教えてやる!」

 俺は再び、彼女と深く唇を重ねた。
 世界のための犠牲じゃない。俺たちの我儘で、未来を掴み取るための、最後の同調(シンクロ)が始まる。

【続く】
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