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第三章 箱庭編
箱庭Ⅲ 埋め込まれたアルゴリズム
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宿場町というだけあって、ガニオの街道沿いには多くの宿が建っている。その中の一つにアルエット一行は入る。受付のカウンターの前までずけずけと進んで行くと、受付の男が口を開く。
「こんにちは。お休みですか?お泊まりですか?どちらも四人で16ゴールドです。」
定型文のような男の言葉に、四人はげんなりとする。
「……ルペアだといくらになる?」
男は微笑みを浮かべたまま、何も答えない。アルエットはそうなることが分かっていたかのように、やれやれと両手を上げる。
「これで六軒目……。旧貨幣なんて持ってないですよ。」
「エリフィーズからもゴールドは回収されちまったな……」
「流石に5年も経つとねぇ。記念と思って少し残してたけど、宿泊代には足りないわね。」
アルエットは懐からいくつかの硬貨を取り出す。
「これじゃ、1泊分にもならないね……。すみません、今回は帰ります。」
アルエットがそう男に伝えると男は、
「ありがとうございました。またお立ち寄りください。」
とこれまた定型文のような挨拶と張り付いたような笑顔で四人を見送った。
「旧貨幣か……なんで今更そんなもの……」
街道を歩きながらルーグがぶつぶつと文句を漏らすように呟く。
「人間領じゃもう全く見ないですもんね。むしろアルエット様がまだ持ってたのが驚きです。」
「ああ、これはね。お母様が回収してきたのを買ったんだ。あと数百年くらいしたらいい値段になるかもしれないでしょう?」
アルエットの言葉に三人は愛想笑いをするしかなかった。
「待ってちょうだい、ルーグとアムリスに引かれるのはまだ分かるけどガステイルはこっち側でしょう!長命種なんだから一回くらいそんなこと思ったことあるでしょ!」
「一緒にしないでください。それに、エルフは長生きすぎてあまりお金に執着しないですね。生きていくのに必要な分と魔法の研究費があれば無理に求めたりはしないです。」
「なんか、まるで私がまがい物の俗物みたいになってない?」
アルエットの質問に、三人は口を揃えて答える。
「そうじゃないんですか?」
「ガステイルさんと比べると……」
「コメントは差し控えさせていただきます。」
アルエットは真っ白に燃え尽きた。
「まあ、茶番はここまでにして。ゴールドの件もそうですが、やはり受付の対応があまりにも気になりますね。」
ガステイルの話に、復活したアルエットが咳払いをして語り始める。
「100歩譲って、仮にこの地域にルペアがまだ浸透していないと考えたとしても、確かに反応が不自然だったね。」
「どうしてですか?」
「デノミネーションそのものを知らないなら、ルペアという聞き慣れない単語に何かしら反応を見せるはず。」
「向こうからすれば俺たちが聞いたこともない変な通貨で泊まろうとしているわけですからね。」
ガステイルの言葉にアルエットが頷く。
「その通り。そしてルペアを知っているが何らかの理由でゴールドを使わなければならない場合。これは私の憶測にすぎないが、仮にも宿場町として栄えている町だ……この五年間、人間領からの旅人が何人来たのだろうね。」
アムリスが考えながら答える。
「魔族領やエリフィーズにも通じる地理的要衝でもありますし、そういう意味でも宿屋を利用する人は多くいそうですね。」
「ええ。そして恐らく、ほぼ全ての人間の客はルペアが使えないか尋ねただろうね。それを五年間聞き続け、あんな格式ばった接客をする連中が六軒とも何も対応しないなんて不自然でしょう。」
「まあ、それもそうですが……。それがどうかしたんです?」
「入り口の青年がいただろう?何を言っても同じ返事しかしないって言った奴。」
「ええ……まさか、それと同じように宿屋の男たちも洗脳されていると言いたいんですか?」
アルエットは暫し熟考した後、ふたたび口を開く。
「まあ、概ねそれで大差はない。強いて言うなら、洗脳という感じがしないのと対象は恐らく街の住人全体ってところでしょうね。洗脳というよりは……決まった動きをなぞらせるように作られた何か、と言えばいいのかな。」
「なるほど……宿屋の男の場合だと、客に対し宿泊の是非を問い、その答えに応じて事前に作っておいた行動をさせる仕組みがあるってことですね。」
ガステイルの言葉に、アルエットは嬉々として返答する。
「そう!そうなのよ!だからはいといいえじゃない……例えば、ルペアは使えるかなんて聞かれても返答が用意されてないって寸法だと思うの。」
話に花を咲かせるガステイルとアルエット。
「アムリスさん、何言ってるか分かります?」
「……分かろうと頑張ってはいます。まるで成果はありませんが。」
「……奇遇ですね。俺もです。」
魔法オタクによる考察が捗り、置いてけぼり達が虚空を見上げていたその時、
「お姉さんたち、うちに泊まる?」
背後から声が聞こえた。四人は臨戦態勢を取るが
「子供?」
5~6歳くらいの見た目の男の子が、大きな瞳で四人を見上げていた。
「こんにちは。お休みですか?お泊まりですか?どちらも四人で16ゴールドです。」
定型文のような男の言葉に、四人はげんなりとする。
「……ルペアだといくらになる?」
男は微笑みを浮かべたまま、何も答えない。アルエットはそうなることが分かっていたかのように、やれやれと両手を上げる。
「これで六軒目……。旧貨幣なんて持ってないですよ。」
「エリフィーズからもゴールドは回収されちまったな……」
「流石に5年も経つとねぇ。記念と思って少し残してたけど、宿泊代には足りないわね。」
アルエットは懐からいくつかの硬貨を取り出す。
「これじゃ、1泊分にもならないね……。すみません、今回は帰ります。」
アルエットがそう男に伝えると男は、
「ありがとうございました。またお立ち寄りください。」
とこれまた定型文のような挨拶と張り付いたような笑顔で四人を見送った。
「旧貨幣か……なんで今更そんなもの……」
街道を歩きながらルーグがぶつぶつと文句を漏らすように呟く。
「人間領じゃもう全く見ないですもんね。むしろアルエット様がまだ持ってたのが驚きです。」
「ああ、これはね。お母様が回収してきたのを買ったんだ。あと数百年くらいしたらいい値段になるかもしれないでしょう?」
アルエットの言葉に三人は愛想笑いをするしかなかった。
「待ってちょうだい、ルーグとアムリスに引かれるのはまだ分かるけどガステイルはこっち側でしょう!長命種なんだから一回くらいそんなこと思ったことあるでしょ!」
「一緒にしないでください。それに、エルフは長生きすぎてあまりお金に執着しないですね。生きていくのに必要な分と魔法の研究費があれば無理に求めたりはしないです。」
「なんか、まるで私がまがい物の俗物みたいになってない?」
アルエットの質問に、三人は口を揃えて答える。
「そうじゃないんですか?」
「ガステイルさんと比べると……」
「コメントは差し控えさせていただきます。」
アルエットは真っ白に燃え尽きた。
「まあ、茶番はここまでにして。ゴールドの件もそうですが、やはり受付の対応があまりにも気になりますね。」
ガステイルの話に、復活したアルエットが咳払いをして語り始める。
「100歩譲って、仮にこの地域にルペアがまだ浸透していないと考えたとしても、確かに反応が不自然だったね。」
「どうしてですか?」
「デノミネーションそのものを知らないなら、ルペアという聞き慣れない単語に何かしら反応を見せるはず。」
「向こうからすれば俺たちが聞いたこともない変な通貨で泊まろうとしているわけですからね。」
ガステイルの言葉にアルエットが頷く。
「その通り。そしてルペアを知っているが何らかの理由でゴールドを使わなければならない場合。これは私の憶測にすぎないが、仮にも宿場町として栄えている町だ……この五年間、人間領からの旅人が何人来たのだろうね。」
アムリスが考えながら答える。
「魔族領やエリフィーズにも通じる地理的要衝でもありますし、そういう意味でも宿屋を利用する人は多くいそうですね。」
「ええ。そして恐らく、ほぼ全ての人間の客はルペアが使えないか尋ねただろうね。それを五年間聞き続け、あんな格式ばった接客をする連中が六軒とも何も対応しないなんて不自然でしょう。」
「まあ、それもそうですが……。それがどうかしたんです?」
「入り口の青年がいただろう?何を言っても同じ返事しかしないって言った奴。」
「ええ……まさか、それと同じように宿屋の男たちも洗脳されていると言いたいんですか?」
アルエットは暫し熟考した後、ふたたび口を開く。
「まあ、概ねそれで大差はない。強いて言うなら、洗脳という感じがしないのと対象は恐らく街の住人全体ってところでしょうね。洗脳というよりは……決まった動きをなぞらせるように作られた何か、と言えばいいのかな。」
「なるほど……宿屋の男の場合だと、客に対し宿泊の是非を問い、その答えに応じて事前に作っておいた行動をさせる仕組みがあるってことですね。」
ガステイルの言葉に、アルエットは嬉々として返答する。
「そう!そうなのよ!だからはいといいえじゃない……例えば、ルペアは使えるかなんて聞かれても返答が用意されてないって寸法だと思うの。」
話に花を咲かせるガステイルとアルエット。
「アムリスさん、何言ってるか分かります?」
「……分かろうと頑張ってはいます。まるで成果はありませんが。」
「……奇遇ですね。俺もです。」
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