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第三章 箱庭編
箱庭Ⅳ ギェーラの人形師
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宿場町ガニオの大きな街道から外れた裏通り。その突き当たりのボロ小屋の目の前で少年の歩みが止まった。
「狭いけど、ゆっくりしてってよ。」
鉄板やトタンを貼り合わせ、木材で補強しているだけの、かろうじて屋根があることで居住地としての体裁を保っている箱に連れてこられたアルエット一行。ルーグは苦笑いを浮かべ、
「はは……五人で寝られますかね、これ。」
とぼやく。
「まあ、せっかく泊まらせて貰えるんだ。ここはお言葉に甘えておこうじゃないか。それに……」
アルエットは声のトーンを落とし、三人を集めて続けた。
「この子、例の洗脳にかかってないような気がする。」
「「えっ!?」」
アルエットの言葉にルーグとアムリスは驚きを見せる。ガステイルは頷きながら答えた。
「俺もそう思います。今までの人たちは私たちのアクションに対して予め用意された答えを言っていましたが、彼は少なくとも自分の意思と思われる基準で行動している。」
「そうね。他の町の人たちみたいに私たちの行動をトリガーとして受け身で行動しているとは考えにくいわ。」
ルーグとアムリスは、分かったような分からないような顔をしている。
「つまり、洗脳の術士張本人……とまでは言わなくとも、何かしら事情を知っている可能性が高いわ。そんな子をみすみす逃す訳にはいかないでしょう。」
アルエットが言い終わると、先に小屋に入っていた少年が
「お姉さん、何の話をしてるの?早く入りなよ!」
と四人に呼びかけた。アルエットは笑顔で振り返り
「ああ、ごめんね。今お邪魔させてもらうよ。」
そう言い三人を促しながら小屋に足を運んだ。
「まあ、良くも悪くも予想通りの内装ね……」
小屋の中に立ち入ったアルエットはそう呟く。床は全面藁のマットが敷かれており、小さなテーブルと椅子代わりの小さな木箱が二つ置いてある。また奥には布団として使っているであろう麻布が置いてある。
「私たちは多分大丈夫ですが、ルーグさんは寝られますかね、これ?」
アムリスはルーグに耳打ちする。
「俺は別に座ったままで大丈夫ですよ。皆さんがゆっくり寝られるなら。」
「それならいいんですが……ちゃんと休んでくださいね。」
「分かってますよ。」
そう会話するアムリスとルーグに、少年が近寄り言った。
「お兄さん、荷物置き場に案内するから着いてきてよ。」
「ああ、かたじけない。ええっと……?」
「シャガラ。シャガラ・ズメイ。」
「シャガラ君ね。それじゃ、お願いしようかな。」
ルーグはシャガラと共に右手側にある部屋に入っていった。
「シャガラ君はずっと一人暮らししてるのかい?」
ルーグは荷物を置きながら、シャガラと会話を試みる。
「うん。ずっとおじいちゃんに育てられてたんだけど、五年前にいろいろあったんだ。それで今は別居してる。」
「五年前……?というか、別居ってことはおじいさんは生きているのかい?」
「そうだよ。ここからちょっと離れたとこのギェーラってとこに住んでる。五年前までは僕もそっちに住んでたんだけどね。お兄さん、ギェーラの人形師って知ってる?」
ルーグは首を横に振った。
「まあ、旅人さんならそうだよね。おじいちゃんのことなんだ。お仕事で人形劇をしたり、売り物にする人形を依頼されて作ったりしてるんだよ。そのお仕事でこっちにもよく来るんだ。」
「人形劇ですか……なかなか珍しいお仕事をされているんですね。でもそれが、五年前と今の暮らしとどう関係するんだい?」
シャガラは少し俯き、ルーグから目を逸らす。少し迷っているような素振りを見せたが、すぐに口を開いた。
「おじいちゃんの人形劇、あまり好評じゃなかったんだ。でもおじいちゃんは毎回毎回僕を連れて行って、嘲笑されて、人形もあまり売れずに帰っていく毎日の繰り返し。そんな繰り返しを続けていたら、五年くらい前のある日、急に街の人たちが本当に同じ言葉だけを繰り返しちゃうようになっちゃったんだ。お兄さん達も見たでしょ?」
「君は、なにか知っているのか!?」
シャガラの言葉に、ルーグは興奮し問いただす。
「うわ、お兄さん、痛いよ。」
「あ、ああごめん!悪かった。」
「知っているというか、こんなことができるのなんておじいちゃんしかいないよ。村人全員をあんなふうに操るなんてさ。それでいて僕のことをこんなところに放り出して厄介払いするなんて、何考えてるか分かりゃしないんだ。」
「ギェーラの人形師……」
ルーグは少しの間考えを巡らせ、唐突にアルエット達がいる部屋に向かって走り出した。
「アルエット様!!」
「お兄さん、待ってよ」
シャガラは慌ててルーグに着いていく。ルーグが部屋に入ると、そこに三人の姿はなかった。
「あれ?みんなどこ行ったんだろ。」
ルーグは部屋を見回し、机の上に一枚の手紙が置かれていることを発見した。ルーグは急いで手紙を手に取り、口に出して読む。
「ルーグへ、ガニオの代表といろいろ話をしてくる。君の方でも何か分かったら戻ってから共有して欲しい……アルエット様の字、フォーゲルの印まで……いや待て、なんであの人がそんなもん持ち歩いてんだ。」
ルーグは紙をくしゃりと握り、
「シャガラ!代表とやらの家は分かるかい?」
「知ってるよ。」
「分かった!今から道案内を頼む!」
ルーグはそう言って、シャガラの身体を米俵を運ぶが如く肩に担ぐ。
「うわぁぁぁ!」
「危ないと思ったら言えよ!全速力だから止まれるかは分かんねえが!」
「いやいやもう危ないよ!!怖いよ!!!ひええええええ!!」
シャガラの訴えも虚しく、ルーグは全速力で小屋を飛び出した。
「狭いけど、ゆっくりしてってよ。」
鉄板やトタンを貼り合わせ、木材で補強しているだけの、かろうじて屋根があることで居住地としての体裁を保っている箱に連れてこられたアルエット一行。ルーグは苦笑いを浮かべ、
「はは……五人で寝られますかね、これ。」
とぼやく。
「まあ、せっかく泊まらせて貰えるんだ。ここはお言葉に甘えておこうじゃないか。それに……」
アルエットは声のトーンを落とし、三人を集めて続けた。
「この子、例の洗脳にかかってないような気がする。」
「「えっ!?」」
アルエットの言葉にルーグとアムリスは驚きを見せる。ガステイルは頷きながら答えた。
「俺もそう思います。今までの人たちは私たちのアクションに対して予め用意された答えを言っていましたが、彼は少なくとも自分の意思と思われる基準で行動している。」
「そうね。他の町の人たちみたいに私たちの行動をトリガーとして受け身で行動しているとは考えにくいわ。」
ルーグとアムリスは、分かったような分からないような顔をしている。
「つまり、洗脳の術士張本人……とまでは言わなくとも、何かしら事情を知っている可能性が高いわ。そんな子をみすみす逃す訳にはいかないでしょう。」
アルエットが言い終わると、先に小屋に入っていた少年が
「お姉さん、何の話をしてるの?早く入りなよ!」
と四人に呼びかけた。アルエットは笑顔で振り返り
「ああ、ごめんね。今お邪魔させてもらうよ。」
そう言い三人を促しながら小屋に足を運んだ。
「まあ、良くも悪くも予想通りの内装ね……」
小屋の中に立ち入ったアルエットはそう呟く。床は全面藁のマットが敷かれており、小さなテーブルと椅子代わりの小さな木箱が二つ置いてある。また奥には布団として使っているであろう麻布が置いてある。
「私たちは多分大丈夫ですが、ルーグさんは寝られますかね、これ?」
アムリスはルーグに耳打ちする。
「俺は別に座ったままで大丈夫ですよ。皆さんがゆっくり寝られるなら。」
「それならいいんですが……ちゃんと休んでくださいね。」
「分かってますよ。」
そう会話するアムリスとルーグに、少年が近寄り言った。
「お兄さん、荷物置き場に案内するから着いてきてよ。」
「ああ、かたじけない。ええっと……?」
「シャガラ。シャガラ・ズメイ。」
「シャガラ君ね。それじゃ、お願いしようかな。」
ルーグはシャガラと共に右手側にある部屋に入っていった。
「シャガラ君はずっと一人暮らししてるのかい?」
ルーグは荷物を置きながら、シャガラと会話を試みる。
「うん。ずっとおじいちゃんに育てられてたんだけど、五年前にいろいろあったんだ。それで今は別居してる。」
「五年前……?というか、別居ってことはおじいさんは生きているのかい?」
「そうだよ。ここからちょっと離れたとこのギェーラってとこに住んでる。五年前までは僕もそっちに住んでたんだけどね。お兄さん、ギェーラの人形師って知ってる?」
ルーグは首を横に振った。
「まあ、旅人さんならそうだよね。おじいちゃんのことなんだ。お仕事で人形劇をしたり、売り物にする人形を依頼されて作ったりしてるんだよ。そのお仕事でこっちにもよく来るんだ。」
「人形劇ですか……なかなか珍しいお仕事をされているんですね。でもそれが、五年前と今の暮らしとどう関係するんだい?」
シャガラは少し俯き、ルーグから目を逸らす。少し迷っているような素振りを見せたが、すぐに口を開いた。
「おじいちゃんの人形劇、あまり好評じゃなかったんだ。でもおじいちゃんは毎回毎回僕を連れて行って、嘲笑されて、人形もあまり売れずに帰っていく毎日の繰り返し。そんな繰り返しを続けていたら、五年くらい前のある日、急に街の人たちが本当に同じ言葉だけを繰り返しちゃうようになっちゃったんだ。お兄さん達も見たでしょ?」
「君は、なにか知っているのか!?」
シャガラの言葉に、ルーグは興奮し問いただす。
「うわ、お兄さん、痛いよ。」
「あ、ああごめん!悪かった。」
「知っているというか、こんなことができるのなんておじいちゃんしかいないよ。村人全員をあんなふうに操るなんてさ。それでいて僕のことをこんなところに放り出して厄介払いするなんて、何考えてるか分かりゃしないんだ。」
「ギェーラの人形師……」
ルーグは少しの間考えを巡らせ、唐突にアルエット達がいる部屋に向かって走り出した。
「アルエット様!!」
「お兄さん、待ってよ」
シャガラは慌ててルーグに着いていく。ルーグが部屋に入ると、そこに三人の姿はなかった。
「あれ?みんなどこ行ったんだろ。」
ルーグは部屋を見回し、机の上に一枚の手紙が置かれていることを発見した。ルーグは急いで手紙を手に取り、口に出して読む。
「ルーグへ、ガニオの代表といろいろ話をしてくる。君の方でも何か分かったら戻ってから共有して欲しい……アルエット様の字、フォーゲルの印まで……いや待て、なんであの人がそんなもん持ち歩いてんだ。」
ルーグは紙をくしゃりと握り、
「シャガラ!代表とやらの家は分かるかい?」
「知ってるよ。」
「分かった!今から道案内を頼む!」
ルーグはそう言って、シャガラの身体を米俵を運ぶが如く肩に担ぐ。
「うわぁぁぁ!」
「危ないと思ったら言えよ!全速力だから止まれるかは分かんねえが!」
「いやいやもう危ないよ!!怖いよ!!!ひええええええ!!」
シャガラの訴えも虚しく、ルーグは全速力で小屋を飛び出した。
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