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第三章 箱庭編
箱庭Ⅸ 弱音
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「それじゃ、ルーグさん。行ってきますね!」
アムリスはそう言って、アルエットとガステイルと共に小屋を出る。
「ああ、気をつけて。」
ルーグはアムリスに向けて手を振ろうとするも、アルエットと目が合い、気まずそうに手を下ろす。アルエットもそんなルーグを見て、すぐに前を向きずかずかと歩き出した。
「やれやれ……」
ガステイルは呆れた様子で、苦笑いしながら首を振る。慌ててアルエットを追いかける二人の背中を見て、ルーグは唇を噛み締める。
「結局、シャガラ君は起きませんでしたね。」
「そうね。まあでもヴェレットさんなら知ってるかもしれないわ。」
「もう一度、あの家に行って聞いてみるってことですね。」
「ええ。急ぎましょう。」
アルエットはそう言って加速する。
「うわぁ、もう見えなくなったよ……」
「アルエット様……何かを焦っているかのように見えるのは私だけでしょうか。」
少しずつ速度を上げながらアムリスはそう呟く。ガステイルはアムリスの言葉を聞き、意外そうに目を細める。
「焦っている?どうしてそう思うんですか?」
「何故かは分からないんですが、昨日のルーグさんとの喧嘩も、魔族なら全て殺さなければならないって考え方も……いえ、そもそも早く魔王を討伐しなきゃいけないってご自身で言ってるのに、こんな街の事情に寄り道して矛盾してるのも、なんだからしくない気がするんです。」
「なるほど……。私よりも二人と付き合いの長いアムリスが言うのなら、恐らくそうなんでしょうね。」
「まあ、そんなに変わらないけどね。ガステイルさんは昨日の夜、ルーグさんと何を話していたんですか?」
「おっと、気付かれていたようですね。なぁに、大した話はしておりませんよ。今後の展望を少しだけ。」
はぐらかすガステイルに、アムリスは少し眉を顰める。
「私もルーグさんと同じ気持ちですよ。本当にシャガラさんが魔族と人間のハーフだと言うなら、アルエット様は彼を殺してはならないと思います。」
「盗み聞きとは、あまり感心しませんね。男同士水入らずの会話なんですから。」
「真面目に聞いてください。」
「俺はずっと真面目に聞いてますよ……。盗み聞きしたのはアムリス一人ですか?」
アムリスはハッと目を見開く。少しだけ返答に困り、口篭りながら答えた。
「ええ。でも二人の様子を見に行く直前、アルエット様に質問されたわ。」
(起きてたのか……まあ、話を聞かれなかったのは不幸中の幸いか。)
ガステイルはそっと胸を撫で下ろした。
「詳しく聞いてもいいかい?」
「まあ、何の気ない会話だと思うけど……。『アムリスはずっと、私のそばに居てくれるよね?』と。」
ガステイルは少し興奮しながらアムリスに詰め寄る。
「それで、なんと答えたんですか!」
アムリスはギョッとして戸惑うが、すぐに答え始める。
「私は……アルエット様の旅の仲間である以前に正教の人間なので、魔王を倒してからのことはどうなるか分かりません。なので『魔王を倒すまではお供いたします』と答えました。アルエット様は『そう』とだけ仰って眠りにつきました。」
ガステイルはため息をひとつついて口を開く。
「なるほどねぇ。俺ら、やっちまったみたいですね。」
「何か分かったんですか!」
「ズバリ、不安だよ。先のラルカンバラ達の戦いからずっと引きずってる不安さ。記憶がない部分以外の殿下はラルカンバラに斬られて重傷を負っただけだからね。そんな中でルーグとアムリスはゼーレン様に鍛えられ強くなっている。そのレベルアップした戦闘についていけるのだろうか……そして、戦闘でもお荷物な自分に三人はきちんとついて来てくれるのだろうか。」
「ついて行くに決まってますよ!!」
ガステイルの言葉に、アムリスは食ってかかる。
「そりゃ、三人はそう思ってるよ。でも殿下に伝わってるかどうかは分からないね。なぜなら今の殿下にとっては……生まれて初めて自分の知らない一面を見せて反抗した従者と、自分よりも同性の従者を優先したエルフと、最後の希望と追い縋ったもののただの業務関係だと言い切られた聖剣の乙女に見えているだろうから。それに、最近はどうも三人揃って自分に何か隠し事をしているらしい。だから、アムリスが言ったように『魔族を討伐する』という功を焦ってるのさ。」
「うそ……」
アムリスは顔を真っ青にし、少し俯く。しかし、すぐに前を向き直すと、身体強化魔法のスピードを一気に上げアルエットの方へと走り去って行った。
「あっ、ちょっと……速いって!」
一人取り残されるガステイル。頭をポリポリと掻きやれやれと苦笑いを浮かべた後、肩を押さえ首をぐるりと回す。そして、
「まあ、行くしかないよねぇ」
とはるか前方を行く二人に追いつくべく、最高速で駆け出した。
アムリスはそう言って、アルエットとガステイルと共に小屋を出る。
「ああ、気をつけて。」
ルーグはアムリスに向けて手を振ろうとするも、アルエットと目が合い、気まずそうに手を下ろす。アルエットもそんなルーグを見て、すぐに前を向きずかずかと歩き出した。
「やれやれ……」
ガステイルは呆れた様子で、苦笑いしながら首を振る。慌ててアルエットを追いかける二人の背中を見て、ルーグは唇を噛み締める。
「結局、シャガラ君は起きませんでしたね。」
「そうね。まあでもヴェレットさんなら知ってるかもしれないわ。」
「もう一度、あの家に行って聞いてみるってことですね。」
「ええ。急ぎましょう。」
アルエットはそう言って加速する。
「うわぁ、もう見えなくなったよ……」
「アルエット様……何かを焦っているかのように見えるのは私だけでしょうか。」
少しずつ速度を上げながらアムリスはそう呟く。ガステイルはアムリスの言葉を聞き、意外そうに目を細める。
「焦っている?どうしてそう思うんですか?」
「何故かは分からないんですが、昨日のルーグさんとの喧嘩も、魔族なら全て殺さなければならないって考え方も……いえ、そもそも早く魔王を討伐しなきゃいけないってご自身で言ってるのに、こんな街の事情に寄り道して矛盾してるのも、なんだからしくない気がするんです。」
「なるほど……。私よりも二人と付き合いの長いアムリスが言うのなら、恐らくそうなんでしょうね。」
「まあ、そんなに変わらないけどね。ガステイルさんは昨日の夜、ルーグさんと何を話していたんですか?」
「おっと、気付かれていたようですね。なぁに、大した話はしておりませんよ。今後の展望を少しだけ。」
はぐらかすガステイルに、アムリスは少し眉を顰める。
「私もルーグさんと同じ気持ちですよ。本当にシャガラさんが魔族と人間のハーフだと言うなら、アルエット様は彼を殺してはならないと思います。」
「盗み聞きとは、あまり感心しませんね。男同士水入らずの会話なんですから。」
「真面目に聞いてください。」
「俺はずっと真面目に聞いてますよ……。盗み聞きしたのはアムリス一人ですか?」
アムリスはハッと目を見開く。少しだけ返答に困り、口篭りながら答えた。
「ええ。でも二人の様子を見に行く直前、アルエット様に質問されたわ。」
(起きてたのか……まあ、話を聞かれなかったのは不幸中の幸いか。)
ガステイルはそっと胸を撫で下ろした。
「詳しく聞いてもいいかい?」
「まあ、何の気ない会話だと思うけど……。『アムリスはずっと、私のそばに居てくれるよね?』と。」
ガステイルは少し興奮しながらアムリスに詰め寄る。
「それで、なんと答えたんですか!」
アムリスはギョッとして戸惑うが、すぐに答え始める。
「私は……アルエット様の旅の仲間である以前に正教の人間なので、魔王を倒してからのことはどうなるか分かりません。なので『魔王を倒すまではお供いたします』と答えました。アルエット様は『そう』とだけ仰って眠りにつきました。」
ガステイルはため息をひとつついて口を開く。
「なるほどねぇ。俺ら、やっちまったみたいですね。」
「何か分かったんですか!」
「ズバリ、不安だよ。先のラルカンバラ達の戦いからずっと引きずってる不安さ。記憶がない部分以外の殿下はラルカンバラに斬られて重傷を負っただけだからね。そんな中でルーグとアムリスはゼーレン様に鍛えられ強くなっている。そのレベルアップした戦闘についていけるのだろうか……そして、戦闘でもお荷物な自分に三人はきちんとついて来てくれるのだろうか。」
「ついて行くに決まってますよ!!」
ガステイルの言葉に、アムリスは食ってかかる。
「そりゃ、三人はそう思ってるよ。でも殿下に伝わってるかどうかは分からないね。なぜなら今の殿下にとっては……生まれて初めて自分の知らない一面を見せて反抗した従者と、自分よりも同性の従者を優先したエルフと、最後の希望と追い縋ったもののただの業務関係だと言い切られた聖剣の乙女に見えているだろうから。それに、最近はどうも三人揃って自分に何か隠し事をしているらしい。だから、アムリスが言ったように『魔族を討伐する』という功を焦ってるのさ。」
「うそ……」
アムリスは顔を真っ青にし、少し俯く。しかし、すぐに前を向き直すと、身体強化魔法のスピードを一気に上げアルエットの方へと走り去って行った。
「あっ、ちょっと……速いって!」
一人取り残されるガステイル。頭をポリポリと掻きやれやれと苦笑いを浮かべた後、肩を押さえ首をぐるりと回す。そして、
「まあ、行くしかないよねぇ」
とはるか前方を行く二人に追いつくべく、最高速で駆け出した。
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