200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第六章 決戦編

決戦Ⅰ 理想を語る者

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 アルエット達による会議の翌日、ザイリェンに到着したアムリスはアルエットの宿を訪れていた。

「アムリス!会いたかったよ……」
「私もです、アルエット様!!」
「話は聞いたよ!聖剣の力を引き出せるようになったんだね!」
「は、はい……。」

 アムリスは少し戸惑いながら答え、悲しげに俯く。アルエットはその理由が分からず思わず黙ってしまったが、アムリスがすぐに口を開いた。

「アルエット様……本当にデステールと戦うんですね。」
「……勿論よ。これは私だけじゃなく、お兄ちゃんにとってのケジメでもあるから。」
「分かりました。それならもう私は反対しません。残りの四天王達も魔王もぱぱっと倒してしまって、決着をつけてしまいましょう!」
「あ、ああ……そのことなんだけどね。」

 アルエットの要領を得ない返事に首を傾げるアムリス。アルエットはバツが悪そうに目を逸らしながら続けた。

「実は、フラーヴはお兄ちゃんが倒したの……私の目の前でね。」
「そ、そうだったんですか!?でもそれなら、戦うべき敵が一人減ったならいいことじゃないですか。」
「それはそうなんだけど……あのね、アムリス。落ち着いて聞いて欲しいんだけど。」
「いや、さっきから様子がおかしいの、アルエット様だけですよ。私はずっとちゃんとお話聞いてますから。」
「あ、あはは……そうね。うん……じゃあ、言うね。」

 アルエットは愛想笑いを浮かべてそう言うと、一つふうと息を吐いて真剣な眼差しをアムリスに投げかけながら言葉を続けた。

「ガステイルが……戻ってこないかもしれない。」
「え……ど、どういうことですか?」

 アルエットの予想外の言葉に、アムリスは動揺を隠せないまま説明を求める。アルエットは神妙な表情のまま、前日にヴェトラから聞いたことをそのままアムリスに伝える。

「ガステイルはエリフィーズで弟さんと会えたらしいんだ。もともとあの子は弟と再開するために私たちに着いてきていたわけで……」
「だからって、旅の目的が果たされたから私達とは別れるってことなんですか?」
「いや……違う。もっと酷い話だ。エリフィーズで一緒に暮らしながら、その弟がガステイルに打ち明けたんだ。」
「何を……ですか?」

 アルエットは眉を顰め俯いたまま答えなかった。アムリスは全く見えてこない話に嫌な予感を抱きつつ、アルエットに続きをせがんだ。

「もったいぶらないで教えてください。ガステイルと……その弟さんに、何があったんですか!?」

 アルエットはますます眉を顰め、下唇をギリギリと噛み締める。そしてゆっくりと口を開き、アムリスの問いに答えた。

「ガステイルの弟は死んでいたそうだ……それも、二人が生き別れた150年前に既に、だ。」
「え……でもあの日、エリフィーズでラムディア達と戦ったときにいたじゃないですか!」
「……弟が死んだと受け入れられなかった兄は、残った魔力を使って弟の形をした泥人形を作ったらしい。そこに一人の死霊術士が通りがかり、その人形に弟の魂を入れて連れ帰ったらしい。」
「まさか……その死霊術士が……」

 アムリスの顔が青ざめていく。アルエットは俯いたまま小さく頷いた。

「死霊術や方術は基本的に術士が死ぬと魔法が維持できなくなり解除される……一応それを回避する方法もあるにはあるらしいんだが、彼の弟はそんな例外には当てはまらなかったらしい。フラーヴの死と同じ瞬間、ガステイルの弟はただの土に戻ってしまった……彼が少し目を離した隙に。」
「そんな……」
「それ以来、彼は家から出ていないらしい。ヴェトラ様がなんとかしようと説得を試みているらしいけど、望み薄だと言っていたわ。」
「だったら、アルエット様が直接……」
「何言ってるのよ、アムリス。」

 アルエットは顔をあげアムリスを睨みつけるように見つめる。アムリスは気圧されて押し黙ってしまった。

「そんなことしている暇はないの。裏ではフォーゲルシュタット奪還の兵が動くことも決まってる……もう私たちだけの戦いじゃなくなっているのよ。敵前逃亡する人に構っている時間はないの。」
「敵前逃亡って、そんな言い方……」
「それに、今更会いに行ってなんて言葉をかければいいのよ。フラーヴにトドメを刺したのはお兄ちゃんだけど、それももともとは私とフラーヴとの戦闘中での不意打ちなわけで、私がフラーヴを殺そうとしていたことは事実。そんな女がどんな面してあの子に会えっていうの?」
「でも……だったら明日まで待ってください!ガステイルが来ることに越したことはないですよね?」
「それも分かっているわ。だからこの後……ルーグが着いてからまた話すけど、明日の正午まで待つわ。それに間に合わないなら私達は三人でジューデスに行く……いいわね?」
「……分かりました。明日の正午ですね。」

 アムリスは一礼してアルエットの宿から出ると、そのまま街道を疾走する。やがてアムリスは息を荒らげながら辿り着いたその建物の扉をコンコンとノックする。中から現れたのは、前日にアルエットの宿を訪ねた修道士の男であった。

「これは!聖剣の乙女アムリス様……此度は何用で?」
「……エリフィーズに繋げて欲しいの。なるべく、急いで。」
「エリフィーズですか……あそこは場所が場所だけに、誰かと繋がるか分かりませんよ?」
「構わないわ。急いで地下に降りるわよ。」
「分かりました。着いてきてください。」

 男はそう言うと、アムリスと共に地下へと続く階段を降りていく。

(無駄かもしれないけど、こんな状況で黙ったままなんて、私は我慢できないわ。なんとか……なんとかしなきゃ!)

 アムリスは心を引き締め、拳に力を込めていた。
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