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第2話 結婚式
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電球が割れたような耳障りな音が聞こえた。
そこに集っているみんなが天井を見上げたが何も割れていない。
クラシカルな空間、吸血鬼のお城の上にありそうなシャンデリアが天井を飾り、赤い絨毯が床を彩っている。
白無垢姿の妹。真っ赤な口紅と白とのコントラスト。
色鮮やかな日常と違う空間。
花婿から花嫁へ盃が渡っている。
巫女が花嫁の持つ盃を酒で満たす。
ビデオを天井に向けていた茉奈は、慌てて妹の方へ向けなおす。
「絶対に取り逃さないでよ!」
妹から前日に新品のビデオカメラを渡された。あたふたしながらも設定マニュアルの基本の動作は頭に入っている。
「あれ?」
気のせい?何か変なものがビデオの中に移っている。
「悪魔?」
黒い翼の仮装をした人物がひとり。呆然とした顔をして立っている。
ビデオカメラから目を外し、目をその空間へ覗かせてみるが、そこには誰もいない。誰もいないはずの空間にビデオカメラを通して、人がひとり立っている。
まずい。結婚式の一生残るビデオにオカルト的なものが映ったら、茉奈だって嫌だ。
でも、心霊と呼ぶには、なんだかおかしな恰好だ。
怖いよりも興味の方が上回ってしまった。ズーム操作でアップにしてみる。
黒髪をひとつに束ねている。その髪ゴムが彼には不似合いだ。真っ赤ないちごがついたかわいい髪ゴム。遠い日の記憶がよみがえった。あれは、奈々子とふたりお揃いで買ってもらった髪ゴムだ。
「〇〇と約束をしたの。その約束の代わりに指輪と髪ゴムを交換した」
そう言っていた。
彼の名前は、えっと宗次郎。違うな。宗太郎。うーん。宗から抜け出したがいいような…。
「わかった!政宗!」
厳粛な空気の中、茉奈の声が響き渡った。
「宗」は合っていたけど、これは穴があったら入りたい。
親族の目が一斉に茉奈の方を向いている。みんな白い目をしているのに違いない。
下を向いている真っ赤な頬の茉奈の前にさっきの人物が姿を現した。
真っ黒な翼をもち、漆黒の瞳。髪の先には、いちごの髪ゴム。紺色の着物を着ている。山伏の恰好をしていたら天狗かとも思われたのだが、彼は何の存在なんだろう。自分の肉眼で冷静に観察をしていることに気がついたのは、周りがざわめきだしてからだった。
ビデオカメラはもう下を向いていて、自分の肉眼でしっかりと彼をみつめていた。
名前は真実を現す。
彼の名前を呼んだことで、しっかりと現実化されたということ?自分の失態に舌打ちしそうになる。
さっきまで笑っていた花嫁から、笑顔が消えている。
政宗は、妹の大事な人だった。
「遅くなった」
手を伸ばした政宗の手を妹がはらった。
「私この人と結婚をするの」
花婿の手を取ると、政宗に向って見せた。
政宗は痛みをこらえるような顔をした。
その痛みから逃れるようにして、小さく笑うと
「約束は約束だ。俺の約束の方が先だった」
そう宣言した。
「奈々子は連れていく」
花婿に向かって宣言をすると、花嫁の手を取ろうとした。
奈々子はその手を払うと、一歩下がり、花婿の後ろに隠れた。今にも泣きだしそうな顔をしている。
「指輪を持っててくれているんだろう」
「私は行かない。遠い約束は忘れたのよ」
涙を浮かべた花嫁の姿に体が動いた。
茉奈が花嫁をかばうように前に出た。
政宗の目が茉奈を捕らえた。
「シロツメクサの約束を忘れたとは言わせない。」
政宗の中指と親指がパチンと音をたてた。
「指輪を持つ者を俺の世界に連れていく。」
宣言をしたと同時に茉奈の体が宙に浮かび上がった。
「待って……」
最後に見たのは、双子の奈々子の泣き顔。
これが私の記憶に残る双子の妹の結婚式の顛末だ。
そこに集っているみんなが天井を見上げたが何も割れていない。
クラシカルな空間、吸血鬼のお城の上にありそうなシャンデリアが天井を飾り、赤い絨毯が床を彩っている。
白無垢姿の妹。真っ赤な口紅と白とのコントラスト。
色鮮やかな日常と違う空間。
花婿から花嫁へ盃が渡っている。
巫女が花嫁の持つ盃を酒で満たす。
ビデオを天井に向けていた茉奈は、慌てて妹の方へ向けなおす。
「絶対に取り逃さないでよ!」
妹から前日に新品のビデオカメラを渡された。あたふたしながらも設定マニュアルの基本の動作は頭に入っている。
「あれ?」
気のせい?何か変なものがビデオの中に移っている。
「悪魔?」
黒い翼の仮装をした人物がひとり。呆然とした顔をして立っている。
ビデオカメラから目を外し、目をその空間へ覗かせてみるが、そこには誰もいない。誰もいないはずの空間にビデオカメラを通して、人がひとり立っている。
まずい。結婚式の一生残るビデオにオカルト的なものが映ったら、茉奈だって嫌だ。
でも、心霊と呼ぶには、なんだかおかしな恰好だ。
怖いよりも興味の方が上回ってしまった。ズーム操作でアップにしてみる。
黒髪をひとつに束ねている。その髪ゴムが彼には不似合いだ。真っ赤ないちごがついたかわいい髪ゴム。遠い日の記憶がよみがえった。あれは、奈々子とふたりお揃いで買ってもらった髪ゴムだ。
「〇〇と約束をしたの。その約束の代わりに指輪と髪ゴムを交換した」
そう言っていた。
彼の名前は、えっと宗次郎。違うな。宗太郎。うーん。宗から抜け出したがいいような…。
「わかった!政宗!」
厳粛な空気の中、茉奈の声が響き渡った。
「宗」は合っていたけど、これは穴があったら入りたい。
親族の目が一斉に茉奈の方を向いている。みんな白い目をしているのに違いない。
下を向いている真っ赤な頬の茉奈の前にさっきの人物が姿を現した。
真っ黒な翼をもち、漆黒の瞳。髪の先には、いちごの髪ゴム。紺色の着物を着ている。山伏の恰好をしていたら天狗かとも思われたのだが、彼は何の存在なんだろう。自分の肉眼で冷静に観察をしていることに気がついたのは、周りがざわめきだしてからだった。
ビデオカメラはもう下を向いていて、自分の肉眼でしっかりと彼をみつめていた。
名前は真実を現す。
彼の名前を呼んだことで、しっかりと現実化されたということ?自分の失態に舌打ちしそうになる。
さっきまで笑っていた花嫁から、笑顔が消えている。
政宗は、妹の大事な人だった。
「遅くなった」
手を伸ばした政宗の手を妹がはらった。
「私この人と結婚をするの」
花婿の手を取ると、政宗に向って見せた。
政宗は痛みをこらえるような顔をした。
その痛みから逃れるようにして、小さく笑うと
「約束は約束だ。俺の約束の方が先だった」
そう宣言した。
「奈々子は連れていく」
花婿に向かって宣言をすると、花嫁の手を取ろうとした。
奈々子はその手を払うと、一歩下がり、花婿の後ろに隠れた。今にも泣きだしそうな顔をしている。
「指輪を持っててくれているんだろう」
「私は行かない。遠い約束は忘れたのよ」
涙を浮かべた花嫁の姿に体が動いた。
茉奈が花嫁をかばうように前に出た。
政宗の目が茉奈を捕らえた。
「シロツメクサの約束を忘れたとは言わせない。」
政宗の中指と親指がパチンと音をたてた。
「指輪を持つ者を俺の世界に連れていく。」
宣言をしたと同時に茉奈の体が宙に浮かび上がった。
「待って……」
最後に見たのは、双子の奈々子の泣き顔。
これが私の記憶に残る双子の妹の結婚式の顛末だ。
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