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第二章 錬磨
夜の森
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ヤナが泣きながら夜の森に走って行った頃、勇者達四人とミレア団員は村の宿屋に着いた。部屋は其々一人ずつ用意され、その後に皆で食事を済ませるとシラユキは部屋で休んでいた。
「ふぅ……ヤナ君には悪いけど、やっぱ布団で寝れるのはありがたいわね」
窓から見える暗い森を眺めながら、少し懐かしい気持ちを感じていた。
「ふふ、『姫ちゃん』か……いつぶりかしらね」
小学校にあがる前迄は、母親が私の事をそう呼んでいた。小学校に入ってからは恥ずかしくなったのか、そう呼ばないでと母親にお願いしたのだ。
「ヤナ君か……まぁいっか、なんだかんだ言って余裕ありそうな感じだったし平気でしょ。眠いし、寝よ寝よ」
一方のヤナは、森を彷徨っていた。
「しまった……一時の怒りと勢いで森に入ってしまった…現代っ子の俺が、夜の森のサバイバルとか無理だろ……」
それでも、エイダさんに笑われるのは癪にさわるので、意地でも宿に逃げ帰るつもりはなかった。
「取り敢えず不意打ちとか食いたくないから死神の囁きに集中しながら、野営できる場所探さないと。それに飯も……腹減った……」
まさかこんなサバイバルをさせられると思っていなかったので、折角の収納魔法なのに特に何も入れておらず意味がなかった。
「先ずは、少しでも開けた場所探してからだな」
先ずは暗闇に目を慣らす事をしなければならないといけなかったと、この後すぐに後悔する事になった。
「ん? なんかいるな。暗くて見えなくても、分かるのはスキルのお蔭かな。なんだろ? ん? ごばっ!?」
(なんだ!? 顔の周りにベトベトが! 息が!)
この時ヤナが気配を感知していたのは、『スライム』だった。動きは早くなく、核となる魔石を砕くか、魔法で焼くか潰すかすればすぐ倒せる魔物である。所謂初心者用の魔物という奴である。
(えっと如何すればいいんだっけ!? 苦し……息が……)
ヤナの持つ死神の囁きが、スライムから攻撃される瞬間に危険気配を感知していたが、ヤナがそれに気づかなかった為に今の事態に陥っていた。スキルは取得するだけでなく、鍛錬した上で、使いこなせていないと、ちょっとした油断で折角の力も意味がなくなってしまうという事だ。
(あぁ……もう限界……熱いのはこの際我慢だ! 詠唱省略する為に、能工巧匠を発動! って常時発動してるじゃないか俺! 慌てすぎだ落ち着け、落ち着け)
顔の目の前に一本指を立て、そこに火球を待機させた。
(いくぞ! おら! 火の玉ヘッドバットだ!)
「ピキュア!」
「あっつ!」
火球に俺の顔ごとスライムに叩きつけた。スライムの悲鳴と俺の悲鳴が同時に叫ばれたが、スライムは今のファイアーヘッドバットで、倒せたらしく地面にベトベトのゲル状が広がり中心に魔石が落ちていた。
「はぁはぁ、いきなりスライムに殺されかけるって……気にするな俺よ、生きてたんだからオッケーだ。『浄化』『応急処置』! ふぅ、これで取り敢えず大丈夫かな」
生活魔法の『応急処置』で顔の火傷を治した。軽い怪我や状態異常は治す事が出来た。如何やって検証したかって?……皆まで言わせるな……ガクガクブルブル……クックルさんコワイヨォ……
「油断なんて、とんでもなかったな。ゲームと違うんだから、スライムでも窒息させられたら死ぬわな、そりゃ。それに暗闇に慣れてないのに、顔近づけちゃいかんだろ。反省反省」
目が慣れるまでは、その場で少し待機した。死神の囁きに集中しながら、今の自分の状態も把握しなおした。
(初の魔物でかなり焦ったが、大分落ち着いてきたな。焦らなければちゃんと生への渇望も発動しているし即死はしないはず。一騎当千だって発動しているんだから、当分は疲れはしないはずだ。うん、大丈夫。落ち着けば行ける行ける)
暗闇に目が慣れた所で、再度探索を開始した。
(さっきはスライム単体だったから良かったけど、複数寄ってきたら危なかったかもな。エイダさんのいう通り、自分の気配も消すように集中しないとな。『気配断ち』的なスキル覚えたいな)
すると突然ゾクッとした悪寒を感じ振り向いた。すると目の前に既に顔を掴む程の大きな鉤爪が目に飛び込んできた。
「くっ! あぶね! なんだ!?」
バサァっという音がした方を振り返ると、小さめの熊の大きさのフクロウがおり、すぐ様森の闇に消えていった。
「あれは確か、アサシンアウルだったかな? あのでかさは暗殺者よりも、プロレスラーみたいだな」
またも悪寒を感じ取り、今度は振り向きざまに大太刀を抜刀した。
「ピギャア!」
「ふぅ、落ち着いて気配を感じてれば、何とかなる……どわっ!」
すぐ様、再度悪寒が走りしゃがみこんだ。さっきまで、頭があった場所をアサシンアウルの鉤爪が通り過ぎていた。
「もう一匹いたのか……うわ!」
今度は横っ飛びして、転がるとさっきまでのところに、またもやアサシンアウルが地面に鉤爪を突き刺していた。
「群れ……とか? マジ? ヤバイヤバイ! 取り敢えず逃げて、隠れなきゃ落ち落ち便所もいけんぞ! 疾風迅雷!」
「ピギャア! ピギャア!」
「な!? まさか仲間呼んでるわけじゃないよな?……うん、そうだよなそうだと思ったよ! ちくしょう! 戦略的撤退だからな! 覚えてろよ!」
疾風迅雷で逃げては、見つかり、逃げては見つかりを繰り返し、何とか隠れ切ることができた。そのせいで、何とか欲しかったスキルも取得する事が出来た。
【『夜目』を取得しました】
【『気配隠蔽』を取得しました】
(あっちも俺も命懸けだからだろうか、スキルを取得するのが早かった気がするな。その分しんどいけど)
森に入って既に数時間が経っており、流石に腹がやばい事になって来た。
(今度は逆にこっちから気配感知で単体でいるやつ探して狩るか)
『気配隠蔽』で自分の気配を消しながら死神の囁きで魔物の気配を探すこと数分。
(いた。あれは……ホーンラビットだったかな。あの一匹しか気配を感じないな。よし……疾風迅雷!)
「ビキャ!」
疾風迅雷で一気に加速し、駆け抜けざまに首を一刀で落とした。すぐ様収納魔法に倒したホーンラビットを回収した。その後もアサシンアウル、ホーンラビットを一体ずつ倒しては回収し、途中スライムを見つけた時は、倒してスライムの魔石を回収しておいた。
「おっ、いい感じに開けているな。ここなら見通しが良さそうだ」
野営出来そうな場所を見つけた為、薪を集めて火を起こした。魔物も知能が低いに者に関しては火にはあまり寄ってこないらしい。
「ふぅ、一息つく前に解体だけしておくか」
クックルさんの座学で解体の基礎的な知識と、実際に厨房で練習させてくれた為、最低限の解体は出来るようになっていた。
ホーンラビットの角やアサシンアウルの羽などの魔物の素材と食べれそうな部位の肉を分け、収納魔法に収納した。魔物の素材は城を出た時の生活資金の足しになればいいなと思ったからだ。
「皿も何もないから、骨つき肉焼いて食うだけだな。城でたらその辺も揃えよっと……美味っ!」
普段の食っている量が多いせいか、解体した肉を結構食べてしまった。
「また狩ればいいか。それに結構疲れたしなぁ……ん? 俺って、どうやって寝ればいいんだ? 幾ら何でもまだ、寝てる間も『気配隠蔽』と死神の囁きを発動し続けられる自信はまだないぞ……」
今は火を炊く事で仮の休息場所を作っているが、当然薪をくべなければ火は消える。
「マジか……一人で野営で寝るのってどうしたらいいんだよ……」
野営自体が初めての経験で、良い考えが浮かぶ訳もなかった。
「城でたらどうしようかなぁ……やっぱ仲間っているのかなぁ?」
こうして、城を出てからの生き方を考えながら夜は更けていった。
「バキバキッ! ギャァギャァ!」
ヤナが物思いに耽っている頃、森の更に奥の方では異変が起きていた。森の魔物が一匹の黒い靄に覆われたオーガから逃げ惑っていたのだ。
「グルォオオオオ!」
災厄を呼び寄せるかのような咆哮が、夜の森を震わせた。
「ふぅ……ヤナ君には悪いけど、やっぱ布団で寝れるのはありがたいわね」
窓から見える暗い森を眺めながら、少し懐かしい気持ちを感じていた。
「ふふ、『姫ちゃん』か……いつぶりかしらね」
小学校にあがる前迄は、母親が私の事をそう呼んでいた。小学校に入ってからは恥ずかしくなったのか、そう呼ばないでと母親にお願いしたのだ。
「ヤナ君か……まぁいっか、なんだかんだ言って余裕ありそうな感じだったし平気でしょ。眠いし、寝よ寝よ」
一方のヤナは、森を彷徨っていた。
「しまった……一時の怒りと勢いで森に入ってしまった…現代っ子の俺が、夜の森のサバイバルとか無理だろ……」
それでも、エイダさんに笑われるのは癪にさわるので、意地でも宿に逃げ帰るつもりはなかった。
「取り敢えず不意打ちとか食いたくないから死神の囁きに集中しながら、野営できる場所探さないと。それに飯も……腹減った……」
まさかこんなサバイバルをさせられると思っていなかったので、折角の収納魔法なのに特に何も入れておらず意味がなかった。
「先ずは、少しでも開けた場所探してからだな」
先ずは暗闇に目を慣らす事をしなければならないといけなかったと、この後すぐに後悔する事になった。
「ん? なんかいるな。暗くて見えなくても、分かるのはスキルのお蔭かな。なんだろ? ん? ごばっ!?」
(なんだ!? 顔の周りにベトベトが! 息が!)
この時ヤナが気配を感知していたのは、『スライム』だった。動きは早くなく、核となる魔石を砕くか、魔法で焼くか潰すかすればすぐ倒せる魔物である。所謂初心者用の魔物という奴である。
(えっと如何すればいいんだっけ!? 苦し……息が……)
ヤナの持つ死神の囁きが、スライムから攻撃される瞬間に危険気配を感知していたが、ヤナがそれに気づかなかった為に今の事態に陥っていた。スキルは取得するだけでなく、鍛錬した上で、使いこなせていないと、ちょっとした油断で折角の力も意味がなくなってしまうという事だ。
(あぁ……もう限界……熱いのはこの際我慢だ! 詠唱省略する為に、能工巧匠を発動! って常時発動してるじゃないか俺! 慌てすぎだ落ち着け、落ち着け)
顔の目の前に一本指を立て、そこに火球を待機させた。
(いくぞ! おら! 火の玉ヘッドバットだ!)
「ピキュア!」
「あっつ!」
火球に俺の顔ごとスライムに叩きつけた。スライムの悲鳴と俺の悲鳴が同時に叫ばれたが、スライムは今のファイアーヘッドバットで、倒せたらしく地面にベトベトのゲル状が広がり中心に魔石が落ちていた。
「はぁはぁ、いきなりスライムに殺されかけるって……気にするな俺よ、生きてたんだからオッケーだ。『浄化』『応急処置』! ふぅ、これで取り敢えず大丈夫かな」
生活魔法の『応急処置』で顔の火傷を治した。軽い怪我や状態異常は治す事が出来た。如何やって検証したかって?……皆まで言わせるな……ガクガクブルブル……クックルさんコワイヨォ……
「油断なんて、とんでもなかったな。ゲームと違うんだから、スライムでも窒息させられたら死ぬわな、そりゃ。それに暗闇に慣れてないのに、顔近づけちゃいかんだろ。反省反省」
目が慣れるまでは、その場で少し待機した。死神の囁きに集中しながら、今の自分の状態も把握しなおした。
(初の魔物でかなり焦ったが、大分落ち着いてきたな。焦らなければちゃんと生への渇望も発動しているし即死はしないはず。一騎当千だって発動しているんだから、当分は疲れはしないはずだ。うん、大丈夫。落ち着けば行ける行ける)
暗闇に目が慣れた所で、再度探索を開始した。
(さっきはスライム単体だったから良かったけど、複数寄ってきたら危なかったかもな。エイダさんのいう通り、自分の気配も消すように集中しないとな。『気配断ち』的なスキル覚えたいな)
すると突然ゾクッとした悪寒を感じ振り向いた。すると目の前に既に顔を掴む程の大きな鉤爪が目に飛び込んできた。
「くっ! あぶね! なんだ!?」
バサァっという音がした方を振り返ると、小さめの熊の大きさのフクロウがおり、すぐ様森の闇に消えていった。
「あれは確か、アサシンアウルだったかな? あのでかさは暗殺者よりも、プロレスラーみたいだな」
またも悪寒を感じ取り、今度は振り向きざまに大太刀を抜刀した。
「ピギャア!」
「ふぅ、落ち着いて気配を感じてれば、何とかなる……どわっ!」
すぐ様、再度悪寒が走りしゃがみこんだ。さっきまで、頭があった場所をアサシンアウルの鉤爪が通り過ぎていた。
「もう一匹いたのか……うわ!」
今度は横っ飛びして、転がるとさっきまでのところに、またもやアサシンアウルが地面に鉤爪を突き刺していた。
「群れ……とか? マジ? ヤバイヤバイ! 取り敢えず逃げて、隠れなきゃ落ち落ち便所もいけんぞ! 疾風迅雷!」
「ピギャア! ピギャア!」
「な!? まさか仲間呼んでるわけじゃないよな?……うん、そうだよなそうだと思ったよ! ちくしょう! 戦略的撤退だからな! 覚えてろよ!」
疾風迅雷で逃げては、見つかり、逃げては見つかりを繰り返し、何とか隠れ切ることができた。そのせいで、何とか欲しかったスキルも取得する事が出来た。
【『夜目』を取得しました】
【『気配隠蔽』を取得しました】
(あっちも俺も命懸けだからだろうか、スキルを取得するのが早かった気がするな。その分しんどいけど)
森に入って既に数時間が経っており、流石に腹がやばい事になって来た。
(今度は逆にこっちから気配感知で単体でいるやつ探して狩るか)
『気配隠蔽』で自分の気配を消しながら死神の囁きで魔物の気配を探すこと数分。
(いた。あれは……ホーンラビットだったかな。あの一匹しか気配を感じないな。よし……疾風迅雷!)
「ビキャ!」
疾風迅雷で一気に加速し、駆け抜けざまに首を一刀で落とした。すぐ様収納魔法に倒したホーンラビットを回収した。その後もアサシンアウル、ホーンラビットを一体ずつ倒しては回収し、途中スライムを見つけた時は、倒してスライムの魔石を回収しておいた。
「おっ、いい感じに開けているな。ここなら見通しが良さそうだ」
野営出来そうな場所を見つけた為、薪を集めて火を起こした。魔物も知能が低いに者に関しては火にはあまり寄ってこないらしい。
「ふぅ、一息つく前に解体だけしておくか」
クックルさんの座学で解体の基礎的な知識と、実際に厨房で練習させてくれた為、最低限の解体は出来るようになっていた。
ホーンラビットの角やアサシンアウルの羽などの魔物の素材と食べれそうな部位の肉を分け、収納魔法に収納した。魔物の素材は城を出た時の生活資金の足しになればいいなと思ったからだ。
「皿も何もないから、骨つき肉焼いて食うだけだな。城でたらその辺も揃えよっと……美味っ!」
普段の食っている量が多いせいか、解体した肉を結構食べてしまった。
「また狩ればいいか。それに結構疲れたしなぁ……ん? 俺って、どうやって寝ればいいんだ? 幾ら何でもまだ、寝てる間も『気配隠蔽』と死神の囁きを発動し続けられる自信はまだないぞ……」
今は火を炊く事で仮の休息場所を作っているが、当然薪をくべなければ火は消える。
「マジか……一人で野営で寝るのってどうしたらいいんだよ……」
野営自体が初めての経験で、良い考えが浮かぶ訳もなかった。
「城でたらどうしようかなぁ……やっぱ仲間っているのかなぁ?」
こうして、城を出てからの生き方を考えながら夜は更けていった。
「バキバキッ! ギャァギャァ!」
ヤナが物思いに耽っている頃、森の更に奥の方では異変が起きていた。森の魔物が一匹の黒い靄に覆われたオーガから逃げ惑っていたのだ。
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