85 / 165
第五章 刀と竜
刀工
しおりを挟む
「ふぅ、中々良い汗かけたな」
俺は一人、村の入り口で呟いた。
盗賊から商人一家を助けた所から、兎に角ダッシュで村まで急いで来たのだ。
「マスター、三人を思いっきり引き離してきましたが? それに、そこまで必死に逃げないで下さい。みっともないですよ」
「……まぁ、ここまで一本道だし迷うことないだろ。万が一、何かあったら呼出があるしな。先に『刀工』の居場所を、探しておこう」
俺は村の中に入ると、少し驚いた。
「何かやけに人が多いな。しかも冒険者っていうより、武芸者って感じの雰囲気なんだが、いつもこんな感じなのか?」
俺が村の入り口から入って直ぐ、その光景に驚いていると、村の門番らしき人間に声をかけられた。
「よう、あんちゃん、そのナリだと、冒険者になったばかりってとこだろ? 近々この村で闘剣大会ってのがあってな、そのお陰で今は賑わってるのさ」
話を聞いてみると、あと二週間程で四年に一度の闘剣大会と呼ばれるものが開かれるらしい。鍛冶屋と冒険者や武芸者がタッグを組んで挑む大会で、この大会で良い成績を収めることは、一種のステータスの様なものになっているという。
「ロイド伯爵様も、大会を見に来るしな。士官したい者が、力を示す良い機会って所だ。まぁ、あんちゃんは関係なさそうだがな、ハッハッハ」
俺は、オリンピックみたいなものかと納得し、肝心の事を尋ねた。
「この村に『刀工』が居ると聞いてきたんだが、何処にいけば会える?」
「『刀工』?」
「え? タケミという人だと聞いてるんだが、もしかして居ないのか?」
タケミという名を出すと、門番は納得顔になった。
「あぁ、タケミの隠居爺か。そんな大層な名で言うもんだから、わかんなかったぜ。あんな爺さんになんか用なのか?」
「知り合いの爺さんからの紹介でな。武器を仕立てて貰えないかと、頼みに来たんだ」
「武器? アッハッハ! そうか! まぁ、あんちゃんぐらいの初心者なら、アレくらいが丁度いいかもな! まぁ、兎に角行ってみな。この道を真っ直ぐ行って、突き当りを右に曲がった先の村外れに、居るはずだ」
何故か爆笑されたが、ここらで見かけない三人組の少女達が来たら、俺が先に行っている事と、タケミの隠居爺さんの家までの道を伝えて貰う事をお願いした。門番は、快く快諾してくれた為、俺は教えられた道を歩き出した。
「闘剣大会ってのが迫ってるせいか、空気がピリピリしているな」
「マスター、私は周りからはただのサングラスにしか見えませんから、ブツブツ独り言を行っていると、危ない人に見えますよ?」
「ちょいちょい入れてくるその毒は、何なの?」
「好きなくせにぃ」
「……お前の俺の、評価って何なの?」
「苛められ弄られ叩かれることに、喜びを感じる変態ヘタレマスターでは?」
「ふざけんな! お前、絶対叩き斬ってやるからな!」
俺は、大声で目にかけてあるサングラスに向かって、文句を言った。
「「「あぁ?」」」
「ほら、マスター、お約束ですよ」
俺の前を歩いていた武芸者の集団に、一斉に睨まれた。だが、俺の格好を一瞥すると鼻で笑いながら、大声で馬鹿にされた。
「なんだ、雑魚か。粋がるのは部屋の中だけにしとけよ? アッハッハ」
「俺の宿の隣部屋とかでは、やめてくれよ? 笑い死にするからな、ブワッハッハッハ」
「「「ギャハハハ」」」
その言葉に、周りにいた十数人いた武芸者達も一斉に笑い出した。
「フフフフフフ……ウメテヤル」
俺は、嗤いながら呟いた。
「あなた、先に行ったんじゃなかったの?」
「主様、ソレお花じゃないですよ?」
「……ソレもまた、有りかしら……」
俺は道の両脇を彩る様に、でかい薄汚れた鼻を植えていた。
「ふぅ、良い汗かいたな。さっ、みんな揃ったことだし、そろそろ行くか」
その様子を見ていた村民や、運良く笑わなかった武芸者は口々に言葉を発した。
「『鬼の園芸』…」
俺たち一行は、村外れにポツンと佇む家に着いた。
俺は玄関前に立ち、声をかける。
「ごめんくださぁい! アメノ爺さんの紹介で来た者ですがぁ、どなたか、いらっしゃいませんかぁ!」
少し待っていると、誰かが歩いてくる気配が近づいて来た。
「はぁい、何のご用ですかぁ?」
ガラガラと玄関の引き戸が開き、作業着を来た女性が現れた。
「「「「………」」」」
「何か?」
俺たちは、一瞬固まったが俺は意地で目線を上げて挨拶をする。
「え、えっと、そうそう! 頼みがあって、やって来たんだ」
「私と同じくらいかしら?」
「作業着が……苦しそう」
「何を食べたら、あんなに大きく……」
後ろで、初対面の女性に失礼極まりない呟きをしている三人を無視して、必死に相手の顔より目線を下げない様に話を続ける。
「知り合いの爺さんからの、紹介でな。刀を打ってもらえないか頼みに来たんだ」
「刀? ここは金物屋よ? ほら」
その女性は玄関の上にかかっている看板を指差した。
そこには確かに、『カヤミ金物屋』と看板に文字が書いてあった。
「あれ?……カヤミってのは、あんたか?」
「えぇ、私がカヤミよ」
「確かにあんたは金具道具屋かもしらんが、俺は『刀工』のタケミという爺さんに用があるんだが?」
その言葉に一瞬眉間に皺を寄せ、苛立ったような表情を見せたが、すぐさま普通の表情になった。
「あと、これは俺の師匠から『刀工』への紹介状だ。一先ず、これを渡してくれないか?」
「……えぇ、いいわよ」
カヤミは、少し考えた後に、了承してくれた。
「じゃあ、また明日の朝に来る事も伝えといてくれ」
俺はそう言うと、もと来た道を引き返し、村の中心部へと歩き出した。
「どう思う?」
「そうね、少し気になる目をしてたわね」
「やっぱり、そう思うか……何だかなぁ、『刀工』の引退とか抜きにして、面倒な事になりそうな予感がしてならないんだが」
刀工への用事があると伝えた時のカヤミの様子は、怒りと苛立ちと言った感じが一瞬だけ表情に表れた。直ぐに表情は戻ったが、目だけはその感情を隠しきれない様子だった。
「主様が渡したアメノ様の紹介状は、ちゃんと渡して貰えるでしょうか?」
「そこまで陰湿な感じでも無かったし、渡してはくれると思いたいけどな」
先ずは紹介状を渡してくれる事を、信じる事にした。
「ブラウンの髪に、目鼻立のしっかりした美女でありながら、作業服を押し上げるほどのエディスにも匹敵するアレの存在感……同じ人族であるのに、何を食べたらあれほどのモノになるのでしょうか?」
「知らんがな……セアラ? お前、どんどん酷くなってないか? 前は、そんな子じゃ無かったよな? どうした? 何があった?」
俺が、あまりのセアラのポンコツぶりに狼狽していると、他の二人が俺の目を見つめる。
「あ? 俺じゃな……はっ! ヤナビ! お前か!」
「マスター、黙秘権を行使したいのですが……ただ、思った以上に王女と言うのは、素直過ぎる人種みたいで……」
「やめろ! 本気で『失敗しました』みたいな声出すな! 色々怖い!」
その日の宿屋での部屋割りでは、三人がヤナビと一緒に寝たいと言い出したが、先程のセアラの件があった為、却下した。
「そんな!? ヤナ様、ご無体な! ヤナビ様に勉強の続きを、教えてもらわないと!」
「ダメだ! 明らかにセラは、何かの影響を受けすぎだ! エイダに続き、ヤナビにまでも変な教育受けたら、後戻り出来なくなるだろ!」
「そんなぁ!?」
俺は、エディスとアシェリにアイコンタクトをして、セラをがっしりホールドして貰い、自分たちの部屋へと連れて行って貰った。
「マジで……どうするのアレ……」
「なんか……すみません……マスター……」
「謝るな……泣きたくなる……」
そして、次の日の朝、いつも通りに村内をジョギングし、朝食を食べた後に再度『刀工』の家に訪れた。
「ごめんくださぁい」
俺が、昨日と同じように声をかけると、昨日とは違う気配が近づいて来た。
「来たか、アメノの奴が書状に書いていたあのヤナだな?」
「あぁ、どんな事が書いてあったか知らないが、そのヤナだ。あんたが、『刀工』のタケミか?」
アメノ爺さんと同じくらいの老人が、そこに立っていた。アメノ爺さんと違い、頭は輝いていたが。
「あぁ、引退してるが、儂がタケミだ。ここでもなんだ、中に上がれ。後ろの三人もついてきていいぞ」
中に入り、案内された部屋は畳の部屋だった。
「畳か……」
「やはり、知っておったか。アメノの奴が書いてあった通りなんだな?」
タケミ爺さんは、ちらりと三人の方を伺いながら、聞いてくる。
「この三人は、俺の素性を知っている仲間だ。気を使わなくても、大丈夫だ」
「パートナー『契約』をしている、エディスです」
「奴隷『契約』をしている、アシェリです」
「同伴『契約』をしている、セラです」
「何故、そこを強調してくる……」
「お前さん、こんなべっぴんと三人も契約してるのか、中々豪気だな」
タケミ爺さんが、ニヤニヤしながら茶化してくるが、スルーして本題に入る。
「それはいいから、どうなんだ? 俺の刀を打ってくれるのか?」
「そりゃ、無理だな」
「即答かよ……もうちょっと交渉の余地はないのか?」
俺が、若干落ち込みながら食い下がると、タケミ爺さんが口を開いた。
「お前さん持っている『烈風』と『涼風』を、見せてみろ」
俺は、二刀をタケミ爺さんに手渡した。タケミ爺さんは黙って、一本ずつ鞘から抜いてじっくり見ていた。
「こりゃ、刀がお前さんの力に耐えられとらんな。儂は、この程度の刀しか打てん。じゃが、お前さんにはこれ以上の刀がないと全力は出せん。ほらな?儂じゃ無理じゃろう?」
丁度そこへ、お茶らしきものを持ってカヤミが部屋に入ってきた。
「タケミ爺さんじゃ無理ってことは、他の人間なら出来るかも知れんのか?」
俺は、カヤミを一瞥しながらタケミ爺さん問う。
「そうじゃの、材料さえ揃えば、カヤミなら……」
「無理よ。お師匠が出来ないものを、私が出来る訳ないじゃない」
一瞬にして、その場がピリピリした空気に染まる。
「私は、決して二人を超えることなんて出来ない」
それだけ言うと、カミヤは部屋を静かに出て行ってしまった。
俺は、カミヤ爺さんに目線で説明を促した。
カミヤ爺さんは、深い息を吐き出した後に、静かに口を開いた。
そして、鍛治師と二人の弟子の話を語り出した。
一人の少女の、希望と夢が失われるまでの物語を
俺は一人、村の入り口で呟いた。
盗賊から商人一家を助けた所から、兎に角ダッシュで村まで急いで来たのだ。
「マスター、三人を思いっきり引き離してきましたが? それに、そこまで必死に逃げないで下さい。みっともないですよ」
「……まぁ、ここまで一本道だし迷うことないだろ。万が一、何かあったら呼出があるしな。先に『刀工』の居場所を、探しておこう」
俺は村の中に入ると、少し驚いた。
「何かやけに人が多いな。しかも冒険者っていうより、武芸者って感じの雰囲気なんだが、いつもこんな感じなのか?」
俺が村の入り口から入って直ぐ、その光景に驚いていると、村の門番らしき人間に声をかけられた。
「よう、あんちゃん、そのナリだと、冒険者になったばかりってとこだろ? 近々この村で闘剣大会ってのがあってな、そのお陰で今は賑わってるのさ」
話を聞いてみると、あと二週間程で四年に一度の闘剣大会と呼ばれるものが開かれるらしい。鍛冶屋と冒険者や武芸者がタッグを組んで挑む大会で、この大会で良い成績を収めることは、一種のステータスの様なものになっているという。
「ロイド伯爵様も、大会を見に来るしな。士官したい者が、力を示す良い機会って所だ。まぁ、あんちゃんは関係なさそうだがな、ハッハッハ」
俺は、オリンピックみたいなものかと納得し、肝心の事を尋ねた。
「この村に『刀工』が居ると聞いてきたんだが、何処にいけば会える?」
「『刀工』?」
「え? タケミという人だと聞いてるんだが、もしかして居ないのか?」
タケミという名を出すと、門番は納得顔になった。
「あぁ、タケミの隠居爺か。そんな大層な名で言うもんだから、わかんなかったぜ。あんな爺さんになんか用なのか?」
「知り合いの爺さんからの紹介でな。武器を仕立てて貰えないかと、頼みに来たんだ」
「武器? アッハッハ! そうか! まぁ、あんちゃんぐらいの初心者なら、アレくらいが丁度いいかもな! まぁ、兎に角行ってみな。この道を真っ直ぐ行って、突き当りを右に曲がった先の村外れに、居るはずだ」
何故か爆笑されたが、ここらで見かけない三人組の少女達が来たら、俺が先に行っている事と、タケミの隠居爺さんの家までの道を伝えて貰う事をお願いした。門番は、快く快諾してくれた為、俺は教えられた道を歩き出した。
「闘剣大会ってのが迫ってるせいか、空気がピリピリしているな」
「マスター、私は周りからはただのサングラスにしか見えませんから、ブツブツ独り言を行っていると、危ない人に見えますよ?」
「ちょいちょい入れてくるその毒は、何なの?」
「好きなくせにぃ」
「……お前の俺の、評価って何なの?」
「苛められ弄られ叩かれることに、喜びを感じる変態ヘタレマスターでは?」
「ふざけんな! お前、絶対叩き斬ってやるからな!」
俺は、大声で目にかけてあるサングラスに向かって、文句を言った。
「「「あぁ?」」」
「ほら、マスター、お約束ですよ」
俺の前を歩いていた武芸者の集団に、一斉に睨まれた。だが、俺の格好を一瞥すると鼻で笑いながら、大声で馬鹿にされた。
「なんだ、雑魚か。粋がるのは部屋の中だけにしとけよ? アッハッハ」
「俺の宿の隣部屋とかでは、やめてくれよ? 笑い死にするからな、ブワッハッハッハ」
「「「ギャハハハ」」」
その言葉に、周りにいた十数人いた武芸者達も一斉に笑い出した。
「フフフフフフ……ウメテヤル」
俺は、嗤いながら呟いた。
「あなた、先に行ったんじゃなかったの?」
「主様、ソレお花じゃないですよ?」
「……ソレもまた、有りかしら……」
俺は道の両脇を彩る様に、でかい薄汚れた鼻を植えていた。
「ふぅ、良い汗かいたな。さっ、みんな揃ったことだし、そろそろ行くか」
その様子を見ていた村民や、運良く笑わなかった武芸者は口々に言葉を発した。
「『鬼の園芸』…」
俺たち一行は、村外れにポツンと佇む家に着いた。
俺は玄関前に立ち、声をかける。
「ごめんくださぁい! アメノ爺さんの紹介で来た者ですがぁ、どなたか、いらっしゃいませんかぁ!」
少し待っていると、誰かが歩いてくる気配が近づいて来た。
「はぁい、何のご用ですかぁ?」
ガラガラと玄関の引き戸が開き、作業着を来た女性が現れた。
「「「「………」」」」
「何か?」
俺たちは、一瞬固まったが俺は意地で目線を上げて挨拶をする。
「え、えっと、そうそう! 頼みがあって、やって来たんだ」
「私と同じくらいかしら?」
「作業着が……苦しそう」
「何を食べたら、あんなに大きく……」
後ろで、初対面の女性に失礼極まりない呟きをしている三人を無視して、必死に相手の顔より目線を下げない様に話を続ける。
「知り合いの爺さんからの、紹介でな。刀を打ってもらえないか頼みに来たんだ」
「刀? ここは金物屋よ? ほら」
その女性は玄関の上にかかっている看板を指差した。
そこには確かに、『カヤミ金物屋』と看板に文字が書いてあった。
「あれ?……カヤミってのは、あんたか?」
「えぇ、私がカヤミよ」
「確かにあんたは金具道具屋かもしらんが、俺は『刀工』のタケミという爺さんに用があるんだが?」
その言葉に一瞬眉間に皺を寄せ、苛立ったような表情を見せたが、すぐさま普通の表情になった。
「あと、これは俺の師匠から『刀工』への紹介状だ。一先ず、これを渡してくれないか?」
「……えぇ、いいわよ」
カヤミは、少し考えた後に、了承してくれた。
「じゃあ、また明日の朝に来る事も伝えといてくれ」
俺はそう言うと、もと来た道を引き返し、村の中心部へと歩き出した。
「どう思う?」
「そうね、少し気になる目をしてたわね」
「やっぱり、そう思うか……何だかなぁ、『刀工』の引退とか抜きにして、面倒な事になりそうな予感がしてならないんだが」
刀工への用事があると伝えた時のカヤミの様子は、怒りと苛立ちと言った感じが一瞬だけ表情に表れた。直ぐに表情は戻ったが、目だけはその感情を隠しきれない様子だった。
「主様が渡したアメノ様の紹介状は、ちゃんと渡して貰えるでしょうか?」
「そこまで陰湿な感じでも無かったし、渡してはくれると思いたいけどな」
先ずは紹介状を渡してくれる事を、信じる事にした。
「ブラウンの髪に、目鼻立のしっかりした美女でありながら、作業服を押し上げるほどのエディスにも匹敵するアレの存在感……同じ人族であるのに、何を食べたらあれほどのモノになるのでしょうか?」
「知らんがな……セアラ? お前、どんどん酷くなってないか? 前は、そんな子じゃ無かったよな? どうした? 何があった?」
俺が、あまりのセアラのポンコツぶりに狼狽していると、他の二人が俺の目を見つめる。
「あ? 俺じゃな……はっ! ヤナビ! お前か!」
「マスター、黙秘権を行使したいのですが……ただ、思った以上に王女と言うのは、素直過ぎる人種みたいで……」
「やめろ! 本気で『失敗しました』みたいな声出すな! 色々怖い!」
その日の宿屋での部屋割りでは、三人がヤナビと一緒に寝たいと言い出したが、先程のセアラの件があった為、却下した。
「そんな!? ヤナ様、ご無体な! ヤナビ様に勉強の続きを、教えてもらわないと!」
「ダメだ! 明らかにセラは、何かの影響を受けすぎだ! エイダに続き、ヤナビにまでも変な教育受けたら、後戻り出来なくなるだろ!」
「そんなぁ!?」
俺は、エディスとアシェリにアイコンタクトをして、セラをがっしりホールドして貰い、自分たちの部屋へと連れて行って貰った。
「マジで……どうするのアレ……」
「なんか……すみません……マスター……」
「謝るな……泣きたくなる……」
そして、次の日の朝、いつも通りに村内をジョギングし、朝食を食べた後に再度『刀工』の家に訪れた。
「ごめんくださぁい」
俺が、昨日と同じように声をかけると、昨日とは違う気配が近づいて来た。
「来たか、アメノの奴が書状に書いていたあのヤナだな?」
「あぁ、どんな事が書いてあったか知らないが、そのヤナだ。あんたが、『刀工』のタケミか?」
アメノ爺さんと同じくらいの老人が、そこに立っていた。アメノ爺さんと違い、頭は輝いていたが。
「あぁ、引退してるが、儂がタケミだ。ここでもなんだ、中に上がれ。後ろの三人もついてきていいぞ」
中に入り、案内された部屋は畳の部屋だった。
「畳か……」
「やはり、知っておったか。アメノの奴が書いてあった通りなんだな?」
タケミ爺さんは、ちらりと三人の方を伺いながら、聞いてくる。
「この三人は、俺の素性を知っている仲間だ。気を使わなくても、大丈夫だ」
「パートナー『契約』をしている、エディスです」
「奴隷『契約』をしている、アシェリです」
「同伴『契約』をしている、セラです」
「何故、そこを強調してくる……」
「お前さん、こんなべっぴんと三人も契約してるのか、中々豪気だな」
タケミ爺さんが、ニヤニヤしながら茶化してくるが、スルーして本題に入る。
「それはいいから、どうなんだ? 俺の刀を打ってくれるのか?」
「そりゃ、無理だな」
「即答かよ……もうちょっと交渉の余地はないのか?」
俺が、若干落ち込みながら食い下がると、タケミ爺さんが口を開いた。
「お前さん持っている『烈風』と『涼風』を、見せてみろ」
俺は、二刀をタケミ爺さんに手渡した。タケミ爺さんは黙って、一本ずつ鞘から抜いてじっくり見ていた。
「こりゃ、刀がお前さんの力に耐えられとらんな。儂は、この程度の刀しか打てん。じゃが、お前さんにはこれ以上の刀がないと全力は出せん。ほらな?儂じゃ無理じゃろう?」
丁度そこへ、お茶らしきものを持ってカヤミが部屋に入ってきた。
「タケミ爺さんじゃ無理ってことは、他の人間なら出来るかも知れんのか?」
俺は、カヤミを一瞥しながらタケミ爺さん問う。
「そうじゃの、材料さえ揃えば、カヤミなら……」
「無理よ。お師匠が出来ないものを、私が出来る訳ないじゃない」
一瞬にして、その場がピリピリした空気に染まる。
「私は、決して二人を超えることなんて出来ない」
それだけ言うと、カミヤは部屋を静かに出て行ってしまった。
俺は、カミヤ爺さんに目線で説明を促した。
カミヤ爺さんは、深い息を吐き出した後に、静かに口を開いた。
そして、鍛治師と二人の弟子の話を語り出した。
一人の少女の、希望と夢が失われるまでの物語を
0
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛
タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。
しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。
前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。
魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話のパート2、ここに開幕!
【ご注意】
・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。
なるべく読みやすいようには致しますが。
・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。
勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。
・所々挿し絵画像が入ります。
大丈夫でしたらそのままお進みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる