110 / 165
第六章 偽り
邪魔者
しおりを挟む
屋敷の裏口の護衛についてから暫くすると、完全に日が暮れ、辺りを闇が覆っていた。
「そこだけが、何度やっても侵入出来ないんだな?」
「はい、マスター。屋敷内のどの部屋に置いても、火鼠は侵入でき、地図の作成が完了しましたが、あの部屋のみ侵入不可でした」
屋敷内に放った火鼠達による屋敷の中の調査は、ある部屋を残して完了した。
「ライの部屋か……」
「私の部屋が、どうかしたのですか?」
「!?」
俺は急に背後から、声をかけられた事に戦慄しながらも、裏口の扉を開けているライお嬢様に対して、出来るだけ落ち着きながら声をかける。
「こんな裏口に何のご用でしょうか? もう闇が広がり、いつ予告状を出した者が襲ってくるかもわかりません。屋敷の中に、すぐにお戻りください」
「ヤナ様……でしたよね? そんな畏まった話し方はしないで下さい。私は一介の商人の娘に過ぎません。皆様のような上級冒険者の方にそんな話し方をされては、恐縮してしまいます」
ライは、少し困った顔をしながら、そう俺に告げてくる。
「そうか、わかった。ここは、屋敷の外だ。早く屋敷の中に入り、護衛に護って貰え。それに、護衛の冒険者はどうした?」
「ふふ、護衛の方がずっと近くにいると、息が詰まって疲れてしまって……少し、一人のなりたいとお願いしたら、皆さん快く承諾してくれました」
「……そうか、だがここは屋敷の内でも最も暗い場所だ。早く戻るんだな」
「そうですね。もう少し、ヤナ様とお話がしたかったですが……そんな怖い刀を二本も向けられたら、帰るしかありませんね」
「あぁ? 刀?」
俺は、一瞬ライの言っている事が、理解できなかった。
「それでは、是非とも私を護ってください。よろしくお願いいたします」
ライは、俺に向かって優雅に一礼し微笑みかけると、屋敷の中へと戻っていった。
「マスター……気づいていなかったんですか?『天』『地』を構えていたことに」
「あぁ……ライに言われるまで、構えている事に気付かなかった……」
何より驚いたのは、声をかけられるまで、裏口が開く音もライが後ろに立った気配も、何も感じなかった事だ。
「ライ……か…」
いつの間にか、背中と手の平に汗をかいている事に気付き、一度深く呼吸をしながら、俺は屋敷を見ながら呟いたのだった。
「ヤナ……ね……」
私は、あの男が最初に私を見た時に、魅惑に抵抗した事が気になり、今度は直接会いに行ったのだ。
屋敷の裏口の外側で、屋敷の外を警戒していたあの男の後ろへ気配を遮断して近くと、あの男が私の部屋の事を呟いたので、思わず声をかけてしまった。
しかも、声をかけるとすぐさま距離を取り、恐ろしい程の力を放つ二振りの刀を構えていた。
明らかにあの刀は異常だ。そんな刀を二振りも持つあの男は、何者だと言うのか。
「他の子達なら、知っているかしらね。こういう時は、『目と耳』の情報を共有出来ないのは不便ね」
私は、少しあの男を気に留めながらも、あの程度なら問題ないと判断し、思考の外へと追いやった。
「ヤナビ、そろそろ日が変わる頃か?」
「はい、マスター。あと五分程で日が変わります」
「屋敷の内の地図は、このまま常時サングラス画面に表示させておいてくれ」
屋敷内の地図を視覚の端に隠しながら、裏口の前で外を警戒していたその時だった。
「マスター! 不明の印が、屋敷正面の門に現れました!」
「あぁ、分かっている! 正面に向かうぞ!」
俺とヤナビが、屋敷の地図に現れた不明の印に向かうべく裏口扉を開けて、屋敷の中を素通りしようとした時だった。
「ぐっ! なんだ! 扉が開かんぞ!」
「マスター、扉どころではありません! 屋敷の地図が、切り離されました! この空間自体が遮断されたと予測されます!」
「どうなっているんだ!」
俺とヤナビが、遮断された空間の境目の壁を調べ始めて数分が経とうとした時に、再び元の空間に戻された。
「マスター! 屋敷の内の地図が、再度表示されました! 再び空間が元に戻ったようです!」
「くそ! 正面に向かうぞ!」
既に不明の印は、屋敷内から消えていたが、大量の冒険者の印が動かなくなっていた。すぐさま、俺は屋敷の正面へと駆け出した。
そして、屋敷の正面玄関から飛び出すと、屋敷の中にいたAランクの冒険者も含めて地面に倒れ伏していた。
「おいおい、どうなってんだこりゃ?」
俺が、その様子に困惑していると、片隅で尻餅をついている屋敷の主であるキンナリと執事セバスを見つけ、駆け寄った。
「一体、何があったんだ!」
「ライが……ライが、賊に連れ去られた……」
キンナリが、放心した様子でそれだけを繰り返すように、何度も呟いていた。
要領を得ない為、執事セバスにどういう事だと尋ねた。
「まず賊は、正面に集まっていたCランク以下の冒険者を軒並み蹴散らし、そのまま敷地内へと侵入してきました。騒ぎを聞きつけた屋敷内にいた上級冒険者の方々が屋敷の外へと飛び出し、一斉に攻撃を仕掛けましたが、一瞬にして返り討ちに遭ってしまいました」
「一瞬で? Aランクもいたのに、連携すればそこそこ対応出来そうなものだが」
「連携も何もなく、ただただ一斉に攻撃しかしておりませんでしたので、躱されすぐさま制圧されてしまった様でした」
その執事セバスの言葉に違和感を感じながらも、話を聞き続ける。
「そして、ちょうど全員が叩き伏せられた時に、あそこのバルコニーにライお嬢様が現れたのです。そして、そのまま賊に……」
「は? ちょっと待て! ライがここからよく見えるバルコニーに、出てきただと? 何故そんなことをしたんだ!」
「それは、私にも分かりかねますが、恐らく冒険者の皆様方が叩き伏せられた時に、場が静まり帰りましたので、ライお嬢様は冒険者の方々が勝利したと思い、バルコニーへと出てきてしまったのではないでしょうか?」
自分が狙われていることが分かっているのに、容易にそんな場所に出てくる訳がないだろうと思うが、取り敢えず話を最後まで聞き終えた。そして、冒険者の様子を見に行こうとした時に、放心していたキンナリが俺に向かって叫び声を上げた。
「おい! 貴様ぁ! お前だけ賊が来た時に、いなかったがどこにいたのだ!」
「俺はその時、裏口で何者かによる妨害を受けて、身動きがとれなかったんだよ」
「ほほう、何者かだと? もしやお前、あの賊の仲間ではないのか?」
「はぁ? 何でそうなるんだよ……」
俺が馬鹿らしいと言わんばかりに、ため息を吐きながらそう呟くが、キンナリは尚も正気を失った様な目で言葉吐き出し続ける。
「貴様は、裏で賊と繋がり、この屋敷の警護の情報等を渡しておったのだろう! ライが攫われてから、ここへと駆けつけてきたのが、動かぬ証拠ではないか!」
「いやいやいや、まったく証拠になってないだろそれ」
俺が呆れる様に、呟くも何故か執事セバスまでもが、キンナリの言葉に同意する。
「確かに旦那様、おっしゃる通りです。この男が駆けつけてきたのは、正に賊が去っていった瞬間でした!」
「おいおいおい……」
すると、賊に叩きのめされてきた冒険者達までもが、起き上がった途端に、俺への追求を始めた。
「おい! 貴様! 護衛に癖に、どこにいたのだ!」
「だから、自分の持ち場にいたが、どっかの誰かに邪魔されて、ここにすぐに来れなかったんだよ。それにお前ら、賊に叩きのめされた癖に、やけに元気がいいな」
「五月蝿い! 今丁度、キンナリ様達との会話が聞こえたが、正に言う通りにお前は、賊の仲間にしか思えん!」
「いやいやいや、何故にそうなるんだ」
何故か俺が犯人の仲間とされそうになりながらも、冒険者達の目を見ると、キンナリと同様にして正気を失っている様に見えた。
すると、キンナリが突然大声を出し、冒険者達に餌をまいた。
「賊は去り際にこう言っていた! 『この娘を助けたければ、探すのだな! 猶予は明日の日没だ。それを過ぎれば、分かっているだろう?』と、明日の日没までにライを助けだした者に、恋仲となる事を許可しよう!」
「「「おぉおお!」」」
「明らかに、おかしいだろ。その賊が言ってること」
俺の呆れる様な呟きは、冒険者の狂乱する叫び声にかき消された。
「そしてだ、このヤナという冒険者を打ち取った者に金貨百枚を討伐報酬として支払う! 憎き賊の仲間だ! 生死を問わずだ!」
「はぁ!?」
「「「おぉおおお!」」」
俺が、驚きの声を上げると同時に、冒険者の雄叫びが聞こえ、すぐさま俺に襲いかかろうとしてきた為、送風で砂埃巻き上げ、その隙に神出鬼没で気配を消し、その場を取り敢えず脱出した。
「どうなってんだ? つまらん筋書きで、茶番を見せられているみたいだな」
「しかもマスターは、その茶番にさえお邪魔らしいですね」
「あぁ、どうしても俺にこの筋書きを、邪魔して欲しくないらしい」
俺とヤナビはキンナリの屋敷から街中へと逃れ、今は建物の屋根の上で街中の地図を確認しながら、様子を伺っていた。
「どうしますか? マスター」
「ほほう、それを聞くか?」
俺は、嗤いながらヤナビに聞き返す。
「一応確認を……する必要なさそうですね」
「当たり前だ。茶番だろうと何だろうと、俺に『邪魔者』という役を当てたのであれば、その役回りを果たそうじゃないか」
俺は、街の地図の中でも、把握できなかったエリアを確認する。
「誰が明日の日没まで待つかよ。そんな助けるのにギリギリのタイミングで、現れたりしねぇからな? 今から堂々と、殴りこみをかけてやる」
俺は、空間遮断されているエリアの方向を見ながら、不敵に嗤う。
「さぁ、今からお迎えにあがりますよ? ライお嬢様」
そして、俺は街の闇の中へと紛れ込んだ。
「そこだけが、何度やっても侵入出来ないんだな?」
「はい、マスター。屋敷内のどの部屋に置いても、火鼠は侵入でき、地図の作成が完了しましたが、あの部屋のみ侵入不可でした」
屋敷内に放った火鼠達による屋敷の中の調査は、ある部屋を残して完了した。
「ライの部屋か……」
「私の部屋が、どうかしたのですか?」
「!?」
俺は急に背後から、声をかけられた事に戦慄しながらも、裏口の扉を開けているライお嬢様に対して、出来るだけ落ち着きながら声をかける。
「こんな裏口に何のご用でしょうか? もう闇が広がり、いつ予告状を出した者が襲ってくるかもわかりません。屋敷の中に、すぐにお戻りください」
「ヤナ様……でしたよね? そんな畏まった話し方はしないで下さい。私は一介の商人の娘に過ぎません。皆様のような上級冒険者の方にそんな話し方をされては、恐縮してしまいます」
ライは、少し困った顔をしながら、そう俺に告げてくる。
「そうか、わかった。ここは、屋敷の外だ。早く屋敷の中に入り、護衛に護って貰え。それに、護衛の冒険者はどうした?」
「ふふ、護衛の方がずっと近くにいると、息が詰まって疲れてしまって……少し、一人のなりたいとお願いしたら、皆さん快く承諾してくれました」
「……そうか、だがここは屋敷の内でも最も暗い場所だ。早く戻るんだな」
「そうですね。もう少し、ヤナ様とお話がしたかったですが……そんな怖い刀を二本も向けられたら、帰るしかありませんね」
「あぁ? 刀?」
俺は、一瞬ライの言っている事が、理解できなかった。
「それでは、是非とも私を護ってください。よろしくお願いいたします」
ライは、俺に向かって優雅に一礼し微笑みかけると、屋敷の中へと戻っていった。
「マスター……気づいていなかったんですか?『天』『地』を構えていたことに」
「あぁ……ライに言われるまで、構えている事に気付かなかった……」
何より驚いたのは、声をかけられるまで、裏口が開く音もライが後ろに立った気配も、何も感じなかった事だ。
「ライ……か…」
いつの間にか、背中と手の平に汗をかいている事に気付き、一度深く呼吸をしながら、俺は屋敷を見ながら呟いたのだった。
「ヤナ……ね……」
私は、あの男が最初に私を見た時に、魅惑に抵抗した事が気になり、今度は直接会いに行ったのだ。
屋敷の裏口の外側で、屋敷の外を警戒していたあの男の後ろへ気配を遮断して近くと、あの男が私の部屋の事を呟いたので、思わず声をかけてしまった。
しかも、声をかけるとすぐさま距離を取り、恐ろしい程の力を放つ二振りの刀を構えていた。
明らかにあの刀は異常だ。そんな刀を二振りも持つあの男は、何者だと言うのか。
「他の子達なら、知っているかしらね。こういう時は、『目と耳』の情報を共有出来ないのは不便ね」
私は、少しあの男を気に留めながらも、あの程度なら問題ないと判断し、思考の外へと追いやった。
「ヤナビ、そろそろ日が変わる頃か?」
「はい、マスター。あと五分程で日が変わります」
「屋敷の内の地図は、このまま常時サングラス画面に表示させておいてくれ」
屋敷内の地図を視覚の端に隠しながら、裏口の前で外を警戒していたその時だった。
「マスター! 不明の印が、屋敷正面の門に現れました!」
「あぁ、分かっている! 正面に向かうぞ!」
俺とヤナビが、屋敷の地図に現れた不明の印に向かうべく裏口扉を開けて、屋敷の中を素通りしようとした時だった。
「ぐっ! なんだ! 扉が開かんぞ!」
「マスター、扉どころではありません! 屋敷の地図が、切り離されました! この空間自体が遮断されたと予測されます!」
「どうなっているんだ!」
俺とヤナビが、遮断された空間の境目の壁を調べ始めて数分が経とうとした時に、再び元の空間に戻された。
「マスター! 屋敷の内の地図が、再度表示されました! 再び空間が元に戻ったようです!」
「くそ! 正面に向かうぞ!」
既に不明の印は、屋敷内から消えていたが、大量の冒険者の印が動かなくなっていた。すぐさま、俺は屋敷の正面へと駆け出した。
そして、屋敷の正面玄関から飛び出すと、屋敷の中にいたAランクの冒険者も含めて地面に倒れ伏していた。
「おいおい、どうなってんだこりゃ?」
俺が、その様子に困惑していると、片隅で尻餅をついている屋敷の主であるキンナリと執事セバスを見つけ、駆け寄った。
「一体、何があったんだ!」
「ライが……ライが、賊に連れ去られた……」
キンナリが、放心した様子でそれだけを繰り返すように、何度も呟いていた。
要領を得ない為、執事セバスにどういう事だと尋ねた。
「まず賊は、正面に集まっていたCランク以下の冒険者を軒並み蹴散らし、そのまま敷地内へと侵入してきました。騒ぎを聞きつけた屋敷内にいた上級冒険者の方々が屋敷の外へと飛び出し、一斉に攻撃を仕掛けましたが、一瞬にして返り討ちに遭ってしまいました」
「一瞬で? Aランクもいたのに、連携すればそこそこ対応出来そうなものだが」
「連携も何もなく、ただただ一斉に攻撃しかしておりませんでしたので、躱されすぐさま制圧されてしまった様でした」
その執事セバスの言葉に違和感を感じながらも、話を聞き続ける。
「そして、ちょうど全員が叩き伏せられた時に、あそこのバルコニーにライお嬢様が現れたのです。そして、そのまま賊に……」
「は? ちょっと待て! ライがここからよく見えるバルコニーに、出てきただと? 何故そんなことをしたんだ!」
「それは、私にも分かりかねますが、恐らく冒険者の皆様方が叩き伏せられた時に、場が静まり帰りましたので、ライお嬢様は冒険者の方々が勝利したと思い、バルコニーへと出てきてしまったのではないでしょうか?」
自分が狙われていることが分かっているのに、容易にそんな場所に出てくる訳がないだろうと思うが、取り敢えず話を最後まで聞き終えた。そして、冒険者の様子を見に行こうとした時に、放心していたキンナリが俺に向かって叫び声を上げた。
「おい! 貴様ぁ! お前だけ賊が来た時に、いなかったがどこにいたのだ!」
「俺はその時、裏口で何者かによる妨害を受けて、身動きがとれなかったんだよ」
「ほほう、何者かだと? もしやお前、あの賊の仲間ではないのか?」
「はぁ? 何でそうなるんだよ……」
俺が馬鹿らしいと言わんばかりに、ため息を吐きながらそう呟くが、キンナリは尚も正気を失った様な目で言葉吐き出し続ける。
「貴様は、裏で賊と繋がり、この屋敷の警護の情報等を渡しておったのだろう! ライが攫われてから、ここへと駆けつけてきたのが、動かぬ証拠ではないか!」
「いやいやいや、まったく証拠になってないだろそれ」
俺が呆れる様に、呟くも何故か執事セバスまでもが、キンナリの言葉に同意する。
「確かに旦那様、おっしゃる通りです。この男が駆けつけてきたのは、正に賊が去っていった瞬間でした!」
「おいおいおい……」
すると、賊に叩きのめされてきた冒険者達までもが、起き上がった途端に、俺への追求を始めた。
「おい! 貴様! 護衛に癖に、どこにいたのだ!」
「だから、自分の持ち場にいたが、どっかの誰かに邪魔されて、ここにすぐに来れなかったんだよ。それにお前ら、賊に叩きのめされた癖に、やけに元気がいいな」
「五月蝿い! 今丁度、キンナリ様達との会話が聞こえたが、正に言う通りにお前は、賊の仲間にしか思えん!」
「いやいやいや、何故にそうなるんだ」
何故か俺が犯人の仲間とされそうになりながらも、冒険者達の目を見ると、キンナリと同様にして正気を失っている様に見えた。
すると、キンナリが突然大声を出し、冒険者達に餌をまいた。
「賊は去り際にこう言っていた! 『この娘を助けたければ、探すのだな! 猶予は明日の日没だ。それを過ぎれば、分かっているだろう?』と、明日の日没までにライを助けだした者に、恋仲となる事を許可しよう!」
「「「おぉおお!」」」
「明らかに、おかしいだろ。その賊が言ってること」
俺の呆れる様な呟きは、冒険者の狂乱する叫び声にかき消された。
「そしてだ、このヤナという冒険者を打ち取った者に金貨百枚を討伐報酬として支払う! 憎き賊の仲間だ! 生死を問わずだ!」
「はぁ!?」
「「「おぉおおお!」」」
俺が、驚きの声を上げると同時に、冒険者の雄叫びが聞こえ、すぐさま俺に襲いかかろうとしてきた為、送風で砂埃巻き上げ、その隙に神出鬼没で気配を消し、その場を取り敢えず脱出した。
「どうなってんだ? つまらん筋書きで、茶番を見せられているみたいだな」
「しかもマスターは、その茶番にさえお邪魔らしいですね」
「あぁ、どうしても俺にこの筋書きを、邪魔して欲しくないらしい」
俺とヤナビはキンナリの屋敷から街中へと逃れ、今は建物の屋根の上で街中の地図を確認しながら、様子を伺っていた。
「どうしますか? マスター」
「ほほう、それを聞くか?」
俺は、嗤いながらヤナビに聞き返す。
「一応確認を……する必要なさそうですね」
「当たり前だ。茶番だろうと何だろうと、俺に『邪魔者』という役を当てたのであれば、その役回りを果たそうじゃないか」
俺は、街の地図の中でも、把握できなかったエリアを確認する。
「誰が明日の日没まで待つかよ。そんな助けるのにギリギリのタイミングで、現れたりしねぇからな? 今から堂々と、殴りこみをかけてやる」
俺は、空間遮断されているエリアの方向を見ながら、不敵に嗤う。
「さぁ、今からお迎えにあがりますよ? ライお嬢様」
そして、俺は街の闇の中へと紛れ込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛
タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。
しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。
前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。
魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話のパート2、ここに開幕!
【ご注意】
・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。
なるべく読みやすいようには致しますが。
・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。
勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。
・所々挿し絵画像が入ります。
大丈夫でしたらそのままお進みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる