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第七章 悠久
生きる時間
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「おぉ、これはまた……凄いな」
俺は、デカく丈夫そうな門を潜り抜け、目の前に広がる街の景色に、驚いていた。
「私は前に、Aランクのランクアップ試験を受けに来た事があるから知ってたけど、やっぱり変わらないわね」
エディスが割と冷静に呟いていたが、デキスに来た事がない俺やアシェリとセアラは、ジャイノス王国内との人種の多さの違いに驚いていた。
「主様、人族と獣人族は分かりますが、あのヒゲの人はどんな方々なのでしょうか?」
「おそらくドワーフ族の筈だ。彼らは背が低く、立派なヒゲを持つおっさんのような厳つい顔だった筈だ」
ドワーフ族は、肩に身体の大きさに似合わない程の、大きい斧を担いでいた。
「確か、ドワーフ族は鍛冶師でありながらも、強靭な身体で斧を主に扱う種族だと聞いています」
セアラがそう説明していると、エディスもその言葉に同意していた。
「そうね、彼らと現役だった頃に何度かパーティも組んだ事があったけど、鍛冶と戦闘の両方が出来るのは心強かったわね。装備が壊れても、素材さえあれば修理もその場で出来たしね」
「なるほどな、それは確かに心強いな」
俺はドワーフ族の有能さに感心していると、ある事に気付いた。
「人族、獣人族、ドワーフ族は普通に見かけるが、エルフ族は見かけないな」
俺が、そう呟くとエディスが苦笑しながら答えてくれた。
「エルフ族は、まず先ずもって『隠れ里』から外に出る者が少ないから……それに、その希少さ故に狙われる事も多いから、表には中々出てこないわ」
「狙われる?」
「えぇ、大体は奴隷商人の関係者ね。私は、初めからガストフ支部長と出会って、そのままパーティにいたから、そういう輩は流石に寄ってこなかったけどね。もしかしたら、裏で追っ払ってくれてたのかもしれないわね」
「あぁ、そう言うことか。あのおっさんなら、そうかもな」
俺は、あの面倒見のよいおっさんを思い出し、笑っていた。
「そう言う面倒ごとを嫌うエルフ族は、大抵戦闘時以外は自分の姿を魔法で偽っているわね。まぁでも、戦闘になると余程の魔法の使い手でないと、偽装魔法が解けちゃうけどね」
普通は、偽装魔法をしながら戦闘は難しいらしい。
「余程の使い手か……」
「どうしたの?」
「ん? いや、何でもない」
俺は、あの人はエルフなんじゃないかと思っていたが、そうだったら何だという事に気付いて、考えるのをやめた。
「しかし、やけに建物が頑丈そうな作りをしているな」
「そうですね、ちょっとやそっとで壊れなさそうですね」
俺とアシェリが建物を見上げていると、セアラがその事について説明してくれた。
「迷宮都市国家デキスは、この世界における最深最古迷宮である『デキスラニア』周りに出来た都市国家です。その街づくりの考え基本は、魔物の大氾濫がもし起きた場合に備える事だったようです」
もし『最深最古迷宮デキスラニア』が魔物の大氾濫を起こした際に、この都市国家内で食い止め、迷宮外に溢れた迷宮魔物を、この都市に出来るだけ閉じ込めて対処する方針らしい。
「迷宮と共に生きる者達の、責任か……」
俺は、この街に着いたばかりであったが、この迷宮都市の覚悟を少し感じた気がした。
「ヤナ、今からどこ行くの?」
俺が少し遠い目をしていると、ライが御構い無しにこれからの事を聞いてきた。
「今から、ギルド本部に行ってAランクへの昇格試験の受付に行かなきゃならんな。ギルドや冒険者については、ヤナビから教わっているだろ?」
「うん、大丈夫」
ライは、若干ドヤ顔をしていた。
「くっ、純真なドヤ顔とは、こうも眩しいものなのか!」
俺がライの微笑ましいドヤ顔に悶えていると、後ろから不穏な呟きが聞こえる。
「まるで、私達が純真じゃないみたな言い方ね、絶対盛らなきゃ」
「むしろ、ヤル気が出ました、必ず盛って見せます」
「純真に真っ直ぐに、一服盛る方法を考えます」
セアラ達には、少なくとも三人だけで料理はさせないとこの時に決意した。そして、何を盛ろうとしているのかは、怖くて聞けなかった。
そして、門の衛兵にギルド本部の場所を聞いて移動を始めた。
「ヤナビ、念の為に『透明化』した火鼠を放つから、この都市の地図を作成しといてくれ」
「承知しました、マスター」
俺は歩きながら、都市の地図を作成する為の火鼠を創り、ヤナビに『集線』『接続』し、都市国家の絶対像を把握する事を任せた。
「碁盤の目か」
俺は、作成されていくデキスの地図を見ながら、呟いた。
その呟きが聞こえたらしく、すぐ隣にいたライが聞いてくる。
「ヤナ、ゴバンノメってなに?」
「こうやって、横と縦の線で綺麗に四角を作るような事を、そうやって言うんだよ」
俺は、通りの端に移動し、簡単に地面に指で碁盤の目を書いて、ライに説明した。
「聞いた話によると、この四角く区切った道路にも何か仕掛けがあり、|魔物の大氾濫
《スタンピード》が起きた際には起動するようです」
「なるどねぇ、何となく想像は付くが、色々最初に街を作り、方針を立てた人は凄いな」
しかも、道にきちんと看板が設置されている為、慣れれば道も分かりやすいだろう。
「慣れるまでは大変なんだが、俺には地図があるから、どちらにせよ大丈夫か」
衛兵に教えられた道を進みながらも、街の地図も同時に作成されていく。
「そろそろ、ギルド本部か……おぉ、こりゃまた立派な建物だな」
目の前に十階建てのビルの様な建物が見えてきた。
玄関正面には大きく『冒険者ギルド本部』と書かれた看板が設置されていた。
「なんかここだけ、元の世界に戻った様な違和感を感じるな」
ギルド本部の正面玄関は、所謂ガラスの自動ドアとなっていた。そして、そこから中へと入ると電光掲示板こそないが、雰囲気がどっかの会社のフロントロビーの様だった。
受付も『総合受付』『討伐クエスト受付』『採取受付』『クエスト依頼受付』等と目的に合わせて、カウンターが分かれていた。
「ここも、前来た時から変わってないわね」
エディスが周りを眺めながら、そう呟いた。他の三人は、物珍しいらしくきょろきょろと、完全お上りさんのようになっていた。
「知り合いでもいそうか?」
「どうかしらね、私が前来た時はもう、二十ね……あぁ、ごほごほ、結構前だから。人とエルフは生きる時間が違うから、会っても分からないかもね」
若干、年数を誤魔化そうとしたのはご愛嬌だが、その後のエディスの寂しそうな顔が心に重くのしかかる。
「生きる時間……か」
エディスはエルフ族である為、長寿だ。人の十倍近く生きるらしい。この世界の人族や獣人族は長く生きたとしても百年ぐらいらしい。死ぬ危険が高いので、普通はそこまで生きれないらしいが、それでもやはり生きる時間が異なる。
そして、ライだ。
あのクソヤロウが創った身体だ。あいつが、歳をとるような設計で自分の眷属を創るとは思えない。
たとえ、悪神から逃げたとしても、俺は永遠には生きられない。
「それまでに、決着をつけないと……か」
「あなた?」
「主様?」
「ヤナ様?」
「ヤナ?」
四人が其々俺の名を呼びながら、心配そうな顔をしていた。
「何でもないさ。さぁ、本部に着いたら『総合受付に行け』と言われたからな。そっちへ行くぞ」
俺は、出来うる限りの自然な笑顔で、四人に向けそう言うと『総合受付』へと歩き出した。
「マスター、それは棚上げ出来ませんよ?」
「あぁ、分かっているさ。何とかしないとな」
俺は、同じく心配そうな声を掛けてきたヤナビに答えると、静かに先頭を歩き出したのだった。
「ヤナ、何か寂しそうな顔だった」
わたしは、何でもないと言っていたヤナの顔を見たとき、きゅぅっと胸が苦しくなった。
「あの人は、きっと優しい事を考えて、悩んでくれているのよ」
エディスお姉ちゃんも、ヤナと同じような寂しそうな顔をしていた。
「大丈夫?」
「ふふ、大丈夫よ。私はそこそこ慣れているから……でも、今回はきっと辛いだろうなぁ」
私は、少し泣きそうになっているエディスお姉ちゃんの手を握ってあげた。
そして気づくと、私のもう一方の手をアシェリお姉ちゃんが握っていた。エディスお姉ちゃんの反対の手は、セアラお姉ちゃんが握っていた。
「今、私たちは同じ刻を生きています」
「そして、これから先もです」
アシェリお姉ちゃんとセアラお姉ちゃんが、私達に向かってそう言っていた。
私はよく意味が分かっていなかったけれど、自然と涙が溢れ出した。
隣を見るとエディスお姉ちゃんも目に涙を溜めていた。
「二人とも……ありがとうね」
「ありがとう」
わたしも、二人にエディスお姉ちゃんと同じように返した。
「生きる……時間」
わたしは、そう小さつぶやきながら、三人と一緒に、ヤナの後ろに付いて行った。
「Bランク冒険者のヤナ様ですね。Aランクへの昇格試験の受付に来られたと言う事で、お間違いありませんか?」
「あぁ、そうだ」
「少々、お待ちください」
総合受付の職員の女性にここへきた理由と要件を伝えると、女性は再度俺に確認を取ってから、電話にしか見えない魔道具を使い誰かと話をしていた。
「ヤナ様、担当の者と確認が取れましたので、三階の冒険者功績査定部で詳細をお聞きしてください」
「分かった、ありがとう」
俺は、冒険者功績査定部の部屋までの行き方を聞き、そこへ全員で移動した。
「お前が、『貢がせ』ヤナか。チッ、通り名通りに、女を侍らせてやがるな」
「あぁ?」
そして、いきなり喧嘩を売られたのだった。
俺は、デカく丈夫そうな門を潜り抜け、目の前に広がる街の景色に、驚いていた。
「私は前に、Aランクのランクアップ試験を受けに来た事があるから知ってたけど、やっぱり変わらないわね」
エディスが割と冷静に呟いていたが、デキスに来た事がない俺やアシェリとセアラは、ジャイノス王国内との人種の多さの違いに驚いていた。
「主様、人族と獣人族は分かりますが、あのヒゲの人はどんな方々なのでしょうか?」
「おそらくドワーフ族の筈だ。彼らは背が低く、立派なヒゲを持つおっさんのような厳つい顔だった筈だ」
ドワーフ族は、肩に身体の大きさに似合わない程の、大きい斧を担いでいた。
「確か、ドワーフ族は鍛冶師でありながらも、強靭な身体で斧を主に扱う種族だと聞いています」
セアラがそう説明していると、エディスもその言葉に同意していた。
「そうね、彼らと現役だった頃に何度かパーティも組んだ事があったけど、鍛冶と戦闘の両方が出来るのは心強かったわね。装備が壊れても、素材さえあれば修理もその場で出来たしね」
「なるほどな、それは確かに心強いな」
俺はドワーフ族の有能さに感心していると、ある事に気付いた。
「人族、獣人族、ドワーフ族は普通に見かけるが、エルフ族は見かけないな」
俺が、そう呟くとエディスが苦笑しながら答えてくれた。
「エルフ族は、まず先ずもって『隠れ里』から外に出る者が少ないから……それに、その希少さ故に狙われる事も多いから、表には中々出てこないわ」
「狙われる?」
「えぇ、大体は奴隷商人の関係者ね。私は、初めからガストフ支部長と出会って、そのままパーティにいたから、そういう輩は流石に寄ってこなかったけどね。もしかしたら、裏で追っ払ってくれてたのかもしれないわね」
「あぁ、そう言うことか。あのおっさんなら、そうかもな」
俺は、あの面倒見のよいおっさんを思い出し、笑っていた。
「そう言う面倒ごとを嫌うエルフ族は、大抵戦闘時以外は自分の姿を魔法で偽っているわね。まぁでも、戦闘になると余程の魔法の使い手でないと、偽装魔法が解けちゃうけどね」
普通は、偽装魔法をしながら戦闘は難しいらしい。
「余程の使い手か……」
「どうしたの?」
「ん? いや、何でもない」
俺は、あの人はエルフなんじゃないかと思っていたが、そうだったら何だという事に気付いて、考えるのをやめた。
「しかし、やけに建物が頑丈そうな作りをしているな」
「そうですね、ちょっとやそっとで壊れなさそうですね」
俺とアシェリが建物を見上げていると、セアラがその事について説明してくれた。
「迷宮都市国家デキスは、この世界における最深最古迷宮である『デキスラニア』周りに出来た都市国家です。その街づくりの考え基本は、魔物の大氾濫がもし起きた場合に備える事だったようです」
もし『最深最古迷宮デキスラニア』が魔物の大氾濫を起こした際に、この都市国家内で食い止め、迷宮外に溢れた迷宮魔物を、この都市に出来るだけ閉じ込めて対処する方針らしい。
「迷宮と共に生きる者達の、責任か……」
俺は、この街に着いたばかりであったが、この迷宮都市の覚悟を少し感じた気がした。
「ヤナ、今からどこ行くの?」
俺が少し遠い目をしていると、ライが御構い無しにこれからの事を聞いてきた。
「今から、ギルド本部に行ってAランクへの昇格試験の受付に行かなきゃならんな。ギルドや冒険者については、ヤナビから教わっているだろ?」
「うん、大丈夫」
ライは、若干ドヤ顔をしていた。
「くっ、純真なドヤ顔とは、こうも眩しいものなのか!」
俺がライの微笑ましいドヤ顔に悶えていると、後ろから不穏な呟きが聞こえる。
「まるで、私達が純真じゃないみたな言い方ね、絶対盛らなきゃ」
「むしろ、ヤル気が出ました、必ず盛って見せます」
「純真に真っ直ぐに、一服盛る方法を考えます」
セアラ達には、少なくとも三人だけで料理はさせないとこの時に決意した。そして、何を盛ろうとしているのかは、怖くて聞けなかった。
そして、門の衛兵にギルド本部の場所を聞いて移動を始めた。
「ヤナビ、念の為に『透明化』した火鼠を放つから、この都市の地図を作成しといてくれ」
「承知しました、マスター」
俺は歩きながら、都市の地図を作成する為の火鼠を創り、ヤナビに『集線』『接続』し、都市国家の絶対像を把握する事を任せた。
「碁盤の目か」
俺は、作成されていくデキスの地図を見ながら、呟いた。
その呟きが聞こえたらしく、すぐ隣にいたライが聞いてくる。
「ヤナ、ゴバンノメってなに?」
「こうやって、横と縦の線で綺麗に四角を作るような事を、そうやって言うんだよ」
俺は、通りの端に移動し、簡単に地面に指で碁盤の目を書いて、ライに説明した。
「聞いた話によると、この四角く区切った道路にも何か仕掛けがあり、|魔物の大氾濫
《スタンピード》が起きた際には起動するようです」
「なるどねぇ、何となく想像は付くが、色々最初に街を作り、方針を立てた人は凄いな」
しかも、道にきちんと看板が設置されている為、慣れれば道も分かりやすいだろう。
「慣れるまでは大変なんだが、俺には地図があるから、どちらにせよ大丈夫か」
衛兵に教えられた道を進みながらも、街の地図も同時に作成されていく。
「そろそろ、ギルド本部か……おぉ、こりゃまた立派な建物だな」
目の前に十階建てのビルの様な建物が見えてきた。
玄関正面には大きく『冒険者ギルド本部』と書かれた看板が設置されていた。
「なんかここだけ、元の世界に戻った様な違和感を感じるな」
ギルド本部の正面玄関は、所謂ガラスの自動ドアとなっていた。そして、そこから中へと入ると電光掲示板こそないが、雰囲気がどっかの会社のフロントロビーの様だった。
受付も『総合受付』『討伐クエスト受付』『採取受付』『クエスト依頼受付』等と目的に合わせて、カウンターが分かれていた。
「ここも、前来た時から変わってないわね」
エディスが周りを眺めながら、そう呟いた。他の三人は、物珍しいらしくきょろきょろと、完全お上りさんのようになっていた。
「知り合いでもいそうか?」
「どうかしらね、私が前来た時はもう、二十ね……あぁ、ごほごほ、結構前だから。人とエルフは生きる時間が違うから、会っても分からないかもね」
若干、年数を誤魔化そうとしたのはご愛嬌だが、その後のエディスの寂しそうな顔が心に重くのしかかる。
「生きる時間……か」
エディスはエルフ族である為、長寿だ。人の十倍近く生きるらしい。この世界の人族や獣人族は長く生きたとしても百年ぐらいらしい。死ぬ危険が高いので、普通はそこまで生きれないらしいが、それでもやはり生きる時間が異なる。
そして、ライだ。
あのクソヤロウが創った身体だ。あいつが、歳をとるような設計で自分の眷属を創るとは思えない。
たとえ、悪神から逃げたとしても、俺は永遠には生きられない。
「それまでに、決着をつけないと……か」
「あなた?」
「主様?」
「ヤナ様?」
「ヤナ?」
四人が其々俺の名を呼びながら、心配そうな顔をしていた。
「何でもないさ。さぁ、本部に着いたら『総合受付に行け』と言われたからな。そっちへ行くぞ」
俺は、出来うる限りの自然な笑顔で、四人に向けそう言うと『総合受付』へと歩き出した。
「マスター、それは棚上げ出来ませんよ?」
「あぁ、分かっているさ。何とかしないとな」
俺は、同じく心配そうな声を掛けてきたヤナビに答えると、静かに先頭を歩き出したのだった。
「ヤナ、何か寂しそうな顔だった」
わたしは、何でもないと言っていたヤナの顔を見たとき、きゅぅっと胸が苦しくなった。
「あの人は、きっと優しい事を考えて、悩んでくれているのよ」
エディスお姉ちゃんも、ヤナと同じような寂しそうな顔をしていた。
「大丈夫?」
「ふふ、大丈夫よ。私はそこそこ慣れているから……でも、今回はきっと辛いだろうなぁ」
私は、少し泣きそうになっているエディスお姉ちゃんの手を握ってあげた。
そして気づくと、私のもう一方の手をアシェリお姉ちゃんが握っていた。エディスお姉ちゃんの反対の手は、セアラお姉ちゃんが握っていた。
「今、私たちは同じ刻を生きています」
「そして、これから先もです」
アシェリお姉ちゃんとセアラお姉ちゃんが、私達に向かってそう言っていた。
私はよく意味が分かっていなかったけれど、自然と涙が溢れ出した。
隣を見るとエディスお姉ちゃんも目に涙を溜めていた。
「二人とも……ありがとうね」
「ありがとう」
わたしも、二人にエディスお姉ちゃんと同じように返した。
「生きる……時間」
わたしは、そう小さつぶやきながら、三人と一緒に、ヤナの後ろに付いて行った。
「Bランク冒険者のヤナ様ですね。Aランクへの昇格試験の受付に来られたと言う事で、お間違いありませんか?」
「あぁ、そうだ」
「少々、お待ちください」
総合受付の職員の女性にここへきた理由と要件を伝えると、女性は再度俺に確認を取ってから、電話にしか見えない魔道具を使い誰かと話をしていた。
「ヤナ様、担当の者と確認が取れましたので、三階の冒険者功績査定部で詳細をお聞きしてください」
「分かった、ありがとう」
俺は、冒険者功績査定部の部屋までの行き方を聞き、そこへ全員で移動した。
「お前が、『貢がせ』ヤナか。チッ、通り名通りに、女を侍らせてやがるな」
「あぁ?」
そして、いきなり喧嘩を売られたのだった。
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