イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

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第35話 空き缶に穴が空いたら漏れて当たり前

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「おぉ、カンよ。自らの魔法で加速し、地面に激突し潰れてしまうとは情けない」
  
「……嵌められたぁあああ!」

 カンの怒号が、イチカの書斎に響き渡った。

 カンは、発動した〝吹き付ける風龍の息吹ダウンバースト〟の効果により、結局地面に叩き潰された。

 その結果、再びイチカの書斎の空き缶へと転生することになった。
  
「それは置いといて。どうだい、初めて魔法を使った感覚は」
  
「覚えておれよ……だが、まぁしかし、魔法は……バーンと気持ちよかったのだ!」

 まさに心から喜んでいると言わんばかりのカンの声は、書斎を明るくさせた。
  
「他には、魔力と魔法のイメージは掴めたかい?」
  
「うむ、何かこう……我の空っぽだったボディに、力が溜まっていくようで……それでいて、その力を一気に解放した瞬間、周囲の風を操った感じであったな」
  
「それだ! それこそが、カンの新たな力だぁあ!」
  
 "カンは、技能『魔力ストック(最大10)』を取得した!"
 "カンは、称号『風龍の玩具』を取得した!"
 "カンは、称号『風龍の玩具』を取得したことにより、風龍の戯れ(Lv.1)を覚えた!"
  
 ・・・・・・・
 名前:カン
  
 称号:風龍の玩具 NEW!
  
 種族:空き缶(Lv.7) +1UP!
  
 体力:16(最大16) +1UP!
  
 魔力ストック:0(最大10) NEW!
  
 ちから:0 
 すばやさ:0 
 かたさ:2 
 まりょく:6 +5UP!
  
 ※補正
  『魔沼ヨゴレ呪い』効果により魔力増加(+1) 
  『風龍の玩具』効果により魔力増加(+5) NEW!
  
 技能:
  言語理解(全異世界の誰とでも話が出来る)
  常時発動M型(Lv.6) +1UP!
  熱耐性(Lv.1)
  寒耐性(Lv.1)
  ヨゴレ耐性(Lv.2)
  風龍の戯れ(Lv.1) NEW!
  
 状態:
  魔沼ヨゴレの呪い(Lv.1)
  
 現在地:
  イチカの書斎
 ・・・・・・・
  
「これが……我だと?」

 世界の声が、空っぽのカンのボディに鳴り響き、そしてボディに表記されている成分表示に変化が起きた。

 そしてその変化に、カン自身が驚愕し、短く言葉を発した後、絶句してしまった。
  
「魔力ストックは、3分に1づつ貯まる仕様みたいだよ」

「カァアアアアアン!? 革命が! 否! 革新的変化が我の身体に起きたカァアァアアアン!?」

 カンが興奮して、全力で叫び出すのも無理はなかった。何故なら、それほどまでにカンに劇的な変化が起きていたからだ。
  
「待て待て待て、ちょ待つのだ……ふぅ、我よ落ち着くのだ。イチカよ、説明をはや頼むぞ」

「ん? セツメイ?」
  
「何故にカタコトに!? 早う、色々増えた表示の説明をぉおお!?」
  
「何だか、喉乾いちゃってさ」

「このタイミングでか!? そんなことより、早う説明を!」
  
「まぁ、そう焦るなよ。コーヒーが切れたら、本気で僕がキレちゃうんだから。そしたら……何するかわかんないよ?」

 イチカの瞳から光が消えると、顔は笑顔であるにも関わらず、見事に目は笑っていなかった。
  
「お……おぉ……そうだな。是非とも、腹がたぷたぷになるまでコーヒーを飲むといい。ついでに、我のスペア缶も増えるし、まさに一石二鳥であるしな」

 本気ガチの狂気に、カンは身体を震わせながら、イチカが缶コーヒーを取りに台所へと向かうのを見送った。

 そして数分と経たずに、イチカは戻ってくると、手には冷えた缶コーヒーを持っていた。

 再び椅子に腰掛けた後、缶コーヒーの蓋を開けて一口飲むと、やっとカンは狂気から開放された。
  
「さて、何から説明しようか?」
  
「お主の異常なコーヒー中毒は、何とかならんのか……まぁ、そんなことよりもだ! 我の称号の項目〝風龍の玩具〟とついた上に、技能に〝風龍の戯れ(Lv.1)〟が付いたのだが!?」
  
「称号が付いたのは、あの時に風龍に玩具にされた上、その時に風龍の力を短時間でも纏った所為で、運良く取得したんじゃない?」
  
「軽い上に、ざっくりだな説明が……は!? それに〝魔力ストック〟とはなんだ!?」
  
「カンて空き缶だからね。中に魔力を、貯めておけるようになったんじゃない?」
  
「何故、疑問系なのだ。しかし、我は自分で言うのも悲しくなるが、使用済みの空き缶だから口が開いているのに、貯めておけるのか?」

 本当に悲しそうに、カンはそう問いかけた。
  
「うん、だから漏れるよね。ひっくり返したり、激しく潰れたりしたらね。開けた蓋は、もう二度と戻ることはないのだから」

 合わせてイチカも、本当に悲しいことを告げるような雰囲気を出した。
  
「我にあわせて、イチカまで悲しい声を出すのでないわ。お主にその感じを出されると、逆に腹が立つ。しかしだ……そこから、本当に漏れるのかカァアァアアアン!? そこは、妙なリアル感ださなくても良くないか!? 魔力が口から漏れるだなんて、人はないのであろう!?」
  
「人が口から魔力をリバースする訳ないだろう。空き缶じゃあるまいし」

「何故、空き缶に宿る魔力が、口から漏れる前提で話すのだ……」

「空き缶が生きていると言うこと自体が、奇跡なんだよ? それ以上の奇跡を求めてどうするのさ。生物は細胞一つひとつに魔力を溜め込むから、逆立ちしたからって逆流するわけないだろう。そもそも、喋る空き缶を生物の括りで議論すること自体、ナンセンスなんだからね」
  
「そこから!? 生物かどうかの定義からなのカァアン!? そこは、生物でよかろうが!?」
  
 そして暫く、イチカとカンは〝生物〟の定義について、喧しく言い争うのだった。
  
「は!? 風龍の戯れ(Lv.1)の説明聞き忘れた!?」
 
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