イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

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第54話 まさか正しく伝わるとはね

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『知らない場所で一人でいると、その場の雰囲気に悶々と不安になりやすいだろうね。そう、カイン君にとって、例え中身が空っぽでアルミの空き缶でペコッペコだとしても、カンを手に持っている事は、誰もいないよりは1mm程マシ、かもしれないかもしれない』
  
「さして大事な事でもないのに、二回も〝かもしれない〟を繰り返すな。むしろ、何故断定せぬのだ」  
  
 カイン=アーキは女性教諭に言われた通りに、入学式が行われていた会場の壁際に移動していた。

 不安そうにしながらも、手には空き缶を潰さないように優しく持ちながら、大きな嘆息を吐いていた。
  
「カインよ、ため息を吐くと幸せが逃げるぞ」
  
「……いやいや、君の所為だからね? 本当に一体、何なの君は?」 

 手に持つ空き缶に向かって、カインは呟いた。何も知らない者が見れば、壁にもたれかかりながら、缶コーヒーを飲んでいる少年である。
  
「我が何者なのか……側面に書いてあるので、読んだ方が早いであろう」
  
「側面? 本当だ、個人情報がダダ漏れだね……って、え?」

 カインは、ある文字に目が止まって、思わず言葉を失った。
  
 ・・・・・・・
 名前:カン
  
 称号:
  風龍の玩具
  借金缶 NEW!

 種族:空き缶(Lv.9) 
  
 体力:18(最大18) 
  
 魔力ストック:10(最大10)
  
 ちから:0 
 すばやさ:0 
 かたさ:2
 まりょく:7 
  
 ※補正
 『魔沼ヨゴレ呪い』効果により魔力増加(+2) 
 『風龍の玩具』効果により魔力増加(+5) 

 技能:
  言語理解(全異世界の誰とでも話が出来る)
  常時発動M型(Lv.9) 
  熱耐性(Lv.2) 
  寒耐性(Lv.2) 
  ヨゴレ耐性(Lv.3) 
  風龍の戯れ(Lv.2) 
  魔力暴走(Lv.1) 
  
 状態:
  魔沼ヨゴレの呪い(Lv.2) 
  絶対服従※イチカに100万MPを返済するまで NEW!
  召喚中※カイン=アーキをあるじとする NEW!
  
 現在地:
  魔法学園マジカーノ
 ・・・・・・・
  
「このMって……」

『カイン君、先ずそこに注目するとは、中々センスが高いね』
  
「ふっ、今度はどんな意味にとらえるか。今回は召喚獣とやらであるからして、モンスターのMとかであろうか」

 イチカとカンが、それぞれの思惑を呟くと、カインが気持ち手を震わせながら呟く。
  
「……空き缶なのに……変態そっち系なんだね……」
  
カイン=アーキは正確にMそっち系ですの意味を捉え、そっと床に置いたのだった。
  
「嘘ぉおおカァアアアアン!? どうして一文字で、伝わったのカァアアアアン!?」

『正確に伝わったんなら、逆に問題ないだろうに。何を発狂してるのさ。頭冷やす為に、ボディにクーラーボックスに余ってる氷を転送してやろうか?』
  
「それ頭ではなくて、完全に身体を冷やしにかかってるではないか! 世界を超えてまで、嫌がらせをするんではないカァアン!」
  
『あぁあ、またそんな一人ツッコミしてたら、カイン君に引かれるよ』
  
「ふっ、イチカも気付いておるのだろう? すでに多少の声なら、全然聞こえないくらいの場所まで引かれているのだ!」
  
『お、おぅ……ファイト!』
  
「信頼関係の崩壊カァアアン」 
  
 カンが早くもカインにドン引き変態認定された事にへこんでいると、カインが意を決した顔で近づいてきた。
  
「カン……だったね」
  
「そうである、我はカンである」
  
「どんなに変態缶でも、僕の初めての召喚獣……召喚缶、略してショウカンなんだ。これからきっと、物凄く大変だろうけど頑張ろうね」
  
「おぉお、普通に受け入れてくれたぁあ。しかし、何故意味もなく略す。それに、物凄く大変とは、どういう意味なのだ」
  
「え? だって、この学園は召喚士を育成する魔法学園だから。主な授業内容は、召喚獣を強くする補助魔法や回復魔法覚えることだし、そもそもココでは召喚獣同士を戦わせて強くする所だからね。カンはこれから、色んな召喚獣と戦闘することになるよ?」
  
「……何となくそうではないかとは思っていたが、改めて言われると、とても嫌だな」
  
「普通召喚獣は、死亡するような傷を負った場合には、精霊界に強制送還されて死なないんだけど……カンはどうなんだろうね?」
  
「……どうなんだ? どうなるのだ?」

 大事なことなので、カンは二回繰り返し、口に出して問いかけた。それは勿論、目の前にいないが、今も自分を見ているであろうイチカに対してだった。
  
『〝カンは、嫌な予感を感じながらもある自分の言葉を思い出していた〟』
  
「何故に、ナレーション風で話すのだ?」
  
『〝カンは、魔力の制御を覚えるまでは、転生なぞしない! そうでなければ消滅しても構わない! と宣言していた事を〟って事だったよね?』
  
「でっち上げられたぁああ!? 我は、そんなカッコいい事などは言っておらぬカァアアアアン!? さっさと、この世界の召喚獣仕様に、我も適用させるのだぁああ!」

『そもそもハードモードを望んだのは、カンだし。自業自得でしょ』

「おのれぇええ! 貴様ぁあああ!」
  
「あ、先生が来たよ。もう、先生前でもブツブツ独り言を言わないでよね?」
  
「独り言扱いは、相変わらずなのカァアアアアン!? しかし、これはもう既に反射の域に達しておるので、黙ることは出来ぬ!」

『空き缶も、パブロフの犬になれるんだね』

カンバウワウ!」

 いきなり吠える空き缶に、カインのメンタルは地味にダメージを受けるのであった。
 

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