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第73話 旅立ちの光
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『相手を滅ぼす程の力を持つ者と、それを受け止めようとした空き缶の運命や如何に! 面白くなって来たねぇ』
「完全なる観戦者気分はこの際置いておいて、それっとどゆことカァァアアン!?」
魔力に奔流にのまれながら聞こえてくる声は、カンに力を授けた風龍だった。
「我の魂が消滅するから、召喚獣を変われだと!? それは真のことなのカァアアン!?」
流石に〝魂の消滅〟と聞き、焦る空き缶。
〝そうだ。カイン=アーキの持つ魔力は、桁が違うのだ。全力で開放した彼奴の魔力など、神格に近い者でしか受け止める事は出来まい。そして受けとめきれなければ、奴の暴力的な魔力にその魂さえも侵蝕されるであろう〟
「まるでカインを、以前から知っているかのような口ぶりカァン!?」
〝以前か……そうだな、前世の彼奴ならよく知っている〟
「な!? 前世カァアァン!? 何かまた新しい感じの事実が!?」
〝彼奴は、古の勇者の生まれ変わりだ。そして、我の前の主でもある〟
風龍は、遥か昔を懐かしむような瞳を、魔力の竜巻の外にいるカインに向けていた。
「カイン……あやつは、どんだけ主人公特性を盛ってるカァアァン!?」
〝そして、命を賭して古の魔王を封印した英雄でもある。しかし長い年月をかけ、魔王は封印を破って復活したのだろう。しかし古の勇者も、魔王復活を予知し、自らの魂をその時代へと転生させたのだ〟
「まさかグワングワンと洗濯機の中の洗濯物の如くシャッフルされながら、衝撃の真実を語られるとはビビるカァン。しかし、そんな古の勇者の転生術の結果がカインなのであれば、何故あんなにヘタレなのカァン」
〝おそらく、完全な転生とはいかなかったのだろう。完全な前世の記憶や経験を保ちながらの転生など、まさに神の所業と言える。その為、カインは膨大な魔力を見に宿しながらも、制御の術を全て失っておる。完全な転生が成し遂げられておれば、召喚の儀でお主ではなく、我が召喚の声に応じることが出来ただろう〟
〝記憶も術も失っているカインは、魔力の暴走を恐れて魔力を使わずに召喚した結果、風龍の魔力を多少なりとも身に宿していた我が、風龍の代わりに呼ばれたということカァン」
〝そうであろう。しかし、お主が我とカイン=アーキとの縁を繋いだのだ。お主がいなければ、お主を媒介として、我が召喚される機会も永遠に来なかったであろう〟
「我と風龍の出会いが、カインの召喚術発動より前であったからこそ、今の状況を生み出したと言うことカァン……なんと数奇な巡り合わせカァン」
カンは、自らがまるで特別な存在になったかのような高揚感を覚えた。そしてカンは、自らに再び問いかけた。己がどうするのかが、最善の選択であるかを。
「……カインに言葉をかけられるカァン?」
〝済まぬが、それは無理だ。この声ですら、かなり無理をしてお主と我を繋げておる状態なのだ〟
「そうか……ならば、伝言を頼まれてくれるカァン」
〝あぁ、任せろ〟
風龍の力強い返答を聞くと、カンは大きく息を吸い込んだつもりで気合をいれた。
「迷い、揺らぎ、潰れたとしても、その眼に宿した火を消すな! カインのその眼に宿る焔は、世界を照らす希望の光となるのカァアアァアン!」
カンの言葉は、その小さな空き缶ボディの中を反響し、風龍の身体を僅かに振るわせるほどに、魂が篭っていた。
〝良き魂の言霊である。風龍ウィンガーナの名の下に、しかとカインに伝えよう。では、召喚獣の契約を、我に移すぞ"
「うむ、かたじけない……で、ちなみにどうやって契約を移すのカァン? 召喚主であるカインがいなくても可能なのカァン?」
〝なに、簡単だ。お主が持つ契約を、我が無理やり食い破り破棄させ、その瞬間に我が契約を奪うのだ〟
「……ん? 食い破る? んん? え? ちょ? どういうこ……」
予想の斜め上を行く強引な契約譲渡に、思考が追いつかないカン。
"なに、一瞬で終わる。では達者でな〟
躊躇なく、風龍はカンに向かって口を開ける。
「突然目の前に龍の顎門がぁああ! えぇえ!? そんな感じなのカァアアァン!?」
〝うぇ!? 何と拙い!?〟
風龍の何とも嫌そうな呻き声を聞いたのを最後に、カンの意識は遠のくのであった。
「アルミ箔を噛んだ時って、とっても嫌ぁな感じになるよねぇ。あの風龍もきっと、噛んだ瞬間はそれを味わっただろうと思うと、なんと気の毒な」
「誰がアルミ箔だ! 風龍にとっては、その程度だろうけども一応否定はさせてもらおう! 我はアルミ箔ではなく、アルミ缶である!」
イチカの書斎にある机の上に、カンは風龍の噛み砕きにより転生していた。
「おぉ、カンよ。転生するとは情けないとは言わないでおくよ。お疲れ様だったね」
「しっかり全部述べたがな……うむ、中々厳しい選択ではあったカァン」
カンの声には、いつもの元気は感じられなかった。
「寂しい決断ではあったけれど、カインもきっと分かってくれるさ」
「イチカ……クワァアアンクワンクワァアン!」
カンは泣いた。
己の至らなさ、弱さを恥じた。
風龍に席を譲らねばならなかったことの悲しさに、カンは泣いた。
「さて、ステータスは、何か変わったかなっと」
「無視カァアァン!? 慰めないのカァアアン!?」
・・・・・・・
名前:カン
称号:
風龍に認められし空き缶 NEW!
種族:空き缶(Lv.14) 1UP!
体力:24(最大24) 1UP!
魔力ストック:10(最大10)
ちから:0
すばやさ:0
かたさ:2
まりょく:12
※補正
『魔沼ヨゴレ呪い』効果により魔力増加(+2)
『風龍に認められし空き缶』効果により魔力増加(+10)
技能:
言語理解
常時発動M型(Lv.13) 1UP!
熱耐性(Lv.2)
寒耐性(Lv.2)
ヨゴレ耐性(Lv.3)
風龍の戯れ(Lv.3)
魔力暴走(Lv.2)
内部空間保持
魔力属性【風】
魔風制御
風龍制御(Lv.1)
状態:
魔沼ヨゴレの呪い(Lv.2)
現在地:
イチカの書斎
・・・・・・・
「称号の【ヒモ缶】と、状態の【召喚待機中】が消えたみたいだね」
「……そうだな。カイン達は、大丈夫だったのか?」
「そうだね、風龍がカンの代わりにカイン君の召喚獣として出現して、形勢逆転だったね。しかも、風龍と契約した事により前世の記憶や技術も思い出したみたい」
「此処からは、俺TUEEEか……」
「主人公最強ってやつだね」
「これで良かったのカァン」
「さぁ、それは分からないさ」
「……きっとカインと風龍は、あの世界を救うに違いないカァ……カァアァン!? 底材の下から光がぁあああ! 召喚陣なのか!? 何故なのカァン!?」
「感傷に浸ってないで、次だよ次。今光ってる魔法陣は、カイン君の召喚陣と異なるから、また別の世界だよ」
「召カァアアアアン!? ホット一息の休憩はないのカァアアン!?」
「缶コーヒー自体がホット一息してどうするのさ。それは、飲むこっち側でしょ」
イチカの呆れ声を聞きながら、カンは新たな世界へと旅立つのであった。
「完全なる観戦者気分はこの際置いておいて、それっとどゆことカァァアアン!?」
魔力に奔流にのまれながら聞こえてくる声は、カンに力を授けた風龍だった。
「我の魂が消滅するから、召喚獣を変われだと!? それは真のことなのカァアアン!?」
流石に〝魂の消滅〟と聞き、焦る空き缶。
〝そうだ。カイン=アーキの持つ魔力は、桁が違うのだ。全力で開放した彼奴の魔力など、神格に近い者でしか受け止める事は出来まい。そして受けとめきれなければ、奴の暴力的な魔力にその魂さえも侵蝕されるであろう〟
「まるでカインを、以前から知っているかのような口ぶりカァン!?」
〝以前か……そうだな、前世の彼奴ならよく知っている〟
「な!? 前世カァアァン!? 何かまた新しい感じの事実が!?」
〝彼奴は、古の勇者の生まれ変わりだ。そして、我の前の主でもある〟
風龍は、遥か昔を懐かしむような瞳を、魔力の竜巻の外にいるカインに向けていた。
「カイン……あやつは、どんだけ主人公特性を盛ってるカァアァン!?」
〝そして、命を賭して古の魔王を封印した英雄でもある。しかし長い年月をかけ、魔王は封印を破って復活したのだろう。しかし古の勇者も、魔王復活を予知し、自らの魂をその時代へと転生させたのだ〟
「まさかグワングワンと洗濯機の中の洗濯物の如くシャッフルされながら、衝撃の真実を語られるとはビビるカァン。しかし、そんな古の勇者の転生術の結果がカインなのであれば、何故あんなにヘタレなのカァン」
〝おそらく、完全な転生とはいかなかったのだろう。完全な前世の記憶や経験を保ちながらの転生など、まさに神の所業と言える。その為、カインは膨大な魔力を見に宿しながらも、制御の術を全て失っておる。完全な転生が成し遂げられておれば、召喚の儀でお主ではなく、我が召喚の声に応じることが出来ただろう〟
〝記憶も術も失っているカインは、魔力の暴走を恐れて魔力を使わずに召喚した結果、風龍の魔力を多少なりとも身に宿していた我が、風龍の代わりに呼ばれたということカァン」
〝そうであろう。しかし、お主が我とカイン=アーキとの縁を繋いだのだ。お主がいなければ、お主を媒介として、我が召喚される機会も永遠に来なかったであろう〟
「我と風龍の出会いが、カインの召喚術発動より前であったからこそ、今の状況を生み出したと言うことカァン……なんと数奇な巡り合わせカァン」
カンは、自らがまるで特別な存在になったかのような高揚感を覚えた。そしてカンは、自らに再び問いかけた。己がどうするのかが、最善の選択であるかを。
「……カインに言葉をかけられるカァン?」
〝済まぬが、それは無理だ。この声ですら、かなり無理をしてお主と我を繋げておる状態なのだ〟
「そうか……ならば、伝言を頼まれてくれるカァン」
〝あぁ、任せろ〟
風龍の力強い返答を聞くと、カンは大きく息を吸い込んだつもりで気合をいれた。
「迷い、揺らぎ、潰れたとしても、その眼に宿した火を消すな! カインのその眼に宿る焔は、世界を照らす希望の光となるのカァアアァアン!」
カンの言葉は、その小さな空き缶ボディの中を反響し、風龍の身体を僅かに振るわせるほどに、魂が篭っていた。
〝良き魂の言霊である。風龍ウィンガーナの名の下に、しかとカインに伝えよう。では、召喚獣の契約を、我に移すぞ"
「うむ、かたじけない……で、ちなみにどうやって契約を移すのカァン? 召喚主であるカインがいなくても可能なのカァン?」
〝なに、簡単だ。お主が持つ契約を、我が無理やり食い破り破棄させ、その瞬間に我が契約を奪うのだ〟
「……ん? 食い破る? んん? え? ちょ? どういうこ……」
予想の斜め上を行く強引な契約譲渡に、思考が追いつかないカン。
"なに、一瞬で終わる。では達者でな〟
躊躇なく、風龍はカンに向かって口を開ける。
「突然目の前に龍の顎門がぁああ! えぇえ!? そんな感じなのカァアアァン!?」
〝うぇ!? 何と拙い!?〟
風龍の何とも嫌そうな呻き声を聞いたのを最後に、カンの意識は遠のくのであった。
「アルミ箔を噛んだ時って、とっても嫌ぁな感じになるよねぇ。あの風龍もきっと、噛んだ瞬間はそれを味わっただろうと思うと、なんと気の毒な」
「誰がアルミ箔だ! 風龍にとっては、その程度だろうけども一応否定はさせてもらおう! 我はアルミ箔ではなく、アルミ缶である!」
イチカの書斎にある机の上に、カンは風龍の噛み砕きにより転生していた。
「おぉ、カンよ。転生するとは情けないとは言わないでおくよ。お疲れ様だったね」
「しっかり全部述べたがな……うむ、中々厳しい選択ではあったカァン」
カンの声には、いつもの元気は感じられなかった。
「寂しい決断ではあったけれど、カインもきっと分かってくれるさ」
「イチカ……クワァアアンクワンクワァアン!」
カンは泣いた。
己の至らなさ、弱さを恥じた。
風龍に席を譲らねばならなかったことの悲しさに、カンは泣いた。
「さて、ステータスは、何か変わったかなっと」
「無視カァアァン!? 慰めないのカァアアン!?」
・・・・・・・
名前:カン
称号:
風龍に認められし空き缶 NEW!
種族:空き缶(Lv.14) 1UP!
体力:24(最大24) 1UP!
魔力ストック:10(最大10)
ちから:0
すばやさ:0
かたさ:2
まりょく:12
※補正
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『風龍に認められし空き缶』効果により魔力増加(+10)
技能:
言語理解
常時発動M型(Lv.13) 1UP!
熱耐性(Lv.2)
寒耐性(Lv.2)
ヨゴレ耐性(Lv.3)
風龍の戯れ(Lv.3)
魔力暴走(Lv.2)
内部空間保持
魔力属性【風】
魔風制御
風龍制御(Lv.1)
状態:
魔沼ヨゴレの呪い(Lv.2)
現在地:
イチカの書斎
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「称号の【ヒモ缶】と、状態の【召喚待機中】が消えたみたいだね」
「……そうだな。カイン達は、大丈夫だったのか?」
「そうだね、風龍がカンの代わりにカイン君の召喚獣として出現して、形勢逆転だったね。しかも、風龍と契約した事により前世の記憶や技術も思い出したみたい」
「此処からは、俺TUEEEか……」
「主人公最強ってやつだね」
「これで良かったのカァン」
「さぁ、それは分からないさ」
「……きっとカインと風龍は、あの世界を救うに違いないカァ……カァアァン!? 底材の下から光がぁあああ! 召喚陣なのか!? 何故なのカァン!?」
「感傷に浸ってないで、次だよ次。今光ってる魔法陣は、カイン君の召喚陣と異なるから、また別の世界だよ」
「召カァアアアアン!? ホット一息の休憩はないのカァアアン!?」
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私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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