イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

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第72話 覚醒後の性格の変化は萌える

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 力の開放、それはまさに最大にして最高の見せ場となる。敵、味方関係なく、見ている方は興奮せざるを得ないだろう。
   
 魔族公爵は、力の差を見せつけられ諦めている勇者子供達を見て、嗤っていた。
  
「クハハハ! 力をつける前に叩くのは、実に楽で良い!」
  
「ふっ、悪役の高笑いほど滑稽なものないカァン。その笑いこそ、代表的な負けフラグだと、何故分からぬカァン」
  
「なんだと貴様……えっと……ベコ缶が戯言抜かすな!」
  
「〝何だかよく分からんな、コレ〟みたいに困った顔した後に、適当に変に略すでないカァアァン!」
  
「本当に喧しい空き缶よ、強がっても同じ事だ。貴様からは、魔力をゴミほどしか感じぬ。大方、突然変異で喋り出しただけの空き缶なのだろう。そんな空き缶を、召喚獣としている主も、たかが知れぬな」
  
「今なんと言ったのカァン? カアァン?」

『絡み方がチンピラだね』 
  
「何度でも言ってやろう! 貴様のようなクズ缶を従えるような召喚士など、同じくクズだとな!」
  
「ふっ」
  
「何がおかしい!」

 たかが空き缶に鼻で笑われ、魔族公爵は一気に頭に血が昇った。
  
「お主を見ていたら、魔王も程度が知れるとな」
  
「貴様! 魔王様を愚弄するか!」

 さらに煽る空き缶。
  
「その瞳に自らの決意を燃え上がらせ、一瞬たりともこの場においても、絶望に染まらず、己が力を高めている男に気付かぬ小物の親玉など……たかが知れとるわ! カイン!」
  
「うん。誰も受け止めてくれないと諦めていた自分は、もう居ないんだ。初めて全力を出すよ、カン! うぉおおおおお!」
  
 カインは、カンに応えるように魔力を全開放した。

 カインは、自身の膨大な魔力により魔力制御が出来ない。そのため、これまで常に魔力を使わない選択肢しかなかった。

 召喚の儀の際も、実は殆ど魔力を使わずに魔法陣を発動させた為、殆ど魔力持たない空き缶が、召喚されたのだ。
  
 そんなカインが、初めて全力で魔力を開放した。

 轟音とともにカインから金色の魔力がほとばしり、目元を隠していた前髪を搔き上げると、真っ直ぐに魔族を睨みつけた。
  
「よう、誰がクズだって? 俺様の何処がクズだと言うのか、もう一度言ってみやがれ!」
  
「……ん?」

 困惑した様子で、思わず声が漏れたのはカンだけではなかった。

 魔族公爵ですら、カン同じような反応を示していた。
  
「カインが俺様カァアァン!? しかも、いきなりオラオラ系に!?」
 
『車を運転すると、性格変わる人いるよねぇ。アレ、何だろうねぇ』
  
「嘘ぉおおおん!?」
  
 髪をオールバックにさせて金色の魔力が迸るカインを、その場にいる全員が注視していた。

 そして、中でも目の前の魔族は、明らかに困惑していた。
  
「なんだ……なんなんだ! その馬鹿げた魔力量は!」
  
「知るかよ。生まれた時から、こちとらコレなんだよ」
  
「生まれた時からだと!? あり得ん……そんな事が……は!? まさか!」
  
「なんだ! 教えるのだ! 意味深に言って逃げたりするで無いカァアアァン!」

 気になる呟きのあと、魔族公爵はじわりと後ずさっていた。
  
「そんなお約束、俺様がさせるかよ! カン! 覚悟しておけよ?」  
  
「ん? 魔族じゃなくて、我カァン?」
  
「当たりめぇだろ? コレ全部オメェに、一気にぶち込むんだからな」
  
 ニヤリとワイルドに笑うカインに、その場にいた全員が思わず惚けた。

 一本の空き缶を除いて。

「……そうだったカァアァン!? ゴゴゴゴゴってなってるソレ暴力的な魔力を、我にぶち込んじゃうのカァアァン!?」
  
「暴走させたらぶちのめす! 行くぞオラぁあああああ!」
  
「味方の放つ言葉じゃないぃいいいぃいカァアァアン!?」

 悲鳴をあげるカンを見て、魔族公爵は不敵に笑う。
  
「馬鹿め! そんな量の魔力など受け止める事など、魔王様かそれに準ずる格をもった者ぐらいだ! 暴走して爆ぜてしまえ! たかが空き缶如きなど、魔力の大暴走に巻き込まれ、存在ごと消えてしまえ!」
  
「物凄く不穏なことを言われてるカカカカカカカカァアアアアン!? やっぱりちょっと待たないカァン!? 魔族もカインの魔力にビビって逃げそうであるし、ここは引かせるだけで勝利と言うことに……」

「そんなわけあるかぁあ! ゴチャゴチャ言わずに、おめぇの中を俺様で一杯にしてやるよぉお!」

「言い方までお下品になっちゃってるカァアン!?」
  
 その場にいる女子達は、顔を赤ながらも、しっかりカインを見ている。

 そして、カインからまるで金龍ごとく昇った魔力が、滝に打たれるが如くカンに轟音と共に注がれたのだった。
  
「あぎゃぁあぁあぁあカァアァン!?」

 響き渡るカンの悲鳴は、もはや断末魔の叫びと言ってよかった。

 カインの魔力がカンを飲み込むと、カンを中心に魔力の竜巻が発生した。

 そしてカンは、なす術なく魔力の竜巻にのまれ、荒れ狂う魔力に弄ばれていた。

 そんな時、カンに異変が起きる。
  
〝空き缶よ。今であれば、我の声が聞こえるであろう〟
  
 無様に竜巻の中を回るカンに、呼びかける声があったのだ。
  
「……誰……なの……だ……」

  
〝このままでは、お主はこの魔力に魂まで侵食され、最後には跡形もなく消滅するであろう〟
  
「カァン!? 魔族の言ったこと本当だったカァアン!? それでは転生が、出来ぬカァン!?」

 魔族の負け惜しみではなく、本当にカンは魂の消滅の危機が迫っていた。
  
〝そこでだ。我と取引をしようでは無いか〟
  
「……取引……?」
  
〝そうだ。我に、空き缶の席を譲れ〟
  
「……席を……譲るカァン? 空き缶になりたいと言う事カァン? 風変わりな風龍なのカァン」
  
〝そんな訳あるわけ無いだろうが。カインの召喚獣としての立場を、我と変我と言うことだ〟
  
「……はぁああああ!? ここにきて、配役チェンジカァアァアアアン!?」

 突然の風龍の言葉に、カンはいつもの様に叫ぶのであった。
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