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童話パロ:シンデレラ
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なにやら話し声が聞こえる?
「……だから、この機会に…」
「…んなこと言っても、なかなか…て……そ…だが…」
知らない男と女の会話。
薄靄のかかった頭で聞いていたらとんでもない単語が聞こえた。
「……だから、これを機会に蒼矢国王を毒で……」
あまりに不穏な単語にギョッとして目を開くが真っ暗なままだ。
あれ?一体ここは?
そう考えている間も話し声は聞こえてくる。
「……いい?機会は一度きり。…舞踏会のフィナーレに王子の相手が発表されるとき」
「ああ、その時ばかりは皆の目も王子の方で国王の飲みものなどに気をつけるモノなどいないだろうからな」
「そこで国王の飲み物に…」
……そのあとの乾杯で…、と話し声は途切れることなく続いているが、あまりの不穏な話にあたしはただ固まるしかない。
(い、一体何が?!)
おこってるんだーーーー!
やがて話が終わったのか、人が去っていく気配がした。
そこまでいって、あたしはそっとその場から動いた。
本当にここはどこだろう。見回すが暗くてよくわからない。
何かふかふかしたものの上にいることだけはわかるが、立ち上がろうともがくが、動けば動いくほど沈み込むためなかなか這い上がれなかった。
ようやく淵らしき硬い場所にしがみつき、脱出する。
地面に降り立って周囲を見回すと、目が闇になれたのかぼんやりとだが部屋の様子が見て取れた。
どうやらここはリネン室のようだ。
先ほど落ちたのはシーツを集めたコンテナだったようだ。
さて、どうしてそんな場所に私はいるのか。
考えるまでもなくあの自称神様のせいだろう。
しかも話の流れを考えるにどう考えてもここは城の中だろう。
やばい、どう考えてもここ関係者以外立ち入り禁止な場所だよね?
こんなところにいるのがバレたら、ヘタすりゃ投獄される。
いくら今日が国民を招いての舞踏会とは言え、一般客に解放されている場所など入口近くのエントランスホールだけだろう。
しかも先程触れたシーツは手触りから見ても、極上のシルクの混ざった高級品だ。
おそらく王族、あるいは貴族たちが使うものと考えるべきだ。
そんなものがあるリネン室など王宮深部と考えるべきで、そんなところに入り込んでいる女を怪しいと思わない人間がどこにいる。
見つかればおしまいだ。
(……それにしてもさっきの会話)
ここが王宮の深部と考えれば、とんでもない話になる。
どう聞いても国王暗殺計画の話し合いだったとしか思えない。
やばい、なんかとんでもないことを聞いてしまった。
どうしよう。どう考えても誰かに伝えるべきだろうけど、そもそもあの二人が誰だかもわからないし、あたし自身不可抗力とは言え不法侵入している身だ。
こんなところからのこのこ出ていき、衛兵に通報しても信じてもらうどころか捕まるのはあたしだ。
だが聞いた以上放っておくにはあまりに重大な内容すぎる。
今国王が暗殺されるようなことがあればきっと国は混乱してしまう。
実は蒼矢国が平和になったのはここ最近のことだ。
つい十年前まで前王の圧政により国内は荒れていた。
他国との戦争に加え、疫病が蔓延し、愚かな貴族は内乱を起こし、最早国家の存続すら危ぶまれていた。
そんな中先王の急逝を受けて十年前に即位したのが今の国王陛下だ。
突然の即位だったにも関わらず、あっという間に内乱を退け、周辺国との平和条約を結ぶなど戦争を終わらせた。
それだけでなく産業を新たに興し回復させ、疫病の治療に金を惜しまず、富める者も貧しい者もまとめて治療してくれる治療院なども建ててくれた。
これまで貴族だけのものだった魔道具を一般家庭にまで広めたのも現国王の功績で今や周辺国の中でも豊かな国となっている。
今の蒼矢の平和があるのは国王のおかげだ。
しかし回復しているとは言え、この十年で急激に発展した国だ。
しかもそれはカリスマ性に富んだ現国王の力によるところがほとんどで、まだまだ安定というには不安が残る。
そんな今、国王を失えばどうなるのか。
考えるだけでも恐ろしい。
とにかくどうするにしてもここからでなければ。
あたしは、なんとかここから誰にも見つからずに出る方法はないかと考える。
見ればあたしの服は今まできていた灰色のものではなく、上等の布で作られた紺色のお着せとエプロンドレスに変わっている。所謂女中服だ。
女中の振りをして外に出られないだろうか。
というか、それしか方法ないよな。うん。
先ほどの暗殺の話を誰に伝えるかも出てから考えようと、足を踏み出した時だった。
「っ!」
どべっ、何かにつまづいて盛大にこけた。
ううう、痛い。
誰だ、こんなところに物をおいたのは!
暗くて気づかなかったが足元に黒い箱のようなものがあり、あたしはそれにつまづいてしまったらしい。
一体なんなのかと、睨みつけたあたしは驚いた。
そのフォルムに見覚えがあったのだ。
(…え?これって)
見覚えというより聞き覚えか。
そろりと触るとつるっとした感触に固い表面。
大きさとしては小さな幼児くらいか。
四角い箱から細長いくだのようなものが伸びそれは束ねられ横に置かれている。
…うん、話に聞いていた形状と一致する。
あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。
(……これが高圧洗浄機)
持ち上げてみると見た目より軽い。
下をみれば移動しやすいように車輪がついている。女子でも手軽に持ち運べるようにか。
……完璧じゃないか。
(つ、使ってみたい…)
恐ろしい衝動が体を駆け抜ける。
一体これでどれほど汚れが落ちるのか。
今までこすっても取れなかったかなり強固な汚れでも取れるとか。
誘惑に洗浄機の取手に手が伸びそうになるが、理性が訴える。
(…まてまて、どう考えてもそんな場合じゃないでしょ?国を揺るがすかもしれない情報握ってるのよ?早くここからでて、誰かに伝えなきゃ!)
理性は必死でそう訴える。だが。
(いいじゃない。どうせこんな荒唐無稽な話、誰も信じないって。
それに王の警備だってザルじゃないんだし、大丈夫だって。
それより、こんな機会またあるかわからないんだし。
しかも今の服装女中だし、使ってるの誰かに見られても問題ないって)
そんな悪魔の誘惑が胸をくすぐる。
うううう。どうしたら。
いや、どうするのかなんて明らかに決まってるんだけどさ。
あたしは誘惑を振り払うように立ち上がった。
…………………………。
……………………。
………………。
ごろごろごろ。
ついていた取っ手を伸ばし、斜めにして車輪に重量を載せると簡単な力でそれは移動した。
(うわ…)
あまりに簡単な力で動いたものだから、感動する。
聞いた通りだ。この移動方法とんでもない。これが魔法じゃないとは驚きだ。
魔法使ってないところでこれなら魔法使ってるこれの威力ってどんなものなんだろう。
ああ、すっごく使ってみたい。
……さて、何をしてるとか突っ込まないでください。
誘惑に負けたんだよ!ううう!
だってさ、こんな機会絶対ないんだもん!
国王陛下の大事だってわかってるけど、一般庶民のあたしに何ができるってんだ!
自分の無力加減が半端ないが、仕方がないじゃないか!
というわけで若干の現実逃避にあたしは高圧洗浄機を引いてこれが使えそうな場所を探していた。
いや、脱出することも考えておりますよ?
でも考えてみれば外に出るなら今行われている舞踏会のお開きの時が一番怪しまれないかなと思うのだ。
人の波に乗って帰れば目立たない。
だったら急ぐこともない。
人に見つからないことだけ気をつけながら、ゴロゴロと洗浄機を引いて廊下を歩く。
それにしても、無駄に広い廊下だ。
お掃除の人の能力の高さか床にはチリ一つ落ちていない。
完璧だ。そう言えば王宮には塵を吸い取ってくれる小型の魔道具があるとか。
…それも機会があれば見てみないな。
いやいや、欲張るのは良くない。
今は高圧洗浄機を使う方が先決だ。
とりあえず外に出ることだよね。
人のいないバルコニーとかあると試せて素敵なんだけど。
とはいえ、舞踏会の最中だけあって、おそらく居住区だろうあたしのいる区画に人の姿はない。
正直気配を消したり警戒して歩くのなんて無理だからありがたい。
所詮あたしは普通の一般市民なのだ。特別な力も何もないです。
そんなことを考えながら歩いていたら、ふと廊下の奥に光が漏れている扉があった。
ありゃ、使用中?っていうか人がいる?
最初の第一王宮人遭遇か!?、に思わず緊張する。
いやいや、廊下を通りすぎるだけだから。
あたしは今洗浄機を引いた女中だから怪しいところはないはず。
……めちゃくちゃ怪しいじゃないか、あたしよ。
と、とりあえずただ通り過ぎればいいだけだ。
うん、扉もしまっているし問題はない、……はずだ。
意を決して足を踏み出そうとした時だった。
光の漏れる扉から足音が聞こえた。
…やばい、誰か出てくる?
あたしは慌てて手近にあった部屋への扉に手をかけた。
鍵が空いているか五分五分だったが、掛かっていなかった。
勢いよく開いて慌てて中に飛び込んだ。
扉を締めるのと隣の扉の開く音とは同時だった。
(あ、あぶなーーーい!)
心臓がばくばくしている。
本当にさっさと洗浄機試して城から出ていかなければ、身がもたん。
目線を上げればどうやら客室らしい部屋が見えた。
どうやら無人。
正面には大きな窓があり、そこには月明かりを受けたバルコニーが見えた。
その光景に思わず自分の幸運に感謝したくなった。
人のいない室内、バルコニーのある外に通じる窓。
高圧洗浄機を使うには最適な環境だ。
音を立てないように窓を開けて外を見る。
星あかりと鬱蒼と茂る森が見えた。
下をみれば高さがある。
どうやらここは三階らしい。まあバルコニーがある時点で二階以上だとは思ってたけど。
見回すとどこにも人口の光は見えない。
先程あかりのついていた隣の部屋からもあかりは見えなかった。
どうやら出て行ったようだとますます自分の幸運に感謝する。
これで音を気にせず洗浄機が試せる。
まあ、王宮の客室なんて、そもそも汚れ目が殆ど見られない場所だけど。
だがどういったものか試すだけでいいのだ。問題はない。
ウキウキしながら洗浄機をセットする。
おばさんが使ってもないだろうに細かく教えてくれてたから、どうやったらいいのかもわかっている。
空気中の水分を使っているらしいので水のないところでも使えるすぐれものらしい。
窓の外にホースを向けて、いざボタンを押した。
すると最初はゆっくりと霧状の水が出てきたが、すぐにすごい勢いに変わった。
勢いがすごいのにそんなに音はしない。静音設計、すばらしい。
(おお、なんか強力そう!)
勢いに押されてホースを取り落としそうになるが、力を入れて恐る恐るバルコニーの手すりに向かって吹き付けた。
するとそれまで汚れ一つなく白いと思っていたバルコニーの手すりだが、水をかけたところだけが一段と白さが鮮やかになっていく。
(おおお!)
まさかこれほどの威力だったとは、驚きだ。
つい夢中になって手すりに水を吹き付けていく。
使ったら使った分だけキレイになる手すりにあたしは夢中になった。
が、いくらか使ったところで、突然水が止まってしまう。
「あれ?」
スイッチを押してみるが、動かない。
もう一度押しても同じ、あたしは不安になってきた。
(……もしかして壊した?)
その考えに青ざめる。
最新式の魔道具だ。一体いくらするのかもわからない。
そんなものを壊したなんてあたしごときが弁償できるはずもない。
(まさかまさか)
最悪のことを考えながらも否定するように何度もスイッチを押すが洗浄機は動かない。
若干焦りながら、つまりがないかとホースの先端を覗き込んだ時だった。
ぶしゃっ!
「うはっ!」
突然起動した高圧洗浄機の水があたしめがけて飛んでくる。
幸い顔から僅かに外れていたため直撃は受けなかったが、驚いた際に手を離したためホースが勢い余って暴れた。
「わわわわ!」
慌ててホースを抑えようとするが、勢いが強すぎて抑えきれない。
あっという間に振りまかれた水で室内が水浸しになる。
ようやく本体を止めればいいことに気がついてスイッチを切ると、水は止まった。
ホッとするが、部屋の惨状に呆然とするしかない。
室内は水浸しで天井にも水滴が散っている。
かくいうあたしも煽りを受けてびしょ濡れだ。
ううう、美人なら水も滴るだが、そうでないあたしなんぞはただの濡れ鼠だ。
(し、失敗した…)
あまりの惨状に片付ける方法も思いつけない。
これは自首して状況を話す他ないか。
いや、どう考えても自殺行為にしかならないな。
どうしたらいいのか考えあぐねるが、解決方法など思いつけるはずもない。
(ううう、どうしたら最善なんだ!)
頭を抱えている時だった。
「……そこで何をしている?」
突然かかった声に驚く。
顔を上げればそこには廊下に続く扉の前に男が立っていた。
舞踏会の出席者だろうか。
豪奢な衣装にキラキラと装飾のついた仮面をつけている。
それがいかにも高級そうでひと目で貴族ということが知れる。
「あ、の。その。」
状況的に言い逃れができない。
するつもりもないが、流石に突然のことにうまく言葉が出なかった。
そうしているあいだに予想外のことが起きた。
ばたんっ!
「え?」
突然目の前の男がふらりと揺れたと思ったら後ろに倒れた。
あまりのことに呆気にとられた。
一体何がおこった?
恐る恐る男のそばに近づけば、完全に伸びている。
僅かに動くうわごとのように僅かに聞こえる言葉は。
「…ゆ、…幽霊…」
……ちょっと自分の今の様子を思い出してみようか。
あたりは水浸し。あたしも濡れ鼠。
天井からはポタポタと水。部屋にはあかりはなく青白い月明かりのみが差し込んでいる。
その中に佇む、ぼうっと浮かび上がる濡れた女の姿。
……うん、ホラーだね。
つまりはどうやらこの男はあたしを幽霊だと勘違いして気を失ったのだろう。
…つまりはヘタレか。
豪華な格好したヘタレなんだな!
ああ、ビビって損した。
とりあえず倒れてしまった男をどうするか。
不可抗力とは言え、流石にこちらが怖がらせてしまったのだからあたしは関係ないと放置するのも気が引ける。
けれど、室内は水浸しでベッドに寝かしつけるのも無理だ。
その前にあたしより身長のあるこの男を一人で運ぶのはそもそも無理がある。
仕方なくあたしは、濡れてなさそうなシーツをベッドから剥ぎ取り、枕とともに男の体にかけてやった。
ふう、今は温かい季節だしこれで風邪も引くまい。
これ以上のことをしろと言われてもあたしには無理なので、勘弁してください。
それにしてもこの男誰だろう。
そう言えば今回の舞踏会の趣向として仮面舞踏会だということを思い出す。
まあ、とどのつまり身分に関係なく、王子と添い遂げられる相手を見つけよーという趣旨のもと、身分の低い女でも近づきやすいよう取り計らったわけだ。
…というかそこまでしなきゃ、王妃の一人も決まらんのかこの国は。
情けなくて頭の痛い思いだが、男の服装を見るにどうもなかなか身分の高い貴族であることは伺えた。
ふと、先程聞いた国王暗殺計画のことを思い出す。
もしかしてこの男に話しておけば、何とかしてくれるかもしれない。
流石に先ほどの話を聞いて、何もしないというのも国民としてどうかと思っていたのだ。
自分にできることがないため現実逃避でごまかそうとはしたが、できることがあるならやっておきたかった。
床で伸びているのはヘタレっぽいけど身分はありそうだ男だ。
だがこんな身分の高そうな男が幽霊に見間違えられるような貧素な女中の話を聞いてくれるか、そこが問題だった。
そもそもここで何をしているのか聞かれたら、まずいのなのはこちらだしな。
悶々としていると、床で伸びていた男が身じろいだ気配がした。
「う……」
うめき声と共にヘタレ仮面男が頭を抑えながら起き上がった。
一瞬逃げようかと思ったけど、覚悟を決めて男の前に立った。
「おはようございます」
あたしの声に寝惚けているのか男がゆっくりと顔を向けてくる。
そうして
「俺をたたっても意味はない!…じょ、成仏しろ!」
あたしを見るなりブルブル震え始めたよ、この男。
…なんだ?もしかしてこの人あたしをまだ幽霊だと勘違いしているのか?
試しに、手の甲の力を抜いて胸元に掲げてみせる。
「うらめしや~」
「ひいっ!」
短い悲鳴、…まじかよ。
なんというヘタレ…ん、まてよ?
考えてみればこれは好機じゃないか?
あたしを幽霊だと思っているなら、たぶんビビってくれている分あたしの話を聞いてくれるだろう。
それにうまくすれば、どうしてここにいたのかまるっとごまかした上で姿を消してもたぶんこの男ならあたしを追わないだろう。
なんだ、一石二鳥じゃないか!
あたしは俄然やる気になった。
とりあえず幽霊らしき演技をするためうらめしやなポーズのまま彼に話しかける。
「……ちょっと、いいですか?」
「っ!ち、近寄るな!」
おお、なんか騙されてくれてるな、よしよし。
顔を真っ青にして後ずさる派手な衣装の男を追い詰めるずぶ濡れのメイド服を来たあたし。なんというかシュールな光景だな。まあいいけど。
あたしは緊張しつつ、男を説得するため一歩踏み出した。
「……話を…」
「っ!」
「聞いて…」
「っっ!」
あたしが一歩踏み出すたびに男は一歩分後退する。
男のあまりの怯えようにだんだんイラついてきた。
「あの…」
「っっっ!!!」
「話を聞けーーーーー!」
とうとうあたしは切れて一足飛びに男に詰め寄った。
男は硬直して言葉もないようだが、どうでもいい。
こちらだって必死なのだ。それなのにこの態度では普段あまり気の短い方ではないと思っているあたしだって怒る。
あたしは後退し壁際まで追い詰めた男に指を突きつけた。
「いい?よく聞きなさい!今日国王が暗殺の危機にあるわ!」
「え?」
流石のことの重大さが伝わったのか相手の男の纏う雰囲気が変わった。
だが怒りが先にあるあたしはそのまま話を続けた。
「いい?あたしは聞いたの。犯人は男と女の二人連れ。
誰だかわからないけど、今日の王子のお相手お披露目の時にみんなが王子の方に気を取られている時に王の杯に毒を仕込むって言っていたわ!」
「それは本当か?」
そこであたしはようやく目の前の男が纏う雰囲気を一変させているのに気がついた。
気がつけば壁際に追いやられていたはずの男がむしろこちらに身を乗り出すようにしてあたしを見下ろしている。
背が高いため早々見下ろされることに慣れていないあたしはなんだか落ち着かなくなって視線を逸した。
「嘘を言ってどうするの?こんな重要なこと。
……そもそも幽霊のあたしが嘘を言って何の得があるって言うの?」
幽霊の言葉が本当に証言の信憑性の裏付けに甚だ疑問はあるが、今はそれで納得してもらうしかない。
「……やっぱり幽霊なのか?」
「……そうよ。だから国王にこのことを伝えて。あたしじゃ誰にも伝えられない」
悔しいが、所詮身分のないに等しいあたしじゃ誰も信じてくれない。
幽霊よりも信頼性が低いのだ、あたしごときの発言は。
卑下しているわけじゃない、事実だ。
こんな国の一大事だというのに何もできない自分が不甲斐ない。
泣きそうになるが、泣いても意味がないことは重々承知してるから泣かない。
その代わり、精一杯目の前の男に自分が幽霊であるという演技をすることで納得してもらう。うまくいってるかは別として。
そんなあたしに何を思っているのだろうか。男は考えるように無言だったが、しばらくしてから口を開いた。
「誰にも伝えられない?お前は俺以外に見えないのか?」
そんなわけはない。しかし、そういうことにしておいたほうがいいのかもしれない。
「……そうよ」
「……お前は…」
それだけつぶやいて黙ってしまう男にあたしは首をかしげた。
なんだ?
無言の男になんだかあたしはイライラしてくる。
こうしている間にも時間は確実に経っているのだ。
もしこの間に王子のお相手のお披露目が行われていたらと思うと気が気でない。
ううう、さっきの現実逃避の時間がもったいなかったな。
やっぱり無茶を承知であの時さっさと衛兵に通報しておけばよかったのだろうか。
うっすらと覚えている。
現在の国王が統治する前のこの国は本当にひどい状況だった。
多くの罪のない人が死んだ。疫病が流行っても皆栄養状態が悪くて死んでいったのだ。
かくいうあたしの生母も流行病で倒れ回復することなく死んでいった。
母を亡くしたあたしにさらに父の事業の傾きが襲った。
そもそもこの事象も先王が起こした戦が原因だった。
もうあんな時代が来て欲しくなかった。
王子がどんな人間かは知らないが、まだ年若い若造だ。
大分立ち直ったとは言えまだまだ、不安定なこの国を平に収めるのは無理だ。
下手すれば、またあの暗黒時代に逆戻りだ。
あんな時代が再びめぐるくらいなら自分の身の安全なんか考えずに訴えでればよかった。
あの時の自分の意気地のなさになんだか泣けてくる。
泣いても意味はないのは承知しているのに、どうしてあたしはこんなに弱いんだろう?
思わずこぼれそうになる涙に突然男の手が伸びて目尻を拭う。
「…泣くな?」
温かい指先になぜかさらなる涙腺が刺激されて、ポロポロと落ちてしまう。
「…泣いてない」
自分の弱さを指摘されたくなくて意地を張った。そんなあたしに呆れた声が降ってくる。
「泣いてるじゃないか?……幽霊でも泣くんだな?」
ボロボロと流れる涙を指で受け止める男の仕草がやけに優しくて、弱くなった心に温かい。
だがそんなものに溺れている訳にはいかない。
あたしは男の手を払った。
「ねえ、そんなことより早く国王に……。って、何すんの?」
気がつくと今度はあたしの手を男が掴んで来た。
「…幽霊なのに触れられるんだな?」
その言葉と仮面の奥の鋭く光る瞳にぎくりとする。
どうやら幽霊であることを疑っているのだということがわかった。
というか、当たり前だ。あたしは実際に幽霊じゃないんだから。
しかし生身の人間でバレるのはまずい。
「…あ、あなたにだけよ。たぶん見える人なら触れるんじゃない?」
そう言えば、仮面の奥の目が見開かれるのを感じる。
え?なんか変なこと言ったか?
幽霊前提なので違和感を覚えるほどおかしな内容ではないと思うのだけど。
分からず、ぐるぐる考えていると掴まれた手に指が絡まりギュと握られた。
何事かと思って見上げると視線がバッチリ合う。
「へえ?幽霊ってそうなんだな」
言葉とともに目を細められ、あたしは何か自分がとんでもなく追い詰められているように感じてしまった。そんなに変なことをいったつもりはなかったのになぜだ。
なんかすっごい疑われてる感じに背中に汗がダラダラと流れる。
くっそう、幽霊見て気絶するようなヘタレのくせに生意気な。
とりあえずさっさとこの場を切り抜けるべく、口を開く。
「とにかく国王に言ってよ!今すぐ舞踏会中止するようにって。どう考えてもアブナイでしょ?」
「それは無理だな」
「な、なんで?」
「そりゃそうだろう。今回の舞踏会は王子の花嫁を選ぶものだ」
男が言うには出席者が多い上、他国の要人も呼んでおりそうそう簡単に中止にはできないという。人の誘導だけでも大変だし、何より不確かな情報で国王自らが中止を発表すれば臆病者の謗りを国王が受ける可能性がある。
その話を聞いて、目の前が真っ暗になる。
結局あたしは何もできないのか?
あたしの情報はなんの役にも立たなかった?
無力感に押しつぶされそうになったあたしの頭を男が優しくポンポンと撫でてくれる。
「そう落ち込むな、中止にはできなくても国王を守る方法なんていくらでもある」
「そ、そうなの?」
思わず身を乗り出すと男は驚いたように身を引いた。
幽霊が怖いからか?だがそんなこと構うものか。
「国王は安全なのね?死なないわよね?」
「…ああ、俺がちゃんと守る。死なせない。我が名に誓って」
あたしは男のことなど知らない。
身分も名前も、性格なんかも先程あったばかりでわかるはずもない。
だが、なぜかひどく頼もしく感じた。幽霊を見て気絶するようなヘタレなのになぜそう思ったのかわからないが、彼に任せれば大丈夫だと心の底から思えた。
「…ありがとう。お願いします」
だからあたしは安心して微笑みながら、深々と頭を下げた。
なぜか男が硬直している。
仮面の奥の瞳が驚いたように見開いているのを見てあたしは怪訝に思った。
幽霊がお礼を言うのはそんなに変なことなのか?
まあ、とりあえずそんなことはどうでもいいので、さっさと国王を助けに行ってください。
マジでお願いするよ。国のためなんだ。
「……だから、この機会に…」
「…んなこと言っても、なかなか…て……そ…だが…」
知らない男と女の会話。
薄靄のかかった頭で聞いていたらとんでもない単語が聞こえた。
「……だから、これを機会に蒼矢国王を毒で……」
あまりに不穏な単語にギョッとして目を開くが真っ暗なままだ。
あれ?一体ここは?
そう考えている間も話し声は聞こえてくる。
「……いい?機会は一度きり。…舞踏会のフィナーレに王子の相手が発表されるとき」
「ああ、その時ばかりは皆の目も王子の方で国王の飲みものなどに気をつけるモノなどいないだろうからな」
「そこで国王の飲み物に…」
……そのあとの乾杯で…、と話し声は途切れることなく続いているが、あまりの不穏な話にあたしはただ固まるしかない。
(い、一体何が?!)
おこってるんだーーーー!
やがて話が終わったのか、人が去っていく気配がした。
そこまでいって、あたしはそっとその場から動いた。
本当にここはどこだろう。見回すが暗くてよくわからない。
何かふかふかしたものの上にいることだけはわかるが、立ち上がろうともがくが、動けば動いくほど沈み込むためなかなか這い上がれなかった。
ようやく淵らしき硬い場所にしがみつき、脱出する。
地面に降り立って周囲を見回すと、目が闇になれたのかぼんやりとだが部屋の様子が見て取れた。
どうやらここはリネン室のようだ。
先ほど落ちたのはシーツを集めたコンテナだったようだ。
さて、どうしてそんな場所に私はいるのか。
考えるまでもなくあの自称神様のせいだろう。
しかも話の流れを考えるにどう考えてもここは城の中だろう。
やばい、どう考えてもここ関係者以外立ち入り禁止な場所だよね?
こんなところにいるのがバレたら、ヘタすりゃ投獄される。
いくら今日が国民を招いての舞踏会とは言え、一般客に解放されている場所など入口近くのエントランスホールだけだろう。
しかも先程触れたシーツは手触りから見ても、極上のシルクの混ざった高級品だ。
おそらく王族、あるいは貴族たちが使うものと考えるべきだ。
そんなものがあるリネン室など王宮深部と考えるべきで、そんなところに入り込んでいる女を怪しいと思わない人間がどこにいる。
見つかればおしまいだ。
(……それにしてもさっきの会話)
ここが王宮の深部と考えれば、とんでもない話になる。
どう聞いても国王暗殺計画の話し合いだったとしか思えない。
やばい、なんかとんでもないことを聞いてしまった。
どうしよう。どう考えても誰かに伝えるべきだろうけど、そもそもあの二人が誰だかもわからないし、あたし自身不可抗力とは言え不法侵入している身だ。
こんなところからのこのこ出ていき、衛兵に通報しても信じてもらうどころか捕まるのはあたしだ。
だが聞いた以上放っておくにはあまりに重大な内容すぎる。
今国王が暗殺されるようなことがあればきっと国は混乱してしまう。
実は蒼矢国が平和になったのはここ最近のことだ。
つい十年前まで前王の圧政により国内は荒れていた。
他国との戦争に加え、疫病が蔓延し、愚かな貴族は内乱を起こし、最早国家の存続すら危ぶまれていた。
そんな中先王の急逝を受けて十年前に即位したのが今の国王陛下だ。
突然の即位だったにも関わらず、あっという間に内乱を退け、周辺国との平和条約を結ぶなど戦争を終わらせた。
それだけでなく産業を新たに興し回復させ、疫病の治療に金を惜しまず、富める者も貧しい者もまとめて治療してくれる治療院なども建ててくれた。
これまで貴族だけのものだった魔道具を一般家庭にまで広めたのも現国王の功績で今や周辺国の中でも豊かな国となっている。
今の蒼矢の平和があるのは国王のおかげだ。
しかし回復しているとは言え、この十年で急激に発展した国だ。
しかもそれはカリスマ性に富んだ現国王の力によるところがほとんどで、まだまだ安定というには不安が残る。
そんな今、国王を失えばどうなるのか。
考えるだけでも恐ろしい。
とにかくどうするにしてもここからでなければ。
あたしは、なんとかここから誰にも見つからずに出る方法はないかと考える。
見ればあたしの服は今まできていた灰色のものではなく、上等の布で作られた紺色のお着せとエプロンドレスに変わっている。所謂女中服だ。
女中の振りをして外に出られないだろうか。
というか、それしか方法ないよな。うん。
先ほどの暗殺の話を誰に伝えるかも出てから考えようと、足を踏み出した時だった。
「っ!」
どべっ、何かにつまづいて盛大にこけた。
ううう、痛い。
誰だ、こんなところに物をおいたのは!
暗くて気づかなかったが足元に黒い箱のようなものがあり、あたしはそれにつまづいてしまったらしい。
一体なんなのかと、睨みつけたあたしは驚いた。
そのフォルムに見覚えがあったのだ。
(…え?これって)
見覚えというより聞き覚えか。
そろりと触るとつるっとした感触に固い表面。
大きさとしては小さな幼児くらいか。
四角い箱から細長いくだのようなものが伸びそれは束ねられ横に置かれている。
…うん、話に聞いていた形状と一致する。
あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。
(……これが高圧洗浄機)
持ち上げてみると見た目より軽い。
下をみれば移動しやすいように車輪がついている。女子でも手軽に持ち運べるようにか。
……完璧じゃないか。
(つ、使ってみたい…)
恐ろしい衝動が体を駆け抜ける。
一体これでどれほど汚れが落ちるのか。
今までこすっても取れなかったかなり強固な汚れでも取れるとか。
誘惑に洗浄機の取手に手が伸びそうになるが、理性が訴える。
(…まてまて、どう考えてもそんな場合じゃないでしょ?国を揺るがすかもしれない情報握ってるのよ?早くここからでて、誰かに伝えなきゃ!)
理性は必死でそう訴える。だが。
(いいじゃない。どうせこんな荒唐無稽な話、誰も信じないって。
それに王の警備だってザルじゃないんだし、大丈夫だって。
それより、こんな機会またあるかわからないんだし。
しかも今の服装女中だし、使ってるの誰かに見られても問題ないって)
そんな悪魔の誘惑が胸をくすぐる。
うううう。どうしたら。
いや、どうするのかなんて明らかに決まってるんだけどさ。
あたしは誘惑を振り払うように立ち上がった。
…………………………。
……………………。
………………。
ごろごろごろ。
ついていた取っ手を伸ばし、斜めにして車輪に重量を載せると簡単な力でそれは移動した。
(うわ…)
あまりに簡単な力で動いたものだから、感動する。
聞いた通りだ。この移動方法とんでもない。これが魔法じゃないとは驚きだ。
魔法使ってないところでこれなら魔法使ってるこれの威力ってどんなものなんだろう。
ああ、すっごく使ってみたい。
……さて、何をしてるとか突っ込まないでください。
誘惑に負けたんだよ!ううう!
だってさ、こんな機会絶対ないんだもん!
国王陛下の大事だってわかってるけど、一般庶民のあたしに何ができるってんだ!
自分の無力加減が半端ないが、仕方がないじゃないか!
というわけで若干の現実逃避にあたしは高圧洗浄機を引いてこれが使えそうな場所を探していた。
いや、脱出することも考えておりますよ?
でも考えてみれば外に出るなら今行われている舞踏会のお開きの時が一番怪しまれないかなと思うのだ。
人の波に乗って帰れば目立たない。
だったら急ぐこともない。
人に見つからないことだけ気をつけながら、ゴロゴロと洗浄機を引いて廊下を歩く。
それにしても、無駄に広い廊下だ。
お掃除の人の能力の高さか床にはチリ一つ落ちていない。
完璧だ。そう言えば王宮には塵を吸い取ってくれる小型の魔道具があるとか。
…それも機会があれば見てみないな。
いやいや、欲張るのは良くない。
今は高圧洗浄機を使う方が先決だ。
とりあえず外に出ることだよね。
人のいないバルコニーとかあると試せて素敵なんだけど。
とはいえ、舞踏会の最中だけあって、おそらく居住区だろうあたしのいる区画に人の姿はない。
正直気配を消したり警戒して歩くのなんて無理だからありがたい。
所詮あたしは普通の一般市民なのだ。特別な力も何もないです。
そんなことを考えながら歩いていたら、ふと廊下の奥に光が漏れている扉があった。
ありゃ、使用中?っていうか人がいる?
最初の第一王宮人遭遇か!?、に思わず緊張する。
いやいや、廊下を通りすぎるだけだから。
あたしは今洗浄機を引いた女中だから怪しいところはないはず。
……めちゃくちゃ怪しいじゃないか、あたしよ。
と、とりあえずただ通り過ぎればいいだけだ。
うん、扉もしまっているし問題はない、……はずだ。
意を決して足を踏み出そうとした時だった。
光の漏れる扉から足音が聞こえた。
…やばい、誰か出てくる?
あたしは慌てて手近にあった部屋への扉に手をかけた。
鍵が空いているか五分五分だったが、掛かっていなかった。
勢いよく開いて慌てて中に飛び込んだ。
扉を締めるのと隣の扉の開く音とは同時だった。
(あ、あぶなーーーい!)
心臓がばくばくしている。
本当にさっさと洗浄機試して城から出ていかなければ、身がもたん。
目線を上げればどうやら客室らしい部屋が見えた。
どうやら無人。
正面には大きな窓があり、そこには月明かりを受けたバルコニーが見えた。
その光景に思わず自分の幸運に感謝したくなった。
人のいない室内、バルコニーのある外に通じる窓。
高圧洗浄機を使うには最適な環境だ。
音を立てないように窓を開けて外を見る。
星あかりと鬱蒼と茂る森が見えた。
下をみれば高さがある。
どうやらここは三階らしい。まあバルコニーがある時点で二階以上だとは思ってたけど。
見回すとどこにも人口の光は見えない。
先程あかりのついていた隣の部屋からもあかりは見えなかった。
どうやら出て行ったようだとますます自分の幸運に感謝する。
これで音を気にせず洗浄機が試せる。
まあ、王宮の客室なんて、そもそも汚れ目が殆ど見られない場所だけど。
だがどういったものか試すだけでいいのだ。問題はない。
ウキウキしながら洗浄機をセットする。
おばさんが使ってもないだろうに細かく教えてくれてたから、どうやったらいいのかもわかっている。
空気中の水分を使っているらしいので水のないところでも使えるすぐれものらしい。
窓の外にホースを向けて、いざボタンを押した。
すると最初はゆっくりと霧状の水が出てきたが、すぐにすごい勢いに変わった。
勢いがすごいのにそんなに音はしない。静音設計、すばらしい。
(おお、なんか強力そう!)
勢いに押されてホースを取り落としそうになるが、力を入れて恐る恐るバルコニーの手すりに向かって吹き付けた。
するとそれまで汚れ一つなく白いと思っていたバルコニーの手すりだが、水をかけたところだけが一段と白さが鮮やかになっていく。
(おおお!)
まさかこれほどの威力だったとは、驚きだ。
つい夢中になって手すりに水を吹き付けていく。
使ったら使った分だけキレイになる手すりにあたしは夢中になった。
が、いくらか使ったところで、突然水が止まってしまう。
「あれ?」
スイッチを押してみるが、動かない。
もう一度押しても同じ、あたしは不安になってきた。
(……もしかして壊した?)
その考えに青ざめる。
最新式の魔道具だ。一体いくらするのかもわからない。
そんなものを壊したなんてあたしごときが弁償できるはずもない。
(まさかまさか)
最悪のことを考えながらも否定するように何度もスイッチを押すが洗浄機は動かない。
若干焦りながら、つまりがないかとホースの先端を覗き込んだ時だった。
ぶしゃっ!
「うはっ!」
突然起動した高圧洗浄機の水があたしめがけて飛んでくる。
幸い顔から僅かに外れていたため直撃は受けなかったが、驚いた際に手を離したためホースが勢い余って暴れた。
「わわわわ!」
慌ててホースを抑えようとするが、勢いが強すぎて抑えきれない。
あっという間に振りまかれた水で室内が水浸しになる。
ようやく本体を止めればいいことに気がついてスイッチを切ると、水は止まった。
ホッとするが、部屋の惨状に呆然とするしかない。
室内は水浸しで天井にも水滴が散っている。
かくいうあたしも煽りを受けてびしょ濡れだ。
ううう、美人なら水も滴るだが、そうでないあたしなんぞはただの濡れ鼠だ。
(し、失敗した…)
あまりの惨状に片付ける方法も思いつけない。
これは自首して状況を話す他ないか。
いや、どう考えても自殺行為にしかならないな。
どうしたらいいのか考えあぐねるが、解決方法など思いつけるはずもない。
(ううう、どうしたら最善なんだ!)
頭を抱えている時だった。
「……そこで何をしている?」
突然かかった声に驚く。
顔を上げればそこには廊下に続く扉の前に男が立っていた。
舞踏会の出席者だろうか。
豪奢な衣装にキラキラと装飾のついた仮面をつけている。
それがいかにも高級そうでひと目で貴族ということが知れる。
「あ、の。その。」
状況的に言い逃れができない。
するつもりもないが、流石に突然のことにうまく言葉が出なかった。
そうしているあいだに予想外のことが起きた。
ばたんっ!
「え?」
突然目の前の男がふらりと揺れたと思ったら後ろに倒れた。
あまりのことに呆気にとられた。
一体何がおこった?
恐る恐る男のそばに近づけば、完全に伸びている。
僅かに動くうわごとのように僅かに聞こえる言葉は。
「…ゆ、…幽霊…」
……ちょっと自分の今の様子を思い出してみようか。
あたりは水浸し。あたしも濡れ鼠。
天井からはポタポタと水。部屋にはあかりはなく青白い月明かりのみが差し込んでいる。
その中に佇む、ぼうっと浮かび上がる濡れた女の姿。
……うん、ホラーだね。
つまりはどうやらこの男はあたしを幽霊だと勘違いして気を失ったのだろう。
…つまりはヘタレか。
豪華な格好したヘタレなんだな!
ああ、ビビって損した。
とりあえず倒れてしまった男をどうするか。
不可抗力とは言え、流石にこちらが怖がらせてしまったのだからあたしは関係ないと放置するのも気が引ける。
けれど、室内は水浸しでベッドに寝かしつけるのも無理だ。
その前にあたしより身長のあるこの男を一人で運ぶのはそもそも無理がある。
仕方なくあたしは、濡れてなさそうなシーツをベッドから剥ぎ取り、枕とともに男の体にかけてやった。
ふう、今は温かい季節だしこれで風邪も引くまい。
これ以上のことをしろと言われてもあたしには無理なので、勘弁してください。
それにしてもこの男誰だろう。
そう言えば今回の舞踏会の趣向として仮面舞踏会だということを思い出す。
まあ、とどのつまり身分に関係なく、王子と添い遂げられる相手を見つけよーという趣旨のもと、身分の低い女でも近づきやすいよう取り計らったわけだ。
…というかそこまでしなきゃ、王妃の一人も決まらんのかこの国は。
情けなくて頭の痛い思いだが、男の服装を見るにどうもなかなか身分の高い貴族であることは伺えた。
ふと、先程聞いた国王暗殺計画のことを思い出す。
もしかしてこの男に話しておけば、何とかしてくれるかもしれない。
流石に先ほどの話を聞いて、何もしないというのも国民としてどうかと思っていたのだ。
自分にできることがないため現実逃避でごまかそうとはしたが、できることがあるならやっておきたかった。
床で伸びているのはヘタレっぽいけど身分はありそうだ男だ。
だがこんな身分の高そうな男が幽霊に見間違えられるような貧素な女中の話を聞いてくれるか、そこが問題だった。
そもそもここで何をしているのか聞かれたら、まずいのなのはこちらだしな。
悶々としていると、床で伸びていた男が身じろいだ気配がした。
「う……」
うめき声と共にヘタレ仮面男が頭を抑えながら起き上がった。
一瞬逃げようかと思ったけど、覚悟を決めて男の前に立った。
「おはようございます」
あたしの声に寝惚けているのか男がゆっくりと顔を向けてくる。
そうして
「俺をたたっても意味はない!…じょ、成仏しろ!」
あたしを見るなりブルブル震え始めたよ、この男。
…なんだ?もしかしてこの人あたしをまだ幽霊だと勘違いしているのか?
試しに、手の甲の力を抜いて胸元に掲げてみせる。
「うらめしや~」
「ひいっ!」
短い悲鳴、…まじかよ。
なんというヘタレ…ん、まてよ?
考えてみればこれは好機じゃないか?
あたしを幽霊だと思っているなら、たぶんビビってくれている分あたしの話を聞いてくれるだろう。
それにうまくすれば、どうしてここにいたのかまるっとごまかした上で姿を消してもたぶんこの男ならあたしを追わないだろう。
なんだ、一石二鳥じゃないか!
あたしは俄然やる気になった。
とりあえず幽霊らしき演技をするためうらめしやなポーズのまま彼に話しかける。
「……ちょっと、いいですか?」
「っ!ち、近寄るな!」
おお、なんか騙されてくれてるな、よしよし。
顔を真っ青にして後ずさる派手な衣装の男を追い詰めるずぶ濡れのメイド服を来たあたし。なんというかシュールな光景だな。まあいいけど。
あたしは緊張しつつ、男を説得するため一歩踏み出した。
「……話を…」
「っ!」
「聞いて…」
「っっ!」
あたしが一歩踏み出すたびに男は一歩分後退する。
男のあまりの怯えようにだんだんイラついてきた。
「あの…」
「っっっ!!!」
「話を聞けーーーーー!」
とうとうあたしは切れて一足飛びに男に詰め寄った。
男は硬直して言葉もないようだが、どうでもいい。
こちらだって必死なのだ。それなのにこの態度では普段あまり気の短い方ではないと思っているあたしだって怒る。
あたしは後退し壁際まで追い詰めた男に指を突きつけた。
「いい?よく聞きなさい!今日国王が暗殺の危機にあるわ!」
「え?」
流石のことの重大さが伝わったのか相手の男の纏う雰囲気が変わった。
だが怒りが先にあるあたしはそのまま話を続けた。
「いい?あたしは聞いたの。犯人は男と女の二人連れ。
誰だかわからないけど、今日の王子のお相手お披露目の時にみんなが王子の方に気を取られている時に王の杯に毒を仕込むって言っていたわ!」
「それは本当か?」
そこであたしはようやく目の前の男が纏う雰囲気を一変させているのに気がついた。
気がつけば壁際に追いやられていたはずの男がむしろこちらに身を乗り出すようにしてあたしを見下ろしている。
背が高いため早々見下ろされることに慣れていないあたしはなんだか落ち着かなくなって視線を逸した。
「嘘を言ってどうするの?こんな重要なこと。
……そもそも幽霊のあたしが嘘を言って何の得があるって言うの?」
幽霊の言葉が本当に証言の信憑性の裏付けに甚だ疑問はあるが、今はそれで納得してもらうしかない。
「……やっぱり幽霊なのか?」
「……そうよ。だから国王にこのことを伝えて。あたしじゃ誰にも伝えられない」
悔しいが、所詮身分のないに等しいあたしじゃ誰も信じてくれない。
幽霊よりも信頼性が低いのだ、あたしごときの発言は。
卑下しているわけじゃない、事実だ。
こんな国の一大事だというのに何もできない自分が不甲斐ない。
泣きそうになるが、泣いても意味がないことは重々承知してるから泣かない。
その代わり、精一杯目の前の男に自分が幽霊であるという演技をすることで納得してもらう。うまくいってるかは別として。
そんなあたしに何を思っているのだろうか。男は考えるように無言だったが、しばらくしてから口を開いた。
「誰にも伝えられない?お前は俺以外に見えないのか?」
そんなわけはない。しかし、そういうことにしておいたほうがいいのかもしれない。
「……そうよ」
「……お前は…」
それだけつぶやいて黙ってしまう男にあたしは首をかしげた。
なんだ?
無言の男になんだかあたしはイライラしてくる。
こうしている間にも時間は確実に経っているのだ。
もしこの間に王子のお相手のお披露目が行われていたらと思うと気が気でない。
ううう、さっきの現実逃避の時間がもったいなかったな。
やっぱり無茶を承知であの時さっさと衛兵に通報しておけばよかったのだろうか。
うっすらと覚えている。
現在の国王が統治する前のこの国は本当にひどい状況だった。
多くの罪のない人が死んだ。疫病が流行っても皆栄養状態が悪くて死んでいったのだ。
かくいうあたしの生母も流行病で倒れ回復することなく死んでいった。
母を亡くしたあたしにさらに父の事業の傾きが襲った。
そもそもこの事象も先王が起こした戦が原因だった。
もうあんな時代が来て欲しくなかった。
王子がどんな人間かは知らないが、まだ年若い若造だ。
大分立ち直ったとは言えまだまだ、不安定なこの国を平に収めるのは無理だ。
下手すれば、またあの暗黒時代に逆戻りだ。
あんな時代が再びめぐるくらいなら自分の身の安全なんか考えずに訴えでればよかった。
あの時の自分の意気地のなさになんだか泣けてくる。
泣いても意味はないのは承知しているのに、どうしてあたしはこんなに弱いんだろう?
思わずこぼれそうになる涙に突然男の手が伸びて目尻を拭う。
「…泣くな?」
温かい指先になぜかさらなる涙腺が刺激されて、ポロポロと落ちてしまう。
「…泣いてない」
自分の弱さを指摘されたくなくて意地を張った。そんなあたしに呆れた声が降ってくる。
「泣いてるじゃないか?……幽霊でも泣くんだな?」
ボロボロと流れる涙を指で受け止める男の仕草がやけに優しくて、弱くなった心に温かい。
だがそんなものに溺れている訳にはいかない。
あたしは男の手を払った。
「ねえ、そんなことより早く国王に……。って、何すんの?」
気がつくと今度はあたしの手を男が掴んで来た。
「…幽霊なのに触れられるんだな?」
その言葉と仮面の奥の鋭く光る瞳にぎくりとする。
どうやら幽霊であることを疑っているのだということがわかった。
というか、当たり前だ。あたしは実際に幽霊じゃないんだから。
しかし生身の人間でバレるのはまずい。
「…あ、あなたにだけよ。たぶん見える人なら触れるんじゃない?」
そう言えば、仮面の奥の目が見開かれるのを感じる。
え?なんか変なこと言ったか?
幽霊前提なので違和感を覚えるほどおかしな内容ではないと思うのだけど。
分からず、ぐるぐる考えていると掴まれた手に指が絡まりギュと握られた。
何事かと思って見上げると視線がバッチリ合う。
「へえ?幽霊ってそうなんだな」
言葉とともに目を細められ、あたしは何か自分がとんでもなく追い詰められているように感じてしまった。そんなに変なことをいったつもりはなかったのになぜだ。
なんかすっごい疑われてる感じに背中に汗がダラダラと流れる。
くっそう、幽霊見て気絶するようなヘタレのくせに生意気な。
とりあえずさっさとこの場を切り抜けるべく、口を開く。
「とにかく国王に言ってよ!今すぐ舞踏会中止するようにって。どう考えてもアブナイでしょ?」
「それは無理だな」
「な、なんで?」
「そりゃそうだろう。今回の舞踏会は王子の花嫁を選ぶものだ」
男が言うには出席者が多い上、他国の要人も呼んでおりそうそう簡単に中止にはできないという。人の誘導だけでも大変だし、何より不確かな情報で国王自らが中止を発表すれば臆病者の謗りを国王が受ける可能性がある。
その話を聞いて、目の前が真っ暗になる。
結局あたしは何もできないのか?
あたしの情報はなんの役にも立たなかった?
無力感に押しつぶされそうになったあたしの頭を男が優しくポンポンと撫でてくれる。
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「そ、そうなの?」
思わず身を乗り出すと男は驚いたように身を引いた。
幽霊が怖いからか?だがそんなこと構うものか。
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