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第二章 約束
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岡野 護は病気だった。
ALS…
筋萎縮性側索硬化症。
難病指定されている病気だ。
筋肉が萎縮して、体を動かすのが困難になる病で。
知能や知覚には全く問題のないまま、最後には手足も動かず、呼吸も咀嚼もできず…死に至ることもある病気だ。
原因はわかっておらず、治療も困難を極めている。
もしも…
もしも俺がこの病気に罹ったなら…
死にたくなったかもしれない
証拠品のコピーの中に、診察券の写しがあった。
定期的に通っているようだから、どんな病気だったのかと調べたら、これだ。
岡野 護の通っていた病院に出向いて、診断書を貰ってきた。
担当医に、必要なら出廷して証言してもらう約束も取り付けてきた。
「はあ…まだ、なんかあったっけ…?」
やることが多すぎて、へばった。
弁護の、方針を変えなければいけないかもしれない。
だから新たな証拠集めをしなければならない。
でも、新居はそれを望んでいなかった。
あくまで、痴情のもつれということで判決を受けたいと。
そう言っていた。
でも、俺は証拠集めに必死になっていた。
「…嘱託殺人…ね…」
あの手帖の後半には、岡野護の苦悩が書き込まれていた。
日々動かなくなってくる身体。
いつ、動くことができなくなるかという恐怖。
そして、愛する新居のこと…
そう。
彼は、浮気なんかしてなかった。
だけど…負けたんだ。
自分の弱い心に
だから、新居に殺してくれと頼んだんだ
「ねえ、いつかさ…他に好きな人ができたらどうする?」
「あ?何バカなこと言ってんだ?」
顔を上げて呆れた顔で俺を見た。
チッと舌打ちすると、ささっと練り消しゴムで紙を擦った。
絵を描くのが好きで…
よく俺のことスケッチしては、ひとりで悦に入ってる。
この日も、俺の横顔を描き取っている。
ぽいっと消しゴムを放り投げると、背中を丸めながらテーブルに載せたスケッチブックに目を落とした。
また深く削った鉛筆を手に取ると、サラサラと鉛筆を走らせてる。
「…そんな日、来るわけ無いだろ」
「ふふ…だよね…」
テーブルに置いてあるマグカップを手にとった。
ずずっとコーヒーを啜ると、俺を見上げた。
「ん?」
「…殺していいよ?」
「え?」
「そうだなあ…女と結婚したい、なんて言い出したら…子供が欲しいなんて言い出したら…」
「な、何言ってんのよ…」
「俺のこと、殺していいよ?」
ふふっと笑いながら、俺の方に手を伸ばしてきた。
「だから…そんな日、来るわけないからさ」
「ふふ…なーに自信満々に言っちゃってんのよ…」
「ばーか。愛してるって、言ってんだよ」
「知ってる」
手を伸ばして、その暖かな手を握った。
「俺も…そんな日が来たら、殺す」
「ばーか…そんな日、来るわけ無いじゃん…」
「そうしてほしいね。俺、絶対殺せないもん」
「バカ…弱っちいんだから…」
「そうだよ…俺、弱虫なんだから…」
だから和之…
ずっと、ずっと
俺のこと見捨てないでよね…
ALS…
筋萎縮性側索硬化症。
難病指定されている病気だ。
筋肉が萎縮して、体を動かすのが困難になる病で。
知能や知覚には全く問題のないまま、最後には手足も動かず、呼吸も咀嚼もできず…死に至ることもある病気だ。
原因はわかっておらず、治療も困難を極めている。
もしも…
もしも俺がこの病気に罹ったなら…
死にたくなったかもしれない
証拠品のコピーの中に、診察券の写しがあった。
定期的に通っているようだから、どんな病気だったのかと調べたら、これだ。
岡野 護の通っていた病院に出向いて、診断書を貰ってきた。
担当医に、必要なら出廷して証言してもらう約束も取り付けてきた。
「はあ…まだ、なんかあったっけ…?」
やることが多すぎて、へばった。
弁護の、方針を変えなければいけないかもしれない。
だから新たな証拠集めをしなければならない。
でも、新居はそれを望んでいなかった。
あくまで、痴情のもつれということで判決を受けたいと。
そう言っていた。
でも、俺は証拠集めに必死になっていた。
「…嘱託殺人…ね…」
あの手帖の後半には、岡野護の苦悩が書き込まれていた。
日々動かなくなってくる身体。
いつ、動くことができなくなるかという恐怖。
そして、愛する新居のこと…
そう。
彼は、浮気なんかしてなかった。
だけど…負けたんだ。
自分の弱い心に
だから、新居に殺してくれと頼んだんだ
「ねえ、いつかさ…他に好きな人ができたらどうする?」
「あ?何バカなこと言ってんだ?」
顔を上げて呆れた顔で俺を見た。
チッと舌打ちすると、ささっと練り消しゴムで紙を擦った。
絵を描くのが好きで…
よく俺のことスケッチしては、ひとりで悦に入ってる。
この日も、俺の横顔を描き取っている。
ぽいっと消しゴムを放り投げると、背中を丸めながらテーブルに載せたスケッチブックに目を落とした。
また深く削った鉛筆を手に取ると、サラサラと鉛筆を走らせてる。
「…そんな日、来るわけ無いだろ」
「ふふ…だよね…」
テーブルに置いてあるマグカップを手にとった。
ずずっとコーヒーを啜ると、俺を見上げた。
「ん?」
「…殺していいよ?」
「え?」
「そうだなあ…女と結婚したい、なんて言い出したら…子供が欲しいなんて言い出したら…」
「な、何言ってんのよ…」
「俺のこと、殺していいよ?」
ふふっと笑いながら、俺の方に手を伸ばしてきた。
「だから…そんな日、来るわけないからさ」
「ふふ…なーに自信満々に言っちゃってんのよ…」
「ばーか。愛してるって、言ってんだよ」
「知ってる」
手を伸ばして、その暖かな手を握った。
「俺も…そんな日が来たら、殺す」
「ばーか…そんな日、来るわけ無いじゃん…」
「そうしてほしいね。俺、絶対殺せないもん」
「バカ…弱っちいんだから…」
「そうだよ…俺、弱虫なんだから…」
だから和之…
ずっと、ずっと
俺のこと見捨てないでよね…
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