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最終章 願わくば花の下にて恋死なむ
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なんだか、その風景に釘付けになった。
その人が、泣いているように見えたから
「…君は、理工学部?」
「あ、はい」
「名前は?」
やっと椎葉教授は、その人の腕を離した。
さっとその人は俺に背中を向けて、窓のほうを向いてしまった。
「あ…システムデザイン学科の、遠藤…遠藤 圭一です」
「ほう…では、そのうち君に教えることになるのかな…?」
理工学部では2年までは教養や基礎的なことを学び、3年時に希望のコースに分かれる。
希望のコースに入れるかは、それまでの成績次第。
椎葉教授は、システムデザイン学科の教授だ。
ちらちらと白衣の人を見ていると、教授は笑った。
「こっちは、准教授の兼高くんだ。ちょっと目にゴミが入ったみたいでね…」
でもさっき、走ってたじゃないか…
「はあ…」
准教授は、一度もこちらを見ようとしない。
ちょっと違和感を感じた。
同時に、教授の早く出ていけという雰囲気も感じ取った。
「それじゃ…失礼します…」
なんか、異様な雰囲気だったし、喋ることもないからすぐに部屋を出た。
エレベーターホールで、エレベーターが来るのを待っていると、兼高准教授が走ってきた。
「遠藤くんっ…」
その時、ちょうどエレベーターが来たから乗り込もうとしてたんだけど、強引に引き止められた。
腕を痛いほど掴まれた。
「い、痛いです…」
エレベーターの扉が閉まって、下に降りていった。
モーター音と兼高准教授の荒い息の音だけがエレベーターホールに響いている。
「さっき…」
「え?」
「さっき、何か見た?」
色が、白い。
大きな目と、意志の強そうな太い眉。
大きな目はまだ潤んでいて、赤い。
まつげ、長いなあ…
興奮してるのか、頬は薄いピンク色に染まっていて。
唇も鮮やかに赤かった。
緩くパーマの掛かった髪は乱れたまま、強い目で俺を射すくめるように見ていた。
「…なにをですか?」
「あ…」
急にはっとした顔をして、周りを見渡して俺の腕を離した。
「ごめん…なんでもない…」
ちらりとまた、俺の顔を見ると泣き出しそうな顔をした。
「あの…?」
「いい…すまなかった…行ってくれ…」
そのまま踵を返して戻っていった。
どこも汚れていない白衣の白が目に焼き付いた。
それが、彼との初めての出会いだった
「遠ちゃん?」
また、青木くんと中島さんが俺のこと待っててくれた。
この二人はこの春に同じコースを取って、同じ研究室になった。
それまでは全然知らなかったから、今ちょうど探り探りお互いを知っている段階で。
青木くんは俺と同じ年。
でも俺と違って居るだけでにぎやかな人で。
明るくて馬鹿力で、好青年ってこういう人なんだなって思う。
ちょっとドジなとこもあるけど、基本的に太陽みたいに明るい人で一緒にいると心地いい。
中島さんは俺と青木くんの一個上。
年上だけに穏やかな人だ。それに無駄口も叩かない。
現役の受験シーズンに盲腸になって入院してしまって一浪してるんだって。
どうしてもこの研究室に入りたくてすごく勉強したんだって言うだけあって、成績は一番だった。
まだこのくらいしか知らないんだけど…
こうやって待っていてくれるのが、ちょっと嬉しかった。
「どうしたの?ぼんやりして…」
「いや…ちょっとね…入学したばかりの頃、思い出してた」
「ああ…桜見ると思い出すよね…」
中島さんは穏やかに笑うと窓の外を見た。
「あ、そういえばさ…椎葉教授」
「ん?なに?」
青木くんがぽつんと呟いた。
「学生に手を出したのがバレて、クビだって噂…聞いた?」
「え…?」
学内に噂が広まるのは早かった。
噂には尾ひれがつくものだから、本当のところはわからないが、椎葉教授の退官は本当のようだった。
兼高准教授が、そのまま教授になる。
ただ、それだけの事実しか俺達は知らなかったのに。
噂は物凄いことになっていた。
その人が、泣いているように見えたから
「…君は、理工学部?」
「あ、はい」
「名前は?」
やっと椎葉教授は、その人の腕を離した。
さっとその人は俺に背中を向けて、窓のほうを向いてしまった。
「あ…システムデザイン学科の、遠藤…遠藤 圭一です」
「ほう…では、そのうち君に教えることになるのかな…?」
理工学部では2年までは教養や基礎的なことを学び、3年時に希望のコースに分かれる。
希望のコースに入れるかは、それまでの成績次第。
椎葉教授は、システムデザイン学科の教授だ。
ちらちらと白衣の人を見ていると、教授は笑った。
「こっちは、准教授の兼高くんだ。ちょっと目にゴミが入ったみたいでね…」
でもさっき、走ってたじゃないか…
「はあ…」
准教授は、一度もこちらを見ようとしない。
ちょっと違和感を感じた。
同時に、教授の早く出ていけという雰囲気も感じ取った。
「それじゃ…失礼します…」
なんか、異様な雰囲気だったし、喋ることもないからすぐに部屋を出た。
エレベーターホールで、エレベーターが来るのを待っていると、兼高准教授が走ってきた。
「遠藤くんっ…」
その時、ちょうどエレベーターが来たから乗り込もうとしてたんだけど、強引に引き止められた。
腕を痛いほど掴まれた。
「い、痛いです…」
エレベーターの扉が閉まって、下に降りていった。
モーター音と兼高准教授の荒い息の音だけがエレベーターホールに響いている。
「さっき…」
「え?」
「さっき、何か見た?」
色が、白い。
大きな目と、意志の強そうな太い眉。
大きな目はまだ潤んでいて、赤い。
まつげ、長いなあ…
興奮してるのか、頬は薄いピンク色に染まっていて。
唇も鮮やかに赤かった。
緩くパーマの掛かった髪は乱れたまま、強い目で俺を射すくめるように見ていた。
「…なにをですか?」
「あ…」
急にはっとした顔をして、周りを見渡して俺の腕を離した。
「ごめん…なんでもない…」
ちらりとまた、俺の顔を見ると泣き出しそうな顔をした。
「あの…?」
「いい…すまなかった…行ってくれ…」
そのまま踵を返して戻っていった。
どこも汚れていない白衣の白が目に焼き付いた。
それが、彼との初めての出会いだった
「遠ちゃん?」
また、青木くんと中島さんが俺のこと待っててくれた。
この二人はこの春に同じコースを取って、同じ研究室になった。
それまでは全然知らなかったから、今ちょうど探り探りお互いを知っている段階で。
青木くんは俺と同じ年。
でも俺と違って居るだけでにぎやかな人で。
明るくて馬鹿力で、好青年ってこういう人なんだなって思う。
ちょっとドジなとこもあるけど、基本的に太陽みたいに明るい人で一緒にいると心地いい。
中島さんは俺と青木くんの一個上。
年上だけに穏やかな人だ。それに無駄口も叩かない。
現役の受験シーズンに盲腸になって入院してしまって一浪してるんだって。
どうしてもこの研究室に入りたくてすごく勉強したんだって言うだけあって、成績は一番だった。
まだこのくらいしか知らないんだけど…
こうやって待っていてくれるのが、ちょっと嬉しかった。
「どうしたの?ぼんやりして…」
「いや…ちょっとね…入学したばかりの頃、思い出してた」
「ああ…桜見ると思い出すよね…」
中島さんは穏やかに笑うと窓の外を見た。
「あ、そういえばさ…椎葉教授」
「ん?なに?」
青木くんがぽつんと呟いた。
「学生に手を出したのがバレて、クビだって噂…聞いた?」
「え…?」
学内に噂が広まるのは早かった。
噂には尾ひれがつくものだから、本当のところはわからないが、椎葉教授の退官は本当のようだった。
兼高准教授が、そのまま教授になる。
ただ、それだけの事実しか俺達は知らなかったのに。
噂は物凄いことになっていた。
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