海鳴り

野瀬 さと

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暗くなるまで、待って?

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くっくと笑いながら網を直していると、後ろからこつっと頭に何か当たった。

「何笑ってるの?駿しゅんさん」

ペットボトルのお茶を持って、直也なおやくんが立ってた。

「直也くん…掃除終わったの?」
「ん…チビたち帰ってきたからおしまい」
「そっか。ちょっと休めよ?」
「駿さんも、休憩したら?働きっぱなしだよ?」
「これが俺の仕事だもん」
「ふふ…すっかり慣れたね」
「うん…皆のおかげだよ」
「…チビたちも?」
「ああ。俺よりあけぼの荘の先輩だからな…」

真面目な顔をして答えると、直也くんは暫く笑った。
ネコとネズミ二匹はまだ追っかけっこをしている。

ああ…やっぱりいいなあ…

太陽の光に海の匂い…そして皆の笑顔…

こんな楽園、他にないんじゃないかな…

「かいー!りくー!待ちやがれ!」
「いやああん!ゆーあんちゃんこわあい」
「大人がほんきだー!おとなげねー!」
「こ、このやろおおお!」

直也くんが笑いからやっと立ち直って、さっきまで優也ゆうやが飲んでたコーラの缶を手に取った。

そっとあいつらがバタバタしてるとこまで歩くと、いきなり缶をべきべきと握りつぶした。


それ…スチール缶…


ネコとネズミ二匹は固まって直也くんの顔を見た。

「さ、宿題の時間だよ?」

ちーちゃくなった缶を握りしめたまま、直也くんはにっこりわらった。


こ、こわい…


ネズミ二匹は捕獲されて母屋に連行されていった。

結構…力、あるのね…直也くん…


それからまた優也と二人で黙々と網を直して、終わったのは夕方だった。

秋津あきつさんおつかれー!今日はもう終わりね!」
「ああ…早く晩酌してえなあ」
「ビール飲もっか」
「でもまだ5時だぞ…?」

そんなことを話しながら厨房に入ると、直也くんが調理台に凭れて居眠りしていた。

「あ、直ったら…秋津さん、悪いけど部屋に運んでくれる?俺、晩飯の準備するよ」
「わかった」

直也くんを抱えて食堂に上がって、そこから家の中に入る。
廊下を歩いていると、海人かいと陸人りくとが部屋から顔を出した。
小学校に上がったから、二人部屋を与えられたのだ。

そのせいで俺の部屋がなくなって、俺と直也くんは同じ部屋に寝ることになったんだ。

優也が強引に進めたんだけど…なんかこっぱずかしい…

「秋津あんちゃんどうしたの?直あんちゃんおねつ?」
「大丈夫?なーあんちゃん…」
「おお。疲れて寝てるだけだから。部屋のドアあけて?」

そう言うと、二人で争うように直也くんと俺の部屋のドアを開けてくれた。

「じゃあ静かにしてろよ?」
「はーい」
「宿題終わった?」
「うん!終わったよ!」
「おし、じゃあ晩飯までテレビ見てていいぞ」
「わーい!」
「やったー!かっぱ丸みるー!」
「大相撲がいい!」

言いながら二人は部屋を出ていった。

「相撲はいまやってねえぞ…」

つぶやくと、腕の中の直也くんがふふっと笑った。

「あ、起きた?」
「うん…ごめんね。重かったでしょ?」
「全然。海の男なめんなよ?」
「ふふ…頼りがいがあるなあ…」

また直也は俺の胸に顔を埋めた。


やべ…いい匂いがする…


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