海鳴り

野瀬 さと

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父、あけぼの荘に帰還す。

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窓から外を見ると、秋津あきつにちびどもがまとわりついているのが見えた。

「秋津あんちゃん!父ちゃんが帰ってきたってほんと!?」
駿しゅんあんちゃん!とうちゃんどんな風だった!?」
「うっさいぞ!お前ら!歩け!中に入ったら居るだろうが!?」

頭に黒い帽子をかぶり、黄色い通園バッグを下げたちびどもは、大きくなっていた。
前に見た時はもっとちんまりしていたのに、子供の成長は早いものだ。

とは言ってもまだ幼稚園児だ。
ちんまいものはちんまい。
秋津の両足に一匹ずつ掴まって歩行を邪魔しているが、なんとか秋津は前に進んでいる。

「ぬぬぬ…」

ぶっと思わず噴き出してしまった。
あんなにあいつらが懐いているということは、悪いやつではないのだろう。

中から直也なおやが出てきて、陸人りくとを抱え上げた。

「もう…駿さん歩けないでしょう?」
「直あんちゃん、ただいまぁ!」
「はい、おかえり。陸人」
「なーあんちゃん俺もおお!」

秋津に抱え上げられた海人かいとが直也に向かって手を伸ばす。

「はい、おかえり。海人」

ちゅっと海人のほっぺたにキスすると、陸人が剥れた。

「なんでぇ!?海ばっかり!」
「はいはい。陸人もね」

ちゅっと陸人のほっぺたにキスしてやる。

「えへへ~」

満足したのか、陸人は直也にぎゅっと抱きついた。
海人もそれを見て、秋津にぎゅっと抱きついた。

秋津と直也は、目を合わせてふふっと微笑んだ。

「…なんだありゃあ…」

まるで夫婦じゃねえか…
まるで親子じゃねえか…

そして、なんだかこの風景もデジャブだ。
何処で見たんだったか…

その後、賑やかなちびどもが中に入ってきたんだが、一向に俺の部屋には来なかった。

無理もないか…滅多に見かけないレアキャラだからな。
それに俺は大男で、所謂コワモテというやつだ。
きっと彼奴きゃつらには鬼やゴリラのように見えていることだろう。

優也ゆうやが小さい頃、帰ってきた俺を見て漏らしたことがあるくらいだ。

「しょうがない…」

俺の方から出向いてちびどもと交流を持つことにしよう。
明希子あきこが生きている時は、俺のことを忘れないよう子供たちに言い聞かせてくれていたものだが…

息子たちにまでそれを求めるのは酷ってもんだろう。

「精々、俺が頑張るしかねえなあ…」

食堂の隣の、どたんばたんとうるさい部屋。
そこには居間がある。
居間と言っても、家族で飯を食うところでもあって、いろいろと兼ねている一間だ。

そこの襖を開けると、海人と陸人が着替えをしているところだった。

「あっ…父ちゃん!」
「わあ!とうちゃんが来た!」

海人も陸人も予想に反して、興味津々で俺のことを見ている。
直也と秋津が二人を着替えさせているんだが、裸のままこちらに来ようとするから、抑えるので必死だ。

「こおら!てめえら!そんな変態みたいな格好で走るな!」
「もお…風邪引くでしょお…?」

夫婦みたいにちびどもの服を着せている。
なんだかそれがしっくりきてて…

思わず見惚れてしまった。

「父ちゃん…?」
「うん?」

いつの間にか、着替えたちびどもが俺の足元に来ていた。

あれだけ暴れていたのに、海人はなんだか俺の前まで来てもじもじしている。
陸人もやっとズボンを履かせてもらって、海人に追いついたけど一緒にもじもじしている。

「えへへ…とうちゃん…」

いっちょまえに照れているのか。

「来い。高い高いしてやる」

二人を抱え上げていっぺんに高い高いしてやった。

「あっ…お父さん!天井っ…」

直也が叫んだが遅かった。
ごちんと音がしたかと思ったら、ちびどもは天井に頭を強かに打ち付けていた。

「うぎゃあああああああああああああ!」
「いだああああああああああああぁい!」

ギャン泣きするちびどもにひたすら謝るしかなかった。

「すまなかった…」
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