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父、あけぼの荘に帰還す。
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ちびどもは泣き疲れて眠ってしまった。
「あーあ…これ、夜寝ないな…責任取ってよ?お父さん…」
「わかった…すまなかったな」
今日は客室にでも布団を敷いて3人で寝るか…
食堂に敷いた子供用の布団を囲んで、大人たちは脱力した。
「ああ~…せっかく今日のおやつ、プリン用意したのに…」
厨房からちびども泣き声を聞いて飛び込んできた優也が、ぐしゃぐしゃと頭を掻いた。
「すまない…それもちゃんと後で食わせるから…」
「え?父ちゃんが食べさすの?」
「…あのなあ…おまえらに離乳食食わせたのは俺だぞ?」
「ほええ…そんな記憶ねえよ?」
「俺は覚えてるよ」
直也が海人と陸人の顔を見ながらくすくす笑っている。
「優也がすっごいがっついて咽るから、お父さん焦って大変だったんだよね」
「ほえ?!俺が!?」
「そうだよお…それに、お母さんも苦労してたな…」
「え?どんな?」
「お父さんが漁に行ってる間さ、写真とかビデオ見せて、”これがお父ちゃんよー!”って英才教育してるのにさ…優也ったら実際にお父さんの顔見たら漏らしちゃってね…」
「ぶっ…ちょっ…何時の話ししてんだよ!?」
優也が焦って顔を真赤にしてるのを見て、全員で爆笑した。
「もっ…もおっ…やーめーてー!」
懐かしいこと言うじゃねえか…
あけぼの荘を作った時は、まだ俺の両親も健在で…
俺が今の優也みたいに、宿の仕事と漁をやって。
たまに俺が長期の漁に出る時は、俺の親と明希子が力を合わせて頑張ってくれてた。
たまたま、優也が小さい頃は長期の漁が重なってあまり家に帰れてなかったから、漏らしたんだよな…俺の顔を見て。
「だからさ、お父さんの顔をちびたちが見ても怖がらないように、ちゃんとお父さんの写真とビデオ、見せてたんだよ」
「えっ…そうだったのか」
まさか直也が明希子のやってたこと引き継いでたなんて…
「そういうことだったのか…だからあんなに写真、見せてたんだ」
「もお…秋津さん、忘れて…」
優也がなさけなーい顔をして俯いた。
「なんか…そういう話、聞いたことなかったな…」
「え?そうだっけ?」
「聞きたい」
「駿さん…」
秋津がにっこり笑いながら見つめると、直也は真っ赤になりながら見つめ返す。
おい…なんだそりゃあ…
「なら、俺が話してやる」
「えっ」
秋津の胸倉を掴まえた。
「俺じゃ不満か?」
「いっ…いえっ…滅相もございませんっ…」
そのまま直也と優也に酒を出させて宴会を始めることにした。
なんだか気に入らねえ…
まるで直也が秋津に惚れてるみたいじゃねえか。
あんな鼻の下伸ばして…
「直也は嫁にはやらんぞ!」
「は、はいいぃ!?」
酒も進んで、思わず心の声が漏れ出てしまった。
「すいませんっ…おとうさんっ!」
「ああん!?だから俺はおまえのような息子は作った覚えがない!」
「お、おとおとおとお父さんっ!何言ってんだよっ!」
直也が慌てて止めに入るが、優也はその後ろで爆笑している。
「…オイ…なんでそんなに秋津を庇うんだ。直也」
「えっ!?だ、だって…」
「おまえ…秋津とデキてるんじゃないだろうな!?」
「んぎゃーーー!何言ってんだよ!?」
いよいよ床にめり込むぐらい優也は突っ伏して爆笑している。
秋津は酸素の足りない鯉野郎みたいに、口をパクパクさせている。
「いいかあ…?直也は大事に育てた俺の自慢の息子だ!手ぇ出すんじゃねえぞ!?」
「おとおとおとおと…」
「酒ぇ!」
ぶんっとグラスを持った手を出しても、一向に誰も俺に酒を注がない。
優也は床で撃沈してるし、秋津はまだパクパクしてるし、直也は顔を真赤にして頭を抱えている。
仕方ないから手酌して、ビールを注いだ。
「んも~うるちゃい…」
「とうちゃんの声大きいよお…」
ちびどもが起きてきて、俺によじ登ってきた。
「あーあ…これ、夜寝ないな…責任取ってよ?お父さん…」
「わかった…すまなかったな」
今日は客室にでも布団を敷いて3人で寝るか…
食堂に敷いた子供用の布団を囲んで、大人たちは脱力した。
「ああ~…せっかく今日のおやつ、プリン用意したのに…」
厨房からちびども泣き声を聞いて飛び込んできた優也が、ぐしゃぐしゃと頭を掻いた。
「すまない…それもちゃんと後で食わせるから…」
「え?父ちゃんが食べさすの?」
「…あのなあ…おまえらに離乳食食わせたのは俺だぞ?」
「ほええ…そんな記憶ねえよ?」
「俺は覚えてるよ」
直也が海人と陸人の顔を見ながらくすくす笑っている。
「優也がすっごいがっついて咽るから、お父さん焦って大変だったんだよね」
「ほえ?!俺が!?」
「そうだよお…それに、お母さんも苦労してたな…」
「え?どんな?」
「お父さんが漁に行ってる間さ、写真とかビデオ見せて、”これがお父ちゃんよー!”って英才教育してるのにさ…優也ったら実際にお父さんの顔見たら漏らしちゃってね…」
「ぶっ…ちょっ…何時の話ししてんだよ!?」
優也が焦って顔を真赤にしてるのを見て、全員で爆笑した。
「もっ…もおっ…やーめーてー!」
懐かしいこと言うじゃねえか…
あけぼの荘を作った時は、まだ俺の両親も健在で…
俺が今の優也みたいに、宿の仕事と漁をやって。
たまに俺が長期の漁に出る時は、俺の親と明希子が力を合わせて頑張ってくれてた。
たまたま、優也が小さい頃は長期の漁が重なってあまり家に帰れてなかったから、漏らしたんだよな…俺の顔を見て。
「だからさ、お父さんの顔をちびたちが見ても怖がらないように、ちゃんとお父さんの写真とビデオ、見せてたんだよ」
「えっ…そうだったのか」
まさか直也が明希子のやってたこと引き継いでたなんて…
「そういうことだったのか…だからあんなに写真、見せてたんだ」
「もお…秋津さん、忘れて…」
優也がなさけなーい顔をして俯いた。
「なんか…そういう話、聞いたことなかったな…」
「え?そうだっけ?」
「聞きたい」
「駿さん…」
秋津がにっこり笑いながら見つめると、直也は真っ赤になりながら見つめ返す。
おい…なんだそりゃあ…
「なら、俺が話してやる」
「えっ」
秋津の胸倉を掴まえた。
「俺じゃ不満か?」
「いっ…いえっ…滅相もございませんっ…」
そのまま直也と優也に酒を出させて宴会を始めることにした。
なんだか気に入らねえ…
まるで直也が秋津に惚れてるみたいじゃねえか。
あんな鼻の下伸ばして…
「直也は嫁にはやらんぞ!」
「は、はいいぃ!?」
酒も進んで、思わず心の声が漏れ出てしまった。
「すいませんっ…おとうさんっ!」
「ああん!?だから俺はおまえのような息子は作った覚えがない!」
「お、おとおとおとお父さんっ!何言ってんだよっ!」
直也が慌てて止めに入るが、優也はその後ろで爆笑している。
「…オイ…なんでそんなに秋津を庇うんだ。直也」
「えっ!?だ、だって…」
「おまえ…秋津とデキてるんじゃないだろうな!?」
「んぎゃーーー!何言ってんだよ!?」
いよいよ床にめり込むぐらい優也は突っ伏して爆笑している。
秋津は酸素の足りない鯉野郎みたいに、口をパクパクさせている。
「いいかあ…?直也は大事に育てた俺の自慢の息子だ!手ぇ出すんじゃねえぞ!?」
「おとおとおとおと…」
「酒ぇ!」
ぶんっとグラスを持った手を出しても、一向に誰も俺に酒を注がない。
優也は床で撃沈してるし、秋津はまだパクパクしてるし、直也は顔を真赤にして頭を抱えている。
仕方ないから手酌して、ビールを注いだ。
「んも~うるちゃい…」
「とうちゃんの声大きいよお…」
ちびどもが起きてきて、俺によじ登ってきた。
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