海鳴り

野瀬 さと

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父、あけぼの荘に帰還す。

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俺をジャングルジム代わりにして遊び始めたから、また高い高いをしようとしたら、直也なおやに全力で止められた。

「んもーそんなに元気なんだったら、チビたちお風呂入れてきてよ…」

直也と優也ゆうやがちびたちに飯を食わせたら、早速風呂にぶちこまれた。

「人使いが荒い…」
「後から、優也も寄越すから…頼むから湯船で寝ないでよね?」

直也はぽいぽいとちびの服を脱がすと、さっさと脱衣所を出ていった。

「しょうがねえな…よし!行くぞ!ちびども!」
「わーい!父ちゃんと風呂ー!」
「フロー!」

大きめの浴槽に早速3人で浸かる。

「あつーい!」
「あついねえ!」
「このくらい我慢しろ」

首まで浸かって暫くしたら、優也も入ってきた。

「おお…満員だな…」

優也と手分けしてちびたちを洗ってやると、暫くゆっくりできた。

「ゆーあんちゃんと入るの久しぶり!」
「そうだねぇ。いつも秋津あきつさんと入るもんね」
「優あんちゃん!水鉄砲して!」
「はいはい…」

なんだ…秋津はちびたちまで…

「直也はやらんぞ!」

びくっと3人はこちらを向いた。

「まだ言ってるの…?」
「お、おう…すまん…」

酒のせいか、心の声を抑えることができなかった。


風呂から上がって、ちびどもに優也の作ったプリンを食べさせた。

それから客室に3人で布団を敷いて、川の字になって寝た。
昼間寝たからか、なかなか寝ないで苦労した。

それでもなんとかちびどもが寝てから、客室を抜け出して居間に行くと優也が一人でテレビを見ながら舟を漕いでる。

漁師にはもう深夜とも言える時間だ。
眠くてしょうがないんだろう。

「あれ?直也は?」
「んん…ああ…今、秋津さんと一緒に風呂入ってる…」

ふゃぁっとあくびをした。

「なっ…何だとお!?」
「ああもう…邪魔しちゃだめだよ?せっかくやっとふたりきりになったんだから…」

ぼりぼりと頭を掻くと、またうつらうつらする。

「ちょっ…優也、コラ!」

寝転がる優也を叩き起こして胸倉を掴んだ。

「ああん!?あんだよ!?」
「邪魔するなとは何事だ!?」
「だから、言ったとおりだよっ!見ててわかるだろ!?あの二人は付き合ってんの!」
「なっ…何だと!?」
「お互い、いい大人なんだから邪魔すんなよな!」

そう言って、ブランケットを被って眠ってしまった。

「オイ…待て…」

ちょっと待て…

「……直也は男だぞ!?」
「だー!うっせえなあ!」
「そ、それともなにか!?秋津が女なのか!?」
「んなわけねえだろ!」

ど、どういうことなんだっ!?

「な…直也が…女なのか…」
「はあ…?やめてくれる?そんなとこまで想像するの…」
「でっ…でも!優也!」
「んだー!うっさいなあ…別に男同士だっていいだろ?愛する人と一緒に居て、直也はしあわせなんだよ!」

至極真っ当なことを言っているつもりなんだろうが、ちょっと待て。

「お…男同士だぞ!?」
「だからなんだよ…なにかいけないのかよ」
「おまえなあ!」
「直也は…病気なんだよ?父ちゃん…」

むくりと起き上がると、すごく真剣な目で俺を見上げた。

「…優也…」
「いいじゃん。男同士だって。秋津さんだって、凄く真剣に直也と向き合ってくれてるもん。直也がしあわせなら、俺、男同士だってなんだっていいやって思ってる」
「い、いやでもな…」
「父ちゃん!だって、あの二人みてて思わない?しあわせそうだな…お似合いだなって」
「う…」

確かに…ちびどもを面倒見てる二人は、夫婦にしか見えなかった。

「直也は…いつ容態が悪くなってもおかしくない…だったら、悔いのないように生きてて欲しいじゃん…」

直也は社会人になってから、自己免疫疾患じこめんえきしっかんを発症した。
てめえの免疫が暴走して正常な組織までてめえで攻撃するっていう、厄介な病気だ。

病気が発覚したとき、一番直也は弱っていて…
あの真っ赤になっていた頬や、何かに噛まれたような紅斑こうはんが出ている腕は、今でも忘れられない。

この病気は国の難病指定されていて、投薬によって症状を軽くすることはできるが、寛解は難しいと言われている。

一生、付き合っていかなかければならない病気だ。
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