23 / 37
父、あけぼの荘に帰還す。
11
しおりを挟む
それから一週間。
いよいよ俺が船に戻る日が来た。
この日までに、あけぼの荘の名義の変更やら銀行口座の変更やら…やることがしこたまあって、休む暇もなかった。
手続きも途中の物もあったが、後のことは直也や優也、そして秋津が上手いことやるだろう。
「とーちゃん!」
「父ちゃーん!」
「おわっ…」
朝、荷物をまとめていると、子供たちがまとめて俺の部屋に襲撃してきた。
まだ片付けているというのに、ちびどもは俺のベッドの上でトランポリンをして遊びだした。
「やめなさい!おまえたち!」
直也が怒っているが、一向にちびどもはやめない。
「それ、壊したらケツバットだぞ」
「けつ…ばっと?」
「なにそれ?父ちゃん?」
むう…時代なのか…
もしかして、しむらー!うしろー!も、もう通じないのか…
秋津と優也がちびどもを抑えている間に、直也に手伝ってもらってなんとか荷物をまとめた。
「じゃあ、何かあったら連絡しなさい」
「するけど…お父さん、手紙を受け取ったら電話してね?」
「む…」
「面倒くさいんだろうけど、こっちは生きてるのか死んでるのかすらわかんないんだからさあ…」
「わかった…」
秋津と優也は説教されてる俺を見て、くすくす笑ってやがる。
ちびどもまで…くそう。
「あ。直也」
「うん?」
ちょいちょいと近くまで直也を呼んだ。
「なに?」
「あのな…」
ぐいと肩を掴んで、耳元にこしょこしょと話した。
「秋津と籍入れるなら、俺の養子にしとくから…そうなったら手続きや向こうのご両親に挨拶いくのに帰国するから言いなさい。あ、逆でもいいけどな?あっちの籍に入るんなら、それでもいいから」
「ぶふぉっ…」
真っ赤になって直也はひっくり返った。
俺だってなあ…同性同士の結婚がどんなもんか、調べることができるんだからな。
優也に手伝ってもらったけど。
「わあ!なーあんちゃん大丈夫!?」
「お顔、真っ赤だよ!お熱?お熱?」
「ち、違っ…おと、おと、お父さんっ!」
狼狽える直也というのも、珍しくて面白い。
「むふ…」
説教の仕返しは三倍返しだ!(古い?)
ちびどもの幼稚園の準備をするのに、一旦子供たちは部屋を出ていった。
「ったく、騒がしいったりゃありゃしねえぜ…」
「あの…お義父さん」
「うおっ!?」
誰もいないと思っていたから油断したぜ。
後ろを見ると、秋津が部屋を覗いていた。
「お?なんだ」
秋津は俺の前に正座すると、改めて頭を下げた。
「俺たちのこと、認めてくれてありがとうございます」
「よせよ…大人同士のことなんだから。とやかく言うほど野暮じゃねえよ」
「はい…あの、ご相談があって」
「あんだ?」
「あけぼの荘を昔みたいに通年泊まれる民宿に戻そうかと思ってて…」
「おお…」
「ただ、今のままの客室数だと手が回らないから、ちょっとリフォームして縮小したりしたくて…」
「そんな予算…」
「あけぼの荘を株式会社にしようかと思っています。そしたら俺も出資できるし…」
「いや、秋津。それは…」
「やりたいんです」
じっと、秋津は俺の目をまっすぐに見る。
「…俺、実はここに死にに来たんです」
「え?」
「でも…ここの人たちに俺は、命を救われたんです」
「おまえが…?死のうとしてたのか?」
秋津は、俺の目を見ながら頷いた。
「実際、海に飛び込んで…優也には凄い迷惑をかけました」
「ばかやろうだな」
「はい。とてもばかやろうだと思ってます…」
「んで?」
「今はもちろんそんな気ありません。だからここの役に少しでも立ちたいんです。…それに俺…まだ心の目、開いてないから…」
心の目…
それは明希子がよく子どもたちに言って聞かせていた言葉だ。
"人の言葉や行動を表面的に見るのではなく心の目で見なさい。そうしたら…本当のことが見えるよ…"
「直也から聞いたのか?」
「はい。俺、ずっと閉じてきてたから…だからまだ心の目、開いてないんです」
「そうか…」
よっぽど…心を閉じて生きてきたのか。
そうしないと生きてこれなかったのか…
"心の目、開くといいね…行信くん"
俺だって…まだ開いてるのかどうか…わからない。
「ま、ゆっくりやれや…」
「はい。まだリフォームとかは、先の話で…でも、お義父さんの許可は貰っておきたくて」
「ああ。もう代替わりしたんだから、俺はとやかく言わねえよ。おめえらがいいと思うことやっていきな」
「それでも…」
「ん?」
「ここは、お義父さんの作った家ですから。お義父さんの家です」
「秋津…」
「だから、これからもなんだって相談させてもらいます!」
そう言って、絨毯に手を付いて頭を下げた。
「これからも!どうかよろしくお願いします!」
ほんと、敵わないねえ…
きっとこいつらに任せておけば、あけぼの荘も安泰だろう。
俺は、安心して海の上に帰れるわけだ。
いよいよ俺が船に戻る日が来た。
この日までに、あけぼの荘の名義の変更やら銀行口座の変更やら…やることがしこたまあって、休む暇もなかった。
手続きも途中の物もあったが、後のことは直也や優也、そして秋津が上手いことやるだろう。
「とーちゃん!」
「父ちゃーん!」
「おわっ…」
朝、荷物をまとめていると、子供たちがまとめて俺の部屋に襲撃してきた。
まだ片付けているというのに、ちびどもは俺のベッドの上でトランポリンをして遊びだした。
「やめなさい!おまえたち!」
直也が怒っているが、一向にちびどもはやめない。
「それ、壊したらケツバットだぞ」
「けつ…ばっと?」
「なにそれ?父ちゃん?」
むう…時代なのか…
もしかして、しむらー!うしろー!も、もう通じないのか…
秋津と優也がちびどもを抑えている間に、直也に手伝ってもらってなんとか荷物をまとめた。
「じゃあ、何かあったら連絡しなさい」
「するけど…お父さん、手紙を受け取ったら電話してね?」
「む…」
「面倒くさいんだろうけど、こっちは生きてるのか死んでるのかすらわかんないんだからさあ…」
「わかった…」
秋津と優也は説教されてる俺を見て、くすくす笑ってやがる。
ちびどもまで…くそう。
「あ。直也」
「うん?」
ちょいちょいと近くまで直也を呼んだ。
「なに?」
「あのな…」
ぐいと肩を掴んで、耳元にこしょこしょと話した。
「秋津と籍入れるなら、俺の養子にしとくから…そうなったら手続きや向こうのご両親に挨拶いくのに帰国するから言いなさい。あ、逆でもいいけどな?あっちの籍に入るんなら、それでもいいから」
「ぶふぉっ…」
真っ赤になって直也はひっくり返った。
俺だってなあ…同性同士の結婚がどんなもんか、調べることができるんだからな。
優也に手伝ってもらったけど。
「わあ!なーあんちゃん大丈夫!?」
「お顔、真っ赤だよ!お熱?お熱?」
「ち、違っ…おと、おと、お父さんっ!」
狼狽える直也というのも、珍しくて面白い。
「むふ…」
説教の仕返しは三倍返しだ!(古い?)
ちびどもの幼稚園の準備をするのに、一旦子供たちは部屋を出ていった。
「ったく、騒がしいったりゃありゃしねえぜ…」
「あの…お義父さん」
「うおっ!?」
誰もいないと思っていたから油断したぜ。
後ろを見ると、秋津が部屋を覗いていた。
「お?なんだ」
秋津は俺の前に正座すると、改めて頭を下げた。
「俺たちのこと、認めてくれてありがとうございます」
「よせよ…大人同士のことなんだから。とやかく言うほど野暮じゃねえよ」
「はい…あの、ご相談があって」
「あんだ?」
「あけぼの荘を昔みたいに通年泊まれる民宿に戻そうかと思ってて…」
「おお…」
「ただ、今のままの客室数だと手が回らないから、ちょっとリフォームして縮小したりしたくて…」
「そんな予算…」
「あけぼの荘を株式会社にしようかと思っています。そしたら俺も出資できるし…」
「いや、秋津。それは…」
「やりたいんです」
じっと、秋津は俺の目をまっすぐに見る。
「…俺、実はここに死にに来たんです」
「え?」
「でも…ここの人たちに俺は、命を救われたんです」
「おまえが…?死のうとしてたのか?」
秋津は、俺の目を見ながら頷いた。
「実際、海に飛び込んで…優也には凄い迷惑をかけました」
「ばかやろうだな」
「はい。とてもばかやろうだと思ってます…」
「んで?」
「今はもちろんそんな気ありません。だからここの役に少しでも立ちたいんです。…それに俺…まだ心の目、開いてないから…」
心の目…
それは明希子がよく子どもたちに言って聞かせていた言葉だ。
"人の言葉や行動を表面的に見るのではなく心の目で見なさい。そうしたら…本当のことが見えるよ…"
「直也から聞いたのか?」
「はい。俺、ずっと閉じてきてたから…だからまだ心の目、開いてないんです」
「そうか…」
よっぽど…心を閉じて生きてきたのか。
そうしないと生きてこれなかったのか…
"心の目、開くといいね…行信くん"
俺だって…まだ開いてるのかどうか…わからない。
「ま、ゆっくりやれや…」
「はい。まだリフォームとかは、先の話で…でも、お義父さんの許可は貰っておきたくて」
「ああ。もう代替わりしたんだから、俺はとやかく言わねえよ。おめえらがいいと思うことやっていきな」
「それでも…」
「ん?」
「ここは、お義父さんの作った家ですから。お義父さんの家です」
「秋津…」
「だから、これからもなんだって相談させてもらいます!」
そう言って、絨毯に手を付いて頭を下げた。
「これからも!どうかよろしくお願いします!」
ほんと、敵わないねえ…
きっとこいつらに任せておけば、あけぼの荘も安泰だろう。
俺は、安心して海の上に帰れるわけだ。
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
恋のかたちになるまでに
キザキ ケイ
BL
トラウマで女性が苦手な善は、初めて足を踏み入れたミックスバーで男に恋してしまう。
男を恋愛対象にできると知っていたのは、親友のリュウが男と付き合っていたことがあるからだった。
気持ちを持て余して恋心を相談した善は、「野暮ったい自分」を脱するためにリュウのアドバイスを受けることに。
一方、リュウのほうも、ただの友達だったはずの善に対する気持ちに変化があるようで────。
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる