地方公務員の婚約破棄って信用失墜?

山本優也

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自分がどう生きてきたか

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「安定した職業に就きなさい」

小さい頃から母親に口うるさく言われ続けた言葉


長男は大企業のサラリーマン
次男は警察官
末っ子三男の裕也は、大学4年

裕也は親元を離れ、地方の国立大学に進学した

2人の兄は高校卒業と同時に就職した

そんな兄から口うるさく言われ続けた言葉

「大学には行っとけ」


母親や兄の言葉で人生のレールがしかれていく

そんな人生には「安定」という二文字がまとわりつく


国立大学を選んだのも学費が安い、その後の人生に有利という安易な理由だった

決して裕福ではなかったので、親に負担をかけたくないという気持ちもあった

本当は中学の時から続けてきたハンドボールで、某有名体育系私立大学の推薦ももらっていたのだが、親にも言わず断った

そこに行ってなにになるの?

母親の返答はわかってる

部活をやっていたのは内申をあげるため

社交性を高めるためにチームスポーツをやりなさいと言われてはじめたが、

高校3年の三者面談の際に、
「部活をここまで続けていたんだから、進路に有利ですよね」
という母親の発言に全てを悟った


地元を離れたのは、そんな自分を変えたかったから

でも何も変わらない



大学時代イタリアンレストランでバイトした

職場にも恵まれた
店長も30歳で話もしやすく、人望があった
料理で勝負してきた店長の話は、毎日心が踊るような体験をさせてくれたのだ

こんな人になりたい、飲食店をやってみたい


週1回かかってくる母親からの電話で、冗談ぽく話をしてみたことがある

大学卒業したら、飲食店で働こうかな

そんな仕事でご飯食べられるの?
大学行った意味はなんなの?
安定した職業でもいいんじゃないの?

決して怒ったような声ではなかったが、
間違いを正すような言葉だった


イタリアンレストランの親会社で就職も考えたが、その会社は名が知れているわけではないので母親や兄が認めるわけがないだろう

堅い 堅実

そんな職業しか認められない



卒業論文に着手し始めた時、ゼミの森教授からパンフレットを差し出された

教員に興味はないか?

経営学部の授業の傍、社会科教諭の免許を取るために教職の授業も選択していた

森先生曰く、教員を希望している人が少なくなってきているからチャンスだ
ということではあったが、

なぜ希望している人が減っているのかまでは触れてくれず

ブラックと言われる環境を教え子に進める、経営学専門の教授

知り合いの大学教授の地元で、出来るだけ教え子を受験させてほしい、と森先生が言われていたのは後で分かった

森先生のゼミで教職を取っていた5人が、地元でもない地区の教員採用試験を受けた

7月の一次試験を突破し、8月の二次試験に挑んだのは裕也だけだった


10月
教員採用試験合格者発表の日

祐也はパチンコを打っていた
ただし、ゲームセンターの、いわゆるメダルゲームだが


教員採用落ちたら、大学院に進学するよ

このことは親も了承していたし、イタリアンレストランのバイトを続けていたかった裕也にとっては不合格が理想だった


右手を台にそえたまま、左手でスマホを確認する

森先生からの着信が4件
出なくてもわかる
落ちてたらこんなにもかけてこないだろう

教員採用試験に合格
そして地方公務員内定の瞬間だった
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