THUNDER⚡️ANGELS

幾橋テツミ

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第八章 魔島殲滅戦

宝麗仙宮崩壊①

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 突如として出現したこの日本人中年男を前に、五人の遠征隊員はどう対応してよいか途方に暮れた──それも道理で、そもそも彼らは鬼舞嵐太郎の存在を把握していなかったからである。

 そして、鬼舞の風貌を目の当たりにした今、ゾネロらが感得したのはまず強烈な違和感であった。

 つまり、“ルッキズムの権化”ともいうべき星王ザジナスが自分たちの依代よりも、見栄えという点一つ取ってもはるかに劣るこの人物に忖度する気にはどうしてもなれなかったのである…。

 そしてそもそもコイツが大教帝と畏怖されたのは昔の話で、現在は負極界絶対者としての全てを剥奪されるに留まらず、能力的にも超弱体化させるための脳手術も施された追放者に過ぎぬではないか!

 十数秒ほどの間を置いて、大きく息を吸い込んだゾネロが尋問口調でまずこう問うた。

「…どうやって牢から出た?

 そして、何故われわれに気付かれることなく背後に立つことができたのだ…!?」

 ──この瞬間、鬼舞嵐太郎の表情から笑みが消えた。

 同時にアベラとカルソは房内の時空が歪んだかのような感覚に襲われたが、原因として考えられるのはしかなかった。

 事実、特務隊員の質問が投げられるや、貧相な地球人の肉体に劇的且つ異様な変化が生じたのだ!

 …。

「ふふふ、知りたいか?

 よかろう…だがそれよりもまず、臣下の務めとして余の問いに答えよ…。

 ──…!?」

 誰も答える者はいない。

 

 …!

 されど、質問者には十分であった。

「そうかそうか…。

 来ておるのじゃな──が…!

 いや全く、義兄弟ザジナスも粋な計らいをするものじゃて…」

 一瞬破顔した鬼舞ババイヴだが、与える恐怖の度合いは赫怒の表情を凌駕していたといってよい──事実、この瞬間にカルソはお気に入りのゼブラ柄のスパッツ内に失禁してしまったのであるから…。

「では、返礼として愚問に簡潔に答えておこうか…。

 まず牢の件だが、…。

 尤もそれを為したのが誰であるのかは余は一切関知しておらぬ…。

 しかしそれも、拝跪すべき大教帝が虜囚の身となっておるのがそもそも有り得べからざる不可解事なわけで、それを見過ごすこと自体が忠臣としてあるまじき大罪であるわけだが…。

 されど改めて確認してみれば、これしきの脆弱な障壁でこのババイヴ=ゴドゥエブンⅥ世を監禁し得るとの見込みこそが余に対する最大の侮辱ともいえようか…!

 もちろん覚醒後直ちには難しかったであろうが、なんのなんの、数時間も経過すれば回復した宇宙最強の筋力を利した爪撃によってあっさりと粉砕してのけたものを、な…」

 この確信に満ちたコメントに誘導されて一同が怪物の手元に注目すると、いつの間にかそこには覇者にふさわしい金色の爪がカスタムナイフの切っ先のごとく生え揃っているではないか(恐るべきことにそれは爪先も同様であった)!

「……」

 

「些か不本意な成り行きながら、こうして自由の身となった余はそこの操作盤コンソールをつついて牢を閉じたのだが、その時新たな僥倖に気付いたものよ…つまりガラス壁を半開きにしたによって房内の警報装置が無効化されていたことにな…!

さて、第二の質問だが…。

 全くこの無礼者どもめッ、わがガズムオルの戦闘術に全身を透明化する【神層結露】なる高等技が存在するのに無知であるという失態が十分死に値する大罪であることがわからんかッ!?」

 凶爪がギラリと光る右人差し指を突き付けられるまでもなく、むろん特務部隊員らはそれを知っていた──だが、それらの特殊能力はあの【精神改良手術】によって根こそぎにされたはずではなかったのか…!?

 しかし迫り来る生命の危機を前にしては、何よりもまずコイツの魔手から逃れることが先だッ!

 宝麗仙宮アジト内であることで油断していたこともあるが、何よりも不慮の事故を警戒してザジナスが軍人たちに【熱光弾銃】の携帯を禁じていたこともあって丸腰であることに歯噛みするような悔恨を味わいながら、この窮地を脱するため、ゾネロ、ルコス、ダギンは最善の手段を行使した──左腕をL字に曲げ、手首に巻いた通信端末の四角い画面をに向けた次の刹那、この至近距離で地球人が直視すれば失明確実の凄まじい閃光を発生させたのだ!

「逃げろッッ!!!」

 ──されど不幸なことに、それが大教帝の右貫手によって心臓を貫かれたゾネロの最期の言葉となった。

 それから僅か数秒の内にダギン、ルコス、アベラの順で背後から唸りを上げた左右の魔爪によって肋骨を砕かれ心臓を抉られて崩れ落ち、腰を抜かしてへたり込んだ唯一の生存者である最年少者の涙で霞んだ視界の向こうから死神がこう告げたのだった。

「──余を神野優彦のもとに案内せよ…。

 だがその前に、先程この地下牢に引っ立てられてきた男を解放する必要がある…使…!」

 



 

 

 



 

 

 

 



 

 

 



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