THUNDER⚡️ANGELS

幾橋テツミ

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終章 LASTBATTLE ON THE EARTH

DEATHGAME-ISLAND⑤

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 両腕両足を1匹ずつの鋼蛇に縛められて芝上に大の字となったラゼム=エルドは、頭上で超速回転する40センチの死の円錐ドリルを仰ぎながら顔面蒼白となっていた。

 むろん殺人機械のマイク機能を利用して届けられたビドゥロのメッセージの内容は認識しているが、恐怖でガチガチと歯の根が合わぬこともあって、引き延ばしのための憎まれ口一つ叩くことができぬ。

「んん~?

 一体どうしたというのだ“ペティグロス最強戦士”よ?

 まさか特装戦甲にガードされているというのにあれしきの衝撃で気絶したワケではあるまい?

 それとも誇り高き“ティリス星主様の近衛兵”として私ごときの軍門に降るのが耐えられぬとでもいうのかな?

 もちろん私としても強要はせぬよ…。

 理由?ハッキリ言わせてもらえば、キミという存在にそこまでの価値を認めてはいないのでね…!

 ついでにここで宣言しておくと、将来はいざ知らずこの段階フェーズで私が必要としているのはあくまでも能力以前に絶対的忠誠を誓う〈純粋奴隷〉なのだッ!!

 それであるからして、20…。

 かなり痛いだろうが、それはキミ自身の選択の結果だ──私としては回避する手段は提示したのだから、恨みを買う覚えはさらさらない…いいね?

 それではカウントダウンをはじめようか…20、19、18…」

        ✦

「──こいつは面白え。

 こんなサスペンス場面を拝めるチャンスは滅多にねえから、あのイケ好かねえペティグロス野郎の頭蓋骨が孔だらけになってからビドゥロを襲うとしようぜ…」

 先程のバカ笑いを反省してか、再び小声になって相方の耳元に告げたジェフェズに「あたぼうよ、こんなメシウマ映像見逃してたまるかっての」と弾んだ声色で機敏に応じるラヌーガ。

 されどその背後に奇怪極まる刺客がヒタヒタと迫っていることを知る由もない破落戸ゴロツキコンビであった…。

        ✦

「12、11、10…随分頑張るじゃないか──だがどうやら、あまりの恐怖に舌が硬直して声が出せぬというのが真相なのではないかね?

 ということは事実上、私の足元にひれ伏したという解釈が成り立つワケだが、困ったことに一度自らに課したルールを破るのを何よりも厭う性分でねえ…。

 従って、今さら鋼蛇ドリルを特装戦甲の兜に撃ち込むことは中止できん──しかしそれはあくまでもドリルの穿孔力を試すための実験であって、キミを処刑するためのものではないことは請け合おう…。

 もちろん若干のタイミングの狂いで数センチばかり頭蓋か顔面を抉ってしまうかもしれぬが、悪いがそこは堪忍してくれたまえ…」

 ほくそ笑みつつここで言葉を切った堕地獄の屍体愛好者ネクロフィリアは、濛々と立ち籠めるドライアイスの冷気に目を細めながら卓上に安置された美しき神霊闘術師の死してなお妖艶さを失わぬ唇に自身の土留色のそれを重ねるのであったが、陶酔のあまり忘我となりかけたところで突如として上がった金属音に慌ててリュザーンド製タブレットに向き直った。

「なッ…あ、あれは何だッ!?」

 星龍士Vol.37のブルーに光る機眼カメラアイまで1センチという距離まで迫っていた2本の鋼蛇ドリルは、突如として頭上に出現した銀紫色の〈幾何学的物体〉に首根っ子を押さえ込まれてしまったのだ!

 ギャリ、ギャリ、ギャリ、ギャリッ…!!

 2.5メートルに垂んとする機体を懸命にのたうたせて、一辺3メートルほどのMの字に酷似した謎の物体(鋼蛇を拘束しているのは両端部分にあたる)から逃れんと抵抗する機械生物であったが、圧倒的なパワー差があるものとみえて相手は微動だにしない。

 その光景はあたかも超強力な磁石に吸い寄せられた金属物質を彷彿とさせ、もはや鋼蛇単体での脱出は不可能と痛感したビドゥロは残りの4匹に激しい口調で指令する。

「一斉に離陸し、乱れ飛びながらレーザー攻撃せよッ!

 むろん一点集中に徹し、ダメージが確認できたら直ちにドリル攻撃を敢行だッ!!

 げわッッ!!??」

 ビドゥロの喉から迸った異様な悲鳴──それはMの字怪物に捕捉された2体の鋼蛇の胴体にピシピシと亀裂が走ったためであった!

「何故だッ?何故そうなるッ!?

 ま、まさかあの物体からは分子結合を破壊する超振動波が発生しているとでもいうのかッ!?

 こ、こうなったら不用意に標的に近付くのは危険であるゆえ、あくまでも距離を取ってのレーザー攻撃に徹しろッ!!

 さあ撃って撃って撃ちまくるのだッッ!!!」

 創造主の命を受け、銀紫の標的に向けて狂ったように金色の集中砲火を浴びせる鋼蛇の群れ──されどそれを嘲笑うかのように全体をまばゆい紫色に発光させたM字怪物は2匹の瀕死の?鋼蛇を密着させたまま上昇に転じ、その途中で首元が砕けて切断部分から青白いスパークを上げながら、大の字のままグロッキー状態のガンメタ戦士のすぐ傍に次々と落下する。

「ぐおお…お、おのれえぇッ…!

 い、一体アレを造ったのは誰なのだッ!?

 よ、よもや蛸ノ宮ではあるまい…何故ならば彼奴がエルドを救う理由…いや、そもそも宝麗仙宮に舞い戻って来る意味がないからだッ!

 い、いかんッ…最初の2匹で味をしめたは破壊光線をものともせずに残りの鋼蛇に接近し、同じ要領で破壊するつもりだッ!!

 と、とにかく一旦ソイツから離れろッ!

 とうやら空中では分が悪い──かくなる上は一旦地下に潜って建物内に退避し、そこでパワーを集中するために合体してから物陰を目一杯利用してゲリラ戦を挑むのだッ!!」

        ✦ 

 意想外な事態の急変に球形戦艦の艦長室は静まり返り、ウィラーク以下三名は事情通の黒蛇星爵の解説に耳を傾けるしかなかった。

「やはり出て来ましたね、帝界聖衛軍──ですが鋼帝巨蛇程度なら、太鬼真護君が出るまでもないということですか…。

 しかしながらビドゥロ氏ももう少しやると思ってましたが…これじゃエルドに毛が生えた程度のポンコツ兵器屋と呼ばせてもらうしかないようですね…」

「あ、あの奇怪な物体が帝界聖衛軍の兵器なのでありますか…し、しかしあれほど無機的な形状と超絶的な破壊力を誇示しながら、どこか生物的な気配を感得させるのは何故なのでしょうか…!?」

 つい数分前までの赤ら顔が嘘のように青ざめたゼウィル長官に微笑みながら視線を向けたジェスラ=ルギオムは、いかにも愉しげにこう明かした。

「さすがに負極界随一の兵器開発の権威として大いに気になるようですね──たしかにあの奇態なオブジェは聖衛軍の一兵卒ではありますが、鋭く看破されたようにあれは人工の存在ではありません。

 かといって連中の本拠地とされるペトゥルナワスなる異世界にアレが天然生物として存在しているワケでもない…。

 真相を申し上げれば、あれは今回私との因縁が生まれたバアル君という魔霊が想念によって生み出した、【甲閃獣】と称される負極界でいうところの殲闘霊獣なのですよ。

 実はコイツは今朝早く、仲間の2体と虹岡霊術団の本部を襲撃して最精鋭である七獣刃衆を拉し去るという殊勲を上げているのです…尤もその際に決死の反撃を受けて最弱者が誅滅されたようですが。

 さて、そうなると〈本番〉でぶつかる天才神霊闘術師であるニリーネ嬢はどう対処するか?

 実は本音を申し上げると、特装戦甲を纏ったD‐EYESと太鬼君の対決などよりもこの霊獣戦にこそ私は興味津々なのですよ…!」




 

 





 


 
 



 

 



 


 
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