魔人戦界ラージャーラ

幾橋テツミ

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第一章 地上から来た教軍超兵

ティリールカの守護神⑦

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 昇天後、直ちに駆け込んだバスルームで全身に勢いよく迸る冷水を浴びるメテウ=ウェーゼンの胸中を占めているのは、いつもながらの頑迷固陋なる教率者へのと空前の危機に曝されたティリールカへの深い憂慮であった。

『……たしかな筋からの情報によれば、とか……全くフザケているッ!

 しかも後継者であるゼドも相手の正体について深く調査することもなく唯々諾々と従ったとは何たる教民への裏切り行為かッ!!

 私が任務遂行の傍ら知己を得た各地の心ある実力者たちは聖団れんちゅうの勇猛な献身には感謝しつつも、その真意を測りかねて決して権力中枢に招き入れる愚など犯そうとしておらぬというのに……!

 更に嘆かわしいことに何とゼドは聖団屈指の操獣師であるリサラ・ハギムラの美貌と肢体に惑乱し、彼女を妻として迎えんという邪心を燃やしているというではないかッ!!

 全く以て、この愚父にしてこの愚息あり──こんな救いようのない狂愚の輩によってラユナとの接触が阻まれているとあっては、私の忍耐ももはや限界……遠からぬ〈蹶起〉はもはや不可避の選択と断ぜざるを得ぬッッ!!!』

 憤怒の焔で胸奥を炙られているうちに再び鎌首をもたげてきた男根を右手で握りしめながら固く目をつむった美青年は、隔離された研究所に籠もって師である教界最高の航空工学者であるアロスェ率いる愛華領初の万能飛翔戦闘艦建造チームの一員となって挺身する教率者令嬢の心中に思いを馳せて奥歯をギリギリと噛み締める。

『──今に見ておれ……!

 私は既に“ラージャーラ最強の超兵ハンター”ナリツ=ウィゴと義兄弟の契りを結び、クーデターに向けての詳細な青写真を作成済みなのだッ!

 尤も無能な為政者の史上最悪の選択のせいで根本からの修正が必要になったが、あのナリツを味方に付けている以上、最終的な勝利の獲得への展望に微塵の揺らぎもないわッ!!

 むろん今回の遠征でも【セシャーク勇仙領】で落ち合って、新たな蹶起計画の立案に取りかかることになる……。

 しかも驚嘆すべきことに、彼の一派は長らく架空の存在と信じられてきた四毒神獣に関してとんでもない事実を掴みかかっているというのだッ!

 もしこれが真実であれば、たとえティリールカに絆獣聖団が居座っていようが或いは最悪のケースとして神牙教軍の軍門に降っていようが余裕で〈一発逆転〉を達成できるであろうし、もしそれが望めず、だけで権力奪取に挑むことになっても十分勝算はあるッ!!

 何しろ我が兄弟の傘下には彼が打ち負かした数多あまたの教軍超兵や教軍シンパの教界軍人が自己の野心達成のため腕を撫しており、そして何よりも【電脳巨兵】を筆頭にラージャーラ最先端の〈自律的破壊兵器〉も多数スタンバイしていることだしなッ!

 ふふふ、教率者とは名ばかりの“類稀なる暗君”シーオ=メギンよ…キサマがあれほどまでに欲した毒神獣との対面もいよいよ目睫の間に迫ったようだぞ──だがそれは守護神としてではなくあくまでも破壊神としてだがなッッ!!!』

 今や完全に硬度を回復した肉柱の疼きに堪りかね、右手を激しく上下させる敏腕情報研究所員であったが、その時彼が思い描いていたのは再会を熱望する教率者令嬢ではなかったのだ!

『あの娘…たしかといったか……?

 よもや野蛮なる地上人類にあれほどの妖麗なる女子がいようとは──リサラはあくまでも例外中の例外で、カヅキ・タケザワのごとき二目と見られぬ醜女しこめばかりと確信しておったのだが…事実、現在駐留中の操獣師どもは総じて美とは縁なき衆生だしな……。

 されどユミハによって蒙を啓かれたことで私の野望に新たな項目が加わったようだ……そう、愛華領制圧の暁には!』

 かくて脳中で那崎弓葉をミュコスのごとく跪かせたメテウは、今しもその瑞々しく艷やかな唇に分身を含ませたと妄想して思い切り上体をのけ反らせた。

「…はぁ…はぁ…はあぁッ!

 可愛いユミハ…あたかもかつえた乳呑み児が母の乳房を貪るように、そんなにも激しく我が性器を吸いしゃぶるということはよっぽど聖なる精液ミルクを求めているのだね……!

 くうぅッ…よしよし分かったよ……じゃあ、吸うだけではなく、まずはゆっくりと…それから徐々に激しく頭を前後に揺すぶってごらん…そう、その調子だ…上手いぞ…はっ、あああッ…。

 その調子だ…うくッ…はぁ、はあぁッ…イッ、イクよユミハッ!

 ──うッ!くううううぅッッ!!」

         ✦

 2度に及ぶ渾身の射精を経て、さすがに倦怠を覚えつつバスタオルで躰を拭いながら浴室を出た“確信犯的反逆者”は、先程まで自らが立っていた寝室の中央に佇む長身の影を目の当たりにして入口部分で凍りついた!

「──ゼ、ゼド様……!

 ど、どうしてここに……!?」

 教率者一族のシンボルともいえるクリーム色のローブで爪先まで覆い隠した次期教率者は、ゆるやかなウェーブのかかった銀髪の下で碧く輝く双眸に静かな瞋恚いかりを湛えつつを凝視している……。

 そして彼の背後に控える2体の人型ロボット──銀色のメタリックボディはあくまでスマートながらその膂力パワーは優に重機に匹敵し、その気になれば錬装者たちと互角の格闘戦を繰り広げることも容易であろう。

 対外的にすら(形式上は)非武装を標榜する愛華領が、ましてや自教民を鎮圧するのに武器を用いるはずもなく、治安維持はこれらの〈非武装機械人間〉によって保たれている。

 そして今回ゼドが帯同したのはより高性能な彼専用の個体であり、教民たちの生命の安寧に直接関与する【薬創士】という彼の使命に因んで【医門機】と名付けられていた。

「──残念だよ、メテウ。

 君のこれまでのティリールカに対する献身は素晴らしく、それは愛華領の誰しもが認めるところだ。

 むろん、それは偉大なる指導者である我が父にとっても例外ではない…事実、……!」

 この言葉はまさに青天の霹靂であり、背徳の研究員は青白い顔色から更に血の気を失ってグラリとよろめく。

「し、失礼ながらお訊ねするのを許して頂きたいのですが、い、一体何を仰っておられるのですか?

 全く意味が分からない……ど、どうかハッキリとお教え下さい……」

 決して激することなく無表情のまま小さく頷いた次期教率者は、あくまでも静かに、されど峻厳たる口調でこう宣告した。

「実は昨日、──=

 各教界の事情に詳しい君なら承知のように、あそこはラージャーラ屈指の〈無法地帯〉であり、いわゆるはぐれ者たちのオアシスでもある。

 そしてどうやら君は彼らに対し、愛華領に政変クーデターを起こして権力を奪取するための手駒とすべくあらゆる甘言を弄して扇動したらしいな……!?

 おっと、逃げ出そうとしてもムダだぞ……この部屋の外部に通じる出入口は既に〈緊急非常ロック〉されている──私が口頭で命じるかこの手の中の携帯用万能キーをタッチせぬ限り永遠に解錠されることはなく、いわば小綺麗な牢獄といったところだ……。

 むろん愛華領教民として君には公的な弁明の機会が与えられる──しかしそれもまず真っ先に教令部による入念な尋問を受けてからの話だ。

 そしてどうやら、とのこと……!

 ではとりあえず服を着たまえ…なお連行の際、両腕を医門機に委ねてもらうことになるが、決して抵抗してはならんぞ──知ってのとおり、連中にとって人間の腕をヘシ折ることなど児戯に等しいのだからな……!」

 



 



 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 



 
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