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第二章 かくて【中立教界】は戦場となった
神牙教軍、侵攻開始⑤
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若き操獣師たちが明日への英気を養うために自室に引き下がった後、ゼド=メギンは竹澤夏月と玉朧拳師の両ベテランを除いては唯一レイモンド・スペンサーのみに貸与していたメギン家直通の専用通信機(萩邑りさらに授けた“ニュー聖幻晶”にも同様の機能を備えている)を通じて彼との緊急会談を申し入れた。
本来であれば玉朧にも声を掛け、対面で行うのが筋であったが、さしもの歴戦の古強者も、覚醒こそ誰よりも早かったとはいえ当然ながら未だ緻密な判断を下せる状況ではないため、やむを得ずCBK総帥のみと善後策を謀ることにしたのである……。
そして、ゼド本人はスペンサーとの一対一での直接対話に何故か踏み切れぬ…いや、ハッキリ言えば二の足を踏んでいたのだ。
とはいえ、決して彼が“最強錬装者”の威名に臆してしまった訳ではない──その証拠に、友好関係にある共に幼時から帝王学を叩き込まれて育った若き教率者候補たちに比しても全く遜色のない、気品と礼節を兼ね備えた模範的な青年紳士であるスペンサーとは真逆の人格を有しているであろうチェイズ闘士団の首領・ジャザンやミッション責任者として目下愛華領赴任中の行動隊長・ギーガルとは互いに腹芸を駆使しつつもざっくばらんに談笑できるのだから。
『……全く自分でも不思議だが、どうも彼(スペンサー)からはギーガルなどとは比較にならぬ危険な匂いを感じる──まあそれもついさっき目の当たりにした監査室における本領発揮ともいうべき凄まじい戦いぶりから覚えるものかもしれぬが……!
一言で表現するなら、いかに剣呑な雰囲気を発散させようとも、その暴力の源泉が多少の強化改造を施されているとはいえあくまで自己の肉体とありふれた一般携行兵器に過ぎぬ闘士団の連中とは根本から異なり、畏れ多くも天響神直々に選抜されたと自称し、事実錬装磁甲なる超兵器に神速で身を固め得る〈超戦士〉と相対するのは、たとえ彼らが頼もしき助力者であると理解しているとはいえどうしても躊躇してしまうのだ──ふふふ、いかにこれまで非暴力中立を金科玉条としてきた“ティリールカの子”とて、やはり男子であったということか……つまり先刻我ながら容易く制圧したメテウ=ウェーゼンに毛が生えた程度と推測される傭兵どもならば仮にその場で争いになったとて微塵も怯むものではないが、スペンサー氏には文字通り鎧袖一触されてしまうのが自明の理であり、十分それを心得ている相手ははいかに謙譲を装おうとも態度の端々にそれを滲ませるはず……むろん既に枯れきった玉朧氏同伴ならばその点は抑制されるのだろうが、ほぼ同年代といえるこの私と単独で対面したなら……だがそうはいくかッ!
次期教率者の誇りにかけても、いかに強かろうとたかが用心棒ふぜいに舐めた態度は断じて取らせぬぞッ!!』
折悪しく相手が入浴中であったため、その点に関してすら微かな苛立ちを覚えつつ待機するゼド=メギンの内心の声はおおよそ以上のようなものであったが、念願であった美しき操獣師の裸身を遂に我が物にした満足感によって次第に気分も鎮まってくる……。
『やはり、我が妻となる運命の女性はリサラ・ハギムラ以外にはあり得ぬことを改めて再認識できたことはこの上ない収穫であった……!
加えてスペンサーには既に婚約者があり、リサラに干渉してくるおそれが皆無であろうことも慶賀すべき事実だ──。
とはいえ、我々次世代教率者の連合組織である【極智の眼】がラージャーラ全域に張り巡らした大情報網からもたらされた急報によると、彼女の後輩にあたるチェン・ヤータオ(鄭 雅桃)なる天才操獣師がリサラを熱烈なまでに思慕しているというまことに嘆かわしい事実が認められたという……尤も彼女の勇猛果敢な戦いぶりについては凱鱗領に密かに放った記録翔球によってつぶさに拝見させてもらったが、なるほど目に鮮やかな赤紫の有翼絆獣を縦横無尽に駆って冷徹なまでに巨大な敵に食らいつき、そして攻め抜く操獣技術はまさに天才の名に恥じぬものがあった──されど同性が友誼以上の領域に踏み込むことなど決してあってはならぬことだッ!
聞くところによると彼女の“精神病理”はかくのごとき性愛面のみに留まらず、先の凱鱗領における戦いにおいても今は亡きタケザワ総隊長(当時)の指示にことごとく抗う始末で、現在は戦線を強制離脱させられ聖団本部基地において峻厳な【反動心理矯正措置】を受けている最中だという……ま、たしかにこれは朗報というべきだが、果たして症状の深刻さによっては外科的施術が必要な性的嗜好の根本的改善にまで踏み込むつもりがあるものかな?
むしろ聖団上層部がこの倒錯性こそがヤータオの卓越した闘志と戦闘センスの原動力であると曲解した場合、この方面には一切手をつけぬ可能性が大といえよう……。
されど、たとえ異常者のまま再び戦場に解き放たれ、餓獣のごとく我が妻の許に舞い戻ろうとしてもそうはさせんッ!
その時こそはこのゼド=メギンの……いや極智の眼の恐ろしさを骨の髄まで味わわせてくれようぞッッ!!』
ティリールカ愛華領次期教率者が拳を固めてギリッと虚空を睨みつけた刹那、レイモンド=スペンサーとの交信が開始されたのだった──。
本来であれば玉朧にも声を掛け、対面で行うのが筋であったが、さしもの歴戦の古強者も、覚醒こそ誰よりも早かったとはいえ当然ながら未だ緻密な判断を下せる状況ではないため、やむを得ずCBK総帥のみと善後策を謀ることにしたのである……。
そして、ゼド本人はスペンサーとの一対一での直接対話に何故か踏み切れぬ…いや、ハッキリ言えば二の足を踏んでいたのだ。
とはいえ、決して彼が“最強錬装者”の威名に臆してしまった訳ではない──その証拠に、友好関係にある共に幼時から帝王学を叩き込まれて育った若き教率者候補たちに比しても全く遜色のない、気品と礼節を兼ね備えた模範的な青年紳士であるスペンサーとは真逆の人格を有しているであろうチェイズ闘士団の首領・ジャザンやミッション責任者として目下愛華領赴任中の行動隊長・ギーガルとは互いに腹芸を駆使しつつもざっくばらんに談笑できるのだから。
『……全く自分でも不思議だが、どうも彼(スペンサー)からはギーガルなどとは比較にならぬ危険な匂いを感じる──まあそれもついさっき目の当たりにした監査室における本領発揮ともいうべき凄まじい戦いぶりから覚えるものかもしれぬが……!
一言で表現するなら、いかに剣呑な雰囲気を発散させようとも、その暴力の源泉が多少の強化改造を施されているとはいえあくまで自己の肉体とありふれた一般携行兵器に過ぎぬ闘士団の連中とは根本から異なり、畏れ多くも天響神直々に選抜されたと自称し、事実錬装磁甲なる超兵器に神速で身を固め得る〈超戦士〉と相対するのは、たとえ彼らが頼もしき助力者であると理解しているとはいえどうしても躊躇してしまうのだ──ふふふ、いかにこれまで非暴力中立を金科玉条としてきた“ティリールカの子”とて、やはり男子であったということか……つまり先刻我ながら容易く制圧したメテウ=ウェーゼンに毛が生えた程度と推測される傭兵どもならば仮にその場で争いになったとて微塵も怯むものではないが、スペンサー氏には文字通り鎧袖一触されてしまうのが自明の理であり、十分それを心得ている相手ははいかに謙譲を装おうとも態度の端々にそれを滲ませるはず……むろん既に枯れきった玉朧氏同伴ならばその点は抑制されるのだろうが、ほぼ同年代といえるこの私と単独で対面したなら……だがそうはいくかッ!
次期教率者の誇りにかけても、いかに強かろうとたかが用心棒ふぜいに舐めた態度は断じて取らせぬぞッ!!』
折悪しく相手が入浴中であったため、その点に関してすら微かな苛立ちを覚えつつ待機するゼド=メギンの内心の声はおおよそ以上のようなものであったが、念願であった美しき操獣師の裸身を遂に我が物にした満足感によって次第に気分も鎮まってくる……。
『やはり、我が妻となる運命の女性はリサラ・ハギムラ以外にはあり得ぬことを改めて再認識できたことはこの上ない収穫であった……!
加えてスペンサーには既に婚約者があり、リサラに干渉してくるおそれが皆無であろうことも慶賀すべき事実だ──。
とはいえ、我々次世代教率者の連合組織である【極智の眼】がラージャーラ全域に張り巡らした大情報網からもたらされた急報によると、彼女の後輩にあたるチェン・ヤータオ(鄭 雅桃)なる天才操獣師がリサラを熱烈なまでに思慕しているというまことに嘆かわしい事実が認められたという……尤も彼女の勇猛果敢な戦いぶりについては凱鱗領に密かに放った記録翔球によってつぶさに拝見させてもらったが、なるほど目に鮮やかな赤紫の有翼絆獣を縦横無尽に駆って冷徹なまでに巨大な敵に食らいつき、そして攻め抜く操獣技術はまさに天才の名に恥じぬものがあった──されど同性が友誼以上の領域に踏み込むことなど決してあってはならぬことだッ!
聞くところによると彼女の“精神病理”はかくのごとき性愛面のみに留まらず、先の凱鱗領における戦いにおいても今は亡きタケザワ総隊長(当時)の指示にことごとく抗う始末で、現在は戦線を強制離脱させられ聖団本部基地において峻厳な【反動心理矯正措置】を受けている最中だという……ま、たしかにこれは朗報というべきだが、果たして症状の深刻さによっては外科的施術が必要な性的嗜好の根本的改善にまで踏み込むつもりがあるものかな?
むしろ聖団上層部がこの倒錯性こそがヤータオの卓越した闘志と戦闘センスの原動力であると曲解した場合、この方面には一切手をつけぬ可能性が大といえよう……。
されど、たとえ異常者のまま再び戦場に解き放たれ、餓獣のごとく我が妻の許に舞い戻ろうとしてもそうはさせんッ!
その時こそはこのゼド=メギンの……いや極智の眼の恐ろしさを骨の髄まで味わわせてくれようぞッッ!!』
ティリールカ愛華領次期教率者が拳を固めてギリッと虚空を睨みつけた刹那、レイモンド=スペンサーとの交信が開始されたのだった──。
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