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第二章 かくて【中立教界】は戦場となった
神牙教軍、侵攻開始⑨
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濡れた躰を拭くのもそこそこに慌てた様子で画面の向こうに現れた赤いTシャツ姿のレイモンド=スペンサーに冷ややかな視線を投げかけたゼド=メギンは、開口一番「実は重大な話があるのだが」と重々しく切り出し、「次期教率者として、私は今回の件を決して見過ごす訳にはいかぬのだ……」と畳み掛ける。
一方のCBK総帥もこの展開は当然予想していたものとみえ、やや俯きながら神妙な表情で謹聴する構えのようであった。
「もし事実誤認があると大変失礼にあたるゆえ、私も先ほど聖団本部に確認させてもらったのだが、どうやら貴君らは今回の岩眼魔なる教軍超兵の得意技が幻覚攻撃であることは既知の事実であったということだね?」
「──ええ、それはもちろんです」
「ということは、今回採用されたような特殊極まる形式による〈公開尋問〉がいかに危険かということは事前に十分把握しておくべきではなかったのかな?
また当教界の監査室を緊急使用するにあたり、その使用目的が偶然捕虜として得た実際の教軍超兵を用いての〈聖団員教育〉というのは今にして思えばあまりに無謀な試みであったな……」
明らかに詰問調のゼド=メギンの声色からは初対面時の慇懃さは完全に消え失せ、ラージャーラにおいて他者からかくのごとき峻烈な言葉を叩きつけられるのは久方ぶりの現役最強錬装者にして聖団幹部の一角を占めるスペンサーは、平静な表情を装いつつも奥歯をギリリと噛みしめながら恥辱に耐える。
「……まあこの点に関しては貴君の独自判断にあらず聖団本部からの指示であったとは最高幹部のネフメルス氏から伺っているが、その説明は到底当方を納得させ得るものではなかったぞ──即ち、“今回捕獲された岩眼魔は現在ラージャーラにおいて異常な増加が確認されており、教軍首領がその主武器である幻覚攻撃を対教民侵食手段として殊更重要視している節が窺えるため、その脅威を実地体験させるべく、かねて新開発の〈教軍超兵特化型尋問兵器〉の実験をかねて実行させた”とのことであったが、そのような危険行為はあくまでも聖団基地で実施すべきであり、れっきとした正教界である我が愛華領によって実施するなどとはまさに言語道断というべきではないのかね?──尤もこの点は命令者のネフメルス氏に力説させてもらったが……」
「……」
「ま、ここまでは貴君自身というより絆獣聖団自体の運営方針に対しての不信感の表明であったが、誰あろう“最強錬装者”の呼び声高い貴君に対してもどうしても言っておかねばならぬことがあるのだがね……」
されど沈鬱な表情の青年神像のごときスペンサーは俯いたまま微動だにせず、ゼドの次なる言葉をすでに予知しているかのようであった。
「──さすがに私が言いたいことを理解しておられるようだな……そう、錬装者チーム【皇帝狼】総帥であるヘルムート・ベルガー氏の故・竹澤夏月女史及びクリストファー操獣師(メデューサ)に対する、狂気の沙汰としか形容しようのない反逆的暴行についてだよ。
しかも彼奴は他の聖団員たちのように瀕死の岩眼魔が放った渾身の幻影投射によって狂乱した訳ではない……この点は私も直接監査室の記録映像で確認したが、明らかにベルガー錬装者は閲覧席の混乱が最高潮に達する頃合いを見計らって乱入したとしか認められなかった。
つまり、彼は予めこうなることを知っていた──ということは、もとより組織への捨身の反逆を目論んでいたか、或いはより悲観的な見立てとしては教軍と内通していたとしか判断しかねるというものではないかね?
果たしてどちらが正解かは貴君の凶暴な拳によって脳震盪と眼窩底骨折を負ったベルガー氏への専門家による入念な聴取を待たねばなるまいが、それ以前の問題として私が指摘したいのは、かくのごとき獅子身中の虫というべき危険人物を、知ってか知らずか防衛対象である神聖なる教界内に配してしまった聖団──いや最強錬装者にして最大勢力(CBK)の領袖であるからには、他チームの動向にもつつがなく睨みを効かせるべきであろう貴君の管理能力の杜撰さなのだッ!」
声を荒げたゼド=メギンは、相手の無言をいいことに更なる糾弾と内部干渉すれすれの強烈な要望を叩きつける!
「しかも大半の操獣師たちと共に鏡の教聖の呪われし幻術の虜となった【星拳鬼會】のライドウ錬装者がギョクロウ氏の指令を受けて暴走するベルガーの阻止に動いたサカマキ錬装者をあろうことか羽交い締めにして妨害した事実も決して看過する訳にはいかん──即ち、かくも脆弱な精神の持ち主に凶猛な殺戮兵器ともいうべき錬装磁甲を授与しているという事実は、真偽も定かではない天響神の託宣によって事実上の“聖団第2基地”に指定されてしまった我らティリールカの民としてはたまったものではないのだッ!!
したがって、クリストファー操獣師の手術を終えた父と緊急協議した結果導き出した結論をここでお伝えさせていただこうか──今この瞬間から、あなた方錬装者チームは我々が独自に招聘したチェイズ闘士団を率いるギーガル行動隊長の指揮下に入ってもらう。
そしてもしこの要請を肯んじない場合には、速やかに当教界を辞去していただくということだ……!
当然ながらネフメルス氏にもこの意向は伝達してあるが、その際もたらされた回答はあくまで貴君の意思に委ねるということであった……!!」
一方のCBK総帥もこの展開は当然予想していたものとみえ、やや俯きながら神妙な表情で謹聴する構えのようであった。
「もし事実誤認があると大変失礼にあたるゆえ、私も先ほど聖団本部に確認させてもらったのだが、どうやら貴君らは今回の岩眼魔なる教軍超兵の得意技が幻覚攻撃であることは既知の事実であったということだね?」
「──ええ、それはもちろんです」
「ということは、今回採用されたような特殊極まる形式による〈公開尋問〉がいかに危険かということは事前に十分把握しておくべきではなかったのかな?
また当教界の監査室を緊急使用するにあたり、その使用目的が偶然捕虜として得た実際の教軍超兵を用いての〈聖団員教育〉というのは今にして思えばあまりに無謀な試みであったな……」
明らかに詰問調のゼド=メギンの声色からは初対面時の慇懃さは完全に消え失せ、ラージャーラにおいて他者からかくのごとき峻烈な言葉を叩きつけられるのは久方ぶりの現役最強錬装者にして聖団幹部の一角を占めるスペンサーは、平静な表情を装いつつも奥歯をギリリと噛みしめながら恥辱に耐える。
「……まあこの点に関しては貴君の独自判断にあらず聖団本部からの指示であったとは最高幹部のネフメルス氏から伺っているが、その説明は到底当方を納得させ得るものではなかったぞ──即ち、“今回捕獲された岩眼魔は現在ラージャーラにおいて異常な増加が確認されており、教軍首領がその主武器である幻覚攻撃を対教民侵食手段として殊更重要視している節が窺えるため、その脅威を実地体験させるべく、かねて新開発の〈教軍超兵特化型尋問兵器〉の実験をかねて実行させた”とのことであったが、そのような危険行為はあくまでも聖団基地で実施すべきであり、れっきとした正教界である我が愛華領によって実施するなどとはまさに言語道断というべきではないのかね?──尤もこの点は命令者のネフメルス氏に力説させてもらったが……」
「……」
「ま、ここまでは貴君自身というより絆獣聖団自体の運営方針に対しての不信感の表明であったが、誰あろう“最強錬装者”の呼び声高い貴君に対してもどうしても言っておかねばならぬことがあるのだがね……」
されど沈鬱な表情の青年神像のごときスペンサーは俯いたまま微動だにせず、ゼドの次なる言葉をすでに予知しているかのようであった。
「──さすがに私が言いたいことを理解しておられるようだな……そう、錬装者チーム【皇帝狼】総帥であるヘルムート・ベルガー氏の故・竹澤夏月女史及びクリストファー操獣師(メデューサ)に対する、狂気の沙汰としか形容しようのない反逆的暴行についてだよ。
しかも彼奴は他の聖団員たちのように瀕死の岩眼魔が放った渾身の幻影投射によって狂乱した訳ではない……この点は私も直接監査室の記録映像で確認したが、明らかにベルガー錬装者は閲覧席の混乱が最高潮に達する頃合いを見計らって乱入したとしか認められなかった。
つまり、彼は予めこうなることを知っていた──ということは、もとより組織への捨身の反逆を目論んでいたか、或いはより悲観的な見立てとしては教軍と内通していたとしか判断しかねるというものではないかね?
果たしてどちらが正解かは貴君の凶暴な拳によって脳震盪と眼窩底骨折を負ったベルガー氏への専門家による入念な聴取を待たねばなるまいが、それ以前の問題として私が指摘したいのは、かくのごとき獅子身中の虫というべき危険人物を、知ってか知らずか防衛対象である神聖なる教界内に配してしまった聖団──いや最強錬装者にして最大勢力(CBK)の領袖であるからには、他チームの動向にもつつがなく睨みを効かせるべきであろう貴君の管理能力の杜撰さなのだッ!」
声を荒げたゼド=メギンは、相手の無言をいいことに更なる糾弾と内部干渉すれすれの強烈な要望を叩きつける!
「しかも大半の操獣師たちと共に鏡の教聖の呪われし幻術の虜となった【星拳鬼會】のライドウ錬装者がギョクロウ氏の指令を受けて暴走するベルガーの阻止に動いたサカマキ錬装者をあろうことか羽交い締めにして妨害した事実も決して看過する訳にはいかん──即ち、かくも脆弱な精神の持ち主に凶猛な殺戮兵器ともいうべき錬装磁甲を授与しているという事実は、真偽も定かではない天響神の託宣によって事実上の“聖団第2基地”に指定されてしまった我らティリールカの民としてはたまったものではないのだッ!!
したがって、クリストファー操獣師の手術を終えた父と緊急協議した結果導き出した結論をここでお伝えさせていただこうか──今この瞬間から、あなた方錬装者チームは我々が独自に招聘したチェイズ闘士団を率いるギーガル行動隊長の指揮下に入ってもらう。
そしてもしこの要請を肯んじない場合には、速やかに当教界を辞去していただくということだ……!
当然ながらネフメルス氏にもこの意向は伝達してあるが、その際もたらされた回答はあくまで貴君の意思に委ねるということであった……!!」
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