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第二章 かくて【中立教界】は戦場となった
神牙教軍、侵攻開始⑩
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殆ど強要に近いこの申し入れはレイモンド・スペンサーにとって屈辱以外の何物でもなく、断じて受け入れられるものではなかったが、聖団が愛華領と“一体化”する道を選び、あまつさえ巨大な飛翔刃獣が接近中という非常時の只中にある現在、自己のプライドのみを優先して動ける状況ではなかった。
かくて十数秒間の歯軋りする煩悶の後、“最強錬装者”が出した答は──!?
「……分かりました。
現在該教界に駐機中である3機のデルタスライダー(錬装者チームが搭乗する強襲戦闘機)は今ミッションにおいてガーギル氏の采配によって動くことをお約束致します──ただ」
予定通りの勝利に会心の表情で小さく頷いていたゼド=メギンが瞬時に険しい表情に戻り、「……ただ?」と尖った声で訊ねる。
「今回の一件に重大な関与が疑われるヘルムート・ベルガーが運用する皇帝狼機に関しましては、参戦自体が不可能であるということなのですが……」
次期教率者の白皙の容貌が瞬時に美しき悪魔の嘲笑に変わる。
「くっふふふ……そういうことなら何も問題はない──何故ならばそれこそ猫の手も借りたいこの緊急時にみすみす貴重な高性能戦闘機を温存させるような愚策を犯す我々だと思うのかね?
まあ聡明な貴君ならば察してくれるだろうが、当該機もベルガー一味を排除した上で、チェイズ闘士団の精鋭たちによって稼働することになるはずだ──もしも貴君が我々の無知に付け込んで錬装者によってしか駆動できぬと強弁するのであれば、それこそCBKメンバー複数名を闘士団の指南役として共に搭乗させればよいではないか……!?」
✦
首領の指令を受けた神牙教軍地極将・樊尨はラージャーラ最大の大洋であるアルサーラ海の上空でかねて通知されていた執教士長候補・ザナード=レグラを待ち構え、合流後にキーゴごと彼を収容してティリールカに向けて再出発した。
「──ようこそ、ザナード=レグラどの。
貴殿の魔法王界における勇名は間接的ながらつとに見聞させてもらい大いに感銘を受けておったためか、とても初対面とは思われぬ。
さて、偉大なる教聖より我が教軍の作戦計画については教示されておられると察するが、これまでとは一つ異なる点が存在する……」
身長2メートル・体重も130キロは優にありそうな筋骨隆々の青色の巨体を、あろうことか虹色のネオンのごとき七色に点滅発光させる全身無毛の怪人を前にした“灰色の独殺者”の感想は、
『コイツ、ケバケバしい光の装飾を取り除けば天筋極剛功を発動中のオルゼムと瓜二つといっていいな……」
というものであったが、武法戦隊長のルーツがラージャーラに存在するなどとはあまりに突飛な想像であるゆえ、単なる他人の空似であろう……。
全長150メートルに達する“海星型巨大飛翔刃獣“ザヌザの操獣室はかなり広いが、やはりキーゴと同様に直径8メートル近い円形スペースの、高さ6メートルほどの壁面をぐるりと埋め尽くすこれも丸い20枚以上の高解像度スクリーンを除いては操縦桿や計器類といったメカ要素は一切見当たらず、中央に設置された背もたれ付きの円形ソファへと導かれたザナードは教軍最高幹部に促され、並んで着座するがその吸着度は特筆ものであり、移動の意思をもって躰を動かす以外は微動だにすることはなく、なるほどこれならば固定ベルトの類は一切不要であろうと感服させた──ということは、この座席は単なる無機物ではなく刃獣の体組織の一部なのかもしれぬ!
「──それは、教聖が仰られていたユミハ・ナザキなる少女操獣師の捕獲と極天霊柱への送致ですね?」
即戦力たる新加入者の確信に満ちた問いかけに、チラリと視線を送りつつ地極将は鷹揚にうなずく。
「さよう……現在、愛華領外れの白老森で煬赫なる我が不肖の弟子が手ぐすね引いて待機してはおるものの、特定の、それも精強な絆獣の体内に潜む人物を確実に拉致するなどという高難度の任務は鈍重なこやつにはとても荷が勝ちすぎるゆえに、ぜひとも貴殿の手腕に期待したいのだが、いかがであろうかな?
なお、ユミハの容貌に関してはキーゴ内のスクリーンを通じて伝達するとのことであったが、もし未達ならばここで投影してもよいのだが……」
「いいえ、その点につきましてはご心配なく──既に標的の身体的特徴は余すところなく脳裏に刻みつけてあります。
ですが正直に申し上げますと、現在それよりも私の胸中を占めているのは、ユミハ情報の後に提示されたティリールカ攻略の最大の障害の一つとされる“最強錬装者”レイモンド・スペンサーに対する抹殺指令の方なのですよ……!」
かくて十数秒間の歯軋りする煩悶の後、“最強錬装者”が出した答は──!?
「……分かりました。
現在該教界に駐機中である3機のデルタスライダー(錬装者チームが搭乗する強襲戦闘機)は今ミッションにおいてガーギル氏の采配によって動くことをお約束致します──ただ」
予定通りの勝利に会心の表情で小さく頷いていたゼド=メギンが瞬時に険しい表情に戻り、「……ただ?」と尖った声で訊ねる。
「今回の一件に重大な関与が疑われるヘルムート・ベルガーが運用する皇帝狼機に関しましては、参戦自体が不可能であるということなのですが……」
次期教率者の白皙の容貌が瞬時に美しき悪魔の嘲笑に変わる。
「くっふふふ……そういうことなら何も問題はない──何故ならばそれこそ猫の手も借りたいこの緊急時にみすみす貴重な高性能戦闘機を温存させるような愚策を犯す我々だと思うのかね?
まあ聡明な貴君ならば察してくれるだろうが、当該機もベルガー一味を排除した上で、チェイズ闘士団の精鋭たちによって稼働することになるはずだ──もしも貴君が我々の無知に付け込んで錬装者によってしか駆動できぬと強弁するのであれば、それこそCBKメンバー複数名を闘士団の指南役として共に搭乗させればよいではないか……!?」
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首領の指令を受けた神牙教軍地極将・樊尨はラージャーラ最大の大洋であるアルサーラ海の上空でかねて通知されていた執教士長候補・ザナード=レグラを待ち構え、合流後にキーゴごと彼を収容してティリールカに向けて再出発した。
「──ようこそ、ザナード=レグラどの。
貴殿の魔法王界における勇名は間接的ながらつとに見聞させてもらい大いに感銘を受けておったためか、とても初対面とは思われぬ。
さて、偉大なる教聖より我が教軍の作戦計画については教示されておられると察するが、これまでとは一つ異なる点が存在する……」
身長2メートル・体重も130キロは優にありそうな筋骨隆々の青色の巨体を、あろうことか虹色のネオンのごとき七色に点滅発光させる全身無毛の怪人を前にした“灰色の独殺者”の感想は、
『コイツ、ケバケバしい光の装飾を取り除けば天筋極剛功を発動中のオルゼムと瓜二つといっていいな……」
というものであったが、武法戦隊長のルーツがラージャーラに存在するなどとはあまりに突飛な想像であるゆえ、単なる他人の空似であろう……。
全長150メートルに達する“海星型巨大飛翔刃獣“ザヌザの操獣室はかなり広いが、やはりキーゴと同様に直径8メートル近い円形スペースの、高さ6メートルほどの壁面をぐるりと埋め尽くすこれも丸い20枚以上の高解像度スクリーンを除いては操縦桿や計器類といったメカ要素は一切見当たらず、中央に設置された背もたれ付きの円形ソファへと導かれたザナードは教軍最高幹部に促され、並んで着座するがその吸着度は特筆ものであり、移動の意思をもって躰を動かす以外は微動だにすることはなく、なるほどこれならば固定ベルトの類は一切不要であろうと感服させた──ということは、この座席は単なる無機物ではなく刃獣の体組織の一部なのかもしれぬ!
「──それは、教聖が仰られていたユミハ・ナザキなる少女操獣師の捕獲と極天霊柱への送致ですね?」
即戦力たる新加入者の確信に満ちた問いかけに、チラリと視線を送りつつ地極将は鷹揚にうなずく。
「さよう……現在、愛華領外れの白老森で煬赫なる我が不肖の弟子が手ぐすね引いて待機してはおるものの、特定の、それも精強な絆獣の体内に潜む人物を確実に拉致するなどという高難度の任務は鈍重なこやつにはとても荷が勝ちすぎるゆえに、ぜひとも貴殿の手腕に期待したいのだが、いかがであろうかな?
なお、ユミハの容貌に関してはキーゴ内のスクリーンを通じて伝達するとのことであったが、もし未達ならばここで投影してもよいのだが……」
「いいえ、その点につきましてはご心配なく──既に標的の身体的特徴は余すところなく脳裏に刻みつけてあります。
ですが正直に申し上げますと、現在それよりも私の胸中を占めているのは、ユミハ情報の後に提示されたティリールカ攻略の最大の障害の一つとされる“最強錬装者”レイモンド・スペンサーに対する抹殺指令の方なのですよ……!」
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