魔人戦界ラージャーラ

幾橋テツミ

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第三章 凶幻獣戦域の覇者

超魔人、再び…!②

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「ふふ、よかろう……ならば答えようか──それは余の戦争目的が当面の目標を達成し、世界ラージャーラはいよいよ〈選別の時〉を迎えることとなったからだ……!」

 佐原真悠花が一切躰を動かしていないにもかかわらず、いつの間にかクルリと180度回転して自分と向き合っていることに萩邑りさらは全身の血が凍るような戦慄を味わいながら、震える声で敵軍首領との対話に挑む。

ですって……!?
 
 それはがこれまでに征服した90近い教界をいよいよ本格的に教軍化しようということなの……?」

 おまえ、と呼び捨てられた刹那、平穏だった真悠花の表情が瞬時に夜叉のごとく変貌したことに心臓を握りしめられたかのような殆ど物理的な痛みを感得させられたものの、それも数秒のことで表面上は可憐さを取り戻した最年少操獣師はこう応える。

「それこそ発言者がでなければその瞬間に首を刎ねてやったところだが、まあよかろう……。

 では話を戻すが、支配地の教軍化──そんなものは勝者の当然の権利であり、殊更に選別などという表現を用いるべき事柄ではない。

 余が述べているのは、全教民……いや全生命体が文字通りの意味で創造主たる天響神エグメドによって生者と死者に選別される運命の瞬間がいよいよ目前に迫ったという冷厳なる事実についてなのだ──たとえ余が語らずとも、いずれによって告知されたことであろう……何故ならば、小癪なことに……!」

が……既に〈選別〉に気付いてるですって……!?」

 早くも自分と愛華領次期教率者の関係を見抜かれていることにおののきながらも、りさらは必死に声を励ませて真相へ迫ろうとする。

「教えてちょうだい、その言葉の意味をッ!?

 どうして公平無私でなければならないはずのエグメドがおまえ以上に酷い仕打ちを罪の無い教民たちにやろうとするのよッ!?」

「……何故ならば、

 よいか、そもそも天響神が希求したのは決して余の侵攻以前のごときなどではなく、少数の強者のみが弱者をくらい尽くして物心を強大化し、果てなき闘争を続けるなのだ。

 されど、かくのごときによって世界を包摂しながら、あろうことか異世界(三次元)人による絆獣聖団なる傭兵集団を戦線に投入し、最も忠実な使徒ともいうべき余の進撃を妨害したのは不可解というほかないが、今となってはそれも我が軍勢にたゆまぬ進化を促す“叱咤の鞭”であったと納得しておる……。

 だがおまえにとっては受容し難い事実であろうが、使

 何故ならば、……!」

 これは絆獣聖団とその標榜する崇高なる理念のために身命を捧げてきた萩邑りさらにとって絶対に承認できず、そして信じられない事態であった!

「何ですって……!?
 ということはあたしのも……!?」

 表情を強張らせながら思わず額に煌めく恋人ゼドから託された新型聖幻晶に手をやるりさらに冷ややかな視線を投げながら真悠花=鏡の教聖はそっけなく頷く。

「……今にしてようやくその点に思いが至ったのも、恋の魔力が賢明なおまえの眼をそこまで曇らせてしまった何よりの証左といえようか……。

 とはいえ当然ながら愛華領次期教率者のみが旗手である訳ではなく結託する気鋭の指導者たちも複数存在しており、既に【極智の眼】なる連合組織が密かに結成されているのだ──そして既存教界の破壊が進むほどに彼らの存在感は増すはずだ。

 そして……!」

「何ですって……じゃあ聖団はどうなるっていうのッ!?
 そして苦しい日々の中、必死の戦いを続ける教界とそこに息づく教民たちはッッ!?」

 予想はされていたとはいえ、敵軍首領の返答は恐ろしいほどに非情なものであった──

「ただ消え去るのみであろうな、あたかも泡沫うたかたの夢のごとく……いや、?」

「──とうとうアンタの本音が出たわね……!

 でも彼は……ゼドは決して絆獣聖団あたしたちを見捨てたりしないはずよッ!

 何故ならあたしたちにはラージャーラでも最強レベルの兵器である絆獣があり、そして何よりもこれまで平和のために手に手を取って神牙教軍おまえと戦ってきた尊い“血と涙の歴史”があるからよッッ!!」

「いや、違うな──むしろ彼らは素性も定かでない異世界人の軍団に助力されてようやく侵略者と渡り合えたこの二十余年をこの上ない恥辱の記憶として脳裡に刻み付けており、その〈完全消去〉を当面の至上課題に掲げているのだからだッ!」

「嘘ッ!そんなことがある訳ないわッ!!

 いい加減なこと言わないでよッ、そもそもおまえはあたしたちに勝ってなどいないし、あの心優しいゼドがそんな邪悪な考えを持つはずがないじゃないのッ!

 そもそも全ての元凶はおまえであり、アンタさえいなければラージャーラは永遠に平和であり、あたしたちが巻き込まれることもなかったんだッッ!!」

「それも違うな──何故ならば余がおまえを求めている以上、いずれこうなる運命にあったからだッ!」

 鏡の教聖にしては極めて珍しいことに感情を剥き出しにして絶叫した“可憐なる傀儡”は、またもや夜叉の形相となって敬愛する師へ飛びかかると、一瞬にして小さな両手で白い喉元を強烈に絞め上げていたのである!



 

 

 


 



 
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