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第三章 凶幻獣戦域の覇者
【空の破壊神】を撃て!①
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“巨大飛翔系刃獣”ザヌザの破壊力は圧倒的であった。
最大の脅威は何といっても全身に散らされた数百個もの暗赤色の目玉から放射される真紅の破壊光線である!
そして痛恨にもその標的となってしまった神霊薬花園はラージャーラでも屈指の絶景を無残に燃え上がらせてしまい、その回復には少なくとも数年を要することは確実であった。
「お、おのれッ……よくもッ!
この神聖な花園はただ鑑賞者の目を愉しませるだけではない──教界の垣根を超えて、戦乱の日々を必死に生きる人々の生命の安息に不可欠な幾多の薬品の精髄を生み出すために天響神から授けられた唯一無二の贈り物なのだぞッ!!
はたしてこの天をも恐れぬ非道卑劣な攻撃によって失われる命は一体いかほどに上るのか……ガーギル隊長、失礼ながら闘士団航空戦隊はこの大怪物を撃破できると信じてよいのですかッ!?」
巨大スクリーン全面に映し出された地獄絵図を目の当たりにして、あたかも我が身が引き裂かれるかのような悲痛な響きを帯びる愛華領次期教率者の問いかけに、“超兵ハンター”出身の屈強な中年男は、トレードマークの濃紺のバイザーを右人差し指で押し上げながら野太い声で冷徹な答えを返す。
「たとえ残るは一機となろうとも、そして攻撃手段が〈特攻戦法〉のみとなろうとも、我々は必ずやあの刃獣を誅戮致します……!
その証拠にご覧下さい、いかなる教界正規兵をも凌駕すると自負する我が大空の戦士たちの操縦技術を──その奮戦ぶりは凄まじく、あやつの凶眼即ち生ける砲門は殆ど百発百中の誘導穿孔弾によって既に五十数個が潰滅した模様です……!」
しかし誇示された数字も、ゼド=メギンが現在味わっている我が身を切り刻まれているかのような激越な苦痛に何らの慰めをもたらすものではなかった。
「ううッ、たしかに貴君が鍛え上げし精鋭たちの戦いぶりは見事という他ないが、何分にも相手が規格外すぎる……!
せめて…せめて侵攻があと20日ばかり先ならば、待望の“ティリールカの守護神”万能戦闘艦が未完成ながらも出陣はできたものを……!!
だが戦局がこれ以上悪化するなら、あの大怪物と差し違える覚悟で出撃させねばなるまい……!
た、たしかにフェセウ(ウビラス星心領を統べるラージャーラ最年少教率者にして、六天巫蝶を凌駕する天響神との交信力を有する神能力者)を通じて聖幻晶と錬装磁甲の秘密は開示されたものの、対刃獣用兵器の最適解というべき絆獣に関してだけは未だ神秘のヴェールに包まれたまま……尤もエグメドご自身から自然法則への傍若無人な介入というべき生物兵器を廃絶したいとの御意向が仄めかされているということであるから、やはり我ら極智の眼の全智力を絞って代替策を準備せねばならんということ……。
かくて現在、我々次世代の指導者たちは未来を託すに足る究極兵器の開発にしのぎを削っている訳だが、たとえその途上にていかなる窮状に陥ろうとも、同盟者の力を借りるわけにはゆかぬ──何故ならば一度でもその矩を超えてしまっては、二度と対等者としての立場を喪失してしまうからなのだッ!!」
一方、戦闘中常に装着しているヘッドセットを通じ外部と交信していたガーギルが緊迫した口調でこう報告する。
「先ほどからお尋ねであった3機の絆獣聖団製強襲戦闘機の消息ですが、つい今しがた皇帝狼機に搭乗させたズジェンから通信がありまして、それによりますとアルサーラ海上空にて総攻撃をかけたものの、まずは本体(親ザヌザ)を囲むようにして防護していた15体の小型刃獣(仔ザヌザ)を相手にせざるを得ず、その間に標的は残り50体の小型を引き連れて愛華領へと向かったと……なお、奮闘の甲斐あって15体全てを撃破したとのことですが、その間に右翼を破損した皇帝狼機が洋上に不時着し、乗員は全員救助されたとのことです……」
リーダーが起こした不祥事を理由に既存メンバーを全員降ろし、指南役のCBKメンバー二人と残るは闘士団員五名のみで構成された当機がかくのごとき末路を辿ったのはむしろ当然というべきであったが、この結果は錯乱一歩手前にある愛華領次期教率者の瞋恚を更に滾らせるに充分なものであった。
「たかが小型刃獣相手に何とブザマな……!
このような場合こそスペンサー本人が自ら当該機の主操縦士として事にあたるべきであろうに、あくまでもメンツにこだわってCBK機から動こうとせずみすみす貴重な戦力を費消してしまった……!
これは教界責任者として到底容認できる結果ではなく、絆獣聖団に厳重抗議すると同時に当事者(スペンサー)への然るべき処分と補償を断固として要求せねばならぬッ!」
昂然と宣言したゼド=メギンであったが、これ以上薬花園の惨状を見るに耐えぬのか握り込んだ直径2センチ・長さ7センチ余りの銀棒を操作して画面を20分割し、闘士団航空戦隊と天翔魔鱏の状況を窺うが、中央で他の3倍もの面積を占める絆獣がいっかな戦闘に参加せず、無気力に漂っているのに只ならぬ悪寒を覚え、慌ててりさらの聖幻晶と連動している銀棒を操作して内部の状況を投射しようとするが、画面は戦場に放たれたピジェスが送信してくる外部映像によって固定されたままである……。
「な…一体どうしたことだッ!?
そもそも映像を切り替えられぬばかりか、リサラとの交信も遮断されてしまったようではないかッ!?──ま、まさか絶対の自信をもって我が妻に授与した新型聖幻晶が早くも故障してしまったとでもいうのかッッ!?」
最大の脅威は何といっても全身に散らされた数百個もの暗赤色の目玉から放射される真紅の破壊光線である!
そして痛恨にもその標的となってしまった神霊薬花園はラージャーラでも屈指の絶景を無残に燃え上がらせてしまい、その回復には少なくとも数年を要することは確実であった。
「お、おのれッ……よくもッ!
この神聖な花園はただ鑑賞者の目を愉しませるだけではない──教界の垣根を超えて、戦乱の日々を必死に生きる人々の生命の安息に不可欠な幾多の薬品の精髄を生み出すために天響神から授けられた唯一無二の贈り物なのだぞッ!!
はたしてこの天をも恐れぬ非道卑劣な攻撃によって失われる命は一体いかほどに上るのか……ガーギル隊長、失礼ながら闘士団航空戦隊はこの大怪物を撃破できると信じてよいのですかッ!?」
巨大スクリーン全面に映し出された地獄絵図を目の当たりにして、あたかも我が身が引き裂かれるかのような悲痛な響きを帯びる愛華領次期教率者の問いかけに、“超兵ハンター”出身の屈強な中年男は、トレードマークの濃紺のバイザーを右人差し指で押し上げながら野太い声で冷徹な答えを返す。
「たとえ残るは一機となろうとも、そして攻撃手段が〈特攻戦法〉のみとなろうとも、我々は必ずやあの刃獣を誅戮致します……!
その証拠にご覧下さい、いかなる教界正規兵をも凌駕すると自負する我が大空の戦士たちの操縦技術を──その奮戦ぶりは凄まじく、あやつの凶眼即ち生ける砲門は殆ど百発百中の誘導穿孔弾によって既に五十数個が潰滅した模様です……!」
しかし誇示された数字も、ゼド=メギンが現在味わっている我が身を切り刻まれているかのような激越な苦痛に何らの慰めをもたらすものではなかった。
「ううッ、たしかに貴君が鍛え上げし精鋭たちの戦いぶりは見事という他ないが、何分にも相手が規格外すぎる……!
せめて…せめて侵攻があと20日ばかり先ならば、待望の“ティリールカの守護神”万能戦闘艦が未完成ながらも出陣はできたものを……!!
だが戦局がこれ以上悪化するなら、あの大怪物と差し違える覚悟で出撃させねばなるまい……!
た、たしかにフェセウ(ウビラス星心領を統べるラージャーラ最年少教率者にして、六天巫蝶を凌駕する天響神との交信力を有する神能力者)を通じて聖幻晶と錬装磁甲の秘密は開示されたものの、対刃獣用兵器の最適解というべき絆獣に関してだけは未だ神秘のヴェールに包まれたまま……尤もエグメドご自身から自然法則への傍若無人な介入というべき生物兵器を廃絶したいとの御意向が仄めかされているということであるから、やはり我ら極智の眼の全智力を絞って代替策を準備せねばならんということ……。
かくて現在、我々次世代の指導者たちは未来を託すに足る究極兵器の開発にしのぎを削っている訳だが、たとえその途上にていかなる窮状に陥ろうとも、同盟者の力を借りるわけにはゆかぬ──何故ならば一度でもその矩を超えてしまっては、二度と対等者としての立場を喪失してしまうからなのだッ!!」
一方、戦闘中常に装着しているヘッドセットを通じ外部と交信していたガーギルが緊迫した口調でこう報告する。
「先ほどからお尋ねであった3機の絆獣聖団製強襲戦闘機の消息ですが、つい今しがた皇帝狼機に搭乗させたズジェンから通信がありまして、それによりますとアルサーラ海上空にて総攻撃をかけたものの、まずは本体(親ザヌザ)を囲むようにして防護していた15体の小型刃獣(仔ザヌザ)を相手にせざるを得ず、その間に標的は残り50体の小型を引き連れて愛華領へと向かったと……なお、奮闘の甲斐あって15体全てを撃破したとのことですが、その間に右翼を破損した皇帝狼機が洋上に不時着し、乗員は全員救助されたとのことです……」
リーダーが起こした不祥事を理由に既存メンバーを全員降ろし、指南役のCBKメンバー二人と残るは闘士団員五名のみで構成された当機がかくのごとき末路を辿ったのはむしろ当然というべきであったが、この結果は錯乱一歩手前にある愛華領次期教率者の瞋恚を更に滾らせるに充分なものであった。
「たかが小型刃獣相手に何とブザマな……!
このような場合こそスペンサー本人が自ら当該機の主操縦士として事にあたるべきであろうに、あくまでもメンツにこだわってCBK機から動こうとせずみすみす貴重な戦力を費消してしまった……!
これは教界責任者として到底容認できる結果ではなく、絆獣聖団に厳重抗議すると同時に当事者(スペンサー)への然るべき処分と補償を断固として要求せねばならぬッ!」
昂然と宣言したゼド=メギンであったが、これ以上薬花園の惨状を見るに耐えぬのか握り込んだ直径2センチ・長さ7センチ余りの銀棒を操作して画面を20分割し、闘士団航空戦隊と天翔魔鱏の状況を窺うが、中央で他の3倍もの面積を占める絆獣がいっかな戦闘に参加せず、無気力に漂っているのに只ならぬ悪寒を覚え、慌ててりさらの聖幻晶と連動している銀棒を操作して内部の状況を投射しようとするが、画面は戦場に放たれたピジェスが送信してくる外部映像によって固定されたままである……。
「な…一体どうしたことだッ!?
そもそも映像を切り替えられぬばかりか、リサラとの交信も遮断されてしまったようではないかッ!?──ま、まさか絶対の自信をもって我が妻に授与した新型聖幻晶が早くも故障してしまったとでもいうのかッッ!?」
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