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第2章 魔人どもの野望
雅桃…“天使の正体”
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【煌輪塔ホテル】第6層11号室内に満ちる馨しい芳香と、空気を震わせる艶かしくも荒い息遣いの波の中に、断続的に生じる呻きと咽び泣くかのような喘ぎ声…。
鄭 雅桃が投宿するこの続き部屋は、今や“妖しき異空間”に変貌していた。
声の主は、“最年少特級操獣師”の懇願に応じて薄桃色に統一された豪奢なダブルベッドに横たわる全裸の萩邑りさらであり…
白い喉元を大きくのけ反らせた彼女の上に覆い被さり、頭部をりさらの両手で慰撫されるほどにより深く貌を相手の香り高い肌に埋め込んでゆき、目下のところはストイックな筋トレとヨガで引き締められた美神の白い腹筋に沿って入念に紅唇を滑らせているピンクのパジャマ姿の妖少女こそが、この禁断の聖域の支配者であった…。
いくら開始前にりさらから脱衣を禁じられたとはいえ、機会は何度もあったにも関わらずそうしなかったということは、“寝間着姿での奉仕”が彼女にこの上ない倒錯的な快感をもたらしているとしか考えられなかったが、或いはたとえ一瞬でも最愛の女性との接触が断たれることを厭うた結果であるかも知れぬ…。
事実、雅桃の動きは一瞬も静止することなく、崇拝と欲情の対象である美しき操獣師の肉体を隈なく覆い尽くしてゆく…。
少女の頑ななまでの純真さだけはそのままに、今や柔順な後輩の仮面を完全にかなぐり捨てた雅桃の渾身の愛撫に曝される萩邑りさらの意識はまさに小竜巻に巻き込まれた花弁の如く飜弄され、しかも孤独な後輩の傷付いた魂を包み癒やすために一切の抵抗を自身に禁じ全てを受け止めんとの想いゆえに、肌を合わせる度に恐るべき上達ぶりを痛感させられる、小さな躰を総動員しての執拗なまでの性技によってこのまま攻め続けられれば、遠からず失神に追い込まれてしまうのではとの危機感に苛まれていた…。
『…全ては私の責任だわ…
鄭 雅桃という可憐な天使の中に潜む“緋色の獣”を目覚めさせてしまった…。
もしこのまま進んでしまったら、私たちの未来に待ち受けるのは恐らく肉体だけに留まらない魂の破滅…
けれど、あの思い詰めた潤んだ瞳をどうしても突き放せなかった…。
でも、これ以上長引かせてしまったら本当にブリーフィングに間に合わなくなってしまう…!
雅桃、お願い…
あなたの愛を、
今はここまでで留めて…!』
…当初は速やかに愛しい後輩の心を蝕む自身への征服欲を満足させてやり、後は退室に予定していた時刻まで再度の入浴をはじめとする身支度に費やす心算であったのがここまで縺れてしまった原因はまさに、行為に賭ける雅桃の烈しさとそれを拒めぬりさらの甘さにあったといえよう…。
鄭 雅桃は、萩邑りさらへの“恋情”に文字通り身命を賭していたのだ。
そしてそれは、ある意味では“殺意”に近いものにまで尖鋭化してしまっているのかも知れぬ…。
『もし萩邑先輩…
いいえ、りさら様が私を裏切るようなことがあったら…
馬鹿ね、そんなことは絶対にありえない!
何故なら、そんな世界の破滅にも等しい悲劇の兆候をこの賢い私が見逃すはずがないのだから!
でも不幸にも、万が一、それを察知するようなことがあれば、私は必ずや貴女を殺すでしょう…
これ以上ないほど美しく、天上的な快楽に満ちた方法で…
そして私の命が尽きるまで、華麗な花々を敷き詰めた硝子の棺に全裸で瞑る貴女の美しい死顔を見つめて過し、やがてその傍らに我が身を添わせるのです…』
…もはや祭壇上の豪奢な生贄となった美女のわななく肉体を本能の赴くままに貪っていた恍惚の美少女は、幾分は魂の飢えが満たされたのか、激しく波打つ白い腹部に伏せていた貌をようやく上げた。
『…私が真実に魂の奥底から希んでいるのはりさら様との結婚…。
その未来のためには、今ここで全てを失ってしまう訳にはいかない…!』
時間を知るのに、時計を見る必要などなかった。
女神の尊い肌を傷つけてしまう危険を避けるため、パジャマの胸ポケットに収めていた貝紫色の聖幻晶を装着すれば簡単に把握出来る。
『もうすぐ《央月刻》か…。
断腸の思いではあるけれど、そろそろ切り上げないとブリーフィングに遅刻してあの地獄の鬼みたいに醜い竹澤夏月が烈火の如く怒り狂うな…。
仕方がない、私たちの輝かしい未来には代えられない…
…りさら様。
今夜はここまでで、
赦してあげますね…♡』
鄭 雅桃が投宿するこの続き部屋は、今や“妖しき異空間”に変貌していた。
声の主は、“最年少特級操獣師”の懇願に応じて薄桃色に統一された豪奢なダブルベッドに横たわる全裸の萩邑りさらであり…
白い喉元を大きくのけ反らせた彼女の上に覆い被さり、頭部をりさらの両手で慰撫されるほどにより深く貌を相手の香り高い肌に埋め込んでゆき、目下のところはストイックな筋トレとヨガで引き締められた美神の白い腹筋に沿って入念に紅唇を滑らせているピンクのパジャマ姿の妖少女こそが、この禁断の聖域の支配者であった…。
いくら開始前にりさらから脱衣を禁じられたとはいえ、機会は何度もあったにも関わらずそうしなかったということは、“寝間着姿での奉仕”が彼女にこの上ない倒錯的な快感をもたらしているとしか考えられなかったが、或いはたとえ一瞬でも最愛の女性との接触が断たれることを厭うた結果であるかも知れぬ…。
事実、雅桃の動きは一瞬も静止することなく、崇拝と欲情の対象である美しき操獣師の肉体を隈なく覆い尽くしてゆく…。
少女の頑ななまでの純真さだけはそのままに、今や柔順な後輩の仮面を完全にかなぐり捨てた雅桃の渾身の愛撫に曝される萩邑りさらの意識はまさに小竜巻に巻き込まれた花弁の如く飜弄され、しかも孤独な後輩の傷付いた魂を包み癒やすために一切の抵抗を自身に禁じ全てを受け止めんとの想いゆえに、肌を合わせる度に恐るべき上達ぶりを痛感させられる、小さな躰を総動員しての執拗なまでの性技によってこのまま攻め続けられれば、遠からず失神に追い込まれてしまうのではとの危機感に苛まれていた…。
『…全ては私の責任だわ…
鄭 雅桃という可憐な天使の中に潜む“緋色の獣”を目覚めさせてしまった…。
もしこのまま進んでしまったら、私たちの未来に待ち受けるのは恐らく肉体だけに留まらない魂の破滅…
けれど、あの思い詰めた潤んだ瞳をどうしても突き放せなかった…。
でも、これ以上長引かせてしまったら本当にブリーフィングに間に合わなくなってしまう…!
雅桃、お願い…
あなたの愛を、
今はここまでで留めて…!』
…当初は速やかに愛しい後輩の心を蝕む自身への征服欲を満足させてやり、後は退室に予定していた時刻まで再度の入浴をはじめとする身支度に費やす心算であったのがここまで縺れてしまった原因はまさに、行為に賭ける雅桃の烈しさとそれを拒めぬりさらの甘さにあったといえよう…。
鄭 雅桃は、萩邑りさらへの“恋情”に文字通り身命を賭していたのだ。
そしてそれは、ある意味では“殺意”に近いものにまで尖鋭化してしまっているのかも知れぬ…。
『もし萩邑先輩…
いいえ、りさら様が私を裏切るようなことがあったら…
馬鹿ね、そんなことは絶対にありえない!
何故なら、そんな世界の破滅にも等しい悲劇の兆候をこの賢い私が見逃すはずがないのだから!
でも不幸にも、万が一、それを察知するようなことがあれば、私は必ずや貴女を殺すでしょう…
これ以上ないほど美しく、天上的な快楽に満ちた方法で…
そして私の命が尽きるまで、華麗な花々を敷き詰めた硝子の棺に全裸で瞑る貴女の美しい死顔を見つめて過し、やがてその傍らに我が身を添わせるのです…』
…もはや祭壇上の豪奢な生贄となった美女のわななく肉体を本能の赴くままに貪っていた恍惚の美少女は、幾分は魂の飢えが満たされたのか、激しく波打つ白い腹部に伏せていた貌をようやく上げた。
『…私が真実に魂の奥底から希んでいるのはりさら様との結婚…。
その未来のためには、今ここで全てを失ってしまう訳にはいかない…!』
時間を知るのに、時計を見る必要などなかった。
女神の尊い肌を傷つけてしまう危険を避けるため、パジャマの胸ポケットに収めていた貝紫色の聖幻晶を装着すれば簡単に把握出来る。
『もうすぐ《央月刻》か…。
断腸の思いではあるけれど、そろそろ切り上げないとブリーフィングに遅刻してあの地獄の鬼みたいに醜い竹澤夏月が烈火の如く怒り狂うな…。
仕方がない、私たちの輝かしい未来には代えられない…
…りさら様。
今夜はここまでで、
赦してあげますね…♡』
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