イケメン教師陵辱調教

リリーブルー

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第三十一章 クラシックコンサート

コンサートの最中

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【開演中──音のなかでほどけていく】

 ホールの灯りがふっと落ち、観客たちの呼吸が止まるような静けさが広がった。

 次の瞬間、舞台上の照明だけが、静かにピアノの鍵盤を照らした。黒い燕尾服をまとったピアニストが現れ、深く礼をし、指揮者アントン・コヴァルスキが、指揮台へと足を運ぶ。

 最初の一音が、まるで深い霧のなかから浮かび上がるように、静かに立ちのぼった。小坂愛出人は、背筋を伸ばしたまま、その音に身を任せる。

 ヴァイオリンの高音が空を裂く。チェロが地を這うように低く鳴る。そのあいだを縫うように、ピアノの音が滴り落ちる。

 心が解かれていく感覚。言葉ではなく、音によって存在を包まれていく不思議。

 オーケストラが高潮し、アントンの指先が天を指し、楽団が呼吸するように音を解き放つ。それはまるで、愛撫だった。音が、胸の奥を撫でる。皮膚ではなく、もっと深いところ、感情に触れてくる。

 隣にいる麓戸は、何も言わず、ただ黙ってその音楽に身を委ねていた。その沈黙すら、音楽の一部のように美しかった。


【終演後──音が残したもの】

 演奏が終わり、最後の音が空気に溶けて消えたとき、ホール全体が、しんと静まりかえった。

 誰もが息をするのすら忘れていたようだった。ただ、音楽の余韻だけが、静かに心を震わせていた。

 拍手が、嵐のように巻き起こる。オーケストラの面々が立ち上がり、指揮者とピアニストが深く頭を下げる。

 小坂は、拍手しながら、胸の奥の熱を感じていた。

「……素晴らしかった」

 口に出したのは、ただその一言だけだった。麓戸が、小坂の耳元で囁く。

「君も美しかった。音に身を委ねていた君の姿に、きっと誰もが惚れただろうよ」

 顔が熱を帯びる。けれど、もう何か言おうとは思わなかった。この音楽をともに聴いた。この感動を共有した。ただそれだけで、心がどこまでも近づいた気がした。
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