イケメン教師陵辱調教

リリーブルー

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第三十章 オデトと麓戸の姉

1 蘭子の誘い

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 その夜、麓戸のスマートフォンが短く振動した。画面には「蘭子姉」と表示されている。愛出人はソファに座ったまま、隣で電話に出る麓戸を横目でちらりと見た。麓戸の表情は普段通りだが、どこか楽しげな色が混じる。
「うん、うん。……ああ、紅茶? へえ、いいね。……うん、わかった。じゃあ、明日の昼過ぎにでも」
 電話を切った麓戸が、愛出人の視線に気づいて口角を上げた。
「姉貴から。明日、うちのマンションに来いってさ。『美味しい紅茶が手に入ったから、アフタヌーンティーを楽しみたい』って」
「蘭子さん……? 僕も、行くの?」
 愛出人の声には、わずかに不安が滲む。今日、麓戸の家族と会ったばかりだ。蘭子のあの視線――じっと喉仏を見つめていた鋭い目が、脳裏に焼き付いている。
「もちろん。姉貴、君に興味津々みたいだからさ。ほら、さっきも『美人』って言ってたろ?」
 麓戸の言葉に、愛出人は頬が熱くなるのを感じた。美人。それは、確かに褒め言葉だった。でも、蘭子の視線には何かもっと深い、探るような意図があった気がして――それが、胸の奥をざわつかせる。
「紅茶、嫌いじゃないだろ? 姉貴、凝っててさ。けっこう、美味しいんだ」
 麓戸はそう言って、愛出人の髪を軽く撫でた。その指先に、愛出人はまた鼓動が跳ねるのを感じた。

   ◆

蘭子のマンション

 翌日、愛出人は再び絹のワンピースに身を包み、麓戸と共に蘭子のマンションへと向かった。エレベーターが静かに上昇する中、愛出人は鏡に映る自分をそっと見つめた。今日の装いは、麓戸が選んだものだ。淡いラベンダー色のワンピースに、繊細なレースのショールを羽織っている。鏡の中の自分は、確かに「美しい」。でも、その美しさはどこか自分ではない誰かのようで――それが、妙に心をざわつかせる。
「緊張してるのか?」
 麓戸の声が、静かなエレベーター内に響く。愛出人ははっと顔を上げ、首を振った。
「ううん、大丈夫……ただ、蘭子さんって、どんな人なんだろうって」
「まあ、姉貴はちょっと変わってるけど、悪いやつじゃないよ。君のこと、気に入ってるみたいだし」
 気に入ってる。その言葉が、愛出人の胸に小さな波を立てた。
 ドアが開き、蘭子のマンションの玄関に立つ。インターホンを押すと、すぐにドアが開き、蘭子が現れた。彼女はゆったりとしたシルクのブラウスに、タイトなスカートを合わせ、髪をゆるくアップにしていた。洗練された雰囲気の中にも、どこか遊び心のある笑みを浮かべている。
「やあ、遥斗。――そして、愛出人さん。よく来たわね。さ、入って入って」
 蘭子の声は柔らかく、しかしどこか誘うような響きがあった。愛出人は一瞬たじろぎながらも、麓戸に促されてリビングへ足を踏み入れた。
 テーブルには、ティーポットと繊細なカップ、色とりどりのマカロンやスコーンが並んでいる。アフタヌーンティーという言葉にふさわしい、華やかな光景だ。部屋にはほのかにローズの香りが漂い、愛出人の緊張を少しだけほぐしてくれた。
「この紅茶、ダージリンのファーストフラッシュよ。ここの農園のものは香りが素晴らしいの。愛出人さん、紅茶はお好き?」
 蘭子がカップを差し出しながら、じっと愛出人の目を見つめる。その視線は、昨日のように鋭く、しかしどこか温かみを帯びていた。
「え、はい……好きです。紅茶、よく飲むので」
 愛出人はカップを受け取り、そっと口をつけた。確かに、蘭子の言う通り、華やかな香りが口いっぱいに広がる。だが、蘭子の視線が離れないことに、愛出人は落ち着かない気持ちを抑えきれなかった。
「ふふ、良かった。ねえ、愛出人さんって、本当に綺麗よね。昨日のワンピースも素敵だったけど、今日のも最高。遥斗、いい趣味してるわ」
 蘭子の言葉に、麓戸がにやりと笑う。
「だろ? オデト、なんでも似合うんだよ」
 愛出人は顔が熱くなるのを感じ、視線をカップに落とした。蘭子の言葉は褒めているようで、どこか試すような響きがある。まるで、愛出人の反応を一つ一つ観察しているかのようだ。
「ねえ、愛出人さん。女装って、楽しい?」
 蘭子の突然の質問に、愛出人は思わずカップをテーブルに置いた。心臓が跳ねる。
「え、っと……その」
 言葉に詰まる愛出人に、蘭子はくすりと笑って続ける。
「ごめんなさい、急に変なこと聞いて。ほら、遥斗って昔からちょっと変わった趣味があったじゃない? だから、大丈夫なのかしらって。でも、愛出人さんがこうやって綺麗に着飾ってるのを見ると、なんだか、こっちまで楽しくなっちゃうわ」
 蘭子の声は軽やかだが、その目は愛出人の表情を逃さない。まるで、愛出人の内側を探ろうとしているかのようだ。
「姉貴、からかうのやめなよ。オデト、恥ずかしがってるだろ」
 麓戸が笑いながら割り込むが、その声にはどこか楽しげな響きがある。愛出人は、麓戸のその笑顔に、ふと昨日の言葉を思い出した。
「君が他人に見られて、恥ずかしがって、それでも頑張ってるのを見たかった」
 その瞬間、愛出人は気づいてしまった。蘭子の視線、麓戸の笑顔――この場は、まるで二人が仕組んだ舞台のようだと。愛出人がどう反応するか、どう感じるかを、二人とも楽しんでいるのではなかろうか。
「愛出人さん、紅茶のお代わりいる? それとも、もっと面白いこと、してみる?」
 蘭子がそう言って、テーブルの下でそっと愛出人の手に触れた。その指先は、まるで紅茶の香りのように軽やかで、しかし、はっきりと熱を帯びていた。
 愛出人の鼓動が、また跳ねた。
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