イケメン教師陵辱調教

リリーブルー

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第三十章 オデトと麓戸の姉

6 香水の匂いと揺れる心

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 麓戸のマンションのリビングは、静かな夜の空気に包まれていた。窓から差し込む街灯の光が、ソファに座る二人をほのかに照らしている。愛出人はハーブティーのカップを手に、麓戸の隣に寄り添っていた。だが、心のどこかで、蘭子の香水の香りがまだ漂っているような気がして、落ち着かない。
「この香水の匂い、姉貴が付けてたのといっしょだな」
 麓戸がぽつりと呟いた。愛出人の手が一瞬止まり、カップが小さく揺れる。
「あ……え……」
 返答に困り、愛出人の声は震えた。麓戸はカップをテーブルに置き、愛出人の顔を覗き込む。その目は、いつも通りの穏やかな光を帯びているが、どこか探るような色も混じっていた。
「会ったのか? 姉貴と」
「あ、うん……はい」
 愛出人は小さく頷き、視線を落とした。蘭子のマンションでの会話、彼女の誘惑的な言葉と触れ合いが、頭をよぎる。胸の奥がざわめき、罪悪感が疼く。
「ふうん。姉貴は、いい茶飲み友達ができてよかったな」
 麓戸の声は軽やかで、どこかからかうような響きがあった。愛出人は一瞬、ほっと息をついた。疑われているわけではないのか――そう思った瞬間、麓戸が続けた。
「で、どうなんだ? 姉貴との関係は。もう寝たのか?」
「ごほッ」
 愛出人は飲んでいたハーブティーを吹きそうになり、慌ててカップを置いた。顔が一気に熱くなり、心臓が跳ねる。
「何を驚いている。俺が気づいてないとでも思ったのか? オデトが姉貴の香水の匂いをさせている日は、いやに激しくしてきたじゃないか。俺は姉貴としてるみたいで微妙だったが……」
 麓戸の言葉に、愛出人の胸が締め付けられた。あの夜、蘭子の誘惑を振り払おうと麓戸に縋りついた自分。激しく抱き合った記憶が、罪悪感とともに蘇る。
「ご、ごめんなさいっ!」
 愛出人が慌てて謝ると、麓戸はくすりと笑い、愛出人の肩に手を置いた。
「ああ、なんだ、やっぱりもう寝たのか。いつからだ? 避妊はしてるのか? まあ、姉貴は独身で彼氏もいないみたいだから、別にオデトの子ができても問題ないと思うが」
 その軽い口調に、愛出人は目を瞬かせた。麓戸の寛容さ、まるで何でも受け入れてしまうような態度に、驚きと混乱が混じる。
「問題ないんですか?」
 愛出人の声は小さく、どこか信じられないという響きがあった。麓戸は肩をすくめ、カップを手に取った。
「ああ、うん。俺とは男同士だから結婚できないじゃないか。制度ができて結婚できても、子どもは産めないし。養子とかでない限り一緒に子育てもできない。まあ、俺は子育てに不向きだとわかったが」
 その言葉に、愛出人の胸が熱くなった。麓戸の言う通り、愛出人の夢――女性と結婚して、幸せな家庭を築き、子どもを育てたいという願いは、麓戸との関係では叶わないものだった。蘭子の提案が、脳裏をよぎる。「私なら、愛出人くんの子どもを産めるわ」。
「まだ寝てないです」
 愛出人がぽつりと漏らすと、麓戸は一瞬、目を細めた。
「なんだ。そうなのか」
「いいんですか? 僕とお姉さんが、そうなっても」
 愛出人の声は震え、ほとんど囁きに近かった。麓戸は愛出人の顔を見つめ、ゆっくりと微笑んだ。
「いいよ。姉貴とは仲がいいし、姉貴もオデトも幸せになってほしいからな。でも、できればオデトの気持ちは、俺が一番と思っていてほしいけど」
 その言葉に、愛出人の心はさらに揺れた。麓戸のシスコン気質、蘭子への愛情が、愛出人を安心させる一方で、罪悪感を深める。蘭子のブラコンな態度、彼女の誘惑的な言葉が、頭の中で響き合う。
「神崎校長の奥さんとの時みたいに、隣の部屋で見ていてもらうこととかは、できないですよね?」
 愛出人が思わず口にすると、麓戸は一瞬、目を丸くし、すぐに苦笑した。
「さすがに姉貴のは無理だなあ。神崎の奥さんともだいぶきつかったし。あれは、無理やり見させられたんだぞ?」
「ですよね……」
 愛出人の声は小さく、過去の記憶が蘇る。覗かれることへの興奮、麓戸に見られていたあの夜。蘭子のマンションでの会話で話してしまった自分の性的嗜好が、頭をよぎる。麓戸は愛出人の動揺に気づいたのか、軽く笑って続けた。
「まあ、オデトも、姉貴は俺と似てるから平気じゃないか?」
「……」
 愛出人は言葉に詰まり、麓戸の顔を見つめた。確かに、蘭子と麓戸は似ている。鋭い目元、自信に満ちた笑顔。だが、蘭子の誘惑は、麓戸の優しさとは異なる、もっと危険で甘美なものだった。
「オデトの子、可愛いだろうな。しかも俺の甥っ子か姪っ子になるなんて。俺の財産も相続させてやれるし。姉貴も相当な資産を持ってるから、子育てに必要な資金は心配ないと思う」
 麓戸の言葉に、愛出人の胸が締め付けられた。蘭子の提案、麓戸の寛容さ――すべてが、愛出人の夢をあまりにも具体的に、魅力的に描き出していた。
「いいんですか……?」
 愛出人がかろうじて絞り出すと、麓戸は愛出人の手を握り、穏やかに微笑んだ。
「俺は別にすすめてるわけじゃない。オデトの気持ち次第だ。お前は女性と結婚して家庭を持つのが夢だとずっと言ってたからな」
 その言葉に、愛出人の目は熱くなった。麓戸の優しさ、寛容さが、愛出人の心を温かく包み込む。だが、同時に、蘭子の顔が脳裏をよぎる。彼女の香水の香り、誘うような声、子どもを産むという提案――すべてが、愛出人の夢を揺さぶっていた。
「遥斗さん……僕、」
 愛出人が言葉を続けようとすると、麓戸はそっと愛出人の唇に指を当て、微笑んだ。
「いいよ。考える時間、たっぷりあるだろ。俺は、いつだってここにいるから」
 麓戸の言葉は、まるで安全な港のように愛出人を包み込んだ。だが、心の奥では、蘭子の誘惑がまだ消えずに残っていた。愛出人は麓戸の胸に顔を埋め、目を閉じた。幸せな家庭を夢見る気持ちと、蘭子への抑えきれない惹かれる気持ちが合わさって落ち着かなかった。
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