イケメン教師陵辱調教

第六章 調教師とイケメン教師

イケメン教師、調教師との別れ

「そんな悲しそうな顔をするな。愛出人だって、大人になってから、高校生みたいな顔して、神崎に抱かれたんだろう？」
麓戸に言われて、小坂は、恥ずかしさにうつむいた。
「どうせ校長と、教師と生徒のプレイをしてるんだろう。高校教師と高校生みたいな」


「してません……」
小坂の頬は、ますます熱くなった。


「昔は教師と生徒、今は上司と部下か。どっちにしても、禁断だな」
麓戸は、にやにや笑った。


「神崎先生は、麓戸さんの言うような人じゃありません。立派な先生でした」
小坂は神崎先生をかばった。


「生徒に二人も死なれて、さすがに反省したんだろう」
麓戸の言葉は、小坂の心をいたぶった。
「だけど神崎のやつ、内心は、愛出人を抱きたくて、たまらなかったんだろうな」
麓戸が、意地悪な笑みを浮かべた。


「そんなこと、ありません」
小坂は答えた。もし、そんな素振りの片鱗でもあったなら、ここまで傷つかなかっただろう。


「愛出人は、わかってないな」
麓戸は笑った。
「だからこそ、今、校長は、愛出人のことを、夢中で抱くんだろう。違うか？」

小坂の身体は、校長室での行為を思い出し、熱くなった。
「よかったじゃないか」
麓戸が小坂の肩を抱いた。
「あいつと、そういう関係になって、嬉しかったんだろう？」

　嬉しい？　嬉しいと思っていいのだろうか。校長には妻子がいるし、自分には、麓戸という特殊な関係のパートナーがいる。なのに、嬉しいと感じてしまって、いいのだろうか。

「くそうっ……！」
麓戸が、テーブルを叩いた。


　小坂は、身をすくめた。
「麓戸さん……ごめんなさい」
小坂は、とっさに謝った。


「神崎め……。また、俺を邪魔しやがって」
麓戸は、感情を制御できないように、立ち上がり、テーブルの上の黒い革製の鞭を手に取ると、自分の手のひらに叩きつけながら、部屋の中を歩き回った。
　麓戸が鞭を振りあげ、振りおろすたびに、鞭は空を切って唸った。
　その鞭が、掌に叩きつけられるたびにピシャリと音がして、麓戸は顔を歪めた。自らに鞭をふるう鞭打ち行者のように麓戸は自らをいためつけた。

　やめてください……見かねて、小坂が口を開こうとしたとき、麓戸は、ばん、と鞭を手にした片手をテーブルについた。

　うなだれた麓戸は、荒い息をしていた。力まかせに鞭をふるい自らの身体に叩きつけていたせいで、いつも整髪剤でぴたりとかためられていた麓戸の髪が、ざんばらになっていた。

　麓戸の身体の向こうには、窓硝子の桟が、十字のように見え、窓硝子の向こうには、薄明かりに照らされた薄白の街が広がっていた。

　建物近くで常緑樹の丸い葉が枝とともにざわめき、遠くには黒く糸杉の葬列が見えた。

　テーブルに片手をついたまま、麓戸は小坂を振り返った。

「愛出人、お前は、校長を選ぶのか？」

　小坂は、答えられなかった。
　答えられない小坂のもとに、麓戸は近寄ってきた。
　麓戸は、小坂のえり首をつかんで揺さぶった。
「ここに、今日来たということは、俺を選んだ、ということだよな？」
小坂は、麓戸の激しい視線を受けとめることができなかった。

　選ばなくては、いけないのだろうか。
　小坂は、麓戸を見つめ返すことができなかった。
　麓戸には、奴隷という名の愛人が幾人もいる。
　小坂は、麓戸から目をそらした。

　校長には奥さんがいる。なのに、自分だけ、なぜ選ばなければいけないのか？

「愛出人、愛してるよ」
麓戸が、小坂の腕をとって、耳元に唇を寄せ、ささやきかけた。
　小坂は、麓戸の腕を静かに払いのけた。

　帰ろうとする小坂の手首を、麓戸の手が強くつかんで引きとめた。
「俺を、選べ」
振り返った小坂の目を、麓戸の視線が、捕らえた。
　小坂は、目を伏せた。
　麓戸が、
「待っているよ」
と、小坂の肩に手をかけた。



「わかりました……」
小坂は、うつむいたまま答えた。
　麓戸は、それ以上、もう、何も言わなかった。

　小坂は、店を出た。

　言えなかった。別れの言葉を。でも、小坂は、もう、ここに来るつもりは、なかった。