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第二十一章 麓戸の追憶(麓戸視点)
麓戸と池井 5
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麓戸は別の言葉を選んだ。
「池井は可愛いからさ」
嘘ではない。
「可愛い? 僕が?」
池井が、信じられない、というような顔で聞き返した。
「うん。自覚ないのか? もしかして。言われなかった? 俺だって言われたんだぜ。一年の時。君は美少年だから素質があるって」
「なんの素質?」
「ラグビー部の性奴隷になる素質だよ。池井だって、そう言って勧誘されたんじゃないのか?」
「そんなこと言われなかったよ」
「ああ性奴隷になる素質とは言われなかったよな。何かうまいこと誤魔化してたけど。とにかく俺も池井も、美形だと思われてるんだから行動には気をつけろよ」
「何を気をつけるの?」
池井が聞き返した。言われてみればその通りだ。なんで気をつけなければいけないのだろう。自分たちは何も悪くないのに。
「いや美形かどうかは関係ないか。教師を誘惑するような行動はやめろよ。もし神崎のことを好きなら」
「誘惑なんかしてないよ!」
池井は怒った。それもそうだろう。自分だって上級生たちを誘惑した覚えなどない。怒るのももっともだ。
でも、だったらなぜあんな関係になっているんだ?
「だったら美少年の自覚をもてよ。誘惑してなくても狙われやすいんだから」
「僕のことを神崎先生が好きってこと?」
「それは知らないけど、とにかく神崎とエッチするのはやめろよ。神崎先生が辞めさせられてもいいのか?」
あんな変態的な行為を放っておけない。神崎なんか辞めさせられればいいとも思った。だがことが明るみになって池井が巻き添えになるのも心配だった。
「結局、ハルトだって神崎先生のことよく知らないんじゃないか」
池井は不満そうに言った。
「ああ。そうだな。だけどバレたら神崎が辞めさせられるのは事実だと思うぞ。俺が気づいたってことは他にも気づいてる人がいるかもってことだから、ほんとにやめろよ。池井だって学校に居づらくなるだろう?」
麓戸は池井をいっこうに説得できないことにいら立ちながら言った。
麓戸の言葉に池井はいきりたった。
「学校に居づらくなる? もう十分居づらいんだけど! それでもなんとか僕が学校に来られるのは神崎先生がいるからだよ。先生が味方で僕を守ってくれるから僕はかろうじてここにいられるんだ」
池井は泣きそうな顔で訴えた。麓戸がいてくれるからという、麓戸に対する感謝の言葉は一言もなかった。が、池井の辛そうな顔を見ると何も言えなかった。池井の気持ちも痛いほどにわかった。
これ以上説得しても池井は責められているような気持ちになるだけだろうと思った。もう今日はこれ以上何も言うまいとあきらめた。
「池井にとって神崎は大事な味方なんだな」
麓戸が言うと、池井は黙って頷いた。
「池井は可愛いからさ」
嘘ではない。
「可愛い? 僕が?」
池井が、信じられない、というような顔で聞き返した。
「うん。自覚ないのか? もしかして。言われなかった? 俺だって言われたんだぜ。一年の時。君は美少年だから素質があるって」
「なんの素質?」
「ラグビー部の性奴隷になる素質だよ。池井だって、そう言って勧誘されたんじゃないのか?」
「そんなこと言われなかったよ」
「ああ性奴隷になる素質とは言われなかったよな。何かうまいこと誤魔化してたけど。とにかく俺も池井も、美形だと思われてるんだから行動には気をつけろよ」
「何を気をつけるの?」
池井が聞き返した。言われてみればその通りだ。なんで気をつけなければいけないのだろう。自分たちは何も悪くないのに。
「いや美形かどうかは関係ないか。教師を誘惑するような行動はやめろよ。もし神崎のことを好きなら」
「誘惑なんかしてないよ!」
池井は怒った。それもそうだろう。自分だって上級生たちを誘惑した覚えなどない。怒るのももっともだ。
でも、だったらなぜあんな関係になっているんだ?
「だったら美少年の自覚をもてよ。誘惑してなくても狙われやすいんだから」
「僕のことを神崎先生が好きってこと?」
「それは知らないけど、とにかく神崎とエッチするのはやめろよ。神崎先生が辞めさせられてもいいのか?」
あんな変態的な行為を放っておけない。神崎なんか辞めさせられればいいとも思った。だがことが明るみになって池井が巻き添えになるのも心配だった。
「結局、ハルトだって神崎先生のことよく知らないんじゃないか」
池井は不満そうに言った。
「ああ。そうだな。だけどバレたら神崎が辞めさせられるのは事実だと思うぞ。俺が気づいたってことは他にも気づいてる人がいるかもってことだから、ほんとにやめろよ。池井だって学校に居づらくなるだろう?」
麓戸は池井をいっこうに説得できないことにいら立ちながら言った。
麓戸の言葉に池井はいきりたった。
「学校に居づらくなる? もう十分居づらいんだけど! それでもなんとか僕が学校に来られるのは神崎先生がいるからだよ。先生が味方で僕を守ってくれるから僕はかろうじてここにいられるんだ」
池井は泣きそうな顔で訴えた。麓戸がいてくれるからという、麓戸に対する感謝の言葉は一言もなかった。が、池井の辛そうな顔を見ると何も言えなかった。池井の気持ちも痛いほどにわかった。
これ以上説得しても池井は責められているような気持ちになるだけだろうと思った。もう今日はこれ以上何も言うまいとあきらめた。
「池井にとって神崎は大事な味方なんだな」
麓戸が言うと、池井は黙って頷いた。
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