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第八章 生徒会室
宮本、生徒会長と共に教師の過去を調べる
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「宮本くんは、小坂先生に……されたいの?」
生徒会長が宮本にたずねた。宮本は、こくんとうなずいた。
「そうか……」
生徒会長は、しょうがないなぁというようにため息をついてから、気をとりなおしたように、再び宮本を説得しはじめた。
「でもね、宮本くん、生徒会長になれば、大学の推薦はもちろんのこと、大学に入ってからの進級だって、就職の時だって、みんな世話してもらえるんだよ。歴代のコネクションでね」
生徒会長は、噛んで含めるように言って聞かせた。
「将来のエリートコースが約束されているんだよ」
それでも宮本は、うんと言わなかった。
「そうそう、君は、小坂先生のことを知りたいって言っていたね。調べてみたよ」
生徒会長は立ち上がって、ガラス扉つきの書棚を開けて、書類の綴りを数冊引き出して戻ってきた。
「小坂先生も生徒会長の候補者だったんだ。ここを見てごらん」
宮本は、隣に座った生徒会長の手もとをのぞきこんだ。生徒会長の指し示した箇所に『二年二組選出候補者 小坂愛出人』の文字があった。だが、その文字は赤の二重線で消されていた。
「落選した、ということですか?」
宮本はたずねた。
「落選とは違うようだ。事情はわからないが、とにかく生徒会長にはなっていない」
生徒会長は答えた。
「何かあったんでしょうか」
「そこまではわからない。その辺の詳しい資料は破棄されているみたいだ」
「ちょっといいですか?」
宮本は、書類の綴りを受けとって、ページを繰った。
宮本は、あるページで手をとめた。
「二年二組の担任が、神崎総一郎教諭。これって、校長先生ですよね」
宮本は書類から顔をあげ、生徒会長に聞いた。
「そうだね」
生徒会長は言った。
「前年に、ラグビー部が出場停止になっていることと、なにか関係があるのかもしれない」
生徒会長が書類綴りのページを繰った。ラグビー部の顧問のところに、『神崎総一郎 教諭』とあり、やはり赤線で出場記録に線が引かれてあった。
「小坂先生は、高校時代から、神崎先生と関係していたのかもしれないね」
生徒会長は絶望的なことを言った。
もし、そうだったなら……。小坂と校長を引き離すのは至難の業に思えた。小坂先生が高校生だったときから、自分が小坂先生を好きなように、校長先生を好きだったとしたら……。そして、その時からずっと、二人は密かにこんな関係を続けていたとしたら……。
モニター画面では、小坂先生が、『もっと』とねだって泣き叫んでいた。生徒会長は、冷静な表情で画面を見ながら、
「僕も、前会長にされているときって、こんななのかな」
と、つぶやいた。小坂先生のきれいな顔が苦痛にゆがんでいた。
「やっぱり校長はテクニシャンだな」
会長は、それを見て乾いた笑いを漏らした。
宮本は、再び書類をめくり始めた、無感情な生徒会長の横顔を見ていた。
「見てごらん」
会長の指差した紙面には、『昭和○○年 神崎総一郎 第○○代 生徒会長』の文字があった。
「校長も生徒会長だったんだよ」
会長は目をあげて言った。
「つまり、我が校一子相伝のテクニックを身につけているってことさ」
生徒会長は、画面に目をやって、冷めた笑いを浮かべた。
「もちろん、そんなことだけじゃないさ」
生徒会長宮本の両手をとって包みこむように握って言った。
「さっきも言ったように、歴代生徒会長の会は政財界に太いパイプがあるんだ」
かたまった宮本は、生徒会長の言葉を、機械的に、
「太い……」
と反芻した。
「僕のは、そんなに太くないから、こわがらないで」
会長は声をたてて笑った。
そうしてひとしきり乾いた笑いを生徒会室の空間に撒き散らしたあと、会長は急に真顔になって宮本の方に向き直り、宮本の目を見つめて言った。
「だから、僕と、どう?」
「いえ」
宮本は即座に断った。
「えっ!? これだけ僕が口説いているのに!?」
生徒会長は、あきれたように嘆くと、
「そんなに小坂先生が好きなの?」
と、大きなため息をついた。
生徒会長が宮本にたずねた。宮本は、こくんとうなずいた。
「そうか……」
生徒会長は、しょうがないなぁというようにため息をついてから、気をとりなおしたように、再び宮本を説得しはじめた。
「でもね、宮本くん、生徒会長になれば、大学の推薦はもちろんのこと、大学に入ってからの進級だって、就職の時だって、みんな世話してもらえるんだよ。歴代のコネクションでね」
生徒会長は、噛んで含めるように言って聞かせた。
「将来のエリートコースが約束されているんだよ」
それでも宮本は、うんと言わなかった。
「そうそう、君は、小坂先生のことを知りたいって言っていたね。調べてみたよ」
生徒会長は立ち上がって、ガラス扉つきの書棚を開けて、書類の綴りを数冊引き出して戻ってきた。
「小坂先生も生徒会長の候補者だったんだ。ここを見てごらん」
宮本は、隣に座った生徒会長の手もとをのぞきこんだ。生徒会長の指し示した箇所に『二年二組選出候補者 小坂愛出人』の文字があった。だが、その文字は赤の二重線で消されていた。
「落選した、ということですか?」
宮本はたずねた。
「落選とは違うようだ。事情はわからないが、とにかく生徒会長にはなっていない」
生徒会長は答えた。
「何かあったんでしょうか」
「そこまではわからない。その辺の詳しい資料は破棄されているみたいだ」
「ちょっといいですか?」
宮本は、書類の綴りを受けとって、ページを繰った。
宮本は、あるページで手をとめた。
「二年二組の担任が、神崎総一郎教諭。これって、校長先生ですよね」
宮本は書類から顔をあげ、生徒会長に聞いた。
「そうだね」
生徒会長は言った。
「前年に、ラグビー部が出場停止になっていることと、なにか関係があるのかもしれない」
生徒会長が書類綴りのページを繰った。ラグビー部の顧問のところに、『神崎総一郎 教諭』とあり、やはり赤線で出場記録に線が引かれてあった。
「小坂先生は、高校時代から、神崎先生と関係していたのかもしれないね」
生徒会長は絶望的なことを言った。
もし、そうだったなら……。小坂と校長を引き離すのは至難の業に思えた。小坂先生が高校生だったときから、自分が小坂先生を好きなように、校長先生を好きだったとしたら……。そして、その時からずっと、二人は密かにこんな関係を続けていたとしたら……。
モニター画面では、小坂先生が、『もっと』とねだって泣き叫んでいた。生徒会長は、冷静な表情で画面を見ながら、
「僕も、前会長にされているときって、こんななのかな」
と、つぶやいた。小坂先生のきれいな顔が苦痛にゆがんでいた。
「やっぱり校長はテクニシャンだな」
会長は、それを見て乾いた笑いを漏らした。
宮本は、再び書類をめくり始めた、無感情な生徒会長の横顔を見ていた。
「見てごらん」
会長の指差した紙面には、『昭和○○年 神崎総一郎 第○○代 生徒会長』の文字があった。
「校長も生徒会長だったんだよ」
会長は目をあげて言った。
「つまり、我が校一子相伝のテクニックを身につけているってことさ」
生徒会長は、画面に目をやって、冷めた笑いを浮かべた。
「もちろん、そんなことだけじゃないさ」
生徒会長宮本の両手をとって包みこむように握って言った。
「さっきも言ったように、歴代生徒会長の会は政財界に太いパイプがあるんだ」
かたまった宮本は、生徒会長の言葉を、機械的に、
「太い……」
と反芻した。
「僕のは、そんなに太くないから、こわがらないで」
会長は声をたてて笑った。
そうしてひとしきり乾いた笑いを生徒会室の空間に撒き散らしたあと、会長は急に真顔になって宮本の方に向き直り、宮本の目を見つめて言った。
「だから、僕と、どう?」
「いえ」
宮本は即座に断った。
「えっ!? これだけ僕が口説いているのに!?」
生徒会長は、あきれたように嘆くと、
「そんなに小坂先生が好きなの?」
と、大きなため息をついた。
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