473 / 475
オデトと外商瀬川
麓戸の帰宅と新たな約束
しおりを挟む
夕暮れが麓戸のマンションの窓を茜色に染めていた。オデトはソファに座り、身体に残る熱と羞恥の余韻に苛まれていた。瀬川はすでに去り、テーブルの上には試着したストッキングやガーターベルト、スリップが丁寧に畳まれて残されている。ウィッグは鏡の前に置き去りにされ、オデトの視線を静かに捉えていた。まるで、先ほどの出来事が夢ではなかったと囁くように。
玄関のドアが開く音がした。麓戸だった。スーツのジャケットを片手に、リビングに足を踏み入れた彼は、オデトの姿を一瞥し、口元に微かな笑みを浮かべた。白いワンピースを着たオデトの頬は、ほのかに赤みを帯びている。
「ただいま、オデト」
麓戸はソファの背もたれに手を置き、軽く身を屈めてオデトの耳元に囁く。
「瀬川とはどうだった? 楽しめたか?」
オデトの身体がびくりと震えた。麓戸の声は穏やかだが、その奥に潜む意図がオデトの心をざわつかせる。瀬川の手が触れた感触、ストッキングを履かされる瞬間の緊張、ガーターベルトの留め具を調整する名目で滑った指先――すべてが脳裏に蘇り、言葉を詰まらせた。
「楽しむ、だなんて……」
オデトは目を伏せ、唇を噛んだ。
「あの人、必要以上に……触ったり、じっと見たり……」
麓戸は小さく笑い、ソファに腰を下ろした。オデトの隣、危険なほど近い距離で。彼の指がオデトの顎に触れ、顔を上げさせる。オデトの瞳は揺れ、羞恥と期待が混ざり合っていた。
「それで? オデトは、そういうの、嫌じゃなかっただろう?」
麓戸の声は低く、まるで心の奥を暴くようだった。
「瀬川は俺の指示通りに動いた。君に官能を、じっくり味わってほしかったんだ。視覚、触感、視線……全てじっくりと……」
麓戸の言葉は、オデトの心を裸にするようだった。瀬川の行動すべてが、麓戸の意図だったのだ。女装させられ、触れられ、視線に晒されたあの時間――すべては麓戸が仕組んだものだった。
「そんな……どうして……」
オデトは戸惑いながら尋ねた。麓戸は微笑し、オデトの髪を軽く撫でた。
「君は知ってるだろう? 俺が君をどんな風に愛でたいか。君のその羞じらう姿、感じてしまう瞬間――それが俺の欲を満たすんだ。それより何より、君も、こんな風に愛でられるのが好きだろう?」
オデトの頬がさらに熱を帯びた。麓戸の指が髪から首筋に滑り、軽く肌をなぞる。その感触に、オデトの身体が再び反応してしまう。麓戸は満足げに目を細め、言葉を続けた。
「瀬川には、また来てもらう。しばらく仕事が忙しくて、君をじっくりかまってやれないからね。代わりに、君の官能の、お相手をしてもらう。前回彼らを呼んだのは顔合わせも兼ねていたんだ。オデトやスタッフの様子を観察していて、瀬川が一番適任かな、と思ったんだ。彼のことは、嫌じゃないだろう? 君への対し方については厳しく言ってあるが、何か気に入らないことがあったら、すぐに俺に言ってくれ」
彼はテーブルの上の下着に視線を移して言う。
「次はもっとセクシーなものを頼んでおくよ。君に似合う、特別な衣装や下着をな」
オデトの心臓が速く打った。
「衣裳……何のために……?」
麓戸は、窓の方へ歩き、外を眺めながら答えた。
「来週、社交パーティがある。君を連れていく。最高の姿で、俺の隣に立ってほしい」
彼は振り返り、オデトを真っ直ぐに見つめた。
「君が女装して、皆の視線を一身に浴びるんだ。誰もが君に魅了されるだろう。だが、君は俺だけのものだ」
陶酔したような麓戸の言葉に、オデトの胸は高鳴り、不安と期待が交錯した。パーティでの女装。セクシーな衣装に身を包み、麓戸の腕を抱いて人前に立つ――想像するだけで、身体が熱くなる。瀬川の手で試着させられた下着の感触が、まるで予行演習のように脳裏を刺激する。
「そんなの……恥ずかしい……」
オデトは、小声で言った。麓戸は再びソファに戻ってきて、オデトの隣に座り、彼の手を取った。
「そうやって、いつまでも初々しさを失わず恥ずかしがるオデトが、俺は好きだ。だが、パーティでは堂々としていてくれ。君は俺の誇りなんだから」
麓戸の指がオデトの手の甲をなぞり、ゆっくりと指を絡める。オデトは目を閉じ、その温もりに身を委ねた。羞恥も、快感も、すべてが麓戸の手の中にあった。そして、来るべきパーティの日、どんな衣装に身を包むことになるのか――その想像だけで、オデトの心は再び揺さぶられていた。
玄関のドアが開く音がした。麓戸だった。スーツのジャケットを片手に、リビングに足を踏み入れた彼は、オデトの姿を一瞥し、口元に微かな笑みを浮かべた。白いワンピースを着たオデトの頬は、ほのかに赤みを帯びている。
「ただいま、オデト」
麓戸はソファの背もたれに手を置き、軽く身を屈めてオデトの耳元に囁く。
「瀬川とはどうだった? 楽しめたか?」
オデトの身体がびくりと震えた。麓戸の声は穏やかだが、その奥に潜む意図がオデトの心をざわつかせる。瀬川の手が触れた感触、ストッキングを履かされる瞬間の緊張、ガーターベルトの留め具を調整する名目で滑った指先――すべてが脳裏に蘇り、言葉を詰まらせた。
「楽しむ、だなんて……」
オデトは目を伏せ、唇を噛んだ。
「あの人、必要以上に……触ったり、じっと見たり……」
麓戸は小さく笑い、ソファに腰を下ろした。オデトの隣、危険なほど近い距離で。彼の指がオデトの顎に触れ、顔を上げさせる。オデトの瞳は揺れ、羞恥と期待が混ざり合っていた。
「それで? オデトは、そういうの、嫌じゃなかっただろう?」
麓戸の声は低く、まるで心の奥を暴くようだった。
「瀬川は俺の指示通りに動いた。君に官能を、じっくり味わってほしかったんだ。視覚、触感、視線……全てじっくりと……」
麓戸の言葉は、オデトの心を裸にするようだった。瀬川の行動すべてが、麓戸の意図だったのだ。女装させられ、触れられ、視線に晒されたあの時間――すべては麓戸が仕組んだものだった。
「そんな……どうして……」
オデトは戸惑いながら尋ねた。麓戸は微笑し、オデトの髪を軽く撫でた。
「君は知ってるだろう? 俺が君をどんな風に愛でたいか。君のその羞じらう姿、感じてしまう瞬間――それが俺の欲を満たすんだ。それより何より、君も、こんな風に愛でられるのが好きだろう?」
オデトの頬がさらに熱を帯びた。麓戸の指が髪から首筋に滑り、軽く肌をなぞる。その感触に、オデトの身体が再び反応してしまう。麓戸は満足げに目を細め、言葉を続けた。
「瀬川には、また来てもらう。しばらく仕事が忙しくて、君をじっくりかまってやれないからね。代わりに、君の官能の、お相手をしてもらう。前回彼らを呼んだのは顔合わせも兼ねていたんだ。オデトやスタッフの様子を観察していて、瀬川が一番適任かな、と思ったんだ。彼のことは、嫌じゃないだろう? 君への対し方については厳しく言ってあるが、何か気に入らないことがあったら、すぐに俺に言ってくれ」
彼はテーブルの上の下着に視線を移して言う。
「次はもっとセクシーなものを頼んでおくよ。君に似合う、特別な衣装や下着をな」
オデトの心臓が速く打った。
「衣裳……何のために……?」
麓戸は、窓の方へ歩き、外を眺めながら答えた。
「来週、社交パーティがある。君を連れていく。最高の姿で、俺の隣に立ってほしい」
彼は振り返り、オデトを真っ直ぐに見つめた。
「君が女装して、皆の視線を一身に浴びるんだ。誰もが君に魅了されるだろう。だが、君は俺だけのものだ」
陶酔したような麓戸の言葉に、オデトの胸は高鳴り、不安と期待が交錯した。パーティでの女装。セクシーな衣装に身を包み、麓戸の腕を抱いて人前に立つ――想像するだけで、身体が熱くなる。瀬川の手で試着させられた下着の感触が、まるで予行演習のように脳裏を刺激する。
「そんなの……恥ずかしい……」
オデトは、小声で言った。麓戸は再びソファに戻ってきて、オデトの隣に座り、彼の手を取った。
「そうやって、いつまでも初々しさを失わず恥ずかしがるオデトが、俺は好きだ。だが、パーティでは堂々としていてくれ。君は俺の誇りなんだから」
麓戸の指がオデトの手の甲をなぞり、ゆっくりと指を絡める。オデトは目を閉じ、その温もりに身を委ねた。羞恥も、快感も、すべてが麓戸の手の中にあった。そして、来るべきパーティの日、どんな衣装に身を包むことになるのか――その想像だけで、オデトの心は再び揺さぶられていた。
3
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる