La Cerisaie(桜の園)

リリーブルー

文字の大きさ
上 下
4 / 4

うたがいの芽

しおりを挟む
 すると、羅音は、しびれをきらしたように、ぷいとむくれて、言い放った。
「もう、いいよ! 杏がしてくれないなら。もう、椰子(やし)にしてもらうから」
「ええっ?」
椰子は使用人で、羅音の従者の、気取った軽薄な若い男だ。
「何であんな奴なんかに」
僕は、怒りと興奮で、息をはずませた。

羅音は、
「だって、僕もう、せんからずっと……」
と言って、吐息をつくと、しなをつくった。
「もう、羅音ったら、しっかりしてよ!」
羅音の身体はぐだぐだで、もう何を言っても無駄なようだった。

 そういえば、最近、羅音の部屋からいつも、夜中に変な物音や声がしていた。
「まさか椰子と……」
僕のむねに疑いの芽がきざした。

「あ、ああっ……」
見ると、羅音は、いつのまにか自分の指をお尻に差し込んでいた。
「そんなこと、やめてよ」
僕は、後ろから抱きついてやめさせようとした。
 羅音は、指を入れたまま、蕩けた目で、僕を見た。
「杏も……しようよ」
「何言っているの」
僕は、拒否しながらも、羅音の熱っぽい目つきに、ぞくっとした。
「ん、んん」
中腰の姿勢で、指を使いながら、羅音は一人で高まっていた。
「はぁ、いいよ、すごく」
羅音は僕の顔を見上げながら、誘うかのようにあえいでみせた。
「ねえ、しようよ」
羅音は床に膝をついて、さらに激しく、指を抜き差ししはじめた。
「ああっ、すっごくいい」

 僕がさっき捨てた雑誌が床に転がっていた。
 羅音は這いずってそれに近づき、口でくわえてページをめくった。そして、男の子の尻のアップのところをペロペロ舐めさえしだした。
「やめてよ」
僕は、見ていられなくて羅音を雑誌から引き離そうとした。

「どうして? そんなに僕、変?」
紅い頬と、うるんだ目をして、色っぽく羅音が振りかえった。
 これは、いつもの、ずっと前から知っている僕の羅音ではない。僕は混乱して、どうしていいかわからなくなった。

 羅音は、ソファに戻って座った僕の膝の間に、頭を押しつけてきた。
「何するの……あっ」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貴方のために涙は流しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:34,695pt お気に入り:2,053

異世界のんびり散歩旅

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,202pt お気に入り:745

異世界ライフは山あり谷あり

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:681pt お気に入り:1,554

目覚めた公爵令嬢は、悪事を許しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:48,572pt お気に入り:3,295

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,303pt お気に入り:2,215

とある大学生の遅過ぎた初恋

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:181

処理中です...