触手ちゃんは綺麗な巫子さんがお好き

リリーブルー

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孤独の泉と、ぬくもりの滴

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月が高く昇った夜、森は深い眠りについていた。
葉のざわめきも、鳥のさえずりも、静まり返るその中で――泉の水面が、そっと揺れた。

僕、モコは、夜の泉にひとり浮かんでいた。
ぐにゃりとした触手を丸めて、透明な水の上で、ただただ……寂しさを抱えていた。

(フロ……会いたいな)

でも、会いに行けば、またルイに怒られる。
フロに嫌われるかもしれない。怖がらせたくない。

僕は、何もできないまま、静かに水の底に沈もうとした。

そのときだった。

「……いるんでしょう?」

水面の上から、やさしい声がした。

ドキン、と僕の身体が震えた。

「……やっぱり。やさしくて、怖がりな君」

そこにいたのは――フロだった。

肩に小さなランタンをぶら下げて、夜の泉のほとりに立っている。
長い銀髪が月光に照らされて、まるで幻のように輝いていた。

「この前は……びっくりして、ごめんね。驚かせちゃったよね」

フロは、泉の水にそっと手を差し入れた。

その手を、僕の触手が、ぬるん……と包み込んだ。

あたたかい。

人間の手って、こんなにも……あたたかいんだ。

「ふふ、やっぱり君、ぬるぬるしてる」

フロが笑った。

その笑顔が、あまりにもまぶしくて――僕の中で、泡のように何かがはじけた。

嬉しい。

僕の気持ちが、少しだけ届いた気がした。

「名前、ある?」

僕は、泉の水を「もこっ」と鳴らして答えた。

「……“モコ”?」

フロは微笑んで、僕の身体をやさしくなでてくれた。

「……モコ。君、すごくかわいいよ」

(フロ……)

その声だけで、僕の胸がふわっとなった。

ああ、好き。もっと……もっと、フロの声が聞きたい。

もっと、そばにいたい。

***

だけど――その瞬間。

バサッ、と草むらが揺れた。

「フロ!」

ルイが現れた。

赤い髪が揺れて、彼の目が僕を睨んでいる。

「またあいつに会ってたのか!お前、何考えて――!」

「やめて、ルイ!」

フロが叫んだ。

ルイの腕をつかんで、僕の前に立ちはだかる。

「モコは、何もしてない! 優しい子なの!」

「……お前、本気で言ってるのか?」

ルイの声が震えていた。

「そいつは、化け物だ。喋りもしないし、人の心も……」

「あるよ。あるよ、ちゃんと。僕は、感じた」

フロの声が震えていた。

ルイの表情が、ほんの少しだけ、曇った。

その目には、怒りでもなく、軽蔑でもなく――どこか、哀しみが浮かんでいた。

「……お前、俺がどれだけ……」

ルイは、それ以上は言わなかった。

でも、その背中が、どこまでも寂しそうだった。

僕は、なにもできずにただじっとしていた。

好き。

でも、フロには、僕よりずっと前から、心を重ねてきた人がいたんだ。

それを、今、知った。

僕の中に、またひとつ……名前のない感情が生まれていった。

切なさ、なのかな。

それとも、嫉妬?

わからないけど――心がちょっと、痛かった。



次章予告:

第三章『恋を知るぬめり』では――
• モコが「好き」という感情をどうやって伝えればいいのか悩みながら、プレゼントを贈ろうとする✨
• フロもまた、モコとの時間を楽しみつつ、ルイとの関係に揺れ始める
• ルイはフロの変化に焦り、強引な行動に出るかも……?

三角関係がさらに深まって、ドキドキが加速していく💓
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