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クライマックス
しおりを挟むフロが祈りを捧げたとき、泉は静かに応えていた。
だけど――
モコが手を伸ばし、フロの胸にふれた瞬間。
――世界が、揺れた。
「……なっ!?」
フロの足元から、泉の水が逆巻いた。
ぼうっ……と水面から白銀の光が立ち昇る。
風もないのに、森の木々がざわざわとざわめき、
泉のまわりの空気が一変する。
鳥たちが飛び立ち、動物たちが森の奥へ逃げていく――
まるで、“神の降臨”に世界が反応しているようだった。
「モコ……!?」
モコの身体から、光があふれだした。
触手の輪郭が崩れ、ゆっくりと、でも確かに――“神の姿”へと変化していく。
柔らかな半透明の肌が、水晶のような光を帯び、
目はふたつの星のように輝き出す。
手が、腕が、脚が――
人のようで人でない、神秘の形へと姿を変えていく。
そして頭上には、水で編まれた冠のような光輪が浮かび上がった。
その姿は、美しく、異形で、言葉にならないほど神々しかった。
フロは、目を見開いて、ただ立ち尽くしていた。
「モコ……? 神様……?」
その瞬間、泉の中心に雷のような水柱が昇った。
「っ!!」
フロは強い風に吹き飛ばされそうになりながら、モコの名を叫ぶ。
「モコ――っ!!」
だが、モコはその光の中で、ゆっくりと彼に向かって手を伸ばした。
『――こわく、ない?』
その声は、心の奥に直接響いた。
音ではない。言葉ではない。
だけど、たしかに伝わる、“神のことば”だった。
フロは、その光に向かって、まっすぐに踏み出した。
「こわくない!! モコ、私は……」
手と手が、ふれる。
その瞬間、空気が破裂するような閃光が走った。
ピカァァアアアア!!!
森のすべてが、一瞬、白く塗りつぶされる。
泉の水は空に舞い、木々が光に包まれ、
地面がふるえ、森の魔力がざわめいた。
神、現る。
その存在に、神殿の使者たちは震え、
森の精霊たちはひざを折った。
そして――
静けさの中で、フロとモコは、ぴたりと抱きしめ合っていた。
神と、人間。
神殿に捧げられるはずだった者と、
神殿に見捨てられた神。
ふたりは今、“選び合った”。
「あなたが……本当の神だったんだね」
フロが、涙をこぼしながら言った。
モコは――ただ、そっと頷いた。
それは、神の誓いだった。
🌟つづく…
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